いくら借りられる?年収から住宅ローンの目安を計算しよう
住宅を購入する際に「住宅ローンはいくら借りられるのか」「いくらなら無理なくローンを返済できるのか」と判断に迷う方も多いのではないでしょうか。住宅ローンは長期にわたって返済が続きますので、年収に対する借入額の目安がわかれば物件も選びやすくなるでしょう。この記事では、年収に対する住宅購入資金や住宅ローンの目安、さらに住宅ローンを組むときのポイントを解説します。
住宅の種類
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所要資金(全国)
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年収倍率
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マンション
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4,521万円
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7.1倍
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土地付注文住宅
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4,257万円
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7.3倍
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建売住宅
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3,494万円
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6.7倍
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注文住宅
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3,454万円
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6.5倍
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中古マンション
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3,110万円
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5.8倍
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中古戸建
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2,574万円
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5.5倍
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(出典:住宅金融支援機構「2019年度フラット35利用者調査」)
住宅は、人生最大の買い物といっても過言ではありません。住宅ローンを組んで購入するのが一般的ですが、実際に住宅ローンを利用した人は、どのくらいの額の住宅を購入し、どのくらいのローンを組んでいるのでしょうか。
住宅金融支援機構の「2019年度フラット35利用者調査」には、住宅の種類ごとに所要資金と"年収倍率"がわかるデータがあります。年収倍率とは、住宅購入にかかる所要資金を世帯年収で除した数値です(上表)。
これによりますと、フラット35を利用した人は、全国平均で新築住宅ではおおむね年収の6倍から7倍、中古住宅では6倍弱程度の住宅を購入していることがわかります。
ただしこれは、上記データは長期固定金利であるフラット35利用者の「住宅購入資金」の年収倍率を示すものです。「住宅ローン」の年収倍率はどのくらいの割合なのか、また変動金利や固定金利選択型などほかの金利タイプを利用した人はどうなのでしょうか。
実際に、住宅ローンを年収のどのくらいの割合で借りているのかを知るには、住宅金融支援機構の「住宅ローン利用者の実態調査(2020年11月調査)」の"返済負担率"が参考になります。返済負担率とは、年収に占めるローンの年間返済額の割合のことです。
返済負担率
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変動型
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固定金利選択型
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全期間固定型
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10%以内
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10.0%
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10.9%
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11.6%
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10%超15%以内
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19.6%
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18.0%
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18.0%
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15%超20%以内
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26.9%
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24.5%
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23.3%
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20%超25%以内
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20.4%
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19.6%
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19.0%
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25%超30%以内
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12.1%
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13.6%
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15.9%
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30%超35%以内
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6.3%
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7.1%
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5.8%
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35%超40%以内
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2.5%
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2.7%
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4.8%
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40%超
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2.2%
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3.5%
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1.6%
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出典:住宅金融支援機構住宅ローン利用者の実態調査(2020年11月調査)
いずれの金利タイプでも、返済負担率が15%超20%以内の利用割合が最も高く、次に多いのが20%超25%以内です。
つまり返済負担率20%前後、年収の5倍程度で住宅ローンを組んでいる人が多いと言えるでしょう。ただし、どの程度の年収倍率で住宅ローンを借りるかはケースバイケースなので、借り入れをした人の置かれた状況によります。
住宅ローンの金利相場は、長期にわたって低金利の状態が続いていることもあり、変動金利を利用する方が多いようです。同調査によると、住宅ローンの利用者が使用した金利タイプは変動型が62.9%、固定期間選択型が24.5%、全期間固定型が12.6%となっています。
(画像提供:ucchie79/stock.adobe.com)
住宅を購入する場合、一般的には頭金を出して残りは住宅ローンを組んで購入します。つまり、
頭金とは、いわゆる住宅購入時の自己資金です。頭金を多くすれば住宅ローンの返済額は少なく済みますので「頭金はなるべく多くした方がいいのではないか」と考える方も多いようです。
一方で、子どもの教育費や、いざというときの緊急予備資金も必要です。頭金をいくらにするかは、今後の生活に支障がないよう、ライフプランを考慮して決めるようにしましょう。
また、新居への引っ越し資金や、家具、家電を揃えるお金も意外とかかるものです。気づいたら貯蓄を使い果たしてしまった、ということのないよう頭金の金額はしっかりと考えて決めましょう。
住宅ローンは、購入資金から頭金を引いた部分になります。住宅ローンを何年で返済するかによって毎月の返済額も変わります。なお、ボーナス時に返済額を多くすることもできます。
マイホームを購入する際、「月々の返済額が、家賃相当額のローンなら払えるだろう」と考えるかもしれませんが、毎月のローン返済額をいくらにするかは、その後の生活費の変化も考慮し余裕を持って考えるようにしましょう。
また、住宅購入には諸費用や税金も必要です。具体的には、次のようなものが挙げられます。
- 契約時の売買契約書や
- 登記の際の登録免許税
- 司法書士手数料
- 融資保証料
- 不動産仲介手数料
- 土地や建物を取得した際にかかる不動産取得税
また、継続的に「固定資産税」や「火災保険料」、必要ならば「地震保険料」の負担もあります。マンションの場合は「修繕積立金」や「管理費」「駐車場代」などの負担も考慮しておかなければなりません。さらに一戸建ての場合、リフォームは自分で計画的に行う必要があります。これらの負担も考慮して資金計画を立てましょう。
頭金をどのくらいにするのかにもよりますが、住宅ローンは年収の5倍程度で借りるのが目安とお伝えしました。その場合、毎月の返済額はどのくらいになるでしょうか。
【年収別:住宅ローン借入額5倍でのシミュレーション】
年収
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借入額目安
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毎月返済額
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総返済額
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300万円
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1,500万円
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4万6,000円
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1,929万円
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400万円
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2,000万円
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6万2,000円
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2,572万円
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500万円
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2,500万円
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7万7,000円
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3,215万円
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600万円
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3,000万円
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9万2,000円
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3,858万円
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700万円
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3,500万円
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10万8,000円
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4,501万円
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(返済額は、住宅金融支援機構「フラット35」サイトのローンシミュレーションによる)
年収の5倍の住宅ローンを、返済期間35年、元利均等返済、全期間固定金利1.5%で借り入れた場合の毎月の返済額を、上記に年収300万円から700万円で想定して試算してみました(ボーナス払いなし)。
年収の5倍の借り入れ額だと「少ししか借りられない」と思われるかもしれませんが、利子を含めた総返済額は年収の6~7倍程度となります。無理のない返済ができるよう、きちんと返済計画を立てることが必要なことがわかります。
(画像提供:Wirestock/stock.adobe.com)
住宅ローンの借入額として、年収の何倍程度が目安となるかをお伝えしてきましたが、住宅ローンを無理なく返済するには、返済開始時期と返済方法もポイントになります。
住宅ローンは長期にわたって返済が続き、一般的な住宅ローンでは最長借入期間が35年になります。
たとえば、35年で住宅ローンを組み35歳で返済を開始すると70歳まで返済が続きます。定年後まで返済が続くというのが不安な場合、定年退職する年齢で返済が終わるように住宅ローンを組むのか、35年で借りて計画的に繰り上げ返済をしていくのか、決めなくてはなりません。
一方で、教育費や生活費などが膨らんだため繰り上げ返済がなかなかできず、ローンを残したまま定年退職時期になってしまうことも考えられます。また、若いうちに住宅を購入する場合、老後には住宅の老朽化も見込まれますのでリフォーム費用を多めに準備しておくことも必要でしょう。
このようなローン返済開始時期による影響も考慮して借入額を決めるようにしましょう。
住宅ローンの返済方法には元利均等返済と元金均等返済があり、どちらを選ぶかもポイントです。
【元利均等返済】
毎月の返済額が一定となる返済方法で、返済額に占める元金と利息の割合が変化していきます。毎月一定額を支払うため返済計画が立てやすいことがメリットですが、返済当初は元金部分の割合が低いため元金の減り方が遅く、利息総額は多くなるのがデメリットです。
【元金均等返済】
元金を毎月一定額で返済する方法で、利息は元金の残高に応じた額が上乗せされます。毎月の返済額は返済当初が一番多く、徐々に減少していきます。同じ金額を借りるなら、元金均等返済のほうが総返済額は少ないのがメリットですが、返済当初の返済負担が大きいのがデメリットです。
元利均等返済で毎月一定額を支払うのか、総返済額が少ない元金均等返済にするのかは、両方の毎月返済額を算出した上で、どちらが自分たちの生活に合っているのかをよく検討して決めましょう。
住宅ローンの借り入れ額として年収の5倍程度が目安になるとお伝えしましたが、同じ年収でも家族構成の違いや、職業、車の有無、ライフスタイルなどによってどれだけの金額をローン返済に回せるのかは異なります。
また、住宅ローンは長期にわたるものですから、その後の生活に大きな変化が生じる可能性もあります。実際には、頭金の額、住宅ローンの借り入れ額、返済期間を変えた複数のプランでシミュレーションをして毎月の返済額を確認し、無理なく返済できる方法を選ぶことが必要です。さらに、家族のライフプランを考慮したキャッシュフロー表も合わせて作成し、きちんと住宅ローンを返済できるのかを確認、検討するとよいでしょう。
執筆者:福島佳奈美
ファイナンシャル・プランナー、DC(確定拠出年金)アドバイザー
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(2022年3月28日現在)