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iDeCo(イデコ)の所得控除はいくらになる?税制優遇の効果や仕組みについて解説

iDeCo(イデコ)の所得控除はいくらになる?税制優遇の効果や仕組みについて解説
公開日:2022年7月14日
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、国が用意した私的年金制度です。
個人が老後資金を作りやすいようにと、さまざまな税制優遇措置が用意されているのが特徴で、たとえば毎月の掛金が全額所得控除となるのもそのひとつです。手続きすればその年の所得税と、翌年の住民税が軽減されます。
この記事では、iDeCo所得控除の効果や手続きについて解説します。

iDeCoの税制優遇とは?

iDeCoの3つの税制優遇

iDeCoで税制優遇の恩恵を受けられるタイミングは、次の3つです。
  1. 掛金を積み立てるとき
  2. 積み立てたお金を運用しているとき
  3. 将来、資産を受け取るとき

まず、それぞれの優遇措置の内容と、どんなメリットがあるのかを見ていきましょう。

1. 掛金を積み立てるとき 〜 掛金が全額所得控除になる

iDeCoでは、毎月自分で決めた掛金を拠出(積み立て)します。この掛金は、全額をその年の所得控除として使えます。所得控除とは、課税対象となる所得を減らせる控除のことをいいます。仮に、毎月20,000円ずつ拠出する場合、年間240,000円を課税される所得から引くことができる、ということです。
年末調整や確定申告で手続きし、課税所得を減らすことで、その年の所得税と、翌年分の住民税を軽減することができます。

2. 積み立てたお金を運用しているとき 〜 利息・運用益が非課税

通常、預金や投資信託、ETFなどの金融商品で利益が出た場合には、約20%(所得税及び復興特別所得税15.315%、および住民税5%)の税金がかかります。しかし、iDeCoで利益が出た場合は非課税です。利益に税金がかからないため、同じ内容でも通常の運用より多くの資産を手元に残すことができます。

3. 将来、資産を受け取るとき 〜 所得控除がある

将来、積み立てた資産を受け取る際、通常は収入とみなされて課税対象となります。
しかし、iDeCoでは一時金で受け取る場合は「退職所得控除」、年金であれば「公的年金等控除」という税制優遇措置が適用されます。どちらも、一定額までは非課税で受け取れるので、同じ資産でも“手取り”を増やすことが可能です。通常の預金や投資では、こうした税制優遇措置はありません。
iDeCoは、資産を60歳以降まで引き出しできないなどの制約はありますが、老後資金を作りたい人にとって、税金面でとても有利な制度といえるのです。
iDeCoについて、もっとくわしく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

iDeCoの所得控除の効果はいくら?

本記事では、ご紹介した3つの税制優遇措置のうち、1つ目の「掛金を積み立てているときは、その掛金が全額所得控除になる」点について、くわしく解説していきます。
所得控除は、毎年の年末調整や確定申告で申請します。申請すると、その年の所得税と、翌年の住民税が軽減されるのは、前述のとおりです。つまり、積み立てを行っている間は、毎年の税金を安くできるということになります。10年、20年、30年と、長く積み立てを行うほど、トータルで受け取れる恩恵も大きくなる、というわけです。
ここで気になるのは、果たしてどのぐらいの税金が軽減されるのかということです。所得税については、ご自身の「課税所得」によって税率が決まっており、この税率が軽減される割合となります。具体的に見ていきましょう。

iDeCoに加入した場合の所得税・住民税の負担軽減額

所得税の税率は、課税所得によって次のように決まっています。なお、ご自身の課税所得を知りたい場合、会社員の方なら源泉徴収票を見ながら、次の計算式を使うと出せます。
課税所得 = 給与所得控除後の金額 – 所得控除額の合計額
所得税の速算表
課税される所得金額 税率
1,000円から1,949,000円まで 5%
1,950,000円から3,299,000円まで 10%
3,300,000円から6,949,000円まで 20%
6,950,000円から8,999,000円まで 23%
9,000,000円から17,999,000円まで 33%
18,000,000円から39,999,000円まで 40%
40,000,000円以上 45%
出典:国税庁「No.2260 所得税の税率
あくまで目安ですが、年収500万円で扶養家族がいない場合、所得税率は10%です(基準となる所得税額に対し、2037年までは復興特別所得税として2.1%課税)。なお、住民税は課税所得に関係なく、一律10%となります。
単純計算で、所得税率10%、住民税10%の人が、年間200,000円の掛金を拠出した場合、軽減できる税金の目安は、合計40,000円となります(復興特別所得税は考慮していません)。
所得税 = 200,000円 × 10% = 20,000円
住民税 = 200,000円 × 10% = 20,000円

課税所得が多い人ほど、iDeCoの所得控除のメリットを享受できる

住民税は、一律10%で変わりませんが、所得税率は、課税所得が多い人ほど高くなる累進課税です。このため、年間の掛金が同じ200,000円でも、所得税率が20%の人と、10%の人とでは軽減される税額も変わってきます。
所得税率20%の人 = 200,000円 × 20% = 40,000円
所得税率10%の人 = 200,000円 × 10% = 20,000円
つまり、課税所得が多く、所得税率が高い人ほど、iDeCoの所得控除の恩恵もより多くなるというわけです(復興特別所得税は考慮していません)。

職種によって所得控除に使える金額の上限には差がある

所得控除に使えるのは、その年に拠出した掛金です。
iDeCoでは、拠出した掛金の全額が所得控除の対象ですので、できるだけたくさん積み立てしたほうが、所得控除に使える金額も多くなります。つまり、軽減される税金も多くなるというわけです。
しかし、好きなだけ積み立てられるわけではなく、iDeCoは毎月拠出できる金額に上限があります。上限額は働き方や、職場の企業年金・企業型DCへの加入状況によって変わります。
たとえば、会社員(企業年金や企業型DCがない)は、月23,000円が上限額です。フリーランスや自営業者は、68,000円(国民年金基金の掛金・国民年金の付加保険料との合計)が上限となります。それぞれ、所得控除に使える年間の掛金(上限)は、次のとおりです。
<掛金の上限額>
  毎月の掛金上限 所得控除額
(年間)
公務員・会社員
(確定給付企業年金に加入)
12,000円 144,000円
会社員
(企業型確定拠出年金にのみ加入)
20,000円 240,000円
会社員
(企業年金がない)
23,000円 276,000円
専業主婦(夫) 23,000円 276,000円
フリーランス・自営業 68,000円 816,000円
会社員はこれまで、企業年金の規約によってはiDeCoに加入するのが難しい面がありました。しかし、2022年10月から緩和され、加入しやすくなります。加入を検討したいが、ご自身がどの区分に当てはまるか分からない場合は、職場に確認してみましょう。

掛金によって、軽減される税金はどのぐらい変わる?

掛金が異なれば、同じ課税所得の人でも軽減される税金は変わります。企業年金のない会社員が、上限額いっぱいの23,000円まで積み立てた場合と、15,000円で積み立てた場合とでは、税制メリットはどのくらい違うのかシミュレーションしてみましょう。
税率はともに、所得税率10%、住民税率10%とします(*1) 会社員
月額掛金 23,000円 15,000円
年間の掛金(所得控除額) 276,000円 180,000円
所得税の税制メリット 28,100円 18,300円
住民税の税制メリット 27,600円 18,000円
税制メリットの合計 55,700円 36,300円
(*1)出典:株式会社NTTデータ・エービック「iDeCoシミュレーション
今後、法改正などの可能性があります。記載の数字は実際の金額を保証するものではありません。
フリーランス・自営業は、積み立てる掛金が多いので、税制メリットも大きくなります。なお、iDeCoでは必ずしも上限額まで積み立てる必要はありません。
掛金の額は年に1回変更することができるので、始めは少しずつ積み立て、家計に余裕ができたら変更することも可能です。ただし、遡って過去分の掛金を追加することはできません。

軽減される税金は、自分が本来納める税額が上限

税制メリットは、あくまでも「税金の軽減」です。ですので、税制メリットがいくら大きくても、軽減できるのは、自分が本来納めるべき税額が最大となります。分かりやすい例えでいうと、5万円の税制メリットがあっても、納める税金が3万円なら、3万円の軽減しかないということです。

納める額以上に、税制メリットがあったとしても、差額が受け取れるわけではありませんので誤解しないようにしましょう。

課税所得は扶養家族の人数などによっても大きく変わります。

ご自身の所得控除の効果を具体的にシミュレーションされたい場合はこちら

iDeCoの所得控除を受けるには手続きが必要

iDeCoの所得控除を受けるには手続きが必要

会社員や公務員は年末調整で手続き

iDeCoの掛金を所得控除に使うには、毎年手続きが必要です。
会社員や公務員は年末調整で手続きできます。iDeCoに加入すると、毎年10月頃に「小規模企業共済等掛金払込証明書」という書類が郵便で送られてきます。これは、その年に払い込んだ(12月末までに払い込む予定額を含む)掛金を証明するものですので、大切に保管してください。
年末調整の時期になり、会社から「給与所得者の保険料控除申告書」という所定の用紙を渡されたら、「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」という欄を探します。ここに、iDeCoで拠出したその年の掛金の合計額(年額)を記入します。あとは、保管しておいた払込証明書を添付して、会社に提出すればOKです。

年末調整とは

年末調整とは、会社員など、給与から天引きで税金を納めている人が、その年に納付する所得税と復興特別所得税を精算する手続きのことです。毎月、給与から天引きされる税額は国税庁の「源泉徴収税額表」に則って徴収され、その人の控除などは考慮されていません。
そのため、年間の給与が確定する年末に、その人の控除を含めて納付すべき所得税額を再計算します。これが年末調整です。年末調整で税額が確定し、毎月天引きで徴収されていた税額との差額が出たら、還付または追加徴収を行います。天引きで多く払いすぎていた部分があれば、還付金として振り込まれます。

個人事業主やフリーランスを含む自営業者は確定申告で手続き

確定申告で手続きを行うのは、主に自営業者が対象ですが、年末調整で申告し忘れたり、iDeCoの加入時期が遅くなって年末調整までに払込証明書が届かなかったりした場合は、会社員も確定申告で手続きします。
確定申告での手続きにおいても、10月頃に届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」を保管しておくのは同じです。
手続きは、国税庁の「確定申告書作成コーナー」を利用すると良いでしょう。完成した申告書は、そのままパソコンやスマートフォンから送信するか、印刷して管轄の税務署まで持参、あるいは郵送で提出したら手続きは完了です。
具体的な手続きは、税務署で尋ねるか、国税庁のホームページなどで確認するようにしましょう。

所得税や住民税はいつ・どのように還付される?

iDeCoの掛金を所得控除として使った場合、所得税と住民税が軽減されます。しかし、この2つのメリットの受け方は同じではありません。それぞれ、どのように戻ってくるのかを解説します。

所得税は現金で還付される

年末調整で手続きした場合、勤め先の年末調整完了時期によって変わりますが、ほかの年末調整の還付金と一緒に、早ければ12月中、遅くとも1月下旬には軽減された分の所得税が還付されます。
還付方法は、これも会社によりますが、給与と一緒に振り込み、別で振り込み、手渡しなどです。確定申告した場合は、手続きしたタイミングにもよりますが、だいたい4月か5月頃に、軽減された所得税の額が指定した口座に振り込まれます。いずれにしても、所得税は現金で還付される形です。

住民税は、翌年分が軽減される

一方、住民税は現金での還付はありません。所得控除で軽減された分は、翌年6月以降の住民税に反映される形です。これは、住民税の年度区切りが6月から5月のためです。会社員は、6月以降は軽減された住民税が給与から天引きされます。
確定申告で手続きした場合は、納付書が届きます。住民税は、所得税のように現金で還付される形ではないため、ややわかりにくいのですが、昨年の給与明細や納付書と比べて、どのぐらい効果があったか確認してみると良いでしょう。

まとめ

iDeCoは掛金が全額所得控除となり、その年の所得税と住民税を軽減できます。ただし、そのためには年末調整や確定申告で、毎年手続きする必要があります。
税制優遇のメリットをきちんと享受するためにも、10月頃に郵送で届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」の原本を大切に保管し、もれなく手続きを行うようにしましょう。

執筆者:大上 ミカ(おおうえ みか)

執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 AFP認定者、2級ファイナンシャル・プランニング技能士

※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。

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三菱UFJ銀行でiDeCoを始める方法

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ご注意事項

iDeCoをお申し込みいただく前に、下記についてご確認ください。

  1. 原則、60歳まで引き出し(中途解約)ができません
    • 脱退一時金を受け取れるのは一定の要件を満たす方に限られます。
  2. ご本人の判断で商品を選択し運用する自己責任の年金制度です
    • 確定拠出年金制度では、ご加入されるご本人が自らのご判断で、商品を選択し運用を行いますので、運用結果によっては受取額が掛金総額を下回ることがあります。
    • 当行から特定の運用商品の推奨はできません。
  3. 運用商品の主なリスクについて
    • 預金は元本確保型の確定利回り商品です。預金は預金保険制度の対象となります。
    • 当行のiDeCoで取り扱う保険は元本確保型商品です。ただし、運用商品を変更する目的で積立金を取り崩す場合は、市中金利と残存年数等に応じて解約控除が適用されるため、結果として受取金額が元本を下回る場合があります。
    • 投資信託は価格変動商品です。預金ではなく、預金保険制度の対象ではありません。運用実績は市場環境等により変動し、元本保証はありません。また、当行でお取り扱いする投資信託は、投資者保護基金の対象ではありません。
    • 預金、保険および投資信託は異なる商品であり、それぞれリスクの種類や大きさは異なります。
  4. 初回手続き時、運用時、給付時等で、各種手数料がかかります
    • iDeCoには、初回手続き手数料・毎月の事務手数料・資産管理手数料・運営管理機関手数料・給付事務手数料等がかかります。
    • 手数料は、加入者となられる方は毎月の掛金から、運用指図者となられる方は積立金から控除されます。年金でお受け取りになられる方は給付額から控除されます。
  5. 60歳になっても受け取れない場合があります
    • 50歳以上60歳未満で加入した場合等、60歳時点で通算加入者等期間(*)が10年に満たない場合は、受給可能年齢が引き上げられます。
    • 60歳以上で新規加入した場合、加入から5年経過後に受給可能となります。
      • 通算加入者等期間は、iDeCoおよび企業型DCにおける加入者・運用指図者の期間の合算となります。
株式会社 三菱UFJ銀行
(2022年7月14日現在)