住宅ローンの金利は今後どうなる?今後の金利上昇リスクを踏まえた住宅ローンの選び方

公開日:2022年10月13日
住宅ローンは、一般的に固定金利より金利水準が低い変動金利の方が選ばれる傾向にありました。日銀のゼロ金利政策が始まった平成11年2月以降、20年以上におよぶ低金利が続いたためです。
しかし、その状況は変わるかもしれません。
住宅ローンの金利指標である長期国債の金利が2021年7月頃よりゆるやかに上昇してきており、 住宅ローンの固定金利も変動金利に先んじて上がりつつあります。
金利が上昇すると家計にどのような変化が起こるのでしょうか。金利上昇リスクを踏まえた住宅ローンの選び方を解説します。
変動金利と固定金利の指標の違い
適切な金利タイプを選ぶには、まず金利がどのような仕組みで決まっているのかを理解する必要があります。
まずは変動金利・固定金利とはなにか、それぞれの指標の違いを確認しておきましょう。
変動金利とは
変動金利とは、借入期間中に適用される金利が変動するタイプの金利のことです。
変動金利は日銀の政策金利を指標にしており、多くの金融機関では1年以内の融資をする際の最優遇貸出金利である短期プライムレートに1%上乗せした金利を基準金利としています。その基準金利から適用金利の優遇や上乗せをしたものが、住宅ローンで実際に適用される金利です。
しかし、政策金利が上昇してもすぐに変動金利でご利用中のローンの返済額に反映されることはありません。
元利均等返済方法の変動金利の住宅ローンには、急激に金利が上昇しても返済額が大きく変わることを避ける「5年ルール」と「125%ルール」を用意している金融機関が多いです。
5年ルールとは、借入後の決められたタイミングで、適用金利の見直しが行われる際、たとえ適用金利が変動しても月々の返済額は5年間同じというものです。これは、金利が上がっても家計への影響が抑えられるようにと設けられた仕組みです。
ただし、5年ルールにより返済額は5年間変わらないものの、適用金利が変われば、返済額に占める元金と利息の割合は変わります。
例えば、毎月の返済額の合計が10万円で、元金返済額9万5,000円、利息が5,000円だったとします。適用金利が上がって支払利息がふえると、月10万円の返済額は変わらなくても、内訳が「元金9万円+利息1万円」などと変わる可能性があります。返済額の内訳について返済予定表等で確認することができます。
その後は、その時点の元金残高と金利、残りの返済期間から再計算されることになっています。
また、適用金利が大幅に上昇しても、見直し後の返済額は直前の返済額の最大1.25倍までというのが、125%ルールです。
ただし、変動金利で急激な金利上昇が続いた場合、5年ルールや125%ルールで返済額は大きく上がらなくても、返済に占める利息の割合が多くなり、元金の返済が進まない場合があります。
また、返済額がすべて利息になってしまったり、さらには、返済額では返しきれない利息が発生すると、「未払利息」として払いきれない利息分は、翌月以降の返済に繰り延べされます。多くの場合、最終回の返済日に、未払利息分は残りの元金とともに全額を一括で返済しなくてはなりません。
固定金利とは
固定金利は金利が変わらないタイプの金利です。
固定金利には、借入時の金利が返済開始から終了までずっと変わらない全期間固定金利と、借入時から一定の期間だけ金利が固定される当初固定金利の2種類があります。
当初固定金利の固定期間は、3年、10年、20年など金融機関によってさまざまです。
一般的に固定期間が長くなるほど適用金利は高くなります。住宅ローンの固定金利の指標は長期国債利回りとなることが一般的です。
そのため、長期国債の利回りが上昇すると、固定金利タイプの住宅ローンの金利も上昇することになります。
変動金利の今後の動向は?
2022年10月現在、変動金利は固定金利に比べて低い水準にあります。
変動金利に影響を及ぼす日銀は、現段階では金融緩和策を続ける方針を発表していますので、今後しばらくは低水準が続くと見られています。
金融緩和とは景気が悪いときに政策金利を引き下げることで市中の資金供給量をふやし、投資や消費などの経済行動を促す政策のことです。日銀が金融緩和を続ける背景には、新型コロナウイルスの感染拡大から3年目を迎えた日本経済がいまだその影響からの回復途上にあること、物価上昇の伸びに賃金上昇が追いついていないことなどがあります。
インフレに悩むのは日本だけではありません。米連邦準備理事会(FRB)は米国内の物価上昇を抑えるため、大幅利上げに踏み切りました。
また、欧州の中央銀行も相次いで利上げを決めています。
政府・日銀の政策が方向転換する可能性もある
海外で利上げが起こると日本にどのような影響があるのでしょうか。
これを理解するために金利・為替・物価がどのような関係になっているのかを見てみましょう。
まず、金利を考えてみます。
たとえば、米国で景気が回復すると米国への投資をふやす企業がふえます。するとお金を借りる企業や個人がふえ、金利上昇が起こります。
その結果、為替が影響を受け、米ドルに資金が流れ込み、米ドルの価値が高くなる、つまりドル高になるというわけです。
次に物価への影響です。米ドルの価値が高くなると円が安くなります。そのため、輸入品の価格が高くなります。日本はエネルギーや原材料のほとんどを輸入に頼っていますので、物価高騰は避けられません。
海外の中央銀行が相次いで利上げするなか、日本だけ金融緩和政策を続けるとどうなるでしょうか。
金融緩和政策には金利を下げるメリットがある反面、通貨の価値を下げるデメリットもあります。日本市場にお金が集まらなくなるので、悪い循環に入っていくことも考えられます。
そのため、2023年4月の任期満了で日銀総裁が交代すると、政策が方向転換し変動金利が上昇する可能性があるといわれているのです。
変動金利で借り入れ中のリスク
ここで、変動金利で借り入れた住宅ローンの金利が途中で上昇すると、どのくらい返済総額が変わるのかを見てみましょう。
比較しやすいように全期間固定金利と並べてシミュレーションしてみました。
【条件】
- 3,000万円
- 35年
- 元利均等返済
- 当初金利年0.5%、6〜10年目に年1.5%、11年目から年2.5%と仮定
- 年1.5%
変動金利 | 全期間固定金利 | |||
---|---|---|---|---|
1〜5年目 | 6〜10年目 | 11〜35年目 | 1〜35年目 | |
毎月返済分 | 77,875円 | 89,830円 | 100,765円 | 91,855円 |
上記のとおり、変動金利の1~5年目の返済額は、全期間固定金利と比べて毎月約14,000円のマイナスです。しかし、11年目以降になると変動金利が全期間固定を月9,000円ほど上回りました。
さらに返済総額を見てみましょう。
変動金利 | 全期間固定金利 | 差額 | |
---|---|---|---|
返済総額 | 40,291,700円 | 38,579,007円 | 1,712,693円 |
最終的な返済額では、変動金利が全期間固定金利を約171万円上回っていることがわかります。
変動金利でも返済額は5年間変わらない、金利見直しがあっても返済額の上昇幅は直前の最大125%まで、と上述しました。そのため、返済額は変わらないのでは?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、大きな変動がないのは「月々の返済額」である点に注意してください。
なぜなら5年ルール・125%ルールは返済額には適用されますが、金利そのものには適用されないからです。
金利はその時点の金利が適用されるので、毎月の返済額のうち金利の割合がふえることになります。すると元金の返済が進まないため、最終的に返済総額がふえるリスクがあるのです。
固定金利の今後の動向は?
2022年2月、住宅ローンの固定金利が各社で上昇したことは大きなニュースになりました。
金利上昇の背景には、米国の深刻な物価上昇とそれを抑えるために中央銀行が始めた金融引き締めの影響があります。それを受けて日本の長期国債の利回りも上昇しているからです。
変動金利は日本の政策金利を、固定金利は長期国債の利回りをもとにしているので先に固定金利が上昇しましたが、今後、金利上昇の影響は変動金利にも及ぶことになるかもしれません。
金利上昇リスクを踏まえた住宅ローン選びを

では、私たちはどうすれば良いのでしょうか。考えられる対策を挙げてみました。
固定金利での借り入れ
これから借り入れする場合は、固定金利も視野に入れると良いでしょう。
一般的に、固定金利は金利を固定する期間が長くなればなるほど金利は高くなりますが、住宅ローン契約時に返済総額を把握しやすく、返済計画を立てやすいのがメリットです。
金利上昇のリスクを心配することなく家計を考えていきたい方は、全期間固定金利タイプを選ぶのもひとつの方法といえます。
金利タイプに迷う場合はミックスも選択肢に
とはいえ、変動金利タイプは金利の低さが魅力です。家計に比較的余裕があり、金利上昇局面にも対応できる方は、変動金利でも良いでしょう。
ただし、今後どの程度まで金利が上昇するかは誰にもわかりません。
変動金利タイプと全期間固定金利タイプのどちらにするかで迷う方は、2つを組み合わせるのもおススメです。
変動金利と固定金利を組み合わせた住宅ローンは、全期間固定金利のものと比べて毎月の返済額を抑えられるうえ、金利上昇のリスクにもある程度対応できるとされています。
変動金利は一部繰り上げ返済を検討する
住宅ローンを変動金利で借り入れる場合は、金利が上昇する前に一部繰り上げ返済をするという方法もあります。
一部繰り上げ返済とは、毎月の返済とは別に元金の一部を任意のタイミングで返済することを言います。元金の返済を進めることできるため、利息の圧縮に効果的です。
注意点は、月々の返済とは別にまとまった額を返済すると手元の資金が減少することです。一部繰り上げ返済は今後のライフプランに合わせて無理のない範囲で行いましょう。
まとめ
長く続いた低金利時代では、変動金利の方が選ばれる傾向にありました。
しかし、その状況は変わりつつあります。住宅ローンの返済は長期にわたります。
確かなことは誰にもわかりませんが、昨今の世界情勢を踏まえると長い返済期間のなかで、金利が変わらない要因を探すことのほうが難しいのではないでしょうか。
返済に頭を悩ますことなく日々の暮らしを楽しむためにも、ご自身に合った金利タイプを選びましょう。
執筆者:筒井 永英(つつい のりえ)
執筆者保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士
※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。
執筆者保有資格:2級ファイナンシャルプランニング技能士
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