「ねんきん定期便」の見方とは?将来もらえる年金額の確認方法
- 2022年9月12日
- 2024年7月30日
- この記事はこんな方におススメ!
- ねんきん定期便の見方を知りたい方
- 将来の年金額をふやす方法を知りたい方
この記事では、ねんきん定期便の見方と年金額をふやす方法をファイナンシャルプランナーが解説します。
目次
ねんきん定期便とは?
「ねんきん定期便」とは、国民年金や厚生年金に加入している人に対して誕生月に毎年送付される、年金記録について記載された書類です。通常はハガキで、節目の年齢とされる35歳・45歳・59歳では封書で郵送されます。まずは、ねんきん定期便でわかることや送付目的について、簡単に見ていきましょう。
ねんきん定期便でわかること
ねんきん定期便に記載されているのは、直近1年間(節目の年齢では全期間)の国民年金・厚生年金の加入状況や累計年金保険料納付額、納付実績に基づく年金支給見込額等です。これにより、年金保険料の納付状況や将来受け取れる年金の目安金額がわかります。
50歳以上のねんきん定期便では、受取開始年齢による年金額の変化についても記載されているため、将来の受取額を具体的にイメージ可能です。
ねんきん定期便の送付目的
ねんきん定期便の目的は、加入者に将来もらえる年金額の目安や加入状況を定期的に通知し、年金制度への理解や信頼を高めることにあります。国民年金法等に基づき、平成21年4月から定期的な送付が始まりました。
年金記録を通知する契機となったのは、約5,095万件の持ち主不明の年金記録が明らかになった平成19年の「年金記録問題」です。年金記録問題のおもな原因は、基礎年金番号導入時に記録の統合ができず、年金番号に結びつかない古い記録が残っていたことでした。
ねんきん定期便は、この年金記録問題に対する取り組みの一環で、加入者自身に年金記録を確認してもらい、正しい年金記録の回復を目指しています。
のちほど説明しますが、ねんきん定期便は自身でペーパーレス化を選択していない限り、毎年郵送されるものです。万が一受け取っていない場合には、登録住所に誤りがある等のおそれがあるため、年金事務所もしくは「ねんきん定期便・ねんきんネット専用番号」に問い合わせをしましょう。
では、ねんきん定期便が届いたら、どのような点に注意して内容を確認したらよいのでしょうか。ねんきん定期便は50歳未満と50歳以上、およびハガキと封書で内容が異なるので、年齢・形式別に記載内容や見方を紹介します。
50歳未満のねんきん定期便(ハガキ)の見方
まずは、50歳未満の方に届くハガキの記載内容と見方を紹介します。ハガキは、第三者が内容を確認できないように圧着ハガキが用いられているため、すべて開いて内容を確認してください。
ハガキ表面
50歳未満のねんきん定期便のハガキ表面(住所記載面)には、次の項目が記載されています。
- 日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド(令和6年度送付分)」
- 照会番号、公務員共済・私学共済の加入者番号
照会番号は、ねんきん定期便について日本年金機構に問い合わせをする際に必要な番号です。セキュリティ上、基礎年金番号とは異なります。
これまでに公務員共済や私学共済に加入していたことがある方は、それらの加入者番号も記載されています。
- これまでの加入実績に応じた年金額(去年・今年)
加入実績に応じた去年と今年の年金の見込額です。保険料の納付による、1年間の年金資産の増加を実感できるでしょう。
- 最近の月別状況
過去1年間の国民年金の納付状況、厚生年金保険の加入区分・標準報酬月額・標準賞与額・保険料納付額です。就職・転職等で加入する年金が変わった方や、給与水準に変化があった場合に正しく反映されているかを確認できます。
- 年金見込額試算用二次元コード
スマートフォンでスキャンすると、厚生労働省が提供する「公的年金シミュレーター」にアクセスできる二次元コードです。生年月日を入力すると、さまざまな条件で年金見込額の試算ができます。
令和4年4月より試験運用がスタートしたサービスのため、令和4年度発送分のねんきん定期便から記載されるようになりました。
ハガキ裏面
ハガキの裏面では、さらに具体的な年金加入状況が記載されています。
- 日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド(令和6年度送付分)」
- これまでの保険料納付額(累計額)
国民年金保険料および厚生年金保険料等の納付合計額が、年金の種類別に記載されています。
- これまでの年金加入期間
年金の種類別に、加入期間が月数で確認できます。年金の受給に必要な加入期間(120月以上)を満たせるか確認可能です。
- これまでの加入実績に応じた年金額
現時点での加入実績に応じた年金額を、年金種類別に確認できます。表面に記載されていた「これまでの加入実績に応じた年金額(今年)」の内訳です。現時点の実績による試算額のため少なく感じられるかもしれませんが、今後の加入状況によって納付実績が増えれば、受け取れる年金額も増加します。
なお、年金額が表示されていない場合には、年金加入記録に不備があるおそれがあるため、年金事務所等へ問い合わせが必要です。
- ねんきんネットへのアクセスキー
日本年金機構が提供するインターネットサービス「ねんきんネット」に登録する際に必要なアクセスキーです。有効期限はねんきん定期便に記載の作成日から5ヵ月後の月末までです。
ねんきんネットの詳細や登録方法については後半部分で解説します。
50歳以上のねんきん定期便(ハガキ)の見方
50歳以上になるとねんきん定期便の内容が少し変わり、年金の受給を具体的に考えられるよう、受取方法による受給額の比較等が記載されます。50歳以上のねんきん定期便の記載内容と見方について、50歳未満からの変更点を中心に見ていきましょう。
ハガキ表面
- 日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド(令和6年度送付分)」
- 照会番号、公務員共済・私学共済の加入者番号
50歳未満のねんきん定期便で、ハガキ表面に記載されていたものと同一です。
- 老齢年金の見込額
老齢年金は、受給時期を遅らせることで受給額が割増されます。50歳以上のねんきん定期便では、65歳での見込額、受給を70歳・75歳に遅らせた場合の見込額をそれぞれグラフ表示しているのが、これまでとの大きな違いです。
60歳未満の場合は、「現時点での加入実績が60歳まで続いた」と仮定したものとなり、あくまで目安となります。60歳~64歳の場合は、ねんきん定期便作成時点での加入実績から算出された見込額のため、いくら受け取れるのかを具体的にイメージできるでしょう。
c~eは、50歳未満のねんきん定期便で、ハガキ表面に記載されていたものと同一です。
ハガキ裏面
50歳以上になると、裏面の記載内容も受給を具体的に意識したものになり、「老齢年金の種類と見込額」が記載されます。
- 日本年金機構「『ねんきん定期便』の様式(サンプル)と見方ガイド(令和6年度送付分)」
「老齢年金の種類と見込額(年額)」は、表面のグラフと同様になります。60歳未満の場合は現在の加入条件が60歳まで続いたと仮定して試算した見込額、60歳~64歳の場合はねんきん定期便作成時の加入実績から試算した見込額です。65歳以上の方は、65歳時点の年金加入実績に基づき計算されています。
この表では年齢別に4列ありますが、左3列は特別支給の老齢厚生年金の受給対象者のみ金額が記載されています。65歳で受け取れる年金見込額は、右端の太線で囲われた老齢基礎年金+老齢厚生年金の合計額を参照してください。
なお、特別支給の老齢厚生年金については、昭和36年4月1日以前に生まれた男性と昭和41年4月1日以前に生まれた女性のうち、受給資格を満たす人が対象です。
ねんきん定期便(封書)の見方とチェックポイント
毎年のねんきん定期便はハガキですが、節目とされる35歳・45歳・59歳にはA4サイズの封書で送付されます。
- 日本年金機構「『ねんきん定期便』の送付用封筒等の様式(令和6年度送付分)」
ねんきん定期便のハガキと封書の違い
封書のねんきん定期便には全期間の加入状況が記載され、より詳細な履歴が確認可能です。
- 日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和6年度送付分)」
また、巻末には年金加入記録回答票があります。もし加入記録に漏れや間違いが見つかったら、回答票に記入し、付属の返信用封筒で日本年金機構宛てに調査を依頼しましょう。
その他に、ねんきん定期便のくわしい見方が書かれた冊子も付属しています。
節目の年のねんきん定期便(封書版)のチェックポイント
節目の年では、年金加入履歴に空いている期間がないか、厚生年金保険の標準報酬月額が大幅に異なっていないかの確認が重要です。
- 日本年金機構「「ねんきん定期便」の様式(サンプル)と見方ガイド(令和6年度送付分)」
同封されている見方ガイドに記載の「記録確認のチェックポイント」を参考に、確認してください。
特に、転職経験がある場合や加入する年金に変更があった場合、正しく手続きが行われていないと空白期間が生じます。そのままにしておくと受け取れる年金額が減少するため注意しましょう。
ねんきん定期便はインターネットでも確認可能
ねんきん定期便にも記載があるとおり、日本年金機構のインターネットサービス「ねんきんネット」では、電子版のねんきん定期便を発行しています。電子版のねんきん定期便を利用するメリットや、ねんきんネットへの登録方法を見ていきましょう。
ねんきんネットの機能
ねんきんネットでは、年金加入記録の確認や見込額の試算、電子版ねんきん定期便のダウンロード等の機能が利用できます。24時間利用可能なうえ、ねんきん定期便の到着を待たずにさまざまな情報を確認できるため、ぜひ活用ください。
さらに、ねんきんネットには通知書の再交付申請や年金事務所に提出が必要な各種届出書の作成機能もあります。
ただし、共済組合加入者は一部機能が制限される点に注意が必要です。
電子版ねんきん定期便のメリット
電子版のねんきん定期便では、郵送より1ヵ月ほど早く内容の確認やダウンロードができます。また、PDFファイルとなり、紙ではないため紛失の心配がないのもメリットです。
アクセスキーや年金見込額試算用の二次元コード等が省略されている以外は、郵送と書式が大きく変わりません。
- 日本年金機構「『ねんきんネット』による電子版『ねんきん定期便』」
近年は、資源有効化や郵送コスト縮小の観点から、電子版ねんきん定期便の利用が推奨されています。郵送の停止は、ねんきんネットからペーパーレス化を設定することで手続き可能です。
ただし、郵送を停止しても、節目の年齢で送付される封書のねんきん定期便は変わらず届きます。
また、ねんきん定期便の郵送停止の登録をしていなくても、電子版のダウンロードは可能です。
ねんきんネットの利用方法
ねんきんネットの利用方法には、マイナンバーカードを使用してマイナポータルと連携する方法と、ねんきんネットでユーザIDを発行する方法があります。
マイナポータルと連携する
マイナンバーカードを持っていれば、マイナポータルからねんきんネットにアクセス可能です。マイナポータルからねんきんネットを選択して連携に同意すると、以降はマイナポータルからねんきんネットにアクセスできるようになります。
ねんきんネットでユーザIDを発行する
ねんきんネットでユーザIDを発行すれば、次回よりIDとパスワードでねんきんネットを利用できます。ユーザIDの発行には、基礎年金番号とメールアドレスが必要です。
アクセスキーがある場合には、ユーザIDを即時取得できます。アクセスキーの有効期限が切れてしまった場合には、「アクセスキーなし」のメニューから個人情報等登録に必要な事項を入力して申し込みましょう。後日、郵送でユーザIDが通知されます。
将来の年金額を増やすには?
ねんきん定期便やねんきんネットで確認できる年金見込額は、60歳未満の場合、あくまでも現時点の条件で保険料支払が続いた場合の試算です。しかし、なかには見込額を見て、将来的に年金で生活できるのか不安な方もいるでしょう。
総務省の「家計調査年報(家計収支編)」によると、2022年における65歳以上の夫婦のみの無職世帯では、消費支出が平均236,696円となっています。
一方、厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2022年における国民年金の受給額の平均は56,428円、厚生年金受給額の平均は144,982円でした。世帯状況によっては、年金のみでは老後資金が不足するおそれも指摘されています。
ここからは、将来の年金額を増やすために有効な手段を見ていきましょう。
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総務省「家計調査年報(家計収支編)2022年(令和4年) 家計の概要 Ⅱ 総世帯及び単身世帯の家計収支」
厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
年金の受取タイミングを遅らせる
ねんきん定期便にも記載があるとおり、老齢年金は受給開始年齢を遅らせることで受取額を増やせます。繰り下げた期間に応じて増額率が変わり、最大で84%の増額が可能です(75歳受取の場合)。
繰り下げ受給は、老齢基礎年金・老齢厚生年金をそれぞれ異なるタイミングで設定できます。当面の資金に余裕がある場合には、資産状況に応じて両方、あるいは一方の受給を遅らせるのも有効でしょう。別々のタイミングに繰り下げる場合には、所定の手続きが必要です。
ただし、条件によっては、繰り下げをすることで加給年金を受け取れなくなる場合もあるので、繰り下げのタイミングはよく検討してください。
【厚生年金】60歳以上も働く
60歳以降も働き続け、厚生年金の加入期間を延ばせば、受け取れる年金を増やせます。
ただし、年金を受け取りながら働く場合、給与額によっては在職老齢年金の対象となり、老齢厚生年金が減額・停止されることになりかねなません。また、高年齢雇用継続給付による調整でも、老齢厚生年金の支給が減額・停止されることがある点に注意が必要です。
【国民年金】付加年金に加入する
付加年金とは、自営業等の国民年金第一号被保険者が任意で加入できる終身年金制度です。現在の定額保険料に毎月400円の付加保険料を上乗せすることで、「付加保険料の納付月数×200円」が加算された老齢基礎年金を生涯受け取れます。
iDeCoや個人年金保険に加入する
ここまでは公的年金を増やす方法を紹介してきましたが、公的年金と併せて加入できるiDeCo(個人型確定拠出年金)や個人年金保険等を活用する方法もあります。
iDeCoは、掛金の拠出や運用を自身で行う私的年金制度です。原則として60歳までは資金を引き出せませんが、掛金は全額所得控除の対象で運用益も非課税、税制優遇を受けながら私的年金をつくれます。
そして、個人年金保険は年金制度にプラスして利用できる、民間の保険商品です。他の年金制度の加入状況に関わらず加入でき、保険料を払い込めば、所定の年金受取開始日から年金を受給できるでしょう。
払い込んだ保険料の額に応じて、所得税や住民税の負担が軽減される点は、個人年金保険のメリットといえます。一定の条件を満たし、税制適格特約のある個人年金保険は個人年金保険料控除、特約なしのものは一般生命保険料控除の対象です。公的年金や私的年金の補完として、検討してみてください。
まとめ
毎年1回発行される、ねんきん定期便の見方について解説しました。
ねんきん定期便を確認すると、年金制度や年金受給額について具体的にイメージできるようになります。年金記録の間違いや漏れを見つけるためにも、届いたら必ず確認してください。
また、ねんきんネットでは、最新の年金状況やねんきん定期便の確認が可能です。条件を変更して年金見込額を試算することも可能なため、活用して老後の資金計画に役立てましょう。
記事提供:トランス・コスモス株式会社
執筆者保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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株式会社 三菱UFJ銀行
(2024年11月22日現在)