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住民税非課税世帯とは?対象になる年収目安や優遇措置をわかりやすく解説!

住民税非課税世帯とは?対象になる年収目安や優遇措置をわかりやすく解説!
公開日:2023年10月30日
毎年5~6月頃に届く「住民税決定通知書」。記載されている住民税の額を見て、「税金の負担が大きいな」と感じることもあるのではないでしょうか。
しかし一定の条件に当てはまる場合は、この住民税が非課税となるケースがあります。本記事では、住民税非課税世帯の条件や優遇措置について解説します。

目次

住民税非課税世帯とは?その条件と年収の目安

「住民税非課税世帯」とは、居住する自治体に納める住民税が課税されない世帯のことです。この住民税非課税世帯は、自治体や公的機関で実施されている優遇措置を受けるための基準にされていることが多くあります。
まずは、住民税非課税世帯となる基準について学んでいきましょう。

住民税非課税世帯とは住民税が課税されない世帯

住民税非課税世帯とは、「収入が一定額以下である」などの理由によって住民税が課税されない世帯のことです。
住民税とは居住する地域に納める税金で、1月1日時点で日本に住所があり、前年に給与などで所得がある人は原則納めることが義務付けられています。住民税は前年の所得によって税額が決められ、毎年5~6月頃に「住民税決定通知書」でその年に納める住民税の税額が通知されます。
ただし、「所得が一定金額以下」など一定の条件に当てはまる場合は、この住民税を非課税とすることが可能です。

住民税非課税世帯かどうかは年収などの条件で決まる

個人の住民税は主に「所得割」と「均等割」の2つから成り立っており、それぞれ非課税となる要件が異なります。また、住民税非課税世帯となるための条件は各自治体によっても異なります。
ここでは、一例として東京都23区の条件を紹介しましょう。

所得割が非課税になるケース

所得割については、前年の総所得金額によって非課税となるかどうかが判断されます。基準となる金額は下記の通りです。
所得割が非課税になるケース

所得割・均等割が非課税になるケース

所得割・均等割がどちらも非課税となるのは、次のいずれかの条件に当てはまる場合です。
所得割・均等割が非課税になるケース
なお、住民税非課税世帯となる条件は自治体によって異なります。自身が住民税非課税世帯に該当するかどうか確認したい場合は、市区町村の窓口でたずねるようにしましょう。

【月々の出費】国民健康保険料・国民年金保険料の減免措置

住民税非課税世帯は、住民税以外にも健康保険料や年金保険料などの減免が受けられる仕組みがあります。まずは、国民健康保険料・国民年金保険料の減免措置について紹介していきます。

国民健康保険料の減免措置

国民健康保険料は、住民税と同じく前年の所得に基づいて納付額が決められます。
「住民税非課税世帯である=国民健康保険の支払いが免除される」というわけではありませんが、所得が一定水準以下の場合や災害・退職・廃業などによって所得が減少した場合は、国民健康保険料の減免を受けることが可能です。
なお、国民健康保険料は減免を受けようとする月の納期限までに申請が必要となりますので、なるべく早く申請手続きを行うようにしましょう。

介護保険料の減免措置

介護保険料は40歳以上の人が支払う保険料で、収入に応じて保険料の金額が決められます。介護保険の加入者は65歳以上の「第1号被保険者」と、40~65歳未満の「第2号被保険者」に分けられますが、このうち第1号被保険者の住民税非課税世帯については、介護保険料の減額が適用されます。
たとえば、第1号被保険者で「世帯全員が住民税非課税の老齢福祉年金受給者」の場合、介護保険料は「基準額の3割」まで減額してもらうことが可能です。
減免の適用には申請書や収入が分かる書類の提出が必要となりますので、減免を希望する場合は早めに手続きを行いましょう。

国民年金保険料の減免措置

住民税非課税世帯は、国民年金保険料でも減免の措置を受けられます。
国民年金保険料の減免では、減免割合に応じて一定の年金額が保障されるのも嬉しいポイントです。たとえば、全額免除の場合は年金額の2分の1が保障されるため、「減免によって将来の年金が著しく減ってしまう」という事態も避けられます。
ただし、減免の手続きを行わずに未納となった場合はこの保障が受けられません。減免の申請はマイナポータルを利用した電子申請にも対応していますので、すみやかに申請手続きを行いましょう。

【病気の治療】医療費負担の軽減措置

病院窓口での医療費の支払いが一定額を超えた場合は、「高額療養費」として申請することで超過額の支給を受けることができます。これは一般世帯も利用できる制度ですが、住民税非課税世帯の場合は適用される基準額が低く設定されています。
高額療養費の制度については、国民健康保険と後期高齢者医療保険によって異なりますので、それぞれの概要を確認していきましょう。

国民健康保険で医療費を払った場合

国民健康保険を利用して医療費を支払った場合の自己負担額は、加入者が70歳以上かどうかや、所得額によって決められます。
たとえば、70歳未満で住民税非課税世帯の場合、1ヵ月の負担上限額は35,400円です。ただし、差額ベッド代や先進医療費は対象外となりますので注意しましょう。

後期高齢者医療制度で医療費を払った場合

後期高齢者医療制度とは、75歳以上の人がそれまでの国民健康保険から移行して加入する健康保険制度です。
後期高齢者医療制度の高額療養費は所得区分によって自己負担額が定められており、住民税非課税世帯の自己負担限度額は下記の通りです。
住民税非課税世帯の自己負担限度額

【子育て】保育料の無償化

住民税非課税世帯は、子供の保育料でも無償化となる優遇措置を受けられます。

2歳児以下の子どもを保育園に預けた場合

現在、3歳から5歳までの子供の保育料は一律で無償化されているものの、0歳から2歳までの保育料については自己負担する必要があります。
しかし、住民税非課税世帯については0歳から2歳までの保育料も無償化の対象となっており、保育所や認定こども園などを無料で利用することが可能です。

【教育】大学の入学金・授業料の減免、給付型奨学金

住民税非課税世帯は子供の保育料だけでなく、大学の入学金や授業料でも減免を受けられることがあります。

高等教育の修学支援新制度による授業料等減免

高等教育の修学支援新制度とは、世帯収入が一定額以下の学生に対して、授業料・入学金の減免を行う制度です。
減免額は学校の種類や世帯の収入水準、一人暮らしかどうかなどによって異なりますが、たとえば住民税非課税世帯の学生が私立大学に通う場合は、入学金約26万円(上限)、授業料約70万円(年間上限)の減免が受けられます。

高等教育の修学支援新制度による給付型奨学金

高等教育の修学支援新制度では、授業料・入学金の減免に加えて「給付型奨学金」を受けることも可能です。
給付型奨学金は、学生生活を送るための生活費を支援するもので、こちらも学校の種類や世帯の収入水準、一人暮らしかどうかなどによって給付額が異なります。たとえば、住民税非課税世帯の学生が私立大学に自宅外から通う場合、月額75,800円の支援が受けられます。

【介護】介護サービス利用料の減額

【介護】介護サービス利用料の減額
住民税非課税世帯は、介護サービスの利用料でも充実した優遇措置を受けることが可能です。

高額な介護サービスを利用した場合

介護サービスの利用では、自己負担割合に応じた利用料の支払いを行う必要がありますが、1ヵ月に支払った利用料が一定額を超えるときはその超過分が払い戻される仕組みがあります。負担の上限額は世帯の所得区分によって異なっており、住民税非課税世帯は最大でも月額24,600円の負担に抑えられています。
限度額を超えた分は申請によって払い戻されるため、費用の負担を心配することなく介護サービスの利用が可能です。

特別養護老人ホームを利用した場合の食費・居住費

通常、特別養護老人ホームなどの介護施設を利用する場合、費用の1割負担のほかに、居住費や食費、日常生活費などを負担しなければなりません。しかし、住民税非課税世帯については、この負担の軽減措置が用意されています。
たとえば、特別養護老人ホームの多床室を利用した場合、国が定めた基準費用額では1日あたりの食費と居住費で最大2,300円の負担が発生しますが、住民税非課税世帯(第3段階)の場合は日額1,020円の負担で利用することが可能です。

【福祉】障害者福祉サービス利用料の減額

住民税非課税世帯は、障害者福祉サービスの利用料でも優遇を受けることができます。

障害者福祉サービスを利用した場合

障害者福祉サービスの利用料には、所得区分に応じて自己負担額が決められており、収入がおおむね670万円を超える世帯では最大37,200円の自己負担があります。
しかし、住民税非課税世帯の場合は自己負担額がゼロとされているため、費用負担の心配をすることなく福祉サービスを利用することが可能です。

グループホームに入居した場合

住民税非課税世帯に該当する人がグループホームに入居した場合は、その家賃の助成を受けられます。助成額は利用者1人あたり月額1万円が上限額で、家賃が1万円未満の場合はその実費が助成される制度です。

臨時給付金などはこまめに確認を

住民税非課税世帯は、自治体や政府が支給する「臨時給付金」を受けられることがあります。最近では、新型コロナウイルス感染症による影響が長期化したことを受けて、住民税非課税世帯に1世帯10万円の現金が給付されました。
ただし、臨時給付金は申請が必要となるケースが多いため、給付を受けるためには自治体や政府による情報発信をこまめにチェックすることが大切です。

住民税非課税世帯の注意点

住民税非課税世帯の注意点
住民税非課税世帯の適用可否は、基本的に前年の所得をもとに判断されます。そのため、現時点での所得が少ない場合であっても、必ずしも住民税非課税世帯の適用を受けられるとは限りません。
たとえば、「今年に入って仕事を退職して収入が減少した」という場合、前年に一定の給与所得があれば住民税を納付する必要があります。
また、本記事で紹介した通り、住民税非課税世帯は、「介護保険料負担の軽減」や「医療費負担の軽減」など、さまざまな優遇措置が受けられます。なかには、同居する家族と世帯分離をして優遇措置を受けるケースも見られますが、世帯分離を行うことでかえって国民健康保険料の納付額が増えたり、扶養手当や家族手当が受けられなくなったりすることもあるようです。
住民税非課税世帯の適用を受けるために世帯分離を行う際は、デメリットがないかよく検討するようにしましょう。

まとめ

「子どもを大学で学ばせたい」、「家族を医療機関や介護施設でケアしてもらいたい」、「でも、なかなか難しい…」、もしその障壁が“お金”であるならば、公的機関などの優遇措置で解決するケースが多くあります。
公的なサービスやサポートは市民のためにあるものですので、自治体の窓口や医療機関のソーシャルワーカー、ケアマネージャーなどに相談しながら、ぜひ制度を有効活用してみましょう。
執筆者:椿 慧理(つばき えり)
執筆者保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、1種外務員資格、内部管理責任者
※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。
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