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扶養控除とは?配偶者控除との違いや年収の壁などの疑問を解決!

扶養控除とは?配偶者控除との違いや年収の壁などの疑問を解決!
  • 2024年3月29日
税金の負担を軽減する制度の1つに「扶養控除」がありますが、これはどのようなときに利用できる控除なのでしょうか?
この記事では、扶養控除について、その内容や利用要件、控除額などをご紹介します。
さらに、扶養控除を正しく理解するため、年収の壁や配偶者控除・配偶者特別控除との違い、同居していない家族や年金を受給する家族はどうなるのかなど、疑問を抱きやすい5つの事例について、わかりやすく解説します。

目次

扶養控除とは

扶養控除とは所得控除の一種で、控除対象の扶養親族がいる場合、課税所得から一定金額を差し引くことができる制度です。
では、どのような場合に扶養控除を受けられるのか見ていきましょう。

扶養控除は、親族の扶養にともなう負担を軽減するための控除

親族を扶養していると、生活費の負担が大きくなります。そこで、納税者の経済的な負担を軽減するために設けられたのが扶養控除です。
扶養控除を受けることができると、所得税を計算する基となる課税所得を減らせるので税金が軽減され、納税者の経済的負担が抑えられます。
ただし、扶養控除の対象となる親族には5つの要件が設定されており、適用するにはすべての要件を満たす必要があります。
扶養控除の対象となる親族の5つの要件は以下のとおりです。

  1. 控除を受ける年の12月31日時点の年齢が16歳以上であること
  2. 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)であること
  3. 納税者と生計を一にしていること
  4. 年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入の場合、年収103万円以下)であること
  5. 青色申告者の事業専従者として給与を受けていない、または白色申告者の事業専従者でないこと

上記の要件をすべて満たす親族は、控除対象扶養親族となります。
また、これまでは国外に住む扶養親族は、合計所得金額が48万円以下かつ16歳以上を対象としていました。
しかし、2023年1月から国外居住親族の扶養控除の要件が改正され、以下の要件のいずれかに該当する場合にのみ、扶養控除が適用されるようになりました。

  1. 16 歳以上 30 歳未満の人
  2. 70 歳以上の人
  3. 30 歳以上 70 歳未満で、かつ(1)から(3)までのいずれかに該当する人
  1. 留学により国内に住所および居所がない
  2. 障害者である
  3. 生活費または教育費に充てるための費用を 38 万円以上受けている

  1. 要件となる年齢は、いずれも控除を受ける年の12月31日時点の年齢となります。

扶養控除の区分と控除額

扶養控除の控除額は、扶養親族の年齢や同居の有無による区分ごとに設定されています。
おもな区分は以下の3つです。

  • 一般の控除対象扶養親族
  • 特定扶養親族
  • 老人扶養親族

では、それぞれの区分の対象年齢と控除額を見ていきましょう。

一般の控除対象扶養親族

一般の控除対象扶養親族は、控除を受ける年の12月31日時点の年齢が16歳以上の人が対象となります。
ただし、後述の特定扶養親族や老人扶養親族に該当する人はそのルールが適用されます。
一般の控除対象扶養親族の控除額は38万円です。

特定扶養親族

特定扶養親族は、控除対象扶養親族のうち、控除を受ける年の12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満の人が該当します。
特定扶養親族の控除額は、63万円です。
この年齢は大学による教育費の負担が大きくなりやすい時期であるため、一般の控除対象扶養親族よりも控除額が25万円加算されています。

老人扶養親族

老人扶養親族は、父母または祖父母など納税者と配偶者の直系尊属で、かつ控除を受ける年の12月31日時点の年齢が70歳以上の人が該当します。
この場合、控除額は同居の有無により異なります。
納税者と同居している場合は同居老親等にあたるため、控除額は58万円、納税者と同居していない場合は同居老親等以外となり、控除額は48万円です。
老人扶養親族の同居老親等に該当すれば控除額が大きくなりますが、「同居」の判定には注意が必要です。
たとえば親が病気の治療で入院している場合、それが長期入院であっても同居として扱っても良いことになっています。
しかし、親が老人ホームなどに入所している場合、居住する場所が判定における「老人ホーム等」にあたるため、同居老親等には該当しません。ただ、老人ホームなどに入所していても、生計を一にしているなど控除対象扶養親族の要件に該当する場合は、同居老親等以外の対象者として扶養控除を受けることができます。
会社員の自分から見た親族のイメージ例

2024年度(令和6年度)の税制改正による扶養控除の見直し

2023年12月14日に、政府から2024年度税制改正大綱が公表されました。
税制改正大綱によると、2024年10月から児童手当の所得制限が撤廃され、支給期間が高校生まで拡大されます。また、2026年からはひとり親控除の控除額が増額される予定です。
それにともない扶養控除が見直され、控除額の縮小が予定されています。
たとえば所得税の場合、児童手当が18歳まで拡充されることにともない、16歳以上は38万円の扶養控除を受けられるところが、2026年には25万円に縮小される見込みです。
ただ、どのくらい縮小されるのかは2025年度税制改正で決定される予定なので、今後の動向を見守りましょう。

【疑問1】配偶者は扶養控除対象?

配偶者は、扶養控除の対象ではありません。なぜなら、配偶者に対しては「配偶者控除」と「配偶者特別控除」という別の所得控除が適用されるからです。

「扶養控除」と「配偶者控除」「配偶者特別控除」は異なる

扶養控除と配偶者控除、配偶者特別控除はいずれも所得控除ですが、それぞれ対象者が異なります。
配偶者控除と配偶者特別控除は配偶者のみに認められている所得控除ですが、扶養控除は16歳以上のその他の扶養親族を対象としています。
配偶者控除とは、配偶者の年間の合計所得金額が48万円以下(給与収入がある場合、年収103万円以下)で、納税者と生計を一にしているなどの要件を満たし、かつ納税者の年間の合計所得金額が1,000万円以下の場合に受けられる所得控除です。
配偶者特別控除とは、配偶者の年間の合計所得金額が48万円超133万円以下で、納税者と生計を一にしているなどの要件を満たし、かつ納税者の年間の合計所得金額が1,000万円以下の場合に受けられる所得控除です。
「扶養控除」と「配偶者控除」「配偶者特別控除」は異なる
配偶者控除と配偶者特別控除の控除額は、以下のとおりです。控除額は、配偶者と納税者の合計所得金額に応じて細かく設定されています。
  納税者の合計所得金額
(給与所得のみの場合の給与等の収入金額)
900万円以下 (1,095万円以下) 900万円超950万円以下 (1,095万円超 1,145万円以下) 950万円超1,000万円以下 (1,145万円超 1,195万円以下)
配偶者 控除額 配偶者のパート収入
103万円以下
38万円 26万円 13万円
配偶者特別控除額 配偶者のパート収入
103万円超150万円以下
38万円 26万円 13万円
150万円超
155万円以下
36万円 24万円 12万円
155万円超
160万円以下
31万円 21万円 11万円
160万円超
166.8万円未満
26万円 18万円 9万円
166.8万円以上
175.2万円未満
21万円 14万円 7万円
175.2万円以上
183.2万円未満
16万円 11万円 6万円
183.2万円以上
190.4万円未満
11万円 8万円 4万円
190.4万円以上
197.2万円未満
6万円 4万円 2万円
197.2万円以上
201.6万円未満
3万円 2万円 1万円
201.6万円以上 0円 0円 0円
  • 国税庁 家族と税 配偶者(特別)控除額より
    https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_2.htm

【疑問2】103万円と106万円・130万円の壁とは?

【疑問2】103万円と106万円・130万円の壁とは?
扶養控除は年間の合計所得金額が48万円以下、給与所得者であれば年収103万円以下の人が対象になります。
年収103万円といえば、年収の壁「103万円の壁」を連想する人も多いでしょう。103万円の壁は税金の壁のことで、給与収入を年間103万円以下に抑えれば、給与から所得税が引かれず、扶養親族になることもできます。
同じく、年収の壁には「106万円の壁」と「130万円の壁」があります。これらは社会保険料の壁で、従業員数が101人以上の企業に勤め、その他の要件を満たす場合、年収が106万円を超えると、社会保険に加入します。また、従業員数が100人以下の企業に勤める場合は、年収が130万円を超えると社会保険に加入することになります。
2024年10月からはさらに社会保険の加入対象者が拡大されて、従業員数が51人以上の企業に勤める人も、年収106万円を超え要件を満たす場合は社会保険に加入する予定です。

「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」は異なる

家庭で生計を担う人が配偶者や家族を経済的に支えることを「扶養」といいます。
また、扶養には「税法上の扶養」と「社会保険上の扶養」があります。
税法上の扶養とは、配偶者や親族の合計所得金額が48万円以下(給与収入は年収103万円以下)で生計を一にする場合、納税者の所得から扶養控除や配偶者控除を差し引くことができる制度のことです。
また、社会保険上の扶養とは、配偶者や親族の年収が106万円の壁、もしくは130万円の壁を超えない場合、納税者の社会保険に被扶養者として加入できる制度です。
このように税法上の扶養と社会保険上の扶養は、制度の内容が異なります。
つまり、103万円の壁を超えなければ、「税法上の扶養」に入ることができ、配偶者以外で16歳以上の扶養親族は、扶養控除を受けることができます。
また、年収が106万円の壁もしくは130万円の壁を超えなければ、「社会保険の扶養」に入ることになり、納税者が加入する健康保険の被扶養者になることができます。
ただし、扶養親族が社会保険上の扶養に入れたとしても、合計所得金額が48万円以下(給与所得者は年収103万円以下)でなければ扶養控除を受けられない点は注意しましょう。

〈ケーススタディ〉アルバイトで年収120万円の25歳の息子は扶養控除の対象?

25歳でアルバイトをしている年収120万円の息子は、年収103万円を超えているので、扶養控除の対象にはなりません。
ただ、アルバイト先が従業員数101人以上の企業の場合、社会保険の壁は年収106万円になるので、社会保険の扶養にも入りません。しかし、アルバイト先が100人以下の企業の場合、社会保険の壁が130万円になるため、この息子は社会保険の扶養には入ることができます。

政府が年収の壁対策をスタート

近年、共働きの家庭が増加し、パートやアルバイトで働く配偶者はふえています。ただ、年収が130万円を超えると扶養から外れるため、配偶者自身で社会保険に加入しなければなりません。
また、2022年10月からは社会保険の適用が拡大され、従業員数が101人以上の企業でパート、アルバイトで働く人でも要件に該当すれば、年収106万円を超えたら社会保険に加入することになりました。
社会保険に加入すると厚生年金保険料や健康保険料などの負担がふえて、結果として手取りが減ることになります。そんな状況から、年収の壁を超えないように働き方を調整する人が続出しました。
また、企業としてはもっと働いてほしいのに労働時間を調整する人がふえ、結果として人手不足が生じるようになったのです。
そこで政府は、年収の壁を気にせず働けるように「年収の壁・支援強化パッケージ」を実施することになりました。
政府は106万円の壁対策として、パートやアルバイトの社会保険加入にあわせ、手取りを減らさないための取り組みを実施する企業に対し、パート・アルバイト1人あたり最大50万円の支援を行います。
また、年収130万円の壁対策として、繁忙期に労働時間がふえることでパート、アルバイトの年収が一時的に130万円を超えても、事業主の証明があれば被扶養者のままでいられるような仕組みを作ることにしています。
これまで被扶養者として働いてきた配偶者が、今後も年収の壁を気にせず働けるようになれば、世帯収入はふえ経済的に安定し、将来に向けた貯蓄や運用がしやすくなるのではないでしょうか。
政府が年収の壁対策をスタート

【疑問3】同居していない家族は?

扶養控除には同居の要件がありません。
扶養親族が同居していなくても、要件を満たし、常に生活費や教育費、療養費などを仕送りしていれば、生計を一にしていると認められ、扶養控除を受けることができます。
ここで扶養控除が適用されるかどうか迷いやすい事例をご紹介します。

〈ケーススタディ〉納税者の夫が単身赴任中で、扶養されている妻や子どもと同居していない場合は?

単身赴任中の夫が生活費を家族に送金しており、子どもが16歳以上で所得要件などを満たしていれば、子どもは扶養控除の対象となります。
ただ、妻の合計所得金額が48万円以下のときは配偶者控除が適用されます。そのため、妻は扶養控除の対象にはなりません。

〈ケーススタディ〉離婚後、離れて暮らしている子どもの養育費を支払っている場合は?

納税者が離婚して子どもと別居している場合、子どもが16歳以上で所得要件などを満たし、養育費を送金しているのであれば、子どもは扶養控除の対象になります。

【疑問4】年金受給者の家族は?

納税者や配偶者の親が扶養家族になっており、その親の収入が公的年金のみの場合、老人扶養親族に該当するかどうかは、受け取っている年金額により判定します。
公的年金は雑所得となり、所得金額は「公的年金等の合計額 - 公的年金等控除」で決まります。
公的年金等控除の額は、65歳未満の場合は60万円、65歳以上は110万円です。
  • 所得が年金のみ、または年金以外の所得が年間1,000万円以下の場合)
扶養控除の対象となる要件は年間の合計所得金額が48万円以下であることですので、対象になるかどうかは、扶養する親の年齢と公的年金の収入金額を確認したうえで判定します。
では、事例として2つのケースを見ていきましょう。
  • いずれのケースも収入は年金のみで納税者が生活費を補てんしています。)

〈ケーススタディ〉公的年金を130万円受給している64歳の母

この場合、母は64歳なので公的年金等控除額は60万円です。
公的年金受給額130万円 - 公的年金等控除60万円 = 雑所得70万円
上記のとおり、年間の合計所得金額が70万円になり48万円を超えるので、このケースの母は扶養控除の対象にはなりません。

〈ケーススタディ〉公的年金を130万円受給している70歳の父

この場合、父は70歳なので公的年金等控除額は110万円です。
公的年金受給額130万円 - 公的年金等控除110万円 = 雑所得20万円
このケースの父は年間の合計所得金額が20万円になり、48万円以下となるため、扶養控除の対象になります。

【疑問5】扶養控除を受けるには?

扶養控除を受けるには、基本的に会社員の場合は年末調整で、自営業者や個人事業主の場合は確定申告で手続きをします。

年末調整で控除を受ける場合

給与所得者の場合、その年の最初の給与が支払われる前に、会社へ「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。
また、国外居住の控除対象扶養親族がいる場合、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出時に、「親族関係書類」「留学ビザ等書類」「送金関係書類」「38 万円送金書類」などの確認書類を添付する必要があります。
会社は、年末調整の手続きをする際、従業員から提出された申告書を基に、扶養控除の控除額を確認し手続きをしてくれます。
ただし、扶養親族が就職したり、結婚したりして扶養親族の人数が変わったときは、その都度会社へ扶養控除等異動申告書を提出しましょう。

確定申告で控除を受ける場合

自営業者や個人事業主、フリーランスの場合、扶養控除の手続きは確定申告で行います。
手続きの方法ですが、確定申告書の第一表の「扶養控除」欄に、扶養控除の合計額を記入します。さらに、確定申告書の第二表に「配偶者や親族に関する事項」欄があるので、必要事項を記入します。
また、国外居住の控除対象扶養親族がいる場合、「親族関係書類」「留学ビザ等書類」「送金関係書類」「38 万円送金書類」などの確認書類を提示する必要があります。
確定申告の期間は、原則2月16日から3月15日です。
国税庁の「確定申告等作成コーナー」を利用すれば、パソコンやスマートフォンの画面に従い入力するだけでカンタンに手続きできるので、利用すると良いでしょう。
営業者や個人事業主、フリーランスの扶養控除の手続きは確定申告で

まとめ

扶養控除とは所得控除の一種で、控除対象となる扶養親族がいる場合、課税所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。
また、控除対象となる親族は要件を満たす必要があり、年齢や同居の有無などによって控除額が設定されています。
配偶者も納税者に扶養される場合がありますが、扶養控除は対象外となり、別途、配偶者控除や配偶者特別控除が適用されます。
現在は共働きの家庭が増加し、年収の壁を意識する人がふえています。また、老後は年金だけでは生活が成り立たなくなる不安から、長く働きたい人もふえてきました。
このように、人々の働き方の変化にあわせて国は制度を改正し、税制の見直しを進めています。
なかでも扶養控除は働き方によって利用の可否が変わる制度であることから、常に最新情報を確認して、私たちの生活がどのように変化するのかを見ておくことをおススメします。
また制度概要や申告内容に少しでも不安がある方は、税理士等の専門家へご相談ください。
執筆者:前佛 朋子(ぜんぶつ ともこ)
執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。
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