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なぜ、プラチナよりゴールド(金)のほうが高いのか?

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なぜ、プラチナよりゴールド(金)のほうが高いのか?
2020.10.30
貴金属の世界でゴールド(金)よりも希少性が高いといわれるプラチナ。一方で、現在の投資マーケットにおいては、プラチナよりも金の価格が高くなるという「逆転現象」が続いています。2020年8月には、約9年ぶりの高値となりました。なぜ、金は高騰しているのでしょうか。その理由を紐解いていきましょう。

金価格とプラチナ価格の今

これまで一時的に金の価格がプラチナの価格を上回ったことはありましたが、基本的に希少性の高いプラチナの価格のほうが金よりも高いというのが、いわば“常識”でした。しかし、その傾向に変化があらわれ始めたのは2011年のことです。
2011年の後半に金とプラチナの価格が逆転し、1トロイオンス(約31.1グラム)当たり、金が1,700ドル前後、プラチナが1,550ドル前後で取引されるようになりました。その後、この逆転現象は解消されたものの、2015年以降は現在まで再び逆転状態となっています。
2015年を起点にしてみると、金の価格は右肩上がりの状況となっている一方で、プラチナの価格は右肩下がりの状況が続いています。新型コロナウイルス問題が起きてからも金の値上がりが続き、現在は歴史的な高値をつけています。
2020年8月の金の最高価格は2,067.15ドルだったのに対し、プラチナの最高価格は986.00ドルでした。すでに倍以上の価格差がついています。
なぜ、貴金属の希少性と投資における需要においてこのような逆転現象が起きているのでしょうか。そこには、貴金属としての需要の変化や不況下における人々の心理が関係しているようです。

金とプラチナの価格差はどうして生まれる?

同じ貴金属であるプラチナとゴールド(金)に価格差が生じるのには、さまざまな要因があります。その1つに貴金属としての“需要の違い”があります。
世界の金融情報を提供しているリフィニティブGFMS社が、世界の金市場をまとめた調査報告書「GFMS GOLD SURVEY2019」によれば、2018年には金の年間総需要のうち、約8割が宝飾品や個人投資(「金地金」「コイン」)といった「貴金属としての需要」で占められており、産業需要(工業用加工需要)は約1割にとどまっています。
一方でプラチナの「貴金属としての需要」は約3割で金よりもはるかに低く、残りの約7割を占めるのが自動車や化学・エレクトロニクスといった産業需要にあります。
つまり、2008年のリーマンショック以降、さらには今回のコロナショックによって景気が停滞しても、金は産業需要から受ける影響が少ないのに対し、プラチナは需要が減少し供給過多となり値下がりが起きてしまうと考えられます。
新型コロナウイルス問題の終息が見えない中、マーケットの混乱によって投資家の不安がさらに広がれば、投資マネーはさらに金に流入し、プラチナとの価格差がより大きくなることも考えられます。

プラチナ価格は上がらないのか?

先ほども少し触れましたが、プラチナの需要は自動車産業の動向に大きく左右されます。プラチナはディーゼル車の浄化触媒用途で使われており、プラチナ全体の需要の実に4割がこの用途だといわれています。
ディーゼル車は比較的安価な軽油で走行できることが魅力の1つですが、排出される有害物質を取り除く浄化装置が高価であることから「脱ディーゼル」の動きが加速しています。
世界的にディーゼル車の新車販売台数は減っており、大手メーカーもディーゼル車からの撤退を発表しています。こうした潮流が再び変わる可能性は低いと考えられ、自動車産業におけるプラチナの需要は右肩下がりの状況が続くと考えられています。
そのため、プラチナの価格の上昇は今後も期待薄といえるかもしれません。

世界経済が不安定なときこそ、金の価格は上昇

プラチナの需要以上に注目すべきこともあるでしょう。
金はこれまでの歴史において一度も「無価値」になったことはないといわれる「実物資産」です。株式や債券は、発行企業や発行国の信用があってはじめて価値を持ちますが、実物資産である金はそれ自体が価値を持つのが特徴です。そのため世界経済が不調なときに、その価値が安定する傾向にあります。
貴金属の中でも前出の通り産業需要に左右されやすいプラチナと異なり、金は「有事の金」ともいわれ安全資産の代表として長らく認識されてきました。これは、2008年のリーマンショックをはじめとした米ドルや株価の下落時など、過去の金の値動きからも確かです。
実際に、金の国際調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシルの調べでは、2020年4~6月における金の世界需要は前年同期比で11%減となっています。しかしその一方で金の価格が上昇を続けているのは、金が多くの投資家から安全資産と認識されている証ともいえるでしょう。
金の特徴やこれまでの傾向を踏まえると、今回の新型コロナウイルスによる混乱が終息するまでは、金の価格が上昇を続ける可能性も考えられます。

投資の好機を逃さないためにも

資産運用には株式や投資信託のほか、金やプラチナといった貴金属などさまざまな運用商品があります。それぞれの特徴など、幅広い知識を持つことで投資の好機にも気づくことができるようになるでしょう。
コロナ禍によって世界的に混乱している昨今ですが、このようなときだからこそ、経済の仕組みを学ぶよい機会かもしれません。

執筆者:株式会社ZUU

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