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年末調整の扶養控除とは?扶養親族の要件や制度概要を解説

年末調整の扶養控除とは?扶養親族の要件や制度概要を解説
更新日:2025年12月15日
年末調整の時期になると、「扶養控除」という言葉を耳にする機会がふえるかもしれません。子どもが成長して児童手当の対象から外れた方や、両親が年金生活になり経済的に援助している方等など、年末調整の扶養控除を初めて受けようとする方もいるでしょう。
この記事では、年末調整の扶養控除の概要や、扶養控除の対象となる親族の要件、扶養控除額等などについて、ファイナンシャルプランナーがわかりやすく解説します。

目次

年末調整における「扶養控除」とは?

年末調整における「扶養控除」とは?
扶養控除とは、配偶者以外の子どもや親など、要件を満たす親族を養っている場合、所得金額から一定の所得控除を受けられる制度です。

一般的に、養わなければならない親族がいる場合は、そうでない人よりも経済的な負担が大きくなるでしょう。そのような事情を考慮し、所得控除により税負担を軽減するのが扶養控除の目的です。

年末調整で扶養控除を受けるには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下、「扶養控除申告書」)を、会社の担当者へ提出しなければなりません。扶養控除申告書には、所得者本人の氏名・マイナンバー・住所や、扶養控除の対象となる親族の氏名・マイナンバー・続柄・生年月日などの情報を記入します。
なお、扶養控除額は、扶養控除の対象となる親族の年齢や同居の有無などによって、38万円・48万円・58万円・63万円のいずれかです。くわしくは、「扶養控除額は扶養親族の区分によって異なる」の章で紹介するので、併せて参考にしてください。

扶養控除の対象となる親族の5つの要件

扶養控除の対象となる親族の5つの要件

養っている親族が全員扶養控除の対象となるわけではありません。ここでは、扶養控除の対象となる親族の5つの要件について見ていきましょう。

配偶者以外の親族であること

扶養控除の対象となる親族は、配偶者を除く、「6親等内の血族」および「3親等内の姻族」です。血族は所得者の親族、姻族は所得者の配偶者の親族を指します。子どもや両親は1親等、兄弟姉妹・祖父母・孫は2親等に該当するため、幅広い親族が扶養控除の対象となりうるでしょう。

また、都道府県知事または市町村長から養育を委託されている児童や老人は、6親等内の血族や3親等内の姻族に該当しなくても、扶養控除の対象です。

配偶者は扶養控除を受けられませんが、所得者の1年間の合計所得金額が1,000万円以下の場合、その配偶者は「配偶者控除」に該当する可能性があります。

16歳以上であること

扶養控除の対象となる親族の年齢は、扶養控除を受ける年の12月31日現在で、16歳以上です。たとえば、大学に通う子どもや、退職した親などが該当します。
一方、15歳以下の子どもは扶養控除の対象外です。ただし、0歳から18歳に達する日以後の最初の3月31日までの子どもは「児童手当」を受けられます。子どもが生まれたり、他の市区町村から転入したりしたときに、現住所の市区町村から認定を受けることで、原則として毎年2月・4月・6月・8月・10月・12月の偶数月に支給されます。

同一生計であること

扶養控除を受ける際、対象となる親族と必ずしも同居している必要はありません。通学のため一人暮らしをしている子どもや、病気の治療のため入院している親がいる場合などでも、生計を一にしていれば扶養親族に該当します。
また、社会人になった子どもが失業し、一時的に生計を一にしている場合も、扶養控除の対象となりうるでしょう。

「生計を一にする」の判断基準の例は、次のとおりです。

  • 当該親族と同居しており、生活をともにしている
  • 当該親族と別居しているが、定期的に生活費や学資金等を送金している
  • 当該親族と別居しているが、余暇には生活をともにしている

合計所得金額が58万円以下であること

令和7年度の税制改正により、扶養控除の対象となる親族の1年間の合計所得金額は、58万円以下です。パートやアルバイトなどの給与収入のみの場合は、合計所得金額が123万円以下でなければなりません。
たとえば、国内の大学に通っている子どもがアルバイトをしており、年間123万円を超える給与収入を得ている場合は、扶養控除の対象外です。ただし、給与収入が年間123万円超え150万円以下なら、子ども本人が「勤労学生控除」を受けられることがあります。

青色申告者の事業専従者として給与収入を得ていないこと

個人事業主のうち青色申告者の事業を手伝う「事業専従者」として、その個人事業主から給与収入を得ている親族は、扶養控除の対象外です。

事業専従者への給与の一部は、個人事業主の必要経費とみなし、所得金額から差し引けます。これを「専従者控除」といい、専従者控除と扶養控除は併用できません。

なお、個人事業主のうち白色申告者の事業を手伝う親族は、給与収入の有無に関係なく扶養控除の対象から外れます。

扶養控除の対象となる親族の5つの要件
出典:国税庁「No.1180 扶養控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1180_qa.htm

扶養控除額は扶養親族の区分によって異なる

扶養控除額は扶養親族の区分によって異なる
扶養控除額は、扶養控除の対象となる親族の年齢や同居の有無などによって異なります。区分ごとの扶養控除額と用語の定義は、次のとおりです。

<扶養親族の区分と扶養控除額>

扶養親族の区分 扶養控除額
一般の控除対象扶養親族 38万円
特定扶養親族 63万円
老人扶養親族(同居老親等) 58万円
老人扶養親族(同居老親等以外) 48万円

<用語の定義>

  • 一般の控除対象扶養親族:扶養控除を受ける年の12月31日現在の年齢が、16歳以上19歳未満または23歳以上70歳未満の者
  • 特定扶養親族:扶養控除を受ける年の12月31日現在の年齢が、19歳以上23歳未満の者
  • 老人扶養親族:扶養控除を受ける年の12月31日現在の年齢が、70歳以上の者
  • 同居老親等:老人扶養親族のうち、所得者やその配偶者の直系尊属(父母・祖父母等)で、同居している者
19歳以上23歳未満の「特定扶養親族」は、大学生などに該当する年齢で、教育費などの負担が大きいと想定されるでしょう。そのため、扶養控除額が最も高い63万円に設定されています。

また、70歳以上の「老人扶養親族」は、同居か否かで、扶養控除額に10万円の差がある点に注意しましょう。ここでの「同居」について、国税庁は以下の見解を示しています。

  • 扶養親族が病気の治療のため入院したことで別居状態になっている場合、その期間が1年以上といった長期でも「同居」に該当する
  • 扶養親族が老人ホーム等へ入所している場合、そこが居所となるため「同居」に該当しない
<特定親族特別控除の新設>
令和7年度税制改正により、特定扶養控除が適用されない19歳以上23歳未満の親族を持つ納税者を対象に「特定親族特別控除」が新設されました。特定扶養控除では、扶養親族の年間合計所得金額が58万円(収入が給与だけの場合の収入金額123万円)を超えると、63万円の控除が受けられなくなります。特定親族特別控除では、扶養親族の所得金額に応じて、以下のような段階的な所得控除が受けられます。
特定親族の合計所得金額
(収入が給与だけの場合の収入金額)
特定親族特別控除額
58万円超85万円以下
(123万円超150万円以下)
63万円
85万円超90万円以下
(150万円超155万円以下)
61万円
90万円超95万円以下
(155万円超160万円以下)
51万円
95万円超100万円以下
(160万円超165万円以下)
41万円
100万円超105万円以下
(165万円超170万円以下)
31万円
105万円超110万円以下
(170万円超175万円以下)
21万円
110万円超115万円以下
(175万円超180万円以下)
11万円
115万円超120万円以下
(180万円超185万円以下)
6万円
120万円超123万円以下
(185万円超188万円以下)
3万円
出典:国税庁「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/gensen/0025004-025.pdf

年末調整における扶養控除の手続きは?

年末調整で扶養控除の適用を受けるには、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(扶養控除等申告書)」を勤務先に提出する必要があります。扶養控除等申告書は、その年の最初の給与を受け取る日の前日までに提出し、年の途中で扶養親族に変更があった場合はその都度提出することになっています。

また、新設された特定親族特別控除の適用を受ける場合は、「特定親族特別控除申告書」の提出が必要です。この申告書は「基礎控除申告書等」との兼用様式となっており、扶養控除等申告書とは別に記入が必要です。

扶養控除に関するよくある質問

扶養控除に関するよくある質問
最後に、扶養控除に関するよくある質問と回答をご紹介します。

所得者が2人以上いる場合は?

夫婦共働きの家庭で、同じ世帯に2人以上の所得者がいる場合、同じ親族を重複して扶養親族にすることはできません。ただし、扶養親族に該当する子どもが2人いる場合などは、1人は夫の扶養親族、もう1人は妻の扶養親族にすることは可能です。
所得税や住民税は、所得金額が大きいほど税率も高くなるため、複数の所得者のうち最も高い所得を得ている人が扶養控除を受けると、税負担を軽減できるでしょう。

国外に住む親族の取り扱いは?

海外に1年以上住んでいる親族は、「国外居住親族」として扱われます。国外居住親族が扶養控除を受けるには、所得者との関係を証明する「親族関係書類」や、所得者からの生活費などの送金実態を証明する「送金関係書類」の提出が必要です。
また、令和5年から、30歳以上70歳未満の国外居住親族は、原則として扶養控除の対象外となりました。30歳以上70歳未満の国外居住親族が扶養控除を受けるには、以下のいずれかの条件を満たさなければなりません。
  • 留学のため海外に住んでいる
  • 障がいがある
  • 生活費または教育費に充てるため、所得者からその年に38万円以上の仕送りを受けている

年末調整の対象とならない人は?

1年間の給与収入が2,000万円を超える人や、年末調整の対象とならない人などが扶養控除を受けるには、確定申告時に手続きが必要です。
具体的には、確定申告書「第二表・配偶者や親族に関する事項」欄に、扶養親族の氏名・マイナンバー・続柄・生年月日などを記入します。さらに、確定申告書「第一表・所得から差し引かれる金額(扶養控除)」欄に、扶養控除額を記入しましょう。

扶養控除額を記入する際は、前章「扶養控除額は扶養親族の区分によって異なる」の内容を参考にしてください。

まとめ

年末調整の扶養控除は、要件を満たす親族を養っている場合に所得控除を受けられる制度で、扶養控除額は38万円から63万円まで幅があります。

扶養控除の対象となる親族の要件は、次の5つです。

  • 配偶者を除く、6親等内の血族および3親等内の姻族であること
  • 扶養控除を受ける年の12月31日現在で、16歳以上であること
  • 生活費の仕送りを受けている等、同一生計であること
  • 合計所得金額が58万円以下(給与収入のみの場合は123万円以下)であること
  • 青色申告者の事業専従者として給与収入を得ていないこと
また、令和5年から、30歳以上70歳未満の国外居住親族は、条件を満たさない限り、原則として扶養控除の対象外となっています。
子どもや親などを養っている方は、扶養控除の対象か確認したうえで、漏れなく手続きをしましょう。

執筆者:赤上 直紀

執筆者保有資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士

※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。

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