住宅ローンって変動金利がいいの?メリット・デメリットを知ろう!
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2021.3.15
住宅ローンを利用する際、金利タイプは重要な検討項目の一つです。住宅ローンの金利は「変動金利」と「固定金利」から選ぶことができますが金利の低さから変動金利を選ぶ人が半数以上を占めています。しかし、金利の低さだけで高額でかつ最大35年にも及ぶ住宅ローン契約をしてしまうのは非常にリスクが高いと言えます。そこで今回は、変動金利・固定金利のメリット・デメリットを整理し変動金利が支持される理由について解説していきます。
変動金利とは?
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変動金利は、住宅ローンを契約している金融機関が設定している融資の基準金利(店頭表示金利)から、契約者の与信などにより金利を優遇する「優遇金利」を差し引いて額が決まります。
たとえば住宅ローンの返済は、利用者の多い「元利均等返済方式」の場合、元金と利息の合計額が返済期間を通じて一定です。しかし金利の変動により返済額の利息の比率が変化していく特徴があります。
変動金利のメリット・デメリット
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近年の金利の低さは、変動金利を利用するうえで大きなメリットの一つです。しかし本来変動金利には、先述のように返済総額が流動的となるデメリットもあります。
また安い金利の住宅ローンに変更するには「借り換え」が必要です。借り換え実施時には、融資条件や団信などの再審査が行われ、収入や健康状態などによっては従前の融資条件を引き継げない場合があります。
変動金利の低金利は、たしかに魅力的です。しかしそれだけで金利タイプを決定してしまうと後で想定外の事態に陥ってしまう恐れもあるので注意が必要です。以下に示す変動金利のメリット・デメリットをよく理解してから利用するようにしましょう。
メリット
変動金利の最大のメリットは、他の金利タイプに比べて金利が低いことです。また金利が下落したり横ばい傾向であったりする場合は、結果的に返済総額が少なくて済む可能性があります。さらに変動金利には支払額の激変緩和措置が定められており、金利が上昇しても毎月の返済額がただちに上昇するわけではありません。
変動金利の返済額の見直しは契約時から5年ごとに行われ上昇幅も1.25倍以内に抑えられています(採用していない金融機関もあります)。
デメリット
変動金利の最大のデメリットは、金利変動により返済総額が変化し、返済額や返済期間が当初の計画とかい離してしまう恐れがある点です。
激変緩和措置により毎月の返済額は変わりませんが、返済額のうち利息の占める割合は増加してしまっているため、元金の返済が進みません。また返済額の上昇幅も25%に抑えられているため、金利の上昇具合によっては返済額の元金部分がすべてなくなってしまいます。
さらに金利が上昇し続けると、ついには利息分も賄うことができず、「未払利息」が生じることで住宅ローンの残高が徐々に増加していってしまうリスクがあるのです。住宅ローンの残債が残ったまま返済期間の満了を迎えてしまった場合は、残債を一括で支払う必要があるため注意しましょう。
金利の現状
(出典:住宅金融支援機構 住宅ローン利用者の実態調査2020年5月調査をもとに作成)
住宅ローンで利用されることの多い金利タイプは、グラフで示すように変動金利が圧倒的に多く選ばれています。次いで3年・5年・10年など一定期間金利が据え置かれ、一定期間経過後に変動金利に移行するなどの金利を見直すことのできる固定期間選択型が多い傾向です。
もっとも利用割合が少ないのは、返済期間中の金利を固定するフラット35などの全期間固定型となっています。
現状変動金利は変動していない
変動金利の基準金利は通常半年ごとに見直され、変動金利を利用した場合の住宅ローンの返済総額は流動的になります。しかし変動金利の元となる基準金利は、2010年から変化しておらず皮肉にも固定金利のほうが大きく変動している状態です。こうした逆転現象は、変動金利と固定金利の金利決定の仕組みが異なるために起こります。
変動金利は、期間1年以内の短期金利との関連性が強く、一方固定期間選択型は固定期間に応じた金利、全期間固定型は「10年物国債利回り」などの長期金利の影響をそれぞれに受けます。金利は、基本的に融資期間が長いほど将来の景気浮揚による金利上昇を見込んで、高い金利が設定されると言えるでしょう。
しかし景気回復が想定通りに進まない場合などは長期金利が下落しやすくなり、住宅ローンの固定金利の額もそれにあわせて変動することとなります。変動金利は、金利動向が返済総額に影響を及ぼすため、金利が決定される仕組みについて把握しておくといいでしょう。
金利タイプ別総返済額のシミュレーション
融資額4,000万円 |
変動金利 |
10年固定金利 |
全期間固定金利 |
金利 |
0.380% |
0.550% |
0.840% |
返済月額 |
10万1,727円 |
10万4,720円 |
10万9,956円 |
返済総額 |
4,272万5,270円 |
4,424万4,978円 |
4,718万8,761円 |
返済総額 |
4,442万6,187円 |
4,599万5,266円 |
|
返済総額 |
4,711万8,582円 |
4,876万3,724円 |
|
返済総額 |
4,315万5,812円 |
4,468万9,488円 |
|
返済総額 |
4,381万6,145円 |
4,537万1,110円 |
(筆者作成)
変動10年の固定期間選択型・全期間固定型、それぞれの金利タイプによって返済総額がどのように変化するのかをシミュレーションしてみました。
変動金利は金利がもっとも低いため、返済額が低く返済総額も金利が横ばい・微増であれば有利な金利タイプであることが確認できます。しかし一定以上金利が増加してしまうと、低金利のメリットは薄らいでいってしまいます。
金利の変動は、元金と返済期間が多く残っているほど影響が大きく及ぶため、金利上昇時は繰り上げ返済を行い金利発生の源となる元金を減らしてしまうのも一つの選択肢です。
- 受付状況等により審査に日数がかかる場合があります
変動金利を利用する場合は、返済計画にご注意を
(画像提供:imagepocket/stock.adobe.com)
住宅ローンで利用される金利タイプは、変動金利がもっとも多い傾向です。変動金利は、低金利や金利低下によって返済総額が減少するなどのメリットがあります。しかし金利上昇局面では返済総額が増加していき、最悪の場合は利息だけの支払いになったり、未払利息の発生により住宅ローンの残高が増加してしまう点がデメリットです。
住宅ローンは、最長35年の返済期間が設けられていますが満期時に残債が残っている場合は一括返済を行うことが必要です。
定年退職などを迎え収入が減少している場合は大きな返済負担となってしまい、老後生活に悪影響を及ぼしてしまう恐れもあるでしょう。金利変動による影響は、住宅ローンの元金・融資期間に比例するため、返済が進むほどリスクも低下していきます。
住宅ローンで変動金利を利用する場合は、毎月の返済額が少ないことを利用し、返済開始から間もないあいだは金利上昇時に備えて資金をプールしておくとよいでしょう。また固定期間選択型を利用し、残債が多く金利変動による影響の大きい時期の金利を固定してしまうことも一つの方法です。
住宅ローンの返済は長期に及ぶため、返済期間中に転職や定年退職によって収入額が変動することも珍しくありません。現在得られている収入をベースに借入額や返済額を定めてしまい、不足の事態が起きたときに住宅ローンの返済が滞ってしまったとしたら・・・せっかく購入したマイホームを手放すなんてことも起きてしまいます。
そうしたことにならないよう、返済総額が変化しやすい変動金利を利用する場合は、ある程度余裕をもった返済計画を立てるとよいでしょう。
執筆者:菊原浩司
2級FP技能士、一種証券外務員資格保有、管理業務主任者
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