【2025年度版】大学無償化の概要や手続きは?多子世帯の条件、奨学金との併用を解説!

- 2025年3月31日
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この記事はこんな方におススメ!
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大学無償化制度の概要や手続きを知りたい方
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子どもの人数に応じた条件を知りたい方
2020年度にスタートした大学無償化制度(高等教育の修学支援新制度)は、2024年度の拡充を経て、2025年度から多子世帯への支援の範囲が広がりました。
この記事では、その概要や無償化の条件についてくわしく解説します。
目次
大学無償化制度とは
2020年4月にスタートした大学無償化制度は、高等教育の学費上昇によって学習意欲のある学生が進学を諦めることがないよう支援する制度です。最初に、この制度の趣旨とこれまでの支援内容を解説します。
制度の趣旨
大学無償化制度(正式名称:高等教育の修学支援新制度)は、経済的理由で進学を断念する学生をなくすために、2020年4月に創設されました。一定の要件を満たす学生に対し、給付型奨学金と授業料減免を組み合わせることで、教育機会の公平性を確保することを目的としています。
これまで経済的な事情で進学を断念せざるを得なかった学生も、この制度の利用により、高等教育を受けるチャンスが広がります。
これまでの支援の対象
高等教育の修学支援新制度は2020年度にスタートした当初、世帯年収が380万円程度までの世帯の学生が主な対象でした。支援内容は返済不要の給付型奨学金と、授業料や入学金が一部または全額免除される授業料等減免制度の二つです。この制度は、新入生だけでなく、すでに大学に在学している学生も利用できました。
その後、2024年度には、対象となる世帯の範囲が拡大されました。年収が600万円程度までの世帯で、子どもが3人以上の多子世帯や、私立大学理工農系の学部・学科に在籍する学生も対象となりました。
2025年度にはさらに対象が広がり、多子世帯の所得制限が撤廃され、世帯年収に関わらず大学無償化制度を利用できるようになります。
多子世帯(子ども3人以上)の無償化の条件

大学無償化制度は、世帯年収や扶養する子どもの人数といった個別の事情に応じて、給付内容が手厚くなってきました。ここでは、2025年度からの支援内容について見ていきましょう。
2025年度で変わる条件
2025年度からは、多子世帯(子ども3人以上を扶養する世帯)であれば、世帯年収に関係なく大学等の授業料と入学金の一定額までが無償化されます。
しかし、支援額(減免額)には上限が設けられており、学校種や国公立か私立かによって上限額が異なります。また、各学校によって入学金や授業料は異なり、実際の学費が支援額を上回る場合もあるため、完全な無償化とならないケースもある点に注意しましょう。
減免される金額の上限は、以下のようになっています。
【昼間制】
学校種 | 国公立/私立 | 授業料減免上限額 (年額) |
入学金減免上限額 (1回限り) |
---|---|---|---|
大学 | 国公立 | 53.58万円 | 28.20万円 |
私立 | 70.00万円 | 26.00万円 | |
短期大学 | 国公立 | 39.00万円 | 16.92万円 |
私立 | 62.00万円 | 25.00万円 | |
高等専門学校 | 国公立 | 23.46万円 | 8.46万円 |
私立 | 70.00万円 | 13.00万円 | |
専門学校 | 国公立 | 16.68万円 | 7.00万円 |
私立 | 59.00万円 | 16.00万円 |
【夜間・通信制】
学校種 | 国公立/私立 (設置者) |
授業料減免上限額 (年額) |
入学金減免上限額 (1回限り) |
---|---|---|---|
大学(夜間制) | 国公立 | 26.79万円 | 14.10万円 |
私立 | 36.00万円 | 14.00万円 | |
短期大学(夜間制) | 国公立 | 19.50万円 | 8.46万円 |
私立 | 36.00万円 | 17.00万円 | |
専門学校(夜間制) | 国公立 | 8.34万円 | 3.50万円 |
私立 | 39.00万円 | 14.00万円 | |
大学・短大・専門学校(通信制) | 私立 | 13.00万円 | 3.00万円 |
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文部科学省「授業料等減免額(上限)・給付型奨学金の支給額」より
https://www.mext.go.jp/kyufu/assets/file/kyufu.pdf
所得制限なく支援を受けられる
2025年度からは、子ども3人以上を扶養する世帯であれば、所得制限なく支援を受けることが可能になります。 2024年度までは、多子世帯への支援に世帯年収600万円という所得制限が設けられており、支援額も全額支援の4分の1に限定されていました。
この改正で、より多くの多子世帯が教育支援を受けられるようになり、子育て世帯の経済的負担の軽減が期待できます。
「子ども3人以上を同時に扶養」が条件
多子世帯として支援を受けるには、3人以上の子どもを「同時に」扶養していることが条件となります。
たとえば、子どもが3人以上いても第1子が就職して扶養から外れると、扶養する子どもは2人になってしまうため、制度の対象外となってしまいます。子どもが3人いれば必ず大学無償化の支援を受けられるわけではない点を理解しておきましょう。

なお、対象となるのは、2025年4月に入学する学生と、2025年4月時点で前年度から在学中の学生です。
学業要件
多子世帯の大学無償化においても、一定の学業要件を満たす必要があります。
基本的には「学業意欲があれば採用」となりますが、2024年度までの制度と比べて、より高いレベルの学業意欲と学修成果が求められるようになりました。
具体的な学業要件は、以下のとおりです。
警告(支援は継続) | 廃止(支援打ち切り) | |
---|---|---|
授業出席率要件 | 8割以下(半期15回中3回以上欠席) | 6割以下(半期15回中6回以上欠席) |
修得単位数要件 (124単位が卒業要件の場合) |
7割以下かつ下記の基準 1年生:21単位以下 2年生:43単位以下 3年生:65単位以下 4年生:86単位以下 |
6割以下かつ下記の基準 1年生:18単位以下 2年生:37単位以下 3年生:55単位以下 4年生:74単位以下 |
GPA(成績評価)要件 | 所属する学部等の下位4分の1 | 警告要件に2回連続で該当(*) |
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文部科学省「【7月8日更新】令和7年度以降の「高等教育の修学支援新制度」の学業要件について」
https://www.mext.go.jp/content/20240704-mxt_gakushi_100001505_1.pdf
- 2回目の警告がGPA要件のみの場合は、打ち切りでなく次回判定までの支給停止となります。
これらの基準を下回った場合は警告が発せられ、改善が見られない場合は支援が打ち切られる可能性があります。ただし、病気や災害のような特別な事情がある場合は、要件を満たさなくても打ち切り等にはなりません。
現行(2024年度)と変わらない条件
多子世帯の大学無償化について、2024年度までの制度から継続される支援と、その注意点について解説します。
奨学金の併用も可能
各大学の入学金や授業料は異なり、授業料と入学金の減免だけではまかないきれない部分が発生する可能性があります。ただし、多子世帯では給付型奨学金との併用が可能であり、世帯年収600万円程度の世帯は、⾮課税世帯に準ずる世帯の4分の1の額の給付型奨学金を受けられます。支援金の不足分には、給付型支援金を充てることも可能です。
対象校以外への進学は利用不可
大学無償化制度を利用するためには、2025年度も進学先が制度の要件を満たす確認を受けた対象校でなければなりません。進学を検討している学校が対象校かどうかは、文部科学省の特設ページで公開されている一覧から確認できます。
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文部科学省「支援の対象となる大学・短大・高専・専門学校一覧」
https://www.mext.go.jp/kyufu/support_tg.htm
子ども2人以下の無償化の条件
2025年度の大学無償化制度の拡充では子ども2人以下の世帯は対象外で、2024年までの制度が適用されます。ここでは、現行制度の内容をあらためて見ていきましょう。
現行(2024年度)の支援条件と内容
2024年度の大学無償化制度では、世帯収入に応じた所得制限が設けられています。支援内容は授業料・入学金の減免と給付型奨学金の支給が基本となり、世帯の収入状況によって支給額が変動する仕組みです。
多子世帯の場合、扶養する子どもが3人以上から2人に減少すると、新たな制度の対象外となります。しかし、現行の所得要件を満たす場合、支援が継続されます。
なお、給付型奨学金との併用は可能ですが、文部科学省が指定する対象校への進学が支援の条件となっています。
世帯収入条件
子ども2人以下の世帯で大学無償化制度の適用を受けるには、世帯収入に関する一定の条件を満たす必要があります。具体的には、「住民税非課税世帯または住民税非課税世帯に準ずる世帯」や、「世帯年収600万円以下の私立理工農系の学部・学科の学生」が支援の対象となります。
世帯年収ごとに受けられる支援の水準は、以下のとおりです。
世帯年収目安 | 授業料等減免 | 給付型奨学金 |
---|---|---|
約270万円未満(住民税非課税世帯) | 全額支援 | 全額支援 |
約300万円未満 | 3分の2支援 | 3分の2支援 |
約380万円未満 | 3分の1支援 | 3分の1支援 |
約600万円未満 | 4分の1支援等(私立学校の理工農系) | - |
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文部科学省「令和7年度からの奨学金制度の改正(多子世帯の大学等の授業料等無償化)に係るFAQ」より
https://www.mext.go.jp/content/20240426-mxt_gakushi_100001505_2.pdf

資産条件
大学無償化制度の利用にあたり、資産要件が設けられています。支援を受けるためには、学生本人と生計維持者の資産額の合計が一定基準を下回る必要があります。生計維持者が2人いる世帯の場合は2,000万円未満、1人の場合は1,250万円未満が条件です。
対象となる資産には現金やそれに準ずるもの(預貯金や有価証券の合計額)が該当し、不動産は含まれません。なお、資産の確認については申請者の自己申告によるものとなっており、通帳の写しなどの提出は不要です。
学業に係る要件
大学無償化制度の支援を受けるためには学力基準を満たす必要があります。ただし、成績だけが判断基準ではなく、学修意欲がある学生にも門戸を開いているのが特徴です。具体的には、「将来、社会で自立し、活躍する目標を持って学習に取り組む意欲がある」ことを示せれば、支援を受けられる可能性があります。この学修意欲の確認は、面談やレポート提出などを通じて行われます。
以下は、採用時の学業成績・学修意欲に関する要件をまとめた表です。
区分 | 要件 |
---|---|
予約採用(高校3年生) |
|
在学採用(1年生) | 以下のいずれかに該当
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在学採用(2~4年生) | 以下のいずれかに該当
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文部科学省「支援措置の対象となる学生等の認定要件について」より
https://www.mext.go.jp/kyufu/student/20210730-mxt_kouhou02_1.pdf
大学無償化の手続き
大学無償化の申し込み手続きは、2025年度に対象となる多子世帯と、現行制度で対象となる世帯で申し込み方法が異なります。ここでは、大学無償化の手続きについて解説します。
2025年度はいつ申し込めばいい?
2024年までの現行制度では、高校3年生で申し込む「予約採用」と、大学などへ進学後に申し込む「在学採用」の2種類があります。2025年度に多子世帯に該当した世帯については、「在学採用」での申し込みのみの予定です。
多子世帯(子ども3人以上)の場合
2025年度(令和7年度)の多子世帯向け高等教育修学支援新制度は、大学等入学後の在学採用のみとなります。申し込みは2025年4月以降、大学等の学生窓口で申込書類を受け取り、学校を通じて日本学生支援機構へ手続きを行います。
申し込みの際は学生本人と生計維持者のマイナンバーの提出が必要です。申し込み後に選考が行われ、結果は学校を通じて受け取ります。
なお、2024年度の予約採用で支援対象外となった在学生でも、2025年度からの新制度では所得制限が撤廃されるため、採用される可能性があります。
子ども2人以下世帯の場合
子ども2人以下の世帯については現行制度が継続されるため、申請方法は従来どおりです。大学等に在学中の学生は在学採用での申請となり、各教育機関で定められた期間に手続きをする必要があります。大学等では春学期と秋学期の年2回、申請期間が設けられているのが一般的です。
一方、翌年4月に大学等に進学予定の方(高校3年生や高校卒業後2年を経過していない方)の場合は、在学中の高校を通じて3年生の4月下旬頃から日本学生支援機構へ給付型奨学金の予約採用の申請ができます。授業料減免については、大学等に入学後に進学先に申し込みます。

大学無償化の対象外だから諦めるべき?奨学金の条件
2025年からの大学無償化では対象が拡大されましたが、それでも年収600万円以上や子どもが2人以下の世帯は対象外となります。しかし、そのような大学無償化の対象外になる世帯でも利用できる支援制度はあります。
返済不要の奨学金もある
大学無償化制度の対象とならない場合でも、さまざまな奨学金制度を活用できる可能性があります。奨学金には返済が必要な貸与型と、返済不要の給付型の2種類があります。ご自身の状況に合った奨学金を探し、学費の負担を軽減できるよう、くわしく調べてみましょう。
貸与型奨学金
貸与型奨学金で最も一般的なのは、日本学生支援機構が運営する奨学金です。第一種奨学金(無利子)と第二種奨学金(有利子)があり、家計基準や学業成績などの基準を満たせば利用できます。
ただし、卒業後に返済が必要となるため、借入金額や返済計画は慎重に検討する必要があります。日本学生支援機構の「進学資金シミュレーター」を利用すれば、ご自身の返済額を試算できます。
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日本学生支援機構「進学資金シミュレーター」
https://shogakukin-simulator.jasso.go.jp/
給付型奨学金
返済不要の給付型奨学金は、日本学生支援機構以外にも多様な選択肢があります。地方自治体や民間の財団、各大学が独自に設けている制度があり、教育費負担の軽減につながる貴重な機会といえます。
これらの給付型奨学金は、成績基準や経済状況といった応募条件が設定されているケースが一般的です。募集時期や申請方法は団体によって異なるため、入学前から積極的に情報を集め、複数の奨学金制度への応募をおススメします。進学予定の大学などの独自制度については、オープンキャンパスや学校説明会で早めに確認しておくと良いでしょう。

まとめ
2025年度から、子ども3人以上の多子世帯についての大学無償化制度は所得制限が撤廃され、より多くの世帯が支援を受けられるようになりました。子ども2人以下の世帯でも、条件を満たせば授業料等の支援を受けられる可能性はあります。
また、大学無償化制度の対象とならない場合でも、日本学生支援機構の奨学金に加え、地方自治体や民間団体、大学独自の給付型奨学金といった、さまざまな支援制度を活用できます。早めに情報収集を始め、複数の支援制度を組み合わせると、教育費の負担を効果的に軽減できるでしょう。
執筆者:松田 聡子(まつだ さとこ)
執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、DCアドバイザー、二種外務員資格
執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、DCアドバイザー、二種外務員資格
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