がん治療費は平均いくら?適切ながん保険を選ぶポイント
がんと診断されたことに伴う、さまざまな費用、そしてがん保険について考えていきたいと思います。
がんの治療をどう考える?
現時点で、効果があることや安全であることが科学的根拠(エビデンス)にもとづいて証明されている最もよい治療のことを「標準治療」と言います。標準治療が確立されているがんであれば、その治療を受けることが最善の治療となります
。
いわゆる民間療法や代替療法と呼ばれるものは、効果が科学的に証明されておらず、よくがん保険で保障がうたわれている「先進医療」と呼ばれているものも標準治療ではありません。基本的には標準治療が第1選択肢になるということを念頭に、主治医の話を聞いていくことが大切です。
がん治療費の考え方
- 検査に関わるもの(血液検査、レントゲン、超音波やがんの確定診断のための生検(腫瘍の組織の一部を採って、がんかどうか、悪性度はどうかなどを調べる検査)、CTやMRI、内視鏡検査、PET-CTなど)
- 診察に関わる費用
- 手術の費用
- 治療の費用(抗がん剤治療、放射線治療、緩和医療など)
- 入院基本料(食事代や差額ベッド代は保険診療外のため除く)
- 薬代(調剤薬局で支払う薬の代金、注射・点滴代など)
- セカンドオピニオン外来受診費用
- 日本で保険適用されていない薬や適応外使用(国内で治療に使用されているが、保険適用となっていないがんに使用すること)の場合、診療費や検査費用なども保険適用外となる(一部例外あり)
- 重粒子線治療や陽子線治療など先進医療の費用(先進医療とは、厚生労働大臣が通常の保険診療との併用を認めたもので、通常の検査、薬、入院費用などは保険診療で行い、先進医療の費用は全額自己負担となる制度)
- 代替療法や民間療法、サプリメントなど
- 通院のための費用(公共交通機関、自家用車、タクシーなどの交通費、駐車場代)
- 入院時の費用(食事代、個室代などの差額ベッド代、テレビカード代、レンタル寝衣代、その他入院に必要な物品、持参の飲み物など)
- 診断書、保険会社用の書類の費用
- 家族の通院付き添い、入院の面会などの諸費用
- 子育て世代の乳幼児の預かり費用、介護している人のショートステイの諸費用
部位別、がん治療費の平均金額
罹患数が多いがんの部位
男性:前立腺、胃、大腸、肺、肝臓
女性:乳房、大腸、肺、胃、子宮
総数:大腸、胃、肺、乳房、前立腺
部位別のがん治療費
胃の悪性新生物(1入院費用) 全体 95万3,995円(3割負担だと約29万円)
直腸の悪性新生物 全体 102万2,965円(3割負担だと約30万円)
気管支および肺の悪性新生物 全体 85万5,040円(3割負担だと約26万円)
乳房の悪性新生物 全体 77万1,650円(3割負担だと約23万円)
実際に支払う金額を計算してみよう
年収が370万円から770万円の所得区分の場合を見てみましょう。
ひと月あたりの自己負担限度額は次の計算式で求めます。
8万100円+(医療費-26万7,000円)×1%
↓
8万100円+(100万円-26万7,000円)×1%=8万7,430円
となり、負担の上限額は8万7,430円となります。
このように健康保険が適用される医療費は、高額療養費制度で自己負担額が減額される仕組みがあるため安心して治療を受けることができます。しかし上限があるとはいえ、窓口負担額が8万7,000円を超えるとなると家計を大きく圧迫することも事実です。
さらにこれは病院や薬局で支払う医療費のみに適用される制度で、それ以外の負担は実費です。加えて、仕事を休んだ場合に収入が減ることも念頭に、がんにかかった場合にはどこまで備えれば安心かということを冷静に考える必要があります。
がん治療の考え方
日本の公的医療保険制度を知ろう
がん治療にかかった医療費は私たちが加入している健康保険を通じて支払うため、窓口での自己負担は通常3割、後期高齢者医療保険の方は1~3割が基本です。
なお、2021年3月からマイナンバーカードが健康保険証として利用できるようになり、利用している医療機関の窓口にオンライン資格確認が導入されていれば、原則として高額療養費の限度額適用認定証発行のための申請と窓口持参が不要になります。
また、限度額を超えた支払い月が1年のうち3回以上あった場合、4回目以降は減額される仕組みになっています。ですからがんのように治療が長期間にわたる病気の場合、この高額療養費制度は心強い味方となります。
会社員や公務員に支給される「傷病手当金」を知ろう
がん治療に伴い仕事を休まなければならない場合、会社員や公務員などの健康保険制度の加入者には「傷病手当金」の支給があります。
傷病手当金は、ケガや病気のために仕事を休み、事業主から十分な報酬が受けられない場合に支給され、会社を休んだ期間が3日間あったうえで4日目から支給され、最大1年6ヵ月が限度となります。支給額はおおよそ日額給与の3分の2に相当する金額となります。
がん保険を選ぶポイント
がん保険の特徴
がんと診断されたとき(一時金として):診断給付金
入院したとき(日数無制限):入院給付金
がん治療のために手術したとき:手術給付金
がん治療のために通院したとき:通院給付金
- 90日間(または3ヶ月間)の免責期間が設けられている
これはほかの加入者の方との公平性を保つために、加入後すぐにがんと診断されても保険料が支払われないという意味です(最近では免責期間がなく、すぐに加入できるがん保険もあります)。 - 支払限度日数が原則無制限
がん治療では手術でがんは取りきれても、抗がん剤などの治療が追加されることがあります。このようにがん治療は「見えない敵と戦う」という側面もあります。人によって治療の期間や回数などが変わることから、無制限の支払い日数というのはがん治療の特徴を捉えた保障と言えるでしょう。 - 診断給付金(一時金)がある
がんと診断されたときの一時金は特約となっているものもありますが、がんと診断されて大変なショックを受けているときに、この一時金で一息つけた、救われたという人はたくさんいるでしょう。
以前は、がん治療というと"まず入院"というイメージもありましたが、現在は、手術のための入院であっても、医療技術の進歩やさまざまな工夫などで入院日数がずいぶんと短縮されてきました。
また、薬物療法の多くは外来治療となっており、抗がん剤治療等を行う外来部門として「通院治療センター」を設置している病院が多くなっています。
ですから、がん保険であれば通院給付金に注目して検討し、診断給付金はとくに若い人には有効な保障だと言えます。
がん保険の必要性
がん保険加入時のポイント
自分にとっての安心とはなにかを考え、がん治療に備えよう
執筆者:中林友美
看護師、ファイナンシャルプランナー(AFP)、キャリアコンサルタント。
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