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住宅ローンの賢い選び方とは?金利上昇局面ではどうすればいいかポイントを解説

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住宅ローンの賢い選び方とは?金利上昇局面ではどうすればいいかポイントを解説
2021.8.2
人生で大きな買い物の一つとなる住宅は、住宅ローンを組んで購入するのが一般的です。住宅ローンの金利タイプには「変動金利型」「固定金利期間選択型」「全期間固定金利型」の3タイプがあります。しかし自分がどのタイプを選択すればいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。金利タイプの選択の仕方は、その方のライフステージや手持ちの資産、世の中の経済状況によって変わります。
今回は、長期金利の上昇局面でどのような選択をすればよいかについて解説します。

米国10年債の利回りがじわじわ上昇中

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(画像提供:m.mphoto/stock.adobe.com)
住宅ローン金利のベースとなる米国10年国債が、2020年4月ごろに比べてじわじわ上昇、特に2021年に入ってから急上昇しています。米国の追加経済対策の効果や、新型コロナウイルスのワクチン接種の普及により「予想以上に早く経済が正常化していくのではないか」という期待感もあり上昇している傾向です。それに伴い各先進国の長期金利も上昇中で、日本の住宅ローンでも固定金利に影響を及ぼし始めています。
このような金利上昇局面では、住宅ローンをどのように組めばいいのでしょうか。住宅ローンの組み方を考える前に、まずは住宅ローンの金利の種類について再確認しておきましょう。

住宅ローン金利の種類

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(画像提供:tamayura39/stock.adobe.com)
冒頭で記載したように、住宅ローン金利には3つのタイプがあります。それぞれの特徴や違いを理解して、自分にあった返済の継続性が高い金利タイプを選びましょう。

全期間固定金利型

全期間固定金利型は、返済開始時の借入金利が完済まで変わらないタイプの住宅ローンです。返済期間が長くなりがちな住宅ローンにおいて、金利変動の影響を受けないため、総返済額が変動しません。そのため返済計画の見通しが立てやすく、家計管理もしやすいのが特徴です。金利変動の影響を受けないので、将来の金利上昇が心配な方や、不安要素を少なくしたい方が選択することが多い傾向です。
しかし、他のタイプの固定金利期間選択型や変動金利型の住宅ローンと比べると、同じタイミングで住宅ローンを組む場合は、固定金利のほうが金利は高く設定されます。住宅金融支援機構が提供する代表的な全期間固定金利型「フラット35」の2021年3月の金利水準は1.350~2.230%で、そのうち取り扱い金融機関で提供される最も多い金利は年1.350%です。

固定金利期間選択型

固定金利期間選択型は、返済開始から一定期間固定金利期間を選択することができ、期間終了後は自動で変動金利に変更されるタイプの住宅ローンです。期間は、返済開始から「3年」「5年」「10年」など選択できるタイプもあります。一定期間は固定金利なので返済計画が立てやすいですが、変動金利に切り替わった際に金利変動の影響を受けるので、先が読みづらい傾向です。
また元利均等方式の場合は、一定期間中の固定金利に比べて変動金利が高くなると、返済額に占める利息の割合が急に増えるリスクがあります。固定金利期間終了後に再度固定金利を選択可能なタイプの住宅ローンもありますので、契約する前によく確認しましょう。

変動金利型

変動金利型は、返済期間中に定期的に金利の見直しがある住宅ローンです。市場金利の上下で住宅ローン金利も上下します。2021年3月時点でマイナス金利が続いている日本では、変動金利も低金利で推移している状態です。変動金利は、一般的に年2回金利が見直されます。
毎月の返済額が一定になるように元金と利息を計算した返済方法「元利均等返済」の場合、返済する金額自体は、5年ごとに見直しされるのが一般的です。マイナス金利が続く日本では、変動金利型の金利は低水準で推移しています。
今後、金利が上がる前に完済できれば総返済額が少なくてすみますが、金利が上昇した場合は完済までに支払う利息の総額が想定よりも増える可能性もあるため、注意が必要です。

住宅ローン金利タイプを選ぶ際のポイント

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(画像提供:chinnarach/stock.adobe.com)
住宅金融支援機構が行っている2020年11月の「住宅ローン利用者の実態調査」では、変動金利型の利用は62.9%、全期間固定型は12.6%、固定期間選択型は24.5%という結果でした。つまり約6割の方が変動金利型を選んでいることになります。調査が行われた2020年11月時点では、長期金利も上昇しておらず、低水準の金利が今後もしばらく続くと見通しを立てている人が多かったことが分かるでしょう。
しかし、先ほど急上昇しているとお話しした「米国10年国債」は住宅ローン金利のベースとなっており、その影響が固定金利にでてきています。2021年3月1日時点の「フラット35」の金利は、前月より0.03%引き上げて1.35%になりました。
変動金利は、固定金利と違い政策金利である短期金利に連動するので、2021年3月時点で住宅ローンの変動金利に影響はでていません。そのため「まだ金利が安いから」と変動金利を選ぶ方もいるのではないでしょうか。しかし、将来的に変動金利も上昇し始めたときには、すでに先に長期金利の影響を受けている固定金利も今以上の金利となっている可能性があります。もし「今後の長期金利が上昇する見込み」と想定するなら、金利水準が低いうちに「全期間固定金利」で金利を固定したほうが、今後の金利上昇リスクを抑えることができるでしょう。
将来の金利は、だれにも見通すことができません。しかし変動金利を選んだ場合は、金利上昇リスクが完済までつきまといます。そのため、契約時には返済計画をシミュレーションして「この金利水準までなら返済の継続性がある」と判断できるくらいにしておきたいですね。

新規で住宅ローンを組む場合は

どのタイミングで住宅ローンを組むとしても、将来の金利は予測できません。そのため「どの金利タイプがよかったのか」は結果論になってしまいます。しかし、今後のライフプランや家計の状況により、選ぶ基準は大きく変わってくるでしょう。例えばあと20年で定年退職を迎える予定の方は、定年退職と同時に住宅ローンも完済するよう、20年固定ローンで組むのも手です。
今後もずっと同じ家に住む予定で35年のローンを組む場合、変動金利を選択すると、返済期間が長ければ長いほど金利変動のリスクは上がります。これから何十年もローンを支払うことを考えて選択することは重要です。「現状の変動金利の低さを享受する」「固定金利で将来の金利上昇リスクを排除する」どちらを選ぶのかは、住宅ローンを組む方の考え次第で異なります。
金利上昇リスクを気にしながら過ごすよりは、固定金利型を選んで安心して過ごすことも返済の不安を減らす選択肢の一つですね。

すでに住宅ローンを組んでいる場合は

現在、全期間固定金利でローンを組んでいる方は、すでに完済までの金利が確定しており、今後の返済額が増えることはありません。そのため、今後金利が上がっても慌ててローンの借り換えなどする必要はないでしょう。逆に、固定金利期間選択型や変動金利でローンを組んでいる方は、今後の金利動向を十分注視しておくことが必要です。
特に変動金利の方は、返済開始から5年経過すると返済額が見直されます。元利均等返済の場合は、毎月の返済額が変わらなくても、返済月額に占める利息の割合が増えることになるでしょう。そうなると返済総額が予定より増えてしまう可能性もあるため、注意が必要です。

住宅ローンの金利はライフプランや自身のタイプによって選ぶ

住宅ローンの金利タイプを選ぶ際は、それぞれのメリット・デメリット、金利水準、ご自身の今後のライフプラン、家計状況などを複合的に見たうえで選びましょう。住宅ローン金利は、低金利状態が長く続いていますが、もし変動金利型を選んだ場合は、いつ金利が上昇しても対応できるように、金利情勢に敏感になっておくことが大切です。
金利上昇に対して普段から不安を感じやすい方は、固定金利型でローンを組んだほうが、精神的にも落ち着くのではないでしょうか。どの金利タイプを選ぶのがベストかは、人それぞれに異なります。途中でローンの借り換えすることも検討できますので、よくシミュレーションして自分に合ったローンが組めるといいですね。

執筆者:田端沙織

ファイナンシャル・プランナー

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