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失業保険とは?自己都合退職でも受け取れる?条件や計算方法、手続きについて解説

失業保険とは?自己都合退職でも受け取れる?条件や計算方法、手続きについて解説
  • 2024年4月8日
失業保険は、失業時の生活や再就職を支えてくれる大切な制度です。受給には要件が定められていますが、一定の条件を満たせば自己都合による退職でも給付を受けられる場合があります。
この記事では、失業保険を受給する条件や計算方法、手続きの流れについて解説します。

目次

失業保険とは

失業保険とは正式名称を「雇用保険」といい、従業員を抱える事業所が加入する労働保険のひとつです。「失業手当」や「失業給付金」と呼ばれることもあります。主に、労働者が失業したときの生活を安定させることが目的で、1日も早く新しい就職先を見つけるための支援が行われています。

雇用保険に加入していなければ、失業保険は受け取れない

失業保険は、勤務先が雇用保険の加入手続きを行っていなければ手当てを受け取ることができません。雇用保険の被保険者となる基準は下記のとおりです。

  1. 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。具体的には、次のいずれかに該当する場合をいいます。
  • 期間の定めがなく雇用される場合
  • 雇用期間が31日以上である場合
  • 雇用契約に更新規定があり、31日未満での雇止めの明示がない場合
  • 雇用契約に更新規定はないが同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある場合(注)
(注)当初の雇入時には31日以上雇用されることが見込まれない場合であってもその後、31日以上雇用されることが見込まれることとなった場合には、その時点から雇用保険が適用されます。
  • 1週間の所定労働時間が20時間以上であること。

  • 厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147331.html
正社員だけでなくアルバイトやパートであっても、上記の条件に当てはまる場合は雇用保険の被保険者となります(昼間学生を除く)。自分が雇用保険の被保険者となっているかは、勤務先へ直接たずねる方法のほかに、マイナポータルで雇用保険の加入履歴を確認することも可能です。

失業保険を受け取れる条件

失業保険を受給するためには、いくつかの条件が定められています。くわしく確認していきましょう。

失業保険を受け取れる条件とは

失業保険を受け取れるのは、次の就職先が決まっていない「失業の状態」にある人のみです。

「失業の状態」とは?

失業の状態とは、次の条件をすべて満たすことを指します。

  • 積極的に就職しようとする意思があること
  • いつでも就職できる能力(健康状態・環境など)があること
  • 積極的に仕事を探しているにもかかわらず、現在職業に就いていないこと

したがって、妊娠や出産、病気、ケガなどですぐに就職ができない場合は、失業保険を受け取ることができません。
「失業の状態」とは?

退職した理由によって、満たすべき被保険者期間の違いがある

失業保険を受け取るには、一定期間雇用保険に加入している必要があります。この「一定期間」は、退職理由などによって満たすべき期間が異なるため注意が必要です。

自己都合退職【一般の受給資格者】の場合

自らスキルアップやキャリアアップを希望して退職した場合は、失業保険の「一般の受給資格者」となります。一般の受給資格者が失業保険を受けるためには、離職日以前の2年間に、被保険者期間が通算して12ヵ月以上あることが必要です。
自己都合退職【一般受給資格者】の場合

自己都合退職【特定理由離職者】の場合

自己都合による退職であっても、正当な理由がある場合は「特定理由退職者」とみなされます。特定理由退職者が失業保険を受けるためには、離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6ヵ月以上あることが必要です。
特定理由退職者と認められる「正当な理由」には、次のようなケースが挙げられます。

  • 労働契約期間満了後に更新を希望したにもかかわらず、更新がされなかった
  • 体力の不足や心身の不調がある
  • 妊娠や出産、育児などを理由に離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた
  • 家族の看護や扶養など家庭の事情が急変したことで離職を余儀なくされた
  • 結婚や事業所の移転、公共交通機関の廃止などを理由に通勤が困難になった

自己都合退職【特定理由離職者】の場合

会社都合退職【特定受給資格者】の場合

勤務先の倒産や解雇など会社側の都合によって退職した場合は、「特定受給資格者」とみなされます。特定受給資格者が失業保険を受けるためには、離職日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6ヵ月以上あることが必要です。
倒産や解雇以外にも、職場でハラスメントを受けて退職した場合や、賃金の低下によって退職した場合なども特定受給資格者として認められる可能性があります。

失業保険で受け取れる金額の計算方法

失業保険で受け取れる1日あたりの手当てを「基本手当日額」といいます。ここからは、失業保険の受給額の計算方法について確認していきましょう。

基本手当日額の計算方法

失業保険の基本手当日額は、下記の式によって算出されます。
基本手当日額 = 賃金日額(退職前6ヵ月の賃金 ÷ 180)× 給付率(45~80%)
基本手当日額や賃金日額には、離職時の年齢に応じて上限・下限額が定められています。なお、それぞれの額は2023年8月1日に見直しが行われました。
離職時の年齢 賃金日額 給付率 基本手当日額
29歳以下 2,746円以上(下限額)5,110円未満 80% 2,196円(下限額)~4,087円
5,110円以上 12,580円以下 80~50% 4,088円~6,290円(*1)
12,580円超 13,890円以下 50% 6,290円~6,945円
13,890円(上限額)超 上限額適用 6,945円(上限額)
30~44歳 2,746円以上(下限額)5,110円未満 80% 2,196円(下限額)~4,087円
5,110円以上 12,580円以下 80~50% 4,088円~6,290円(*1)
12,580円超 15,430円以下 50% 6,290円~7,715円
15,430円(上限額)超 上限額適用 7,715円(上限額)
45~59歳 2,746円以上(下限額)5,110円未満 80% 2,196円(下限額)~4,087円
5,110円以上 12,580円以下 80~50% 4,088円~6,290円(*1)
12,580円超 16,980円以下 50% 6,290円~8,490円
16,980円(上限額)超 上限額適用 8,490円(上限額)
60~64歳 2,746円以上(下限額)5,110円未満 80% 2,196円(下限額)~4,087円
5,110円以上 11,300円以下 80~45% 4,088円~5,085円(*2)
11,300円超 16,210円以下 45% 5,085円~7,294円
16,210円(上限額)超 上限額適用 7,294円(上限額)
  • 0.8 × 賃金日額 - 0.3{(賃金日額 - 5,110)÷ 7,470}× 賃金日額で算出
  • 0.8 × 賃金日額 - 0.35 ×{(賃金日額 - 5,110)÷ 6,190}× 賃金日額、(0.05 × 賃金日額)+ 4,520のいずれか低い方
  • 「厚生労働省 令和5年8月1日からの基本手当日額等の適用について」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000160564_00032.html
たとえば、離職時に28歳で賃金日額が15,000円だった場合、上限額の13,890円が適用されるため、受給する基本手当日額は6,945円となります。

離職時の年齢が60歳〜64歳の場合

離職時の年齢が60~64歳で、賃金日額が5,110円以上11,300円以下の場合、基本手当日額は下記式で算出されたいずれか低い方が適用されます。

  • 0.8 × 賃金日額 - 0.35 ×{(賃金日額 - 5,110)÷ 6,190}× 賃金日額
  • (0.05 × 賃金日額)+ 4,520

他の年齢階層とは、用いる計算式が異なるため注意が必要です。

離職時の年齢が65歳以上の場合

満65歳以上の方が失業した場合は、基本手当の代わりに「高年齢求職者給付金」を受給します。
手当ての名称は異なるものの、給付額の算出は同じく「賃金日額(退職前6ヵ月の賃金 ÷ 180)× 給付率」によって算出します。

失業保険を受け取るための手続き

失業保険を受け取るための手続き
失業手当の給付を受けるためには、管轄のハローワークで手続きを行う必要があります。ここからは、失業手当を受給するまでの流れや必要書類を確認していきましょう。

失業手当を受け取るまでの手続きの流れ

失業手当の受給は、下記の流れに沿って手続きを行います。

  1. 職後に受け取る離職票と必要書類をハローワークに提出し、受給資格の決定を受ける
  2. 「雇雇用保険受給者初回説明会」に出席する
  3. 失業認定日にハローワークへ行く
  4. 失業手当を受け取る

失業手当を受け取るまでの手続きの流れ
「雇用保険受給者初回説明会」は、指定された日時に開催されます。説明会では、「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が交付されますので、必ず保管しておきましょう。
また、失業の認定は原則4週間に1度行われます。指定された日にハローワークへ行き、求職活動の内容を記載した「失業認定申告書」と、「雇用保険受給資格者証」を提出してください。
就職先が決まる、もしくは支給期間が終わるまで、(3)と(4)を繰り返しながら失業手当を受け取ります。

手続きに必要な書類

ハローワークで受給資格の決定を受ける際は、下記の書類を提出します。

  • 雇用保険被保険者離職票
  • 個人番号確認書類(マイナンバーカードや通知カード)
  • 本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカード)
  • 証明写真2枚(最近の写真、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm)
  • 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード

「雇用保険被保険者離職票」は、離職後に会社から交付されることが一般的です。もし交付されない場合は、管轄のハローワークにて相談しましょう。

失業保険受給中の注意点

失業保険の受給中は、不正受給とならないように注意が必要です。不正受給と認められるケースにはいくつかの要因があり、意図せずに不正受給となってしまうこともあるかもしれません。
ここからは、不正受給とみなされるケースや受給中のアルバイトの可否について解説します。

不正受給とは

失業保険の不正受給とは、働いたことを申告しなかったり、偽った申告をしたりする不正行為によって失業保険を受給することです。具体的には、次のようなケースが挙げられます。

  • 就職や就労をしたことを申告しなかった場合
  • 求職活動の実績を偽って申告した場合
  • 内職や手伝いで収入を得たことを申告しなかった場合
  • 自営業を始める準備をしたことを申告しなかった場合
  • 健康保険の傷病手当金や労災保険の休業補償給付などの支給を受けて申告しなかった場合
  • 離職理由を偽って失業手当を受けた場合

特に注意したいのが、就職や就労、自営業などは「収入がなくても申告が必要となる」という点です。「アルバイトやパートとして働いた」、「自営業を始めた」という場合は、収入の有無にかかわらず必ず申告するようにしましょう。
もし不正受給が認められた場合、不正受給した失業保険の返還を求められるだけでなく、不正行為によって支給された額の最大2倍の金額の納付が命じられることもあります。
意図せずに不正受給とならないためにも、申告すべき内容は必ず理解しておくことが大切です。

受給中のアルバイトやパートはできない?

失業保険の受給中、「アルバイトやパートで収入を補いたい」という人もいるかもしれません。受給中のアルバイトやパートで気をつけたいのは、1週間あたりの労働時間についてです。
失業保険では、原則週20時間以上の労働については、アルバイトやパートであっても「就職した」とみなされます。そのため、週20時間を超えるようなアルバイトに就くと、その後は失業保険を受給することができません。
一方、週20時間未満のアルバイトやパートについては、引き続き求職の意思があれば失業保険を受給できる場合があります。ただし、この場合でも労働時間や賃金によって給付額が減額となることがあるため、アルバイトやパートとして働きたい場合は、一度ハローワークで相談してみると良いでしょう。

まとめ

失業保険は、働く意欲がありながらもすぐに再就職できないときに、生活を安定させて1日も早く就職することを支援するための制度です。失業すれば必ず受け取れるわけではないため、受給の条件を満たすことを確認し、申請できる場合は必要書類を揃えてハローワークで手続きを行いましょう。
執筆者:椿 慧理(つばき えり)
執筆者保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、1種外務員資格、内部管理責任者
※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。
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