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iDeCo(イデコ)の始め方とは?加入するときの注意点や必要なものを解説

iDeCo(イデコ)の始め方とは?加入するときの注意点や必要なものを解説
公開日:2022年8月2日
更新日:2023年3月16日

人生100年時代が到来し、老後資金の準備を考える人が増えています。

2022年5月から原則65歳まで加入できるようになったことで、税制メリットの大きいiDeCo(個人型確定拠出年金)が注目されています。しかし「どの金融機関にすればよいか」「手続きが大変そう」と一歩を踏み出せずにいる方はめずらしくありません。

加入条件や申し込みの流れなど、iDeCoを始める前に知っておきたいことを確認しておけば、不安なくiDeCoの運用を始められます。

まずはiDeCoの加入条件と掛金の上限金額を確認しよう!

iDeCoの加入は任意で、自分で掛金や運用方法を選びます。基本的に20歳以上65歳未満のすべての人が加入できますが、加入区分によって拠出できる掛金が異なります。

まずはiDeCoの概要と加入条件、3つの税優遇制度、職業による掛金の上限の違いを確認しておきましょう。

iDeCoの概要と3つの税優遇制度

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、公的年金にプラスして給付を受けられる私的年金制度の1つです。自分で商品を選択し積立運用を行うことで、将来は年金や一時金として掛金による運用成果を受け取ることができます。

iDeCoは月々5,000円以上1,000円単位で65歳まで積み立てできます。受取額は拠出した掛金の合計額や運用成績により一人ひとり異なり、60歳~75歳の間で一時金もしくは年金として受け取ります。

iDeCoには、次の3つの税優遇制度があります。

  1. 掛金は全額が所得控除。「小規模企業共済等掛金控除」の対象となり、年末調整や確定申告をすることで課税所得額から差し引かれ、所得税や住民税が軽減される
  2. 運用益が非課税。運用による利益(源泉分離課税20.315%)が非課税になる
  3. 受け取るときも税制優遇。年金として受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金の場合は「退職所得控除」の対象となる

iDeCoのメリットは運用益が非課税になるだけではありません。掛金全額が所得控除の対象となり、受取時も控除を受けられます。

iDeCoの加入条件

iDeCoへの加入を考えている人は、加入資格の条件に該当するか確認してみましょう。

iDeCoの加入資格

区分 加入対象となる方 加入対象とならない方
国民年金の第1号被保険者 20歳以上60歳未満の自営業者とその家族、フリーランス、学生など ■農業者年金の被保険者
■国民年金の保険料納付を免除(一部免除を含む)されている方(ただし、障害基礎年金を受給されている方等は加入できます)
国民年金の第2号被保険者 厚生年金の被保険者(会社員、公務員)(*1) お勤め先で加入する企業型確定拠出年金で
■マッチング拠出をしている方
■各月拠出でない方
国民年金の第3号被保険者 厚生年金の被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者
国民年金の任意加入被保険者 国民年金に任意で加入した方・60歳以上65歳未満で、国民年金の保険料の納付済期間が480月に達していない方・20歳以上65歳未満の海外居住者で、国民年金の保険料の納付済期間が480月に達していない方
  • 65歳以上の厚生年金被保険者で加入期間が120月以上ある方は国民年金の第2号被保険者とはなりません。
2022年10月からは、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している会社員もiDeCoを併用できるようになりました。会社が拠出する掛金に加えて、従業員が掛金を上乗せできる企業型DCのマッチング拠出を導入している会社の社員は、iDeCoかマッチング拠出のどちらか1つを選択することになります。
iDeCoの加入対象は広がりましたが、国民年金保険料の免除または猶予を受けている人、公的年金の受給をしている人、iDeCoの給付を一度でも受給された人は、加入できません。

iDeCo掛金の上限額は就労状況によって異なる

iDeCoの掛金の上限額は自営業、会社員・公務員、または専業主婦(夫)かで異なります。掛金の上限がいくらになるかは、下図を参考に把握しておきましょう。

iDeCoの拠出限度額について

加入対象者 拠出限度額
国民年金の第1号被保険者
任意加入被保険者
自営業者とその家族、自由業、学生等(*1) 月額6.8万円(*2)
(年額81.6万円)
国民年金の第2号被保険者 企業年金がない会社員 月額2.3万円
(年額27.6万円)
企業型DC(*3)のみに加入している会社員 月額2.0万円
(年額24.0万円)
DB(*4)と企業型DC(*3)に加入している会社員 月額1.2万円
(年額14.4万円)
DB(*4)のみ加入している会社員
公務員等共済組合員
国民年金の第3号被保険者 専業主婦(夫) 月額2.3万円
(年額27.6万円)
  • 農業者年金の被保険者、国民年金保険料の免除又は猶予を受けている方は加入できません。(ただし、障害基礎年金を受給している方等は加入できます)
  • 国民年金基金の掛金または国民年金の付加保険料と合算した金額です。
  • 企業型確定拠出年金のことを指します。
  • 確定給付企業年金(DB)、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員共済のことを指します。

なお、2024年の法改正では公務員や確定給付企業年金(DB)加入会社員の掛金の限度額引き上げが予定されています。機会を逃さず、上手にiDeCoを活用していきましょう。

iDeCoの加入方法などに関するくわしい情報は、こちらの記事をご覧ください。

iDeCoを始める前に確認したい注意点やポイント

加入資格を確認したら、続いて確定拠出年金の受取時期、税優遇、手数料の3つを確認しておきましょう。

60歳まで引出しできない

iDeCoは、原則60歳まで引出しできません。また、60歳から確定拠出年金を受け取るには、10年以上の加入期間(企業型DC、iDeCoに加入していた期間の合計)が必要です。加入期間が10年に満たない場合は、受取開始年齢が61歳以降になります。

加入期間と受取開始年齢は以下のとおりです。

■加入期間と受取開始年齢

加入期間 受取開始年齢
10年以上 60歳
8年以上10年未満 61歳
6年以上8年未満 62歳
4年以上6年未満 63歳
2年以上4年未満 64歳
1ヵ月以上2年未満 65歳

なお、60歳以上で新規加入した場合、加入から5年経過後に受給可能となります。

課税所得がない人は掛金の所得控除は受けられない

iDeCoに加入する税制メリットの1つは「掛金全額」を課税所得から控除できることです。課税所得からiDeCoの拠出額を控除すると所得税や住民税を軽減できるため、課税所得がある人にとって、この税制メリットは魅力的に映ることでしょう。

しかし、専業主婦(夫)や無職の人などは課税所得がない、あるいは少ないので所得税と住民税軽減の恩恵を十分に受けられるとはいえません。一方で、「運用益非課税」と受取時の「公的年金等控除」「退職所得控除」は課税所得に関係なく受けられます。

iDeCoにはさまざまな税制メリットがあり、老後資金の準備に適した制度ですが人によっては、NISAやつみたてNISAなどiDeCo以外の非課税制度のほうが向いていることもあります。自分自身の現状やライフプランと照らし合わせて、iDeCo以外の制度も選択肢に入れて検討してみましょう。

手数料や維持費がかかる

iDeCoは口座開設時と運用期間中に以下のような手数料や維持費がかかる点に注意してください。

国民年金基金連合会納付金 iDeCoを始める際に1回だけかかる金額(一律2,829円)
運営管理機関手数料 運用期間中に毎月かかる費用(金融機関によって金額が異なります)
運用管理手数料(信託報酬) 運用商品ごとに必要な手数料(運用商品によって異なります)

運営管理機関手数料と運用管理手数料などの維持費は運用している間かかるものです。維持費は長期の運用成績に影響しますので、金融機関や運用商品を選ぶ際は考慮に入れましょう。

金融機関選び3つのポイント

金融機関を選ぶポイントは「商品」「手数料」「サービス」の3つです。

商品

iDeCoの対象商品は、大きく分けると「定期預金」や「保険」などの元本確保型と、「投資信託」があります。金融機関ごとに取り扱っている商品は異なりますので、運用したい商品があるか比較してみましょう。

運営管理機関手数料

運営管理機関手数料は金融機関ごとに異なります。月単位では数十円から数百円の差ですが、長期で見ると大きな差が生まれます。複数の金融機関で比較してみてください。

サービス

金融機関ごとに資料請求や手続方法などのサービスに特徴があります。自分に合ったサービスを提供している金融機関を選びましょう。オンラインで手続きを完結できる金融機関や、口座開設を窓口やコールセンターでサポートしてくれる金融機関などさまざまです。

iDeCoは、預金口座を持っていない金融機関でも手続きできます。金融機関は取扱商品、運用期間中の手数料、サービスの3つの観点から選んでみましょう。

iDeCoを始める際に用意するもの一覧

iDeCoを始める際に用意するもの一覧

iDeCoの加入申込書は金融機関の公式サイトで取り寄せできます。そのほかにも必要なものがありますので、あらかじめ確認しておきましょう。

iDeCoを申し込む際の必要書類

iDeCoの申し込みには、以下の書類が必要です。

  • 個人型年金加入申出書
  • 事業主証明書(会社員と公務員のみ)
  • 本人確認書類の写し(インターネットバンキングはID/パスワードにより不要、書面申込の場合は自署があれば不要)
  • 年金手帳や基礎年金番号通知書
  • 掛金の引き落としをする銀行の口座情報
  • 銀行届出印(書面申込の場合のみ)

事業主証明書とは、会社員と公務員が提出する書類です。次の項でくわしく解説します。

会社員・公務員は勤務先の証明書が必要

会社員と公務員の加入に必要な「事業主証明書」とは、正式には「事業所登録申請書兼第2号加入者に係る事業主の証明書」といいます。申込書一式を入手したら勤務先に「事業主証明書」の記入を依頼します。依頼から受取りまでに時間がかかることもありますので、早めに依頼しておくと安心です。

運用割合を決める

金融機関によっては加入申込時にこれから運用する商品を指定します。拠出額に対してどの金融商品にいくら割り振るかを指定し、1つの商品だけで運用するなら100%と記入します。複数の商品を運用するなら、それぞれの商品の配分を指定してください。

なお、運用商品や配分の割合は、加入後も変更できます。必要に応じて定期的に見直すと良いでしょう。ただし、変更できる回数は金融機関ごとに異なります。

iDeCo申し込みから運用までの流れ

iDeCoの加入申込から運用開始までの流れを確認しておきましょう。申込書類を金融機関に送付しても、すぐに運用が始まるわけではありません。書類が受理されたタイミング次第では、最初の引き落としが数ヵ月先になることもあります。その年の所得控除をフルに利用したい場合は、できるだけ早めに申し込んでおくと良いでしょう。

iDeCoの始め方

iDeCoの申し込みから運用までの流れは以下のとおりです。申し込み書類を入手したらすぐ返送できるように、拠出額、商品、配分はあらかじめ考えておきましょう。
また、金融機関によってはWebで申し込みが完結します。自分に合った方法でお手続きしましょう。

手順1. 金融機関で申込書類を取り寄せる

金融機関を決めたらiDeCo加入申込に必要な書類一式を取り寄せます。

申込書類は、公式ホームページから取り寄せできる金融機関もあれば、窓口でもらえる金融機関もあります。加入申込の書類を返送後、国民年金基金連合会での審査は1~2ヵ月かかります。

申込書類は、記入漏れや不備があると審査ができず、手続きにも時間がかかってしまいます。間違いのないよう注意して記入作成しましょう。加入が受理されると、通知書類が自宅に郵送され、運用できるようになります。

手順2. 運用商品を選ぶ

申込時に運用商品を指定する金融機関の場合は、運用額と商品を指定してください。運用商品ごとに特徴が異なりますので、理解したうえで商品を選びましょう。

手順3. 申込書類一式を返送する

「個人型年金加入申出書」などの必要書類に記入します。掛金の金額や引落口座もこのタイミングで指定します。会社員や公務員が必要な「事業主証明書」は、申込書類が届いてすぐに勤務先の担当部署に記入を依頼しておくと手続きがスムーズです。必要書類がそろったことを確認して、金融機関に返送します。

手順4. 手続き完了の通知を受ける

手続きが済むと、「手続きの完了通知」と専用ページにログインするためのIDやパスワードが郵送で届きます。

手順5. 初期設定をする

IDやパスワードで、金融機関のiDeCo加入者専用サイトにログインしてみましょう。金融機関によっては、ログイン後に運用商品の配分を入力するケースもあります。

手順6.掛金の積み立てスタート

指定した銀行口座から掛金が引き落とされると、iDeCoの運用がスタートします。

手続きでつまずいた時はすぐに金融機関に確認しよう

iDeCo加入の手続きは、複雑でわかりにくいと感じられるかもしれません。

書類に記入する際は、年金手帳や掛金の引落口座の通帳などを手元にそろえておくとスムーズに記入できます。書類に不備があると書類が返却されてしまいますので、わからないことがあれば遠慮なく金融機関のコールセンターなどに相談するのがおススメです。

まとめ

iDeCoの加入申し込みから運用までには、時間がかかります。iDeCoは早く始めれば運用額が増え、得られる税制メリットも大きい制度です。金融機関の特徴を押さえ、手続きを進めましょう。わからないことがあればすぐ金融機関に相談するのがおススメです。より豊かな将来のためにぜひ一歩行動してみてください。

執筆者:井上 美鈴(いのうえ みすず)

執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 AFP認定者、一種外務員

※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。

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三菱UFJ銀行でiDeCoを始める方法

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ご注意事項

iDeCoをお申し込みいただく前に、下記についてご確認ください。

  1. 原則、60歳まで引き出し(中途解約)ができません
    • 脱退一時金を受け取れるのは一定の要件を満たす方に限られます。
  2. ご本人の判断で商品を選択し運用する自己責任の年金制度です
    • 確定拠出年金制度では、ご加入されるご本人が自らのご判断で、商品を選択し運用を行いますので、運用結果によっては受取額が掛金総額を下回ることがあります。
    • 当行から特定の運用商品の推奨はできません。
  3. 運用商品の主なリスクについて
    • 預金は元本確保型の確定利回り商品です。預金は預金保険制度の対象となります。
    • 当行のiDeCoで取り扱う保険は元本確保型商品です。ただし、運用商品を変更する目的で積立金を取り崩す場合は、市中金利と残存年数等に応じて解約控除が適用されるため、結果として受取金額が元本を下回る場合があります。
    • 投資信託は価格変動商品です。預金ではなく、預金保険制度の対象ではありません。運用実績は市場環境等により変動し、元本保証はありません。また、当行でお取り扱いする投資信託は、投資者保護基金の対象ではありません。
    • 預金、保険および投資信託は異なる商品であり、それぞれリスクの種類や大きさは異なります。
  4. 初回手続き時、運用時、給付時等で、各種手数料がかかります
    • iDeCoには、初回手続き手数料・毎月の事務手数料・資産管理手数料・運営管理機関手数料・給付事務手数料等がかかります。
    • 手数料は、加入者となられる方は毎月の掛金から、運用指図者となられる方は積立金から控除されます。年金でお受け取りになられる方は給付額から控除されます。
  5. 60歳になっても受け取れない場合があります
    • 50歳以上60歳未満で加入した場合等、60歳時点で通算加入者等期間(*)が10年に満たない場合は、受給可能年齢が引き上げられます。
    • 60歳以上で新規加入した場合、加入から5年経過後に受給可能となります。
      • 通算加入者等期間は、iDeCoおよび企業型DCにおける加入者・運用指図者の期間の合算となります。

株式会社 三菱UFJ銀行

(2023年3月16日現在)