生活費の平均はどれくらい?シングルマザーが活用できる制度を解説
- 2022年10月31日
- 2024年3月6日
最近では、全世帯のうち約1%がシングルマザー世帯と言われています。約1%と聞くと少なく感じるかもしれませんが、数でみると約64万世帯にものぼります。
シングルマザーには仕事や子育てとの両立が難しいと感じる方が多く、どれくらいの生活費が必要なのか気になる方も多いのではないでしょうか。
母子家庭の生活費は、子どもが1人から2人の場合で平均月20万円前後だといわれています。実際に必要な金額は家族構成や子どもの年齢、生活環境によって異なるため、個々の状況を見てご自身に必要な金額を見極める必要があるでしょう。
今回は、ファイナンシャルプランナーがシングルマザーとして生活にいくら必要なのか具体的な金額や内訳を解説します。シングルマザーが活用できる手当や支援制度、生活を安定させるためのポイントも解説するため、参考にしてください。
シングルマザーの平均的な生活費
まずは、気になるシングルマザーの生活費はいくらなのか、具体的な金額を見ていきましょう。
シングルマザーの平均的な生活費は月々約20万円
総務省統計局が2019年に行った調査によると、母子家庭で世帯人数平均2.44人、つまり子ども1~2人の場合、生活費の平均は月19万6,379円でした。
支出項目 | 平均金額 | 割合 |
---|---|---|
食料(外食を除く) | 4万61円 | 20.4% |
外食 | 1万1,390円 | 5.8% |
住居 | 2万8,671円 | 14.6% |
光熱・水道 | 1万5,121円 | 7.7% |
家具・家事用品 | 6,088円 | 3.1% |
被服 | 8,837円 | 4.5% |
保健医療 | 6,481円 | 3.3% |
交通・通信 | 3万1,421円 | 16.0% |
教育 | 9,033円 | 4.6% |
教養娯楽 | 1万5,514円 | 7.9% |
その他の消費支出 | 1万9,834円 | 10.1% |
交際費 | 3,731円 | 1.9% |
- 小数点以下は四捨五入
これらの生活費とは別に、所得税や社会保険料等の非課税支出として、月平均2万8,961円があります。
https://www.stat.go.jp/data/zenkokukakei/2019/pdf/gaiyou0305.pdfを基にトランス・コスモス株式会社が作成
子どもの人数や年齢、生活環境によって異なる
生活費の月20万円という数字はあくまでも平均で、子どもの人数が増えるほど教育費や食費は増えます。自らの生活に当てはめるときは、家族構成や生活環境も考慮することが大事です。
例えば、持ち家でローンがない場合は住居費がかかりません。子どもが私立学校に通う家庭では、平均より教育費が高くなることも考えられるでしょう。
また、子どもの年齢が上がるほど、食費・教育費・お小遣い等必要な生活費が増えます。
特に、高校に上がる15歳から17歳では、高校の授業料・学習塾の費用・携帯電話代等により、支出が大幅に増えるといわれています。
シングルマザーの収入や貯蓄は?
それでは、シングルマザーの収入や貯蓄額はどれくらいなのでしょうか。
シングルマザーの就労収入は平均約200万円
2016年に厚生労働省がひとり親世帯に対して行った調査によると、シングルマザーの就労収入は平均で約200万円、月々に換算すると約16.6万円でした。ここから所得税・住民税・社会保険料が差し引かれるため、手取りは13万円~14万円前後です。
これを見ると、就労収入だけで生活費の平均である月20万円をまかなうことが難しい家庭もあると考えられます。実際、先ほどの調査では母子家庭のうち50%もの世帯が、最も困っていることとして「仕事」や「自分の健康」等の選択肢がある中で、「家計」と答えているのが現状です。
とはいえ、就労収入は雇用形態によっても異なります。シングルマザーのうち正規職員・従業員の年間就労収入は305万円、パートやアルバイトの場合133万円と、200万円近くの差があります。
ちなみに、同統計での父子家庭の平均的な就労収入は、母子家庭の約2倍となる398万円でした。同じひとり親世帯でも、シングルマザーの収入はシングルファザーに比べて低い傾向にあり、非正規雇用の方ほど収入が不安定になりやすいことがわかります。
貯蓄は「50万円未満」の家庭が約40%
貯蓄状況からも、シングルマザーの生活費に余裕があるかどうかがわかります。母子世帯の預貯金額は50万円未満の家庭が最も多く39.7%、200万円未満の家庭が約57%を占めています。
仮に50万円の貯蓄があったとしても、生活費が月20万円であれば2.5ヵ月分です。事故や病気で働けなくなった、仕事がなくなった等の事態を考えると、十分な貯蓄があるとはいえないでしょう。
養育費や手当を合わせた収入は平均348万円
2016年度の厚生労働省の調査では、平均世帯人員3.31人、つまり子どもが2~3人の母子世帯の収入は平均で348万円、月々に換算すると平均29万円でした。就労収入に比べると、世帯収入は年収で150万円ほど高くなっています。
世帯年収と就労収入に差が出る理由は、就労収入以外に児童扶養手当・養育費・遺族年金・親からの仕送り・子どものアルバイト収入等同居親族の収入が含まれるためです。
世帯年収の平均でいえば、生活費をまかない、将来に向けた貯蓄ができる金額といえます。
また、手当・助成金・支援制度もありますので、積極的に使っていくとよいでしょう。手当・助成金・支援制度については、次の章で詳しく紹介します。
シングルマザーが活用できる手当・助成金・支援制度
ここでは、シングルマザーが活用できる手当や助成金、支援制度を紹介します。自治体によって異なる場合や所得要件が設けられているケースもありますが、知っておけばいざというときの助けになるでしょう。
児童手当
児童手当は、シングルマザーに限らず子どもを養育している方がもらえる手当です。
中学校卒業まで(15歳の誕生日後の、最初の3月31日まで)の子どもを養育している方
【支給額】
3歳未満 | 月1万5,000円 |
3歳以上小学校修了前 | 月1万円(第3子からは1万5,000円) |
中学生 | 月1万円 |
所得制限限度額を超え所得上限限度額未満の場合:子ども1人当たり月額一律5,000円
所得上限限度額を超えた場合:支給なし
例えば、子ども1人の場合の所得制限は、所得制限限度額は660万円(年収約875万円程度)、所得上限限度額は896万円(年収約1,124万円程度)となっています。
支給額は子どもの数や各々の所得控除額によって変わるため、詳しくは児童手当の申請先である市区町村役場に確認してください。
ちなみに、児童手当は保護者のうち所得が高いほうに支給されます。ただし、離婚協議中で離婚協議中であることをあきらかにできる書類がある場合は児童と同居するほうが優先されるため、覚えておきましょう。
児童扶養手当
名称は児童手当と似ていますが、一定の収入以下のひとり親を対象とした手当です。
18歳の誕生日後の最初の3月31日まで(障害児の場合20歳未満)を監護するひとり親世帯
所得に応じて、全額支給、一部支給、支給なしのいずれかに判断されます。
第一子 | 全額支給 月4万3,070円 一部支給 月1万160円~4万3,060円 |
第二子 | 全額支給 月1万170円加算 一部支給 月5,090円~1万160円加算 |
第三子以降 | 全額支給 月6,100円加算 一部支給 月3,050円~6,090円加算 |
児童手当と同様、市区町村役場に申請が必要で、所得制限があります。母と子の2人世帯の場合、全額支給は所得87万円、年収に換算すると160万円、一部支給で所得230万円、年収365万円が所得の限度額です。
ちなみに、児童扶養手当では同居家族の所得も審査されるため、祖父母等の同居家族がいる方は注意してください。
各自治体の児童手当
自治体ごとに、独自の児童手当が設けられていることがあります。ここでは、一例として東京都が行っている児童育成手当を紹介します。
18歳の誕生日後の最初の3月31日まで(障害児の場合20歳未満)を監護するひとり親
子ども1人当たり月1万3,500円
- 障害児の場合月1万5,500円
例えば東京都の場合、所得制限はありますが、児童扶養手当に比べると所得限度額は高めに設定されているため、児童扶養手当は対象外でも児童育成手当はもらえる可能性があります。自治体ごとに手当の有無や支給条件が異なるため、お住まいの市区町村役場にて確認してください。
子ども医療費助成
子育て世帯の経済的な負担を軽減するために、子どもの医療費を助成する制度もあります。自治体が主導で行っており、名称や助成内容は地域ごとに異なります。
6歳になるまで医療費が全額免除、中学生まで月500円の自己負担等、支給対象や金額はさまざまです。すべての子どもを対象とする自治体もあれば、所得制限を設ける自治体も存在するため、詳細はお住まいの市区町村役場に問い合わせましょう。
ちなみに、子ども医療費助成以外にひとり親家庭に向けた医療費助成を設ける自治体も存在します。例えば、大阪府では一定の所得以下のひとり親家庭に対し、父母や養育者の医療費を助成しています。
住宅支援制度
自治体によっては、ひとり親向けの住宅支援制度があります。
家賃の一部が助成される場合や、公営住宅への入居が優先される、収入審査が緩和される等、支援内容や金額は自治体によってさまざまです。
すべての自治体で制度があるわけではなく、制度があっても所得や居住地に条件が設けられている、募集時期が決まっている等の場合もあるため、早めに情報収集をしておきましょう。
高等学校等就学支援制度
シングルマザーに限った制度ではありませんが、高等学校等の授業料の負担を軽減するための文部科学省による支援制度があります。
日本国内に居住し、高校に在学する方
【支給額】
公立学校に通う場合 | 高校授業料相当分(年11万8,800円) |
私立学校に通う場合 | 所得に応じて加算 |
所得制限があり、目安として年収910万円以上の方は対象外ですが、全国の約80%の生徒が利用しています。申請方法は入学時等に学校から案内されるため、忘れずに手続きしましょう。
ひとり親控除
ひとり親の納税者を対象とした所得控除です。
その年の12月31日時点でひとり親である方
- 事実上婚姻関係とみなされる人がおらず、生計を同じくする子がいること
その年の所得から35万円が控除されます。
合計所得が500万円以下かつ、子どもに収入がある場合所得金額が48万円以下であることが条件です。ひとり親控除を受けるには、年末調整や確定申告時に申告しなければなりません。
ひとり親控除は、従来の寡婦控除が見直されて2020年に新設された制度です。ひとり親は婚姻関係の有無を問わず、未婚のシングルマザーも対象になったため、これまで対象外だった方も控除が受けられることがあります。
遺族年金
夫と死別したシングルマザーの場合、遺族基礎年金や遺族厚生年金が支給される可能性があります。
遺族年金は、国民年金や厚生年金に加入していた被保険者によって、生計を維持していた遺族が受け取れます。被保険者、つまり亡くなった夫の納付状況や年齢等に条件があるため、詳しくは日本年金機構に確認しましょう。
国民年金・国民健康保険料の減免
所得が少なく支払いが困難な場合、国民年金や国民健康保険料が減額される制度があります。
経済的に厳しいからといって、国民年金や国民健康保険料を未納のまま放置するのは危険です。障害や死亡等、万が一の事態が起こったときに年金が受け取れない、医療費が全額負担で病院にかかれない、延滞金が発生する等のリスクがあります。
減免は自己申告制で、自治体で手続きが必要なため、早めに相談することをおすすめします。
その他、減免や割引、支援制度
その他自治体によって、保育料や上下水道料金、粗大ごみ手数料、交通機関等の割引や、公的貸付制度が設けられています。いずれも、18歳未満の児童を扶養している方、配偶者のいない方等の条件があるため、詳細は自治体に確認しましょう。
また、公的機関以外にシングルマザーやひとり親の子どもへの支援を行う団体も存在します。例えば、あしなが育英会では親を病気や災害でなくした遺児に対し、無利子貸与や給付での奨学金を用意しています。
シングルマザーとして安定した生活を送るためにできること
シングルマザーとして安定した生活を送るためには、使える支援制度を最大限活用したうえで、次の2点を実行してみることをおすすめします。
見える化して家計を管理する
家計の安定には、今の収入と支出の具体的な把握が必要です。家計簿に苦手意識を持つ方もいるかもしれませんが、家計管理を効率化させることで無理なく収支を見える化できます。
例えば、金融機関のインターネットバンキングを家計簿アプリと併用すれば、アプリ1つで口座はもちろん、クレジットカードや電子マネーの管理が可能です。
無理なく家計管理できる仕組みをつくれば、お金を使いすぎたタイミングや節約できるポイントも見えてきます。将来のマネープランを考える際にも参考になるため、生活を安定させる第一歩として家計管理から始めてみましょう。
NISAを始める
投資信託は運用状況によって元本を下回る可能性はありますが、毎月一定額を購入することで長期的な資産運用効果が期待できます。
まとめ
シングルマザーの生活費の平均は、子どもが1~2人の場合で月20万円ほどです。そして平均生活費に対してシングルマザーの就労収入は決して高くはなく、生活費に不安を感じる方が多いのも事実です。
一方で生活を支えるための国や行政の支援制度も存在します。条件はお住まいの地域によって異なるため、まずは自治体の窓口でどのような支援があるのか確認し、使える制度は最大限活用しましょう。
支援制度の活用と合わせて、支出の見直しや子どもの成長に合わせたマネープランを検討することもおすすめします。
執筆者保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士
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(2024年3月6日現在)