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年金とは?公的年金・私的年金の種類や仕組みをわかりやすく解説

年金とは?公的年金・私的年金の種類や仕組みをわかりやすく解説
公開日:2022年8月22日
年金とは、年を取ったり健康状態に問題が生じたりしたときに、安心して暮らせるようお金を受け取れる仕組みです。
日本ではすべての人が万が一のリスクに備えられるよう、公的年金に加入しています。
65歳から年金がもらえるということは知っていても、年金制度自体についてはよく知らないまま保険料を支払っているという方もいるでしょう。
そこで今回は、ファイナンシャルプランナーが年金制度の仕組みや年金の種類について解説します。
また、老後豊かな生活を送るために、公的年金に加えて活用できる私的年金にも触れているので、ぜひ参考にしてください。

日本の年金制度の仕組み

日本の年金制度の仕組み
年金の制度や種類について理解するために、まずは日本の年金制度の仕組みについて見ていきましょう。

日本の年金制度は3階建て

年金制度の仕組み〇現役世代は全て国民年金の被保険者となり、高齢期となれば、基礎年金の給付を受ける。〇民間サラリーマンや公務員等は、これに加え、厚生年金保険に加入し、基礎年金の上乗せとして報酬比例年金の給付を受ける。〇また、希望する者は、iDeCo(個人型確定拠出年金)等の私的年金に任意で加入し、さらに上乗せの給付を受けることができる。
  • 厚生労働省「年金制度の仕組み」(https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_03.html)
日本の年金制度は、3階建ての制度です。1階部分は20歳以上60歳未満の国民全員が加入する国民年金(基礎年金)で、そのうえに被保険者の区分によって加入できる厚生年金や国民年金基金の2階部分があります。
さらにそのうえに、会社や個人で任意加入する確定給付企業年金や確定拠出年金等の3階部分があるという構造です。会社員の場合、3階部分まで会社で加入しているという方もいるでしょう。
このうち、対象者が全員加入する年金は公的年金、そのほかの任意で加入できる年金は私的年金です。公的年金に加えて私的年金にも加入することで年金額を上乗せでき、より手厚い備えができます。

公的年金(国民年金・厚生年金)の被保険者区分

1階部分の国民年金は、働き方やライフスタイルによって3つの被保険者区分があり、それぞれ保険料や納付方法が異なります。
被保険者区分 職業 保険料納付方法 保険料負担
第1号被保険者 自営業者・フリーランス・学生等 自身で納付 全額負担
第2号被保険者 会社員・公務員等厚生年金加入者 勤務先が納付 労使折半
第3号被保険者 専業主婦・夫(第2号被保険者の被扶養配偶者) - 配偶者加入の年金制度が負担(本人負担なし)

公的年金は3種類ある!

公的年金は3種類ある!
公的年金というと、65歳になってもらえる老齢年金を思い浮かべる方が多いでしょう。受け取れる公的年金は老齢年金のほかに、障害年金と遺族年金があり、セーフティネットの役割を果たしています。それぞれどんなときの備えとなるのか、年金の概要について見ていきましょう。

老齢年金

老齢年金は、老後の生活資金支えるための年金です。原則65歳より生涯受給でき(60歳〜75歳まで繰上げ/繰り下げが可能)、長生きする間にお金が足りなくなってしまうリスクに備えられます。
老齢年金の受給には、保険料納付済期間と保険料免除期間等を合計した受給資格期間が10年以上必要です。
以前は25年の資格期間が必要でしたが、10年に短縮されより多くの人が年金を受給できるようになりました。
老齢年金には老齢基礎年金と老齢厚生年金があります。国民年金のみに加入していた人は老齢基礎年金を、厚生年金にも加入していたことがある人は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取ることができます。
老齢厚生年金は、厚生年金に1ヵ月でも加入実績があれば受給可能です。
老齢基礎年金は定額制で、年金加入期間によって年金額が決定します。20歳より60歳まで40年間(480月)保険料を満額納付している場合、年金額は年間78万900円×改定率(50円未満の端数は切り捨て、50円以上100円未満の端数は100円に切り上げ)です。
改定率とは、賃金や物価の水準に応じて毎年改定される率で、令和4年度の改定率は-0.4%、満額は77万8,000円となっています。
改定率や年金額は毎年厚生労働省や日本年金機構から発表されているので、確認してみてください。
一方、老齢厚生年金は報酬比例制で、過去の報酬額や加入期間で年金額が決まります。
なお、昭和36年4月1日(女性は昭和41年4月1日)以前に生まれた方で、厚生年金または共済組合等に1年以上加入していた方は、特別支給の老齢厚生年金の受給対象です。生年月日に応じた年齢(60歳〜64歳)から65歳になるまで特別支給分を受け取れます。

障害年金

障害年金は、病気やケガ等で障害を負った場合に、生活を支えるために支給される年金です。仕事や生活が大きく制限される状態になっても、安心して生活が送れるように保障されています。
以下の保険料納付要件を満たしていれば、障害の程度に基づいた年金が支給されます。現役世代の人も対象です。
  • 初診日の前々月まで、加入期間の3分の2以上の保険料納付(または免除)
  • 初診日に65歳未満であり、前々月までの1年間に保険料の未納がないこと
つまり、国民年金保険料を納付していないと、万が一の際に障害年金を受け取れなくなるおそれもあるため、十分に注意してください。保険料の支払いが難しい場合には、そのままにせず猶予や免除の制度を利用しましょう。
障害年金にも障害基礎年金と障害厚生年金があります。障害で初めて受診した日に国民年金に加入していた場合は障害基礎年金(1級〜2級)を、厚生年金に加入していた場合には障害厚生年金(1級〜3級)を受給可能です。
なお、厚生年金では、初診日から5年以内に病気やケガが治り、障害厚生年金の認定基準よりも軽い障害が残った場合には、障害手当金(一時金)が支給されます。

遺族年金

遺族年金は、国民年金・厚生年金の被保険者が亡くなったあと、被保険者に生計を支えられていた遺族へ支給される年金です。のこされた子どもや配偶者の生活を保障します。
遺族年金にも、国民年金加入者の遺族が受け取れる遺族基礎年金と、厚生年金加入者の遺族が受け取れる遺族厚生年金があり、それぞれ受給対象者の要件が異なります。
遺族基礎年金は、子のある配偶者と子が対象で、遺族厚生年金は、妻や子・夫・父母・孫・祖父母のうち優先順位の高い人が対象です(*)。
  • 子・孫は18歳となる年度の3月31日まで、もしくは20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人。夫・父母・祖父母は死亡当時に55歳以上である人に限られます。

私的年金の種類(1)企業が主体の年金制度

私的年金の種類(1)企業が主体の年金制度
私的年金のうち、まず企業が主体となって運営する企業年金制度について解説します。企業年金は、勤務先の福利厚生の一環で、従業員の老後の生活を保障するために、退職一時金や年金として給付される仕組みです。

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金とは、労使により給付額があらかじめ決められている年金制度です。企業が掛金の拠出や運用・給付を担います。
確定給付企業年金は、資金が外部の生命保険会社や信託銀行(規約型)、あるいは企業基金年金(基金型)に保全されているため、会社が倒産しても受け取れなくなることはありません。ただし、運用で不足が出た場合や、著しい業績の悪化が見られた場合には減額のリスクがあります。
会社を中途退職した場合には、脱退一時金の受け取りや、確定拠出年金への資産の持ち運びが可能です。
給付は老齢給付のほか、企業によっては障害給付・遺族給付を受けられるものもあります。

企業型確定拠出年金(企業型DC)

企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業が掛金を拠出し加入者本人が運用を行う年金制度です。給付金額は運用成績次第で変動します。
会社に企業型DC制度があれば加入となるケースが一般的ですが、選択制DCという加入を従業員自身が選択できる制度も増えてきました。
企業型DCは、運用益に税金がかからず、受取時にも優遇があるため、効率的に老後資産の形成が可能です。退職の際には他のDCや個人型に持ち運べるポータビリティ制度が活用できます。
企業型DCの給付は原則60歳以降ですが、障害を負った場合には60歳を待たずに給付を受けられる障害給付があります。なお、死亡時には、年金資産が死亡一時金として遺族に給付されます。

年金払い退職給付

年金払い退職給付は、公務員を対象とした企業年金に相当する制度です。廃止となった、公務員の共済年金における職域加算(3階部分)を補填する目的として設定されました。保険料は労使折半の積み立て方式です。
給付は退職年金・公務障害年金・公務遺族年金の3種類があります。退職年金は、有期年金と終身年金に分けて受け取れます。

私的年金の種類(2)個人が任意で加入する年金制度

私的年金の種類(2)個人が任意で加入する年金制度
私的年金には、企業の制度のほか、個人で加入できる制度もあります。
個人で加入できる私的年金は、厚生年金や企業年金の加入対象とならない自営業やフリーランスの方が年金資産を増やしたい場合に有効です。また、会社員・公務員が上乗せできるものもあるので、加入中の年金のみでは不安がある方はぜひチェックしてみてください。

国民年金基金

国民年金基金は、国民年金第1号被保険者が任意で加入できる、老齢基礎年金の公的な上乗せ制度です。
自営業者やフリーランス等の第1号被保険者は、厚生年金のある会社員と受け取れる年金額に大きな差があります。国民年金基金は、その差を解消するためのものです。掛金は全額所得控除され、受取時にも公的年金等控除の対象となる税制優遇が受けられます。
国民年金基金は、最初の1口を終身年金とする口数制で、2口目以降は所定の期間年金を受け取れる確定年金を組み合わせる仕組みです。また、遺族が一時金を受け取れる保証期間の有無を選べる等柔軟な設計ができます。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、国民年金加入者が個人で加入できる確定拠出年金です。
60歳まで資金を動かせませんが、拠出・運用・給付いずれも税制優遇があり、効率的に老後資産を形成できます。運用方法は自分で選択し、運用成績により受け取れる金額が変わる点は企業型DCと同様です。
iDeCoに拠出できる金額の上限は、ほかの年金の加入状況によって異なります。
【第1号被保険者】
月額6万8,000円(国民年金基金と合算)
【第2号被保険者】
確定給付年金加入者・公務等 月額1万2,000円
企業型DC加入者 月額2万円
企業年金未加入者 月額2万3,000円
【第3号被保険者】
月額2万3,000円
iDeCoは会社員も加入可能ですが、企業型DCの加入者は、会社が規約で認め事業主掛金の上限を引き下げる必要がある等、現実的には利用が困難でした。しかし、2022年10月から施行される確定拠出年金改正法で制限が撤廃され、会社の拠出分に個人負担をプラスするマッチング拠出を利用していなければ加入可能となり、活用しやすくなります。

個人年金保険

個人年金保険は、公的年金の補完を目的とした民間の保険商品です。加入者が払い込んだ掛金を原資として、受取開始年齢より年金や一時金が給付されます。
ほかの年金制度の加入状況に関係なく利用でき、商品構成や払込期間等の自由度が高いことが特徴です。
また、掛金は生命保険料控除の対象となるため、税制メリットも活用できます。条件を満たした個人年金保険では個人年金保険料控除が適用できるため、ほかの生命保険に加入している人でも控除枠の効率的な活用が可能です。
個人年金保険には、契約時に年金額が確定する定額年金と運用実績によって年金額が変動する変額年金があり、どちらもメリット・デメリットがあります。
年金額が確定しているとインフレに弱くなりますが、変額年金の商品は受取額が払い込んだ元本を下回ることがあるため注意しましょう。
なお、中途解約の場合も、元本を大きく下回るケースがあるので、無理のない範囲での加入をおすすめします。
公的年金や企業年金だけでは将来の資産に不安がある場合、これらの私的年金の活用が有効です。
その他、年金制度ではありませんが、運用益非課税の税制優遇を受けながら積立投資ができるつみたてNISAも補完的に活用されています。年金の加入状況に関わらず利用でき、効率的な資産形成に役立つので、ぜひ併せてチェックしてみてください。

老後に備えるには私的年金の活用も必要

老後に備えるには私的年金の活用も必要
老後の備えには公的年金制度があるものの、公的年金のみでは資金が不足することが懸念されています。
総務省の「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)」によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の消費支出の平均は22万4,390円です。
一方、厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和2年における国民年金の受給額の平均は5万6,252円、厚生年金受給額の平均は14万6,145円でした。
世帯の家計の状態や年金の加入状況によっては、年金額は十分とはいえません。レジャーを楽しむ等、ゆとりのある生活を送ろうとするなら、さらなる余裕が望まれるところではないでしょうか。
しかし、公的年金は現役世代の支払う保険料を原資とする賦課方式のため、少子高齢化による現役世代の減少から、今後自らの保険料負担が増える可能性もあります。財政悪化による増税や社会保障の削減等も考えられるでしょう。
そのため、公的年金だけに頼らず、自身で老後のための資産を築いておくことが重要です。資産形成には預貯金や資産運用ももちろん有効ですが、私的年金を活用すればより計画的・効率的に資産形成を進められます。
不安なく老後の生活を迎えるために、ぜひ私的年金をご活用ください。
  • 総務省「家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年) 家計の概要 Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支」
  • 厚生労働省「令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」

まとめ

年金制度は3階建てで、加入義務のある公的年金と、公的年金に上乗せできる私的年金があります。安心して老後の生活を送るには、公的年金に併せて私的年金で年金資産を増やすことが有効です。
現在のご自身の年金加入状況や内容を理解し、必要に応じて加入可能な私的年金を検討してみてはいかがでしょうか。
記事提供:トランス・コスモス株式会社
執筆者保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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