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控除(所得控除)とは?意味や種類、控除を受ける方法をわかりやすく解説!

控除(所得控除)とは?意味や種類、控除を受ける方法をわかりやすく解説!
  • 2023年12月27日
給与明細などで「控除」という言葉を目にすることがあるかと思いますが、どのような制度なのかしっかり理解しているでしょうか。控除は税金の軽減につながるものなので、その内容はぜひ理解しておきたいです。
この記事では控除の意味と種類のほか、控除を受ける方法や活用したい控除について、わかりやすく解説します。

目次

「控除」とは?どんな種類があるの?

「控除」という言葉を正しく意味を理解している人は少ないかもしれません。
カンタンに説明すると、控除は「金額を差し引く」という意味です。そして、控除には税金の計算に関わる大事な役割があります。
所得税や住民税などにおける課税所得金額を算出する際、控除が適用されることで税額が下がります。
控除には2種類があります。

  • 所得控除
  • 税額控除

では、それぞれの控除について確認してみましょう。

所得控除

所得控除とは、所得から差し引くことができる控除です。
私たちは、勤務先や事業、有価証券の配当など、あらゆる手段を通じて収入を得ています。そして収入を得ると税金を納めますが、その際、適用されるのが所得控除です。
これは、所得税額を計算するときに各納税者の個人的事情を加味して、税負担を調整するものです。
では、どのタイミングで所得控除が反映されるのでしょうか。
私たちが得た収入から必要経費を差し引いたものが所得です。課税所得金額はその方のすべての所得から所得控除額を差し引いて算出します。
こうして求めた課税所得金額に税率をかけて所得税額を求めます。
所得控除
つまり、受けられる所得控除が多いほど課税所得が下がるのです。課税所得を減らすことができれば、税金が軽減されます。
具体的な所得控除の種類は後述しますので、適用される所得控除がないか確認してみましょう。

税額控除

税額控除とは、課税所得金額に税率をかけて求めた所得税額から、一定の金額を控除するものです。
税額から直接差し引くため、さらに税金を軽減できます。
税額控除
主な税額控除には、配当控除、外国税額控除、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)などがあります。

所得控除は15種類。利用できる控除を確認

所得控除は15種類あります(※2023年10月現在)。どのような所得控除があるのか、くわしく見ていきましょう。

所得控除は「人的控除」と「物的控除」に分けられる

所得控除は「人的控除」と「物的控除」に分けられます。それぞれに該当する所得控除について、以下でご紹介します。

人的控除の種類

人的控除とは、納税者本人や配偶者、親族など、人に関する所得控除のことです。
以下が人的控除です。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除
  • 配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 障がい者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除

物的控除の種類

物的控除とは、納税者の支出に対する所得控除のことで、社会政策的な配慮から設けられています。
以下が物的控除です。

  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 医療費控除
  • 雑損控除
  • 寄附金控除

所得控除を受ける際の主な要件は、以下をご覧ください。
<所得控除の種類と主な要件>
  控除の種類 主な要件
人的控除 基礎控除 すべての人に適用する
配偶者控除 生計を一にする、所得が48万円以下の配偶者
納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下
配偶者特別控除 所得が48万円超133万円以下の配偶者
納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下
扶養控除 生計を一にする16歳以上の親族
合計所得金額が48万円以下
障害者控除 納税者本人、生計を一にする配偶者、親族が障害者である
寡婦控除 配偶者と死別・離婚し、再婚していない
合計所得金額が500万円以下
ひとり親控除 納税者本人がひとり親である
生計を一にする子がいる
合計所得金額が500万円以下
勤労学生控除 勤労学生である
合計所得金額が75万円以下
物的控除 社会保険料控除 納税者本人や同一生計の親族の社会保険料を支払っている
生命保険料控除 生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料を支払っている
地震保険料控除 地震保険料を支払っている
小規模企業共済等掛金控除 確定拠出年金や小規模企業共済の掛金を支払っている
医療費控除 1年間に支払った医療費が一定額を超えている
雑損控除 災害や盗難などで損失が生じている
寄附金控除 ふるさと納税など特定の寄附をしている

控除を受けるために必要な手続きは?

控除を受けるために必要な手続きは?
控除を受けるには手続きが必要です。その方法は2つあり、1つは会社員や公務員、社会保険に加入するパートやアルバイトが対象の「年末調整」で、もう1つは「確定申告」です。
また、年末調整を行う会社員でも、受けられる所得控除によっては確定申告が必要になる場合があります。所得控除の手続きをくわしく見ていきましょう。

給与所得者の場合

給与所得者は年末調整で控除の手続きをします。
年末調整とは、給与から天引きで徴収された税額の年間合計額と、本来の税額を一致させるための精算手続きのことで、会社が行います。
ただし、給与所得が2,000万円を超える場合、または、2ヵ所以上から給与を受けている場合などは確定申告が必要です。
給与所得者は会社が年末調整で控除の手続きを行いますが、添付書類は納税者本人が準備します。
たとえば、以下の書類の準備が必要です。

  • 生命保険や介護医療保険、個人年金保険に加入中の場合:生命保険料控除証明書
  • 地震保険に加入している場合:地震保険料控除証明書
  • 年内に就職したが、それまでは自分で社会保険料を払っていた場合:社会保険料控除証明書
  • iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している場合:小規模企業共済等掛金払込証明書
  • 住宅ローンの利用が2年目以降の場合:住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書

いずれも10月以降、保険会社や日本年金機構、金融機関などから証明書が送られてくるので、なくさないよう保管しておきましょう。

個人事業主の場合

個人事業主は、確定申告で控除の手続きを行います。
確定申告は、1月1日から12月31日までの1年間に得た所得を税務署に申告し、納税するために行うものです。確定申告の実施期間は、所得を得た年の翌年2月16日から3月15日までとなります。確定申告書は税務署へ提出しますが、e-Taxでの申告も可能です。
また、個人事業主のうち事業所得、不動産所得があり、青色申告の届出をしている人は、別途、青色申告特別控除を受けることができます。その際、複式簿記など決められた記帳方式や書類の準備を行うなど条件を満たせば最高55万円、e-Taxで申告をすると最高65万円の青色申告特別控除を受けられます。要件を満たさない青色申告者の青色申告特別控除は最高10万円です。

確定申告が必要な控除がある

給与所得者で年末調整を受けられる人でも、控除によっては確定申告が必要な場合があります。
確定申告が必要な控除は、以下の3つです。
確定申告が必要な控除
医療費を多く支払ったときや、災害や盗難などで損失を受けたときは、忘れずに確定申告をしましょう。
また、ふるさと納税をしたときも確定申告が必要です。
ただし、会社員の場合は寄附をした自治体が5団体以内であれば、「ワンストップ特例制度」の利用で確定申告が不要になります。ワンストップ特例制度では、寄附先の自治体へ「ワンストップ特例申請書」を提出するだけなので、手間がかかりません。
税額控除の住宅ローン控除は年末調整で手続きできますが、住宅ローンの初年度に限り、確定申告で手続きが必要となるので、注意しましょう。

控除を上手に活用すれば、おトクなメリットも

所得控除のうち基礎控除はすべての人が受けられるものですが、そのほかのものは自分が該当しないと受けることができません。
ただ物的控除のなかには、上手に活用することで家計のメリットになるものがあります。特に、税制優遇のため活用したい控除は、「小規模企業共済等掛金控除」と「寄附金控除」です。

小規模企業共済等掛金控除がおトクな理由

小規模企業共済等掛金控除といえば、iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金が対象になります。掛金全額が小規模企業共済等掛金控除の対象になるため、年末調整や確定申告をすることで所得税が還付され、翌年の住民税が軽減されます。
iDeCoは、ほかにも運用で得た利益が非課税になったり、老齢給付金を受け取るときも税制優遇を受けられたりするので、税制メリットは大きいでしょう。
加入時や運用時などに手数料がかかる場合がありますが、税金の軽減を考えれば活用したい制度の1つです。
老後資金の準備と税制優遇を考えているなら、iDeCoを活用してみてはいかがでしょうか。
iDeCo(個人型確定拠出年金)老後資金の準備と税制優遇

寄附金控除がおトクな理由

注目が集まるふるさと納税ですが、利用すると寄附金控除が受けられます。
寄附金控除は、寄附金のうち自己負担額2,000円を除いた全額が控除の対象になる制度です。
収入と家族構成により定められた控除上限額を超える分は寄附金控除の対象外となりますが、上限額の範囲内で寄附をすれば、税制優遇を受けられます。
また、寄附先の特産品を返礼品として受け取れるメリットもあります。
ふるさと納税の制度について十分に理解し、ふるさと納税のポータルサイトにあるシミュレーションを利用して控除上限額を確認したうえで、税制メリットのために寄附金控除を活用してみましょう。

まとめ

控除とは一定の金額を差し引くことです。所得控除は所得金額から、税額控除は所得税額から、金額に応じた控除分を差し引くことができます。控除を受けることで、所得税や住民税などの税金を軽減できます。
所得控除は複数の種類があり、給与所得者は年末調整で、個人事業主は確定申告で手続きを行います。ただし、所得控除によっては、給与所得者でも確定申告が必要なものもあるので注意しましょう。
また、自分が受けられる控除はあるのか個人での判断が難しいこともあります。
制度概要や申告内容に少しでも不安がある方は、税理士等の専門家へご相談ください。
執筆者:前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。

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