ペアローンと住宅ローンの収入合算の違いとは?仕組みやメリット・デメリットを解説!

- 2022年10月17日
- 2023年7月18日
「住宅ローンを一人で返済していくのは不安」「より多くの資金を借り入れたい」このようなとき親子や夫婦で住宅ローンを組む方法として、ペアローンと収入合算があります。
一人の収入ではなく世帯年収で住宅ローンを組むことができるのは大きなメリットです。しかし、ペアローンと収入合算には違いがあります。
自分に合った契約ができるように、ペアローンと収入合算の違いとそれぞれのメリット・デメリットを知っておきましょう。
住宅ローンにおけるペアローンとは?
ペアローンとは、一定の収入がある夫婦または親子それぞれが契約者として住宅ローンを組む方法です。
共働き夫婦なら夫と妻がそれぞれ住宅ローンを1つずつ、計2つを契約することになります。夫と妻は相手の連帯保証人になることが必要です。
一方、収入合算は一定収入のある夫婦または親子の収入を契約者の収入に合算し、1つの住宅ローン契約として扱います。収入を合算した人は契約者の連帯保証人になることで、合算した世帯収入を元に住宅ローン審査を受けられるのが特徴です。
住宅ローンのペアローンと収入合算の違い
ペアローンと収入合算のポイントを整理してみました。
ここでは便宜的に共働き夫婦のケースを想定しています。親子の場合は、それぞれ置き換えてください。
ペアローン (夫婦で借り入れする場合) |
収入合算 (夫が主債務者、妻が収入合算者の場合) |
単独 (夫が借り入れする場合) |
|
---|---|---|---|
契約するローンの数 | 2つ | 1つ | |
契約者 | 夫・妻 | 夫 | |
連帯保証人 | 妻・夫 | 妻 | - |
返済義務 | 夫・妻 | 夫 | |
団信加入 | |||
住宅ローン控除 | |||
所有権 |
上記のとおり、ペアローンと収入合算には多くの違いがあります。
ここでは住宅ローンの契約にあたって影響が大きいものを3つ見ていきましょう。
1. 契約するローンの数
ペアローンは夫婦または親子がそれぞれ契約者となるため、契約する住宅ローン数もそれぞれ1つずつ、計2つとなります。
一方、収入合算の契約ローン数は1つです。
2. 住宅ローン控除と団信
契約するローン数が違うと、住宅ローン控除、団信加入の義務と保障を受けられる人は異なります。
団信とは契約者に万が一のことがあったとき、残りの住宅ローンが完済される団体信用生命保険のことです。
ペアローンは夫婦等それぞれが契約者であり返済義務を負うため、団信は一人ひとりが加入します。万が一の際は、それぞれが保障を受けられるのがメリットです。
収入合算の場合、契約者は夫、返済義務を負うのも夫です。連帯保証人も返済義務を負っているのでは?と思うかもしれませんが、連帯保証人は主な債務者ではありません。そのため、収入合算で団信に加入するのは夫、実際に保障を受けられるのも夫だけとなります。
この考え方は住宅ローン控除についても同様です。住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用して住まいを購入した人が年末時点の住宅ローン残高の0.7%を所得税から控除できる制度です。(2022年9月現在)
この制度の性質上、減税措置を受けられるのは返済義務を負う契約者ということになります。
返済義務があるのは誰か、団信加入できるのは誰かなど項目を見ていると難しく思われるかもしれません。そのようなときは「契約者は誰か」で考えてみてください。民法では契約の当事者に権利と義務が生じます。契約者が誰かを基準にすれば、シンプルに考えられます。
3. 取扱金融機関
ペアローンや収入合算といった契約方法は、住宅ローンを借り入れする金融機関によって取り扱いが異なります。
ペアローンと収入合算は多くの民間の金融機関で取り扱いがありますが、収入合算は一般的に取り扱いの多い「連帯保証型」と、フラット35と一部の金融機関でのみ取り扱いのある「連帯債務型」の2つの種類があります。収入合算の連帯債務型については、取扱いの金融機関にて内容を確認しましょう。
すでに見たように収入合算の場合、契約者以外は住宅ローン控除や団信の恩恵がありません。
そのため、夫婦や親子でリスクをシェアしながら住宅ローンの契約を考えたい方は、ペアローンの取り扱いがある金融機関を検討してみると良いでしょう。
ペアローンのメリット
ここでペアローンのメリットをもう少しくわしく解説します。
借入額をふやせる
ペアローンの大きなメリットは借入額をふやすことができることです。自分一人の年収では希望する金額を借り入れできない場合もペアローンを活用すれば、十分な金額を借り入れできる可能性が高まります。
また、ペアローンでは同居親族それぞれが契約者となって住宅ローン契約を結ぶことになるため、返済方法や返済期間も個別に設定できます。
収入合算と比べてペアローンは返済方法にバリエーションがあります。
住宅ローン控除額が大きくなる
ペアローンは契約者それぞれが住宅ローン控除を利用できるので、当然控除額が大きくなります。
たとえば、令和4年度から年末時点で3,000万円の住宅ローン残高があった場合、その年に所得税から控除できる金額は3,000×0.7%=21万円です。ペアローンでは契約者それぞれが21万円の控除を利用できるため、最大控除額は21万円×2=42万円となります。
控除額がふえるメリットは、仮に収入が変わらなくても使えるお金がふえることです。
一部の税や自治体の住民サービスは、控除後の課税所得をベースに算出されています。
住民税や認可保育園の保育料などはその一例です。これらは前年の課税所得を元に決定されるので、課税所得を減らすことは翌年の支出を減らすことになります。
つまり、住宅ローン控除には、その年の所得税の負担を軽くするだけでなく、翌年の支出を減らすメリットがあるといえるでしょう。
住宅ローン控除は会社員の方も活用できる制度ですので、年末調整は忘れないようにしてください。なお、所得税から控除しきれない金額がある場合は、住民税の一部から控除されます。
そのため家計にとって、契約者は1人よりも2人のほうがメリットは大きくなります。
契約者2人が団信に加入できる
ペアローンでは契約者2人がそれぞれ団信に加入できるので、亡くなった契約者の残債は保険で完済できます。
リスクをシェアしながら多くの金額を借り入れしたい共働き夫婦や親子にとって、ペアローンは有力な選択肢のひとつになるのではないでしょうか。
ペアローンのデメリット
ただし、ペアローンには次のような特有のデメリットもあります。
万が一のことがあっても一方の返済義務は残る
これはメリットの裏返しでもあります。契約者2人がそれぞれ団信に加入するペアローンは、亡くなった方の住宅ローンは完済されますが、残された方の返済義務はそのままです。
たとえば3,000万円の住宅を購入するのにちょうど半分ずつペアローンを組んだ場合、団信で完済されるのは半分の1,500万円となります。半分の1,500万円は残りますが、団信のおかげで亡くなった方の分の返済義務までは生じません。
贈与税がかかることがある
ペアローンで住宅を購入する場合、住宅ローンの負担割合と登記している所有割合が異なると、贈与税が発生する可能性があります。
財産の取得は適切な対価との交換が基本です。3,000万円の住宅の所有割合を50%ずつにしたい場合は、住宅ローンの返済割合も50%にしなければなりません。
住宅ローンの負担以上に所有の割合が多いと、その分はパートナーから贈与を受けているとみなされてしまうので注意しましょう。
離婚した場合、住宅の扱いに困る
昨今、離婚はめずらしいものではなくなりつつあります。それはペアローンを組んでいた夫婦にとっても他人事ではないかもしれません。
ペアローンを契約していた夫婦が離婚すると困るのは住宅の扱いです。ペアローンを解消する場合は、どちらかがペアローンを1本化して住み続ける、または売却して住宅ローンを返済するといった方法があります。
ペアローンを組む場合は、万が一の場合のデメリットも理解したうえで契約しましょう。
まとめ

住宅ローンの契約方法には、同居家族も契約者になれるペアローンというものがあります。
世帯収入を合算できるので、単独で契約する方式に比べて多くの借り入れができ、それぞれが契約者となり共同で返済していけるのが特徴です。
片方の収入では取得できなかったワンランク上の物件を、リスクシェアしながら購入できるのは大きな利点といえるでしょう。
他方、ペアローンには特有のデメリットもあります。ペアローンを利用する際はメリットだけでなく、デメリットも十分に理解して返済計画を立てていくことが大切です。
執筆者:筒井 永英(つつい のりえ)
執筆者保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士
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