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独身者が住宅ローンを組む際の注意点は?もしもの場合の備え方

独身者が住宅ローンを組む際の注意点は?もしもの場合の備え方
2021.10.20
生涯未婚率が上昇するなか、男女ともに独身で持ち家を検討する人が増えています。今回は「住宅ローン」を借りる際の審査におけるポイントや、住宅ローンを組む際の独身ならではの注意点、もしもの場合の備え方などについて詳しく解説していきます。

独身者は住宅ローンの審査が通りにくい?

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(画像提供:chinnarach/stock.adobe.com)
一般的に、独身者は「住宅ローン」の審査が通りにくいと思われがちです。しかしながら、これは誤った考え方で、独身だからといって必ずしも住宅ローンが通りにくいということはありません。
これは、国土交通省住宅局が住宅ローンを供給している約1,300の民間金融機関を対象に実施した「令和元年度民間住宅ローンの実態に関する調査結果報告書」の結果を見ても明らかです。
この報告書では、長期・固定金利の住宅ローン等に関する融資審査等の結果において、融資を行う際に考慮する項目の上位に「完済時年齢」「健康状態」「担保評価」「借入時年齢」などが並んでいます。
独身であるかどうかというよりは、住宅ローンの返済能力や住宅ローンが完済できるかどうか、万が一、返済不能になった場合の物件の担保価値などが、おもな基準であることがわかります。

住宅ローンの審査基準とは

現在、銀行や信用金庫など一般的な金融機関が住宅ローンの審査基準としているのは、年齢(完済時年齢、借入時年齢)や返済負担率、健康状態、物件の担保評価や勤続年数などです。

一方で金融機関によって、それぞれ審査基準は細かく異なり共通ではないため、1つの金融機関で融資を断られたからといって、ほかの金融機関でも断られるとは限りません。

具体例として勤続年数の審査基準は一般的に勤続期間2~3年が一般的ですが、勤続期間による申し込み条件を設けていない金融機関もあります。

したがって、大事なのは一般的な金融機関の審査基準を参考にしつつも、実際に住宅ローンを借りる際には、事前に自分にとってどの金融機関と相性がよいのかをよく確認しておくことです。
また、金融機関は「実質金利(一例として変動金利0.475%など)」で、住宅ローン検討者が返済可能かを審査するのではなく、各金融機関独自の「審査金利(おおよそ4%前後で金融機関により異なる)」を基準に、金融機関独自の返済負担率によって審査している場合があります。変動金利型の住宅ローンを希望する場合には、この点も要注意です。
なぜなら、これは住宅ローンの借入可能額も金融機関により異なることを意味するからです。このようなことから、実務上では希望する物件がある程度決まった段階で、住宅購入前に金融機関に相談したり、事前審査を受けたり、住宅ローン借入可能額などを事前に確認しておくことがよいといえるでしょう。

「フラット35」のおもな特徴

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(画像提供:devenorr/stock.adobe.com)

比較的審査に通りやすい住宅ローンの1つに、民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供している「フラット35」があります。

「フラット35」のおもな特徴は、全期間固定金利型の商品で安心感が得られることです。返済額が一定となるため、今後の金利上昇リスクを考えなくても済むことから、独身者にとって生活設計の立てやすい住宅ローンのひとつといえるでしょう。

「フラット35」のおもな要件は、すべての借入(自動車ローンやカードローン)などに関して、年収に占める年間合計返済額の割合(総返済負担率)が次の基準を満たすことです。

【フラット35の総返済負担率の要件】

年収400万円未満:30%以下

年収400万円以上:35%以下

【借入対象となる住宅の床面積】

一戸建てなど:70平方メートル以上

マンションなど:30平方メートル以上

「フラット35」は、新築のほか中古住宅を購入する場合にも利用することができますが、マンションなどの場合は床面積30平方メートル以上が融資の要件となりますので注意しておきましょう。

独身者の団体信用生命保険加入についての盲点

独身者にとって、団体信用生命保険(以下「団信」という)が必要か否かは悩ましいところです。団信とは、住宅ローン返済期間中に住宅ローンの借入者が、死亡や所定の身体障害状態に該当した場合に以後の債務の返済が不要となる生命保険です。
この団信の保険料に関しては、銀行ローンの場合、金利の中に含まれるケースが一般的ですが、「フラット35」もまた同様です。
銀行ローンと「フラット35」のおもな違いは、「フラット35」は団信加入に関しては任意である点です。したがって、独身者などが「フラット35」を利用する場合、団信に加入しないという選択肢も可能です。ちなみに団信不要の場合の金利は、掲示されている金利からマイナス0.2%となりますので参考にしてください。

独身者が住宅ローンを組む際のポイントと注意点

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(画像提供:hirota/stock.adobe.com)
独身者が住宅ローンを組む際のポイントと注意点は、将来結婚するか否かにより大きく異なります。しかしながら、将来のことはまだわからないという人も多いことでしょう。ここでは、将来の結婚を想定する場合としない場合とにおいて、住宅ローンの組み方などがどのように異なるかを解説します。
将来結婚を想定している場合は、結婚後も独身時期に購入したマンションに居住し続けるのかその住宅を売却するのか、あるいは賃貸するのかといった点についてあらかじめ考えておく必要があります。
なぜなら、結婚を機に夫婦で新居を新たに購入する際に、こんなはずではなかったと後悔することや想定外のことが生じる場合が多いからです。

ケース1:結婚を機に独身時期に購入したマンションを賃貸するケース

このケースのおもな注意点は、居住用のマンションを投資用として賃貸する場合、厳密には融資の使途が居住用から投資用に変わるため、原則的に銀行は住宅ローンのまま借入を継続することを容認せず、顧客は不動産投資用のローンに借り換える必要が生じることです。
その理由は、住宅ローンが原則的に自己居住用等のための融資であり、賃貸としての不動産投資用の融資ではないためです。

この際、一般的に不動産投資用のローンは住宅ローンと比べ金利が高い点に注意するほか、そもそも物件自体を投資用として賃貸できるかどうかがポイントになります(賃貸できなければ、ローンの支払いだけが継続するため)。

また、新たに夫婦で新居を購入しようとする際に、妻(あるいは夫)が独身時に購入した住宅に関する既存のローンの借入残高も併せて、夫婦の新居の住宅ローンの審査対象になります。

そのため夫婦共働きであっても、妻(あるいは夫)の既存のローンの残高が影響し、新居に対する住宅ローンの借入可能限度額が低くなる可能性があることから、希望する住宅が購入できなくなるおそれもあります。

ケース2:結婚を機に独身時期に購入したマンションを売却するケース

この場合のおもな注意点は、売却する際に自分の希望する金額でなかなか売却できないケースが挙げられます。
売却する際に、住宅ローン残高が住宅の売却金額で完済できればよいのですが、仮に物件売却価格より住宅ローンの残高が多く残っている場合などは、差額部分について預貯金などの持ち出しが必要となるため要注意です。
いずれのケースにしても、独身者が住宅ローンを組む場合は、住宅の資産性(万が一の際に売れる、貸せる)を住宅選びの基本としつつも、将来、結婚を機に夫婦で新たに新居を構える際の住宅ローンなどに、影響が生じないようなローンの組み方が重要になります。

将来の結婚を想定しない場合のポイントと注意点

2019年版の「簡易生命表」(厚生労働省)によると、90歳まで生存する割合は男性27.2%、女性51.1%となっています。
賃貸住宅に居住し続け、賃料を30歳から90歳まで月額10万円ずつ支払ったと仮定すると、7,200万円の賃料支出(更新料は別)になることから、生涯を独身者で過ごすのであれば永住を考えて住宅を購入するという場合もあるでしょう。

その際は、物件の耐久性と質を考慮に入れつつ、何歳のときに住宅ローンが完済になるのかがポイントになります。

44歳のときに35年ローンを借りた場合には、79歳までの返済計画になりますが、79歳まで働く人はごく少数と言えます。この場合には住宅ローンを借入後、貯蓄額の一部を活用しながら、計画的に期間短縮型の繰上げ返済などを実行し、自身が想定する完済時の年齢(例えば65歳)までに住宅ローンが完済できるかどうかをシミュレーションすることが大切です。

とくに生涯独身でいる場合には、老後も一人暮らしを想定する必要があります。その意味でなるべく老後資金に影響しないように、住宅を購入する事前段階において、万が一の際の緊急時の予備資金を確保しつつ返済可能額等を保守的に考えることが重要です。

もしもの場合の備え方について

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(画像提供:Satoshi/stock.adobe.com)
住宅を購入したのはよいけれども、住宅ローンを支払うことで生活が苦しくなってしまうのはよくありません。逆に保守的に考えすぎて資産性の低い物件を購入した結果、万が一の際「売れない」「貸せない」では、これもまた大きなリスクになります。
もしもの場合の備えとして、住宅を購入する際に重要なことは主に3つあります。
  1. 中途半端な住宅選びはしないこと。万が一の際に売却あるいは賃貸できる住宅を選ぶことや、資産性の高い物件選びが重要です。
  2. 返済計画として、住宅ローンは借入可能限度額ではなく、緊急予備資金として預貯金を確保しつつ、固定資産税や管理費・修繕積立金といったランニングコストを考慮に入れた返済可能額をベースに借入額を考えること。
  3. 将来、病気やケガをした場合に働けなくなるリスクも想定して、収入が途絶えた際のリスクヘッジとして、所得補償保険などの加入を検討したり、病気やケガの際になるべく預貯金を取り崩さないように、医療保険などの加入を検討したりすること(※この場合、保険で備えるのではなく、万が一の際に預貯金で賄ってもよい)。

住宅ローンを組む際はライフプランを念頭に

独身だからといって、住宅ローンの審査が通りにくいということはありません。一方で独身の人は、将来的に結婚を考えている場合に「独身時期に購入した住宅の取り扱い」をどうするか、結婚を考えていない場合には「ローンの借入期間」などについてきちんと計画を立てておくことが大切です。今後のライフプランをしっかりと考え、理想の住宅購入計画を立てましょう。

執筆者:峰尾茂克

株式会社THEFPコンサルティング代表取締役

CFP®、1級ファイナンシャルプラン二ング技能士、宅地建物取引士

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