住宅ローン借り換えのメリット・デメリットとそのタイミングとは?
- 2022年4月20日
- 2024年7月9日
日本銀行のマイナス金利政策の解除により、低金利が続いてきた住宅ローンも金利が上がる可能性が生じてきました。
住宅ローンの借り換えは、返済総額や月々の返済額を減らせる可能性だけでなく、将来金利の上昇が見込まれる場合にそなえて、家計の負担増を回避できるかもしれません。
この記事では、住宅ローンの借り換えについての基礎知識、借り換えのタイミングや注意点を解説します。
目次
住宅ローンの借り換えとは?
住宅ローンの借り換えとは、別の金融機関で新たに住宅ローンを組み直し、返済中の住宅ローンを一括返済することです。
現在借入中の住宅ローンよりも低い金利の住宅ローンに借り換えると、毎月の返済額や支払利息を減らせます。
ただし、同じ金融機関での借り換えではできません。借り換えの際は、新たな金融機関での住宅ローンの審査や借入時の諸費用が必要になる点は留意しておきましょう。
借り換えの前提条件
前提条件として、住宅ローンの借り換えでは、現在借入中の住宅ローンの債務者を変更することはできません。現在単独で借り入れしているローンをペアローンに借り換えたり、ペアローンで借り入れしているローンを単独でのローンに借り換えたりすることはできません。
また、新たに借りる住宅ローンの返済期限は、借入中のローンの返済期限までとなります。一般的に、借り換えによって借入中のローンよりも返済期限を延ばすことはできません。
住宅ローン控除は、借り換えをしても引き続き利用ができますが、住宅ローン控除を適用できる期間に変更はありません。また借り換え後のローンの借入期間が10年未満の場合は、控除の対象外となります。
なお、借り換えの場合は今借り入れしているローンの返済実績があることにより、新規で借り入れする場合よりも審査が緩和されるケースがあります。
借入中のローン残高と借り換えに伴う諸費用の合計金額については通常借り換えでの審査となりますが、借り換えと同時にリフォームや建物の建て替えの資金の借り入れを希望する場合は、借り換え単体での緩和された審査ではない場合があることや、借り換え専用キャンペーンの金利等は適用にならない可能性があることも、頭に入れておきましょう。
住宅ローンの借り換えメリット
住宅ローンの借り換えには、以下のような3つのメリットがあります。
- 毎月の返済額や支払利息を減らせる
- 将来の金利上昇リスクにそなえおトクな金利で固定できる
- 新しい保険で保障を手厚くできる
では、具体的にどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
毎月の返済額や支払利息を減らせる
現在借入中の住宅ローンよりも低い金利の住宅ローンに借り換えることで、毎月の返済額や支払利息を減らせるので、家計の負担が軽減されます。
一般的に以下の3つの条件が当てはまる場合、借り換えのメリットがあると言われています。
- 借入中のローンと新たなローンの金利差が年1%以上ある
- 借入残高が1,000万円以上ある
- 残りの返済期間が10年以上ある
ただ、上記3つの条件がすべて当てはまらなくても、ローン残高が多く、残りの返済期間が長ければ、金利差が1%以上もなくても借り換えによるメリットがある場合もあります。
では、金利差が1%以上ないケースの事例で、どれくらい毎月の返済額や支払利息が変わるのか確認してみましょう。
では、金利差が1%以上ないケースの事例で、どれくらい毎月の返済額や支払利息が変わるのか確認してみましょう。
【借入残高3,000万円、返済期間30年のローンの借り換え事例】
借り換え前 | 借り換え後 | 差 | |
---|---|---|---|
金利 | 年1.0% | 年0.5% | ▲年0.5% |
毎月の返済額 | 96,491円 | 89,756円 | ▲6,735円 |
総返済額 | 34,736,908円 | 32,312,288円 | ▲2,424,620円 |
└うち支払利息額 | 4,736,908円 | 2,312,288円 | ▲2,424,620円 |
諸費用額 | - | 880,000円 | 880,000円 |
借り換えのメリット(*) | 1,544,620円 |
- 借り換え後の総返済額 + 諸費用額 - 借り換え前の総返済額
- 上記は元利均等返済、ボーナス返済なし、借入利率が期間中不変であることを前提に試算しております。
- 上記の諸費用は概算金額となります。
上記の試算によると、借り換え後は毎月の返済額を6,735円・支払利息を242万4,620円減らすことができ、諸費用88万円を差し引いても借り換えするメリットが約154万円あることがわかります。
ただし、借り換え効果は借入中のローンの内容によって異なります。住宅ローンの借り換えをするときは、事前にシミュレーションして借り換えメリットを確認しましょう。
将来の金利上昇リスクにそなえおトクな金利で固定できる
変動金利で住宅ローンを借入中の場合、将来金利の上昇リスクにそなえたい場合は、固定金利に変更して毎月の返済額を確定させることも方法です。
変動金利は、市場金利に連動して見直しがあるため、今後金利が上がることが想定される場合は、固定金利を選択して金利を確定させることも選択肢の一つです。
借入中のローンのまま、金利タイプを変動金利から固定金利に変更することができますが、契約内容によっては高い金利水準の固定金利になる場合があります。
その場合には、借り換えによりって、おトクな固定金利で金利上昇にそなえることができるかもしれません。
借入中のローン内容をよく確認したうえで、借り換えするメリットがあるか見極めていくことが大切です。
新しい保険で保障を手厚くできる
住宅ローンの借り換えでは、新しく加入する団体信用生命保険(以下、団信)や特定疾病保障保険によって保障を手厚くできます。
団信とは、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害状態になったとき、保険が適用されて残りの住宅ローンが弁済される保険です。ほとんどの金融機関では住宅ローンを契約する際、団信への加入が必須となっています。
死亡または高度障害の場合は団信で保障されますが、病気で今までどおり働けなくなると、収入の減少により住宅ローンの返済が家計の大きな負担となってしまいます。
そこで住宅ローン借入中の疾病にそなえ保障内容を充実させた保険が、特約付き団信または特定疾病保障保険です。
住宅ローン借入後に団信保険や保障を変更することはできませんが、新たなローンへの借り換えによって、保障を充実させることができます。
借り換えの金融機関を選ぶ際に、保険の内容もチェックしておきましょう。
住宅ローンの借り換えデメリット
住宅ローンの借り換えには、以下のようなデメリットもあるので注意が必要です。
- 借り換えに諸費用がかかる
- 審査のため必要書類をそろえる手間がかかる
- 審査が厳しくなる可能性がある
では、具体的なデメリットの内容を見ていきましょう。
借り換えに諸費用がかかる
住宅ローンの借り換えには諸費用がかかりますので、それも含めて効果があるか考えなければいけません。
【主な諸費用の一例】
印紙代 | 金額によって異なる(1,000万円超5,000万円以下の場合は2万円、電子契約時は不要) |
---|---|
事務手数料 | 借入金額 × 2.2%程度 |
抵当権設定登記の登録免許税 | 借入金額 × 0.4% |
司法書士報酬 | 100,000円程度 |
抵当権抹消登記費用 | 20,000円程度 |
借入中のローンの完済手数料 | 33,000円程度 |
金融機関や登記を担当する司法書士により諸費用の金額は変わります。
住宅ローンの借り換えを考える際は、諸費用も含めて借り換え効果を判断するようにしましょう。
審査のため必要書類をそろえる手間がかかる
住宅ローンを借り換えするには、新たな住宅ローンの審査のため必要書類をそろえなければなりません。
必要書類のうち証明書等は発行から3ヵ月以内などの有効期限がある場合があり、改めて準備する必要があります。
また、借り換えでは借入中のローンの返済実績の確認が必要になるケースが一般的です。
そのため、借り換えの際は、新規借入時に提出した書類に加えて、返済実績を確認する資料(借入中のローンの返済予定表・返済口座の通帳の写し等)の準備が必要になります。
そのため、借り換えの際は、新規借入時に提出した書類に加えて、返済実績を確認する資料(借入中のローンの返済予定表・返済口座の通帳の写し等)の準備が必要になります。
住宅ローンの借入は一度経験していることとはいえ、それらをあらためてそろえるのは少々手間がかかるかもしれません。
三菱UFJ銀行のHPでは、物件を選択により該当必要書類を確認できますので、ご参考ください。
三菱UFJ銀行のHPでは、物件を選択により該当必要書類を確認できますので、ご参考ください。
審査が厳しくなる可能性がある
借り換えには、新たな住宅ローンの審査が必要です。そのため借り入れ当初の年収や勤務状況によっては、借り換えができない場合があります。
また、団信はそれぞれのローンに付帯しているので、新たなローンの申込時に再度団信の告知が必要になります。ローンを組んだ当初より健康状態が悪化している場合は、新たなローンで団信に加入できない可能性もあります。
団信には、死亡または所定の高度障害状態時に家族に債務が残らないという大きな保障があります。毎月の返済額や支払利息が減るからといって、今加入している団信の保障をなくしてまでも借り換えする必要性があるのかはよく考える必要があります。
住宅ローンの借り換えのタイミングは?
住宅ローンの借り換えを検討するよいタイミングとして、次の3つが挙げられます。
- より低い金利に借り換えできるとき
- 金利タイプを変更したいとき
- 借入中のローンの固定期間が終了するとき
では、それぞれの内容を見ていきましょう。
より低い金利に借り換えできるとき
先述のとおり、住宅ローンの借り換えは、「現在の金利との差が1%以上・借入残高が1,000万円以上・残りの返済期間が10年以上」の場合に、一般的に借り換えする効果があると言われています。
ただし、借入残高が多かったり、残りの返済期間が長かったりする場合は、金利差が年1%以下でも十分なメリットが出ることもあります。
まずは、各金融機関で借り換えメリットがあるかどうかシミュレーションをしてみましょう。
金利タイプを変更したいとき
住宅ローンの金利タイプを変更したいときは、借り換えを検討する良いタイミングです。
金利を低くしたいなら固定金利から変動金利、金利変動リスクを抑えたいなら変動金利から固定金利への変更を検討してみましょう。
ただし、固定金利から変動金利への借り換えは通常は返済金額を減らせますが、将来の金利上昇によっては返済金額がふえる可能性もあります。
なお、金利タイプの変更は借り換えしなくても可能ですが、現在借入中の金融機関の金利よりも、他金融機関でおトクな固定金利に借り換えした方が、金利タイプ変更をするよりも低い固定金利で金利上昇リスクを抑えることができる可能性もあります。
まずは現在借入中のローンの内容をよく確認したうえで、他の金融機関への借り換えを検討してみましょう。
借入中のローンの固定期間が終了するとき
住宅ローンを固定金利で借入中の方は、固定期間が終了するタイミングで借り換えを検討することもおススメです。
固定期間終了後は、変動金利に移行するか、あるいは再度固定金利にするかを選択できますが、他金融機関で借り換えすることより、より低い金利で借入できる可能性があります。
まとめ
住宅ローンでは、契約するローンの金利によって、毎月の返済額や返済総額に大きな違いが出てきます。そのため、金利状況によっては、家計の負担を軽減するため、住宅ローンの借り換えを検討しても良いかもしれません。
ただし、借り換えをするかどうかは金利の低さだけで選ぶのではなく、将来の金利上昇リスクや保険の保障内容なども考慮して選択しましょう。
住宅ローンの借り換えでどのくらいメリットがあるのかは、実際にシミュレーションしてみなければわかりません。
金融機関によってはホームページから住宅ローンの借り換えシミュレーションができますので、事前に試算してみるのがおススメです。
金融機関によってはホームページから住宅ローンの借り換えシミュレーションができますので、事前に試算してみるのがおススメです。
執筆者:前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
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