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外貨預金のリスクとメリット

日常生活でリスクといえば、危険なもの、回避したいものというイメージがあると思います。金融の世界では、価格変動の大きさ(ブレ幅)をリスクといいます。そして、お金を増やしたいときは、金融商品のリスクと上手に付き合うことも検討したいものです。
なぜなら、リスクとリターン(=運用の成果)は背中合わせで、価格変動があるため、減るかもしれないけれど、増えるかもしれない可能性があるからです。本記事では、外貨預金のリスクや、リスクに対処する方法、リスクを踏まえた上での外貨預金のメリットについてご紹介します。

外貨預金のリスクを把握しておきましょう

外貨預金は、米ドル・オーストラリアドル(豪ドル)などの外貨で預け入れる預金のことです。手持ちの円を外貨に替えるときや、外貨から円に戻すときに、その都度、その時点の為替レートが適用されて、為替の影響を受けます。
為替レートは常に変動していますから、預入時と引出時の為替レートに差があれば、最終的な円での受取額に反映されます。大きく増える可能性もあれば、元本割れしてしまう可能性もあるのです(なお、為替レートが変動しなくても手数料によって元本割れとなるケースもあります)。これは円の預金にはないリスクです。
まずは外貨預金のリスクから把握しましょう。

外貨預金のリスク:円高による元本割れ

預入時よりも、引出時の為替レートが円高になると、円で最初に預けた金額よりも減ってしまう可能性があります。外国の通貨に対して円の価値が上がるのが円高です。例えば米ドルと円の為替相場なら、1米ドル=100円だったのが1米ドル=95円になることを円高といいます。円の価値が上がるということは、円での受取額が減るということです。外貨預金に預け入れることによって得られる利息で、減った分や換金時にかかる為替手数料をカバーできればいいのですが、そうではない場合は元本割れになります。

では、どのようなときに為替レートは動くのでしょうか。

政治の混乱や災害

為替レートは、様々な理由で変動しています。例えば政治の混乱や、大きな災害などは、経済や財政に打撃を与えるので、短期的に為替レートが大きく変動するリスクにつながることがあります。不安定な国の通貨は売られて、安くなります。日本には大きな変化がなくても、海外で政治の混乱や災害があった場合、その国の通貨に対して円高になる可能性があります。

通貨ごとの変動要因

モノの値段は、需要と供給で決まります。例えば、あるモノを一定の値段で売りたい人よりも買いたい人が多いと値段が上がり、売りたい人よりも買いたい人が少ないと値段は下がります。為替レートも原則は同じです。為替レートは、いわば通貨の値段ともいえますから、その通貨が欲しい=買いたい人がたくさんいると高くなります。例えば、円で持っているよりも米ドルで持っていたいと考える人が増えて、多くの人が円を売って米ドルを買えば、円安ドル高になります。

では、どんなときに、その通貨が欲しくなるのでしょうか?例えば、景気が拡大している国では株価が上がる傾向にあるため、好景気で今後も投資拡大が期待され通貨も買われやすくなります。また金利が高い国の通貨は、高い金利が魅力となって買われやすくなります。為替レートは、原則このような理由で動いていますが、通貨によっても特徴があります。参考に、通貨ごとにどのような変動要因があるかご紹介します。
通貨 変動要因の例
米ドル

米国の景気を表す代表的な指標が「米国雇用統計」です。雇用が安定して増加していれば、米国の景気は良くなりますから、米ドルが買われ、米ドル高につながります。また、米国の消費者物価指数が上がったり、住宅着工件数が増えたりすることも景気が良くなっているとみなされて、金利が上がりやすくなり米ドル高に動きやすくなります。

米国の政策金利は世界中から注目されています。米ドルは世界の基軸通貨として、国際間の取引で使われたり、各国の外貨準備通貨として蓄えられたりしているからです。米国の政策金利は、米国景気が悪くなると下がる傾向にあり、株価も下がることが予想されるため、政策金利の下げは米ドル安につながる傾向があります。

オーストラリアドル
(豪ドル)

毎月発表される「新規雇用者数・失業率」で、景気が上向いている傾向なら豪ドル高につながる傾向があります。先進国通貨の中では金利が比較的高い傾向にあり、金利を目当てに豪ドルが購入されることも豪ドル高につながります。ただし、米ドルやユーロ、円に比べると取引量が少ないため、経済指標や政策金利の影響を受けて、為替レートの変動幅が大きくなるリスクもあります。

鉱物資源が豊かで、輸出品に占める割合が高いため、資源価格の下落は、豪ドル安につながります。中国への輸出が多いので、中国経済の減速はオーストラリア経済にも影響が大きく、豪ドル安につながることもあります。

ニュージーランドドル

農産物の輸出が多いため、天候や資源価格の動向が為替に影響を与えることがあります。乳製品や商品価格の上昇は、ニュージーランドドル高につながり、逆に、下落はニュージーランドドル安につながります。

輸出相手国は、中国、オーストラリア、米国、日本が中心で、相手国の景気の影響を受けることがあります。特に輸出量が多い中国の景気が上向きで輸出が増えることは、ニュージーランドドル高につながります。

英ポンド

英国の小売業全体の売上高を示す「小売売上高」がよければ、景気が上向きやすく、英ポンド高につながる傾向があります。

政策金利の引き下げや失業率の上昇は英ポンド安につながります。なお、これまでは単一通貨ユーロと似た値動きをしてきましたが、EU(欧州連合)を離脱することが正式に決まり、今後はどのように他国と貿易を行うのかに注目が集まっています。EU離脱により貿易量が減り、英国経済にも悪影響を及ぼすようなら英ポンドの下落につながりそうです。

また、外貨預金には銀行破綻リスクもあります。

万一、銀行が破綻した場合も、円預金なら預金保険制度で守られています。預金保険制度とは、ひとつの銀行につき一人当たり1,000万円とその利息を上限として預けていたお金が保証される制度です。一方、外貨預金は預金保険制度の対象外です。銀行が破綻した際の払い戻しは保証されていません。外貨預金をするときには、利用する銀行の経営が安定しているかも確認したいものです。

外貨預金のリスクに対処する方法は?

これまで、外貨預金のリスクや、通貨ごとの変動要因について見てきました。それでは次に、これら外貨預金のリスクに対処する方法についてご紹介しましょう。

なるべく長期で保有できる金額の範囲で運用する

まず、外貨預金は余裕資金で行うのが鉄則です。為替変動により一時的に円換算の評価額が下がっても、保有を継続することで評価額が回復する可能性があります。

複数の通貨を保有してリスクを分散させる

外貨と一口にいっても、通貨ごとに為替レートの動きは異なり、それぞれに特徴があります。円だけではなく外貨も持つ、さらに複数の外貨を持つことでリスクを分散できます(例えば米ドルと豪ドルなど)。

預け入れるタイミングをずらしてリスクを分散させる

価格変動するものを買うときには、何度かに分けて買うことで時間を分散することが重要です。自分で為替動向を見ながら買うタイミングを決める方法もありますが、為替の予測はなかなか難しいものです。
同じ金額で、定期的に預け入れる「外貨つみたて」を使えば、タイミングに悩むこともなく、また、自動的に預け入れることができるので手間がかかりません。一定金額の円で預け入れるので、円安のときは少なく、円高のときには多く外貨を預け入れることができ、平均預入単価の平準化につながります(これをドル・コスト平均法といいます)。

外貨預金のメリット

これまでリスクとその対処法について説明してきましたが、もちろん外貨預金にはメリットがあります。最も大きなメリットは、将来の円安に備えられることです。

日本は食糧をはじめ原油、鉄鉱石といったエネルギー資源などを輸入しているので、円安が進み、輸入品の値段が上がると、生活は苦しくなります。
日本は人口が減っていますから、一人当たりの経済活動に変化がなければ、国全体としては経済力が低下して、世界の国々と比べても低くなる可能性があります。これは円安につながります。
日本の経済成長が期待できないと考えるのであれば、経済成長が期待できる国の通貨を持つことで、円安への備えになります。実際にその国の通貨が高くなれば、資産全体の価値の保持につながります。

外貨建ての資産には、外貨預金のほかにも、外国株や投資信託などがあります。外貨預金は、為替変動の影響は受けるものの、比較的シンプルな商品のため、運用初心者には始めやすいでしょう。

お伝えしてきたように、外貨預金にはリスクとメリットの両方があります。リスクについては、どのようなケースがあるのか把握の上、リスク分散などの対策を検討してみましょう。

記事提供:株式会社フルスピード

執筆者:ファイナンシャル・プランナー坂本 綾子
日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士

三菱UFJ銀行で外貨預金を始める方法

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外貨預金についてもっと知る 

円安、円高になったらどうなるのか、リスクやメリットについてのくわしい情報、預け入れや引き出しのタイミングについてなど、外貨預金についてもっとくわしく知りたい方に向けてのコンテンツをご用意しました。
  1. 本記事は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。商品の購入時にはお客さまご自身でご判断ください。本資料の情報は、当行が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答えしかねますので予めご了承ください。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。

外貨預金をお申し込みの際は、次の点にご注意ください。

  • 外貨預金は預金保険制度の対象ではありません。
  • 為替相場の変動により、円貨を外貨にする際(預入時)の為替相場に比べ、外貨を円貨にする際(引出時)の相場が円高になると引出円貨額が預入円貨額を下回る場合があります。
  • 円貨を外貨にする際および外貨を円貨にする際に手数料がかかるため、為替相場に変動がない場合でも、引出円貨額が預入円貨額を下回る場合があります。
  • 新興国通貨は先進国通貨に比べて大きなリスク(カントリーリスク等)があります。流動性や市場機能の低下、および大幅な為替変動により、場合によってはお取引を即時停止することがあります。
  • お申込前に必ず最新の契約締結前交付書面・説明書をご確認ください。

その他にもご留意事項がありますので、くわしくはこちらをお読みください。

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(2021年3月22日現在)