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売りオペ・買いオペって説明できる?金融政策の仕組みと基礎用語をおさらいしよう

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売りオペ・買いオペって説明できる?金融政策の仕組みと基礎用語をおさらいしよう
2020.8.25
経済ニュースで必ずといってもよいほど耳にする金融政策の用語。なんとなくわかっているつもりでも、いざ仕事で使うときや、アイスブレイクで話題になったときなどに「正しく理解できるかというと、ちょっと自信がない」という人も多いのではないでしょうか。ここでは、金融政策の基礎用語を初心者向けに解説します。

そもそも「金融政策」とは

金融政策とは、中央銀行(日本の場合は日本銀行)が、物価の安定を図るために通貨および金融の調節を行うことです。具体的には、公開市場操作(オペレーション)などの手段で長短金利を誘導したり、資産の買入れなどを行ったりします。
政府が行う「財政政策」は、規模の大きな国家予算を管理することで経済活動に影響を与えるものです。これに対し、中央銀行(日銀)がおこなう「金融政策」は、いわゆる「利上げ・利下げ」を決定するもので、より直接的に金融市場に働きかけます。
ちなみに日本銀行の会合のうち、金融政策の運営に関する事項を審議・決定する会合を「金融政策決定会合」といい、年8回、各2日間開催されます。会合終了後は直ちにその決定内容が公表され、その内容によって市場が敏感に反応するため、金融政策決定会合に対する市場関係者の注目度は極めて高いのが特徴です。

これだけはおさえておきたい!金融政策の基礎用語

ここでは、金融政策の重要な基礎用語として、「政策金利」「買いオペ・売りオペ」「金融緩和」に絞って解説します。

「政策金利」

政策金利とは、中央銀行が、景気や物価の安定などといった金融政策上の目的を達成するために設定する短期金利(誘導目標金利)のことです。一般的に、インフレ傾向のときはこの政策金利を引き上げて景気の過熱を抑え、デフレ傾向のときは政策金利を引き下げて経済活動の活発化を促します。
ちなみに2020年7月現在の日銀の政策金利はマイナス0.1%。これは、金融機関が日銀口座に預金を預け入れるときには0.1%の金利を支払わなければいけないということです。
政策金利は例えば金融機関の預金利率など、消費者の身近なところに影響してきます。

「買いオペ&売りオペ」(公開市場操作)

市場の通貨流通量を調節する政策手段のひとつに「公開市場操作(オペレーション)」があります。主な公開市場操作は「買いオペ」と「売りオペ」の2種です。
「買いオペ」とは、日銀が市場から債券(国債)や手形を買うことです。これにより、市場の通貨流通量を増やし、物価の下落を抑えて金利を引き下げる効果があるためデフレ傾向の時に行われます。
「売りオペ」とは、日銀が市場で債券(国債)や手形を売ることです。市場の通貨流通量を減らすことで金利を上昇させる効果があります。インフレで物価上昇の傾向にあるときには、物価の下落を目的に「売りオペ」を実施するという仕組みです。

「金融緩和」

金融緩和とは、中央銀行が、公開市場操作(オペレーション)などの手段をつかって政策金利を引き下げ、資金の供給量を増やすことです。つまり、貸出金利を下げることで世の中に出回るお金を増やして、経済活動を刺激して景気を良くしようとする行為です。
しかしながら、現在、日本の政策金利はすでにゼロに近く、これ以上の引き下げは難しい状況であるのも事実です。そこで行われるのが、「量的緩和」。これは金利の引き下げではなく、マネタリーベースを拡大する、つまり中央銀行が市場に供給する資金の量を増やすことで金融緩和を行う政策と言えます。
日銀は2016年1月に、2%の物価安定目標の早期実現を目指して「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入、同年9月には物価上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまでマネタリーベースの拡大方針を継続するという「オーバーシュート型コミットメント」を決定しています。

「ヘリコプター・マネー」って一体なに?

「ヘリコプター・マネー」も、昨今の金融政策を理解するうえで知っておきたい用語です。
「ヘリコプター・マネー」とは、中央銀行が、対価を取らずに大量のマネーを市中に供給する景気対策のことです。まるでヘリコプターからお金をばらまくようなイメージから、「ヘリコプター・マネー」と呼ばれます。コロナ禍における特別定額給付金10万円がこれにあたります。
ヘリコプター・マネーは“究極のデフレ対策”としてデフレ脱却の効果も期待できる一方で、大きなインフレを招き貨幣の価値低下につながる懸念も指摘される政策です。

インフレになって困ることはあるの?

ではなぜ大きすぎるインフレは問題視されているのでしょうか?
物価が上昇すれば企業の利益が増え、給料の増額や雇用の拡大につながるため、適度なインフレは経済成長にとって大切です。一方で物価が上昇すれば円の価値が下がるため、今まで1,000円で買えていたものが、1,200円出さないと買えなくなってしまい、資産の目減りにつながってしまうというわけです。
円の価値が下がるということは、円と外貨を交換するときの比率である為替レートにおいても円の価値が下がるため、円安の原因にもなります。
将来のためにこつこつと貯蓄を続け1,000万円貯めたとしても、仮に毎年物価が2%上昇し続ければ20年後には672万円程度にまで資産価値は目減りしてしまいます。将来にそなえるためにも、保有資産の一部に円以外の資産を組み込むことを検討してみましょう。

あわせて知っておきたい関連機関

IMF

IMF(International Monetary Fund)とは、「国際通貨基金」のこと。「国際通貨制度の番人」として1945年に設立された国際金融機関です。通貨・為替相場のほか、国際金融システムなどの安定化を目的として、国際収支が著しく悪化した加盟国への融資などを行い、国際貿易の促進や加盟国の高水準雇用・国民所得の増大に寄与しています。
日銀総裁も出席しており、日本の出資割当額は2020年1月現在、アメリカに次いで世界第2位。出資比率に応じた発言権が与えられるのも特徴で、成長率予測や今後の見通しなどに関する発言も含まれるため、投資の世界でも注目されている機関のひとつです。

FRB(FOMC)

FRB(The Federal Reserve Board)は、7名の理事から構成される米・中央銀行制度の最高意思決定機関。位置づけとしては日本における日銀と同じで、日本語では「連邦準備理事会」と呼ばれます。
FRBが開く金融政策の最高意思決定機関に「連邦公開市場委員会(FOMC)」があり、FOMCがアメリカの金融政策や政策金利の金利誘導目標を決定しています。

用語を正しく理解して毎日の経済ニュースに親しもう

金融政策は、その背景を理解することでいっそう理解が深まります。日本経済、世界経済の動向を正しくとらえるために、そのベースである金融政策について理解を深めておくと、日頃の経済ニュースもより多角的な見方ができるかもしれません。

執筆者:株式会社ZUU

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