住宅ローンを徹底比較!知っておきたい金利の相場と利息の計算方法
人生において住宅は非常に大きな買い物です。その金銭的負担を少しでも減らしたいと誰もが思うことでしょう。多くの人が住宅を購入する際に住宅ローンを利用しますが、大きな買い物なだけに借入金額も大きくなり、返済の負担が重くのしかかってきます。返済負担を軽くするのに、総返済額に大きな影響のある金利の相場について知っておくことが大切です。また、ほかにも大事なのは自分に合った「金利タイプ」を知ることです。その上で、金利や諸費用が安く総返済額が抑えられる金融機関を選びましょう。
住宅ローンには「金利タイプ」別に3つの種類があります
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借入金額が大きくなりがちな住宅ローンは、少しの金利の違いでも返済負担に与える影響は小さくはありません。そのため、住宅ローン選びでもついつい金利だけに目が向きがちです。
たとえば3,000万円の住宅ローンを30年間借りる場合、0.9%と1.0%というように金利が0.1%違うだけで、その金利負担分は最終的に50万円近くも差が出てきます。確かに金利を意識するのは当然と言えます。
ただ、住宅ローンを検討するときには、まずは自分に合った「金利タイプ」を知ることが大切になってきます。なぜなら、住宅ローンには金利タイプごとにそれぞれ特徴やメリット・デメリットなどがあり、住宅ローンを組む家庭の状況ごとに合う、合わないがあるからです。
住宅ローンの金利タイプには大きく分けて次の3つがあります。
金利の視点からは、一般的に変動金利型の金利が一番低く、全期間固定金利型が一番高く設定されています。短期的に金利だけで考えた場合は、変動金利型がもっとも金利負担を抑えられる可能性があります。ただし、長期的には変動金利による金利上昇リスクもあることに注意が必要です。
次にそれぞれの金利タイプごとにその特徴などを見ていきます。
変動金利型の住宅ローンの特徴は、借入期間中、半年ごとに金利が見直されることです。ただし、金利が半年ごとに変わっても返済額は5年ごとの見直しとなり、5年間返済額は変わりません。
またその返済額の見直し幅は、見直し前の返済額の1.25倍(1.25倍ルール)までとされている場合が多いです。これは見直しによる返済負担の急激な上昇を抑えるためです。
変動金利型のメリット
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金利下降局面では、金利低下のメリットをいち早く受ける
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ほかの金利タイプより一般的に金利が低く、比較的金利負担が小さい
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変動金利型のデメリット
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金利上昇局面では、金利負担が増加しやすい
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返済額が5年ごとに変わる可能性があるため、返済計画が立てにくい
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金利上昇により利息負担割合が増える場合、借入元金がなかなか減らない状態になる |
金利上昇により利息額が毎回の返済額を超えてしまうと元金がまったく減らず、利息も支払いきれない「未払利息」が発生する可能性がある |
ほかの金利タイプと比較して金利の低い傾向にある変動金利型は総返済額を抑えるには有利ですが、一方で、金利変動リスクがもっとも高いことに注意が必要です。そのため、将来金利が上昇しても繰上げ返済なども含め、返済できる経済的余裕がある人向けと言えます。
また、借入額が少ない場合や借入期間が短い期間で返済可能な人も、金利上昇による返済額の増加が比較的少なく済むので向いていると言えるでしょう。
固定金利期間選択型住宅ローンの特徴やメリット・デメリット
固定金利期間選択型の住宅ローンの特徴は、借入当初から一定期間(2年・3年・5年・10年など)の金利が固定されていることです。固定金利期間終了後は、その時点での金利で改めて固定金利期間選択型や変動金利型の金利タイプを再選択します。通常、固定金利期間が短いものほど金利が低く設定されています。
固定金利期間選択型のメリット
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固定金利期間中は金利変動リスクを回避できる
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金利変動リスクを抑えつつ、比較的低金利を享受できる
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金利下降局面では、固定金利期間終了時に他行への借り換えなどの対応をしなくても金利低下のメリットを受けられる可能性がある |
固定金利期間選択型のデメリット |
固定金利期間終了時に、変動金利型のような1.25倍ルールがないので、金利が上昇している場合に返済額が急激に上がる可能性がある |
金利タイプの再選択時に、優遇金利などが借入当初の優遇幅に比べて小さいか、ない場合がある |
固定金利期間終了時には変動金利型にあるような1.25倍ルールがないことから、金利次第で返済額が大きく変動する可能性があります。そのため、固定金利期間終了時の返済額の変動に対応できる人向けの金利タイプと言えます。
向いている人としては、固定金利期間終了までにまとまったお金を貯められる人や、その時期に満期保険金などのまとまったお金が入る人などがあげられます。また固定金利期間中に教育費など、ほかの返済負担のピークが過ぎて、その後は住宅ローンの返済額を増やせる人なども向いていると言えるでしょう。
全期間固定金利型住宅ローンの特徴やメリット・デメリット
全期間固定金利型の住宅ローンの特徴は、借入当初から返済完了までの全返済期間の金利があらかじめ確定されていることです。また全期間固定金利型の一部には、金利が全期間で一律(全期間一律型)のもの以外に、6年目以降や11年目以降に当初借入段階ですでに決められた金利に変更となる段階金利型のものあります。
民間金融機関と住宅金融支援機構が提携して提供しているフラット35と呼ばれるものなども全期間固定金利型の住宅ローンです。
全期間固定金利型のメリット
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金利が固定されるため金利変動リスクを回避できる
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低金利時の借入れは長期にわたりその低金利のメリットを享受できるため、完済までの金利動向によっては最終的にほかの金利タイプと比べて総返済額が少なくなる可能性もある
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返済額や総返済額が確定するため、家計管理がしやすくなる
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全期間固定金利型のデメリット
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変動金利型や短期の固定金利期間選択型より通常は金利が高めとなる |
金利下降局面において、さらなる金利低下のメリットを享受できない |
将来、金利が上昇して返済額が増加すると返済が困難になる人や、返済額の変動により教育費など他の資金準備の計画が困難になる人向けと言えます。また、金利が上昇することで返済額が増えてしまう可能性のあることに不安を感じるような人も、金利変動リスクのない全期間固定金利型は「安心」を手に入れるための選択肢になるとも言えます。
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金利は総返済額に大きな影響を与える要素のひとつです。そこで、ここでは住宅ローンの利息が金利によってどう求められるか確認してみます。
1ヵ月にかかる住宅ローンの利息はおおよそ以下の計算式によって求められます。
借入金額(借入残高)× 金利(年利)÷ 12(ヵ月)
実際に以下の条件をもとに利息を計算してみましょう。
条件:全期間金利固定型、適用金利1.5%、借入金額3,000万円、返済期間30年、元利均等返済
3,000万円(借入金額)× 1.5% ÷ 12 = 3万7,500円
返済2回目以降は、直前までの返済により減った借入残高をもとに計算します。そのため、次の表のように、毎月返済額の内訳である「利息分」は徐々に減っていき、借入残高に充当される「元金分」は増えていきます。
返済回数
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毎月返済額
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利息分
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元金分
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借入残高
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当初借入
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30,000,000円
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1回目
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103,536円
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37,500円
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66,036円
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29,933,964円
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2回目
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103,536円
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37,417円
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66,119円
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29,867,845円
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3回目
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103,536円
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37,334円
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66,202円
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29,801,643円
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なお、毎月返済額などについてはインターネット上で金融機関などから提供されている住宅ローン返済シミュレーションのサイトなどを利用することで簡単に調べることができます。
※2021年2月時点。新規で借入の場合。変動金利型住宅ローンの最優遇金利が適用された場合の当初適用金利の平均。
金利タイプによって、相場はどのようになっているのでしょうか。そこで金融機関13行の金利を調査しました。まずは変動金利型から見ていきましょう。
金融機関
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金利相場(優遇金利適用後)
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大手都市銀行
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0.470%~0.775%
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ネット銀行
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0.310%~1.187%
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地方銀行
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0.440%~0.975%
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住宅ローン専門
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0.650%~0.950%
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変動金利型住宅ローンの平均金利は約0.518%となっています。大手都市銀行の変動金利は横並び傾向で、ネット銀行が全体と比較して低い金利で提供しているようです。ただし、金利優遇幅の適用状況によっては1%を超える変動金利となるネット銀行もあります。地方銀行はほかと比べて金利が高めの傾向のようです。
固定金利期間(10年)選択型住宅ローンの平均金利:約0.762%
※2021年2月時点。新規で借入の場合。固定金利期間(10年)選択型住宅ローンの最優遇金利が適用された場合の当初10年の金利相場の平均。
続いては固定金利期間選択型の住宅ローンの平均金利ですが、10年の金利固定を選択した場合約0.762%となっています。
【金融機関別 固定金利期間選択型住宅(10年)ローンの金利相場】
金融機関
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金利相場(優遇金利適用後)
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大手都市銀行
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0.595%~1.590%
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ネット銀行
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0.499%~1.504%
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地方銀行
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0.695%~1.600%
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住宅ローン専門
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0.990%~1.290%
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10年金利固定の固定金利期間選択型住宅ローンでは、各金融機関で適用金利にかなりばらつきの傾向があります。比較的ネット銀行は低金利の傾向のようです。ただ、都市銀行も平均の金利相場よりも低い金利で住宅ローンを提供しているところも多いです。
また一般的には短い固定金利期間のほうがより金利が低いものですが、金融機関の戦略などにより、たとえば5年固定よりも10年固定の金利を低く提供しているところもあります。これにより各金融機関がどの金利タイプや固定期間に力を入れているのかが見えてきます。
全期間固定金利型(35年)住宅ローンの平均金利:約1.368%
※2021年2月時点。新規で借入の場合。全期間固定金利型(35年)住宅ローンの最優遇金利が適用された場合の金利相場の平均。
最後は全期間固定金利型(35年)住宅ローンの平均金利です。こちらの平均は約1.368%となっています。
【金融機関別 全期間固定金利型(35年)住宅ローンの金利相場】
金融機関
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金利相場(優遇金利適用後)
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大手都市銀行
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1.040%~1.810%
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ネット銀行
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1.120%~1.634%
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地方銀行
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1.250%~1.950%
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住宅ローン専門
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0.810%~1.580%
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変動金利型と固定金利期間選択型の金利の平均相場は1.0%を切っていましたが、低金利時代といえども、さすがに35年の全期間固定金利型の住宅ローンともなると金利の平均相場は1.0%を超えてくるようです。比較的金利の低いネット銀行ですが、大手都市銀行の中にはネット銀行よりも低金利を提供しているところもあります。
また住宅ローンを専門に取り扱っている金融機関では、住宅の購入価格に対する借入額の割合などの条件がありますが、1%を下回る金利を提供しているところもあるようです。
これまで「金利タイプ」の違いや最近の「金利相場」について確認してきました。金利は長期に返済をする住宅ローンを選ぶにあたって「総返済額」に影響を与える重要な要素になります。金利は都度変動していますので、おおよその最新の金利相場を把握しておくことは大切です。
また費用の面では、住宅ローンを組むときにかかる諸費用(融資手数料、ローン保証料、登記費用、火災保険料など)があります。特に融資手数料やローン保証料などは各金融機関によってその扱いにかなり違いがあります。住宅ローンの総返済額を考えるときは諸費用も含めて検討するようにしましょう。
ほかにも総返済額には直接は影響しませんが、たとえば返済期間中に繰上げ返済をするような場合に、繰上げ返済手数料がかかるかどうかなどの確認もしておくとよいでしょう。繰上げ返済手数料が無料でネットからでも実施可能な住宅ローンであれば使い勝手の良い住宅ローンと言えるでしょう。
執筆者:小山英斗
未来が見えるね研究所 代表
CFP®、1級FP技能士(資産設計提案業務)、住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
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(2022年3月28日現在)