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「ステルス値上げ」の意味や背景は?個人ができる対策で物価上昇に備えよう

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「ステルス値上げ」の意味や背景は?個人ができる対策で物価上昇に備えよう
公開日:2022年9月30日
近年、消費者が気づきにくい「ステルス値上げ(シュリンクフレーション)」が相次いでいます。ステルス値上げとは、商品の価格を据え置いたまま内容量やサイズを縮小させ、実質的な値上げを行うことです。
買い物をしたときに「値段は変わらないが、前より中身が減った気がする」と感じたら、その商品はステルス値上げが行われているかもしれません。なかには「ステルス値上げに気づき、購入する商品を変えた」という方もいるでしょう。
ステルス値上げが相次ぐ背景には、原材料・エネルギー価格の高騰等があります。
この記事では、ステルス値上げの意味や相次ぐ背景、個人が物価上昇に備える手段等についてファイナンシャルプランナーが解説するので、参考にしてください。

ステルス値上げ(シュリンクフレーション)とは?

ステルス値上げ(シュリンクフレーション)とは?
ステルス値上げとは、「消費者が気づきにくい値上げ」のことです。ステルスには、「こっそり行うこと」「戦闘機が敵のレーダーに見つかりにくくする技術」等の意味があります。
買い物をしていて、商品の価格は変わらないものの、お菓子1箱当たりの個数や、飲み物1本当たりの容量が減っているのに気づいた経験があるかもしれません。
このように、商品の価格を据え置いたまま内容量やサイズを縮小させ、実質的な値上げを果たすのがステルス値上げの特徴です。
企業は、どうしても値上げが避けられない状況に陥ったときに、「あからさまな値上げにより商品の売上やシェアが減るのを避けたい」と考えるでしょう。そこで、売上やシェアになるべく影響が出ないよう、実質的な値上げを選択する場合があります。
ただし、実質的な値上げについて、消費者にあらかじめ告知するケースもあるため、必ずしもすべてがステルス値上げに該当するとは限りません。
なお、ステルス値上げは、「内容量等の縮小(シュリンク)」と「物価上昇(インフレーション)」を組み合わせて「シュリンクフレーション」とも呼ばれます。インフレーションとは、モノやサービスが値上がりし、お金の価値が下がることです。

ステルス値上げが相次ぐ背景

ステルス値上げが相次ぐ背景
では、なぜステルス値上げが相次いでいるのでしょうか。ここでは、ステルス値上げの背景について解説します。

原材料・エネルギー価格の高騰

さまざまな要因が影響し、原材料・エネルギー価格が世界的に高騰していることで、商品を作るためのコストが増大しています。
実際に、企業間で取り引きされる原材料等のモノの値動きを示す「企業物価指数」は、近年上昇傾向です。コスト削減の努力をしても、商品の価格・内容量等のすべてを据え置いたままでは、いずれ限界がくるかもしれません。
原材料・エネルギー価格が高騰している要因は、おもに次の3点です。
  • 新型コロナウイルス感染症の流行で大きく落ち込んだ経済活動が回復し始め、世界的にモノやサービスに対する需要が急増していること
  • 原材料輸出国であるロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁等の影響で、原材料・エネルギー調達が難航していること
  • 急速に進んだ円安により、輸入コストが増大していること

人手不足の深刻化

近年は多くの業界で慢性的な人手不足のため、企業は人材確保のために給料を上げる、福利厚生を充実させる等の工夫をしています。
しかし、それらが経営の負担となるケースは珍しくありません。人件費等の増加による負担を商品の販売利益でカバーせざるを得ない状況となり、ステルス値上げを選択することがあるのです。

ステルス値上げに対する消費者の意識

ステルス値上げに対する消費者の意識
消費者庁の「平成30年7月物価モニター調査結果(速報)」には、以下のデータが示されています。
  • 「3年前と比較して実質値上げが増えたと感じる」人は80.8%
  • 「日常的に買っている商品について、実質値上げが原因で買う商品を変えた(または買うのをやめた)ことがある」人は23.9%
  • 「実質値上げは不誠実だと感じる」人は22.6%
  • 「物価上昇による実質値上げは仕方がない」人は19.1%
(※複数回答可)
データを見ると、ステルス値上げを敏感に見抜き、「ステルス値上げが増えた」と感じている消費者が多いようです。さらに、一部の消費者にとっては、ステルス値上げが商品の選択に影響しています。
ただし、ステルス値上げを「不誠実だ」と感じるか、「物価上昇が原因なら仕方がない」と感じるかは、人それぞれなのかもしれません。
出典:平成30年7月物価モニター調査結果(速報)(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/price_measures/pdf/price_measures_180718_0002.pdf)(2022年8月1日に利用)

物価上昇対策として個人ができること

物価上昇対策として個人ができること
「シュリンクフレーション」とも呼ばれるステルス値上げは、物価上昇の現象の一つです。ここでは、物価上昇で「円」の価値が下がることに対し、個人ができる備えを解説します。

「円」でなく「海外のお金」で保有する

物価上昇により日本円の価値が下がると、相対的に外貨の価値が上がるため、外貨建て資産を持っておくとよいかもしれません。
外貨建て資産の代表例が、日本円を米ドルやユーロ等の外国の通貨に換えて預金する「外貨預金」です。外貨預金は、金利が円預金よりも高い傾向にあり、預け入れたときよりも円安が進めば、日本円で引き出す際に利益が生まれます。
ただし、預け入れたときよりも円高が進めば、元本割れの可能性があるでしょう。その場合は、日本円に換金せず、例えば「海外旅行時に外貨のまま使う」等の選択肢があります。

お金でなく「モノ」で保有する

物価上昇時は、株式等の金融商品・不動産・貴金属等の「モノ」の価値は上がる傾向なので、現金でなく「モノ」で保有すると、物価上昇への備えになるかもしれません。
このうち株式への投資は、株式会社が発行する株式の売買によって、配当金や値上がり益等を期待できる商品です。なかには、株主優待のサービスを受けられるケースもあります。
ただし、株式が物価上昇に強い傾向があるとはいえ、企業の業績や経営状況等によっては、株式の価値は下がることがある点は理解しておきましょう。
なお、「自分で情報を集めてどの株式を購入するのか決めるのはハードルが高い」と感じる方は、運用をプロに任せられる投資信託を検討してはいかがでしょうか。
投資信託は、多くの投資家から資金を集め、ファンドマネージャーと呼ばれる運用のプロが投資家に代わって運用を担い、分散投資してくれる商品です。国内外の株式・債券・不動産等、さまざまな対象に少額から投資できます。

まとめ

ステルス値上げとは、商品の価格を据え置いたまま内容量やサイズを縮小させる、消費者に気づかれにくい値上げのことです。
ステルス値上げが相次ぐ背景には、世界的な原材料・エネルギー価格の高騰や、人手不足の深刻化等があると考えられます。コスト削減の努力をしても、値上げを避けられない企業が多いのかもしれません。
個人ができる物価上昇への備えとして、外貨建て資産を保有することや、株式や不動産等の「モノ」を保有することが挙げられます。今後の経済の動きを注視しつつ、できることから物価上昇への備えを始めてはいかがでしょうか。
執筆者:赤上 直紀
執筆者保有資格:1級ファイナンシャル・プランニング技能士
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