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相続対策を保険で行うことで得られる7つのメリットを徹底解説

相続対策を保険で行うことで得られる7つのメリットを徹底解説
2021.3.12
相続対策には、大きく分けて2つの面での対策が必要です。1つ目は「相続税への対策」、2つ目は「相続人間での遺産分割への対策」です。相続税対策の一つとして生命保険がいいと言われています。また生命保険は、相続税対策だけでなく遺産分割への対策にも活用することが可能です。なぜ生命保険が相続税対策や遺産分割に有効なのでしょうか。以下で詳細に分かりやすく解説します。

なぜ相続税対策が必要なのか?

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(画像提供:philip-steury/stock.adobe.com)
相続が発生すると亡くなった人(被相続人)の遺産額に応じて相続税を支払う必要があります。しかし相続税とは相続が発生した場合すべての人に支払いが生じるものではありません。
被相続人から各相続人などが相続や遺贈などにより取得した財産の価額の合計額が基礎控除額を超える場合にはじめて相続税の課税対象となります。つまり正味の遺産額が基礎控除額を超えない場合には、相続税はかかりません。
相続税の基礎控除は、2014年まで「5,000万円+1,000万円×法定相続人の数」でした。たとえば相続人が3人の場合の基礎控除額は「5,000万円+1,000万円×3人=8,000万円」と算出します。つまりこのケースでは、遺産総額が8,000万円の基礎控除額を超えない場合は相続税がかかりません。相続人が1人しかいない場合は「5,000万円+1,000万円×1人」となり6,000万円までは非課税です。

ところが2015年1月1日からは相続税改正にともない基礎控除が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」と引き下げられることとなりました。そのため相続人が3人の場合は「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」となり、改正前8,000万円まで非課税だったものが4,800万円を超えると相続税がかかるようになってしまったのです。

相続人が1人のケースでは3,000万円+600万円×1人となり、改正前は6,000万円まで非課税だったものが改正後は3,600万円を超えると相続税がかかります。

これにより改正後の税制が適用される2015年に相続税課税対象となった相続人数は約10万3,000人となり前年の約5万6,000人から大きく増加しました。明らかに急激な増加となっていることは一目瞭然です。
2014年時点で4.4%だった相続税の課税割合は、翌2015年には8.0%と倍増。つまり相続が発生した際に相続税がかかる人の数が倍になったのです。このように相続税がより身近な問題となったことから相続税対策は誰もが真剣に考えたほうがいいと言えるでしょう。

なぜ相続税対策に生命保険がいいのか、7つの理由

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(画像提供:luismolinero/stock.adobe.com)

1.生命保険金には非課税枠がある

被相続人の死亡によって取得した保険金で、その保険料の全部または一部を被相続人が負担していたものは、相続税の課税対象です。
しかし死亡保険金の受取人が相続人(相続を放棄した人や相続権を失った人は含まれません)の場合、「500万円×法定相続人の数」(相続放棄をした人がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の数)までの金額は非課税となります。
なお相続人以外の人が取得した死亡保険金には、非課税の適用がありません。また法定相続人の中に養子がいる場合、法定相続人の数に含める養子の数は、実子がいるときは1人、実子がいないときは2人までとなるため注意が必要です。

2.生前贈与にも活用できる

たとえば被相続人が被保険者で、保険料の負担者および保険金受取人がともに相続人となっており、受取人が保険金を受け取る場合、その保険金は相続税ではなく所得税の課税対象です。この場合の保険料を被相続人から当該相続人へ贈与する場合、1年間の贈与につき基礎控除の110万円の範囲内であれば非課税となります。
しかも生命保険の契約者を変更した場合に契約者の変更自体は、その時点で贈与税が課せられないものです。そのためこれらをうまく活用すれば生命保険を用いた生前贈与を実現することも可能です。

3.誰に渡すかを指定できる

被相続人が相続財産の受取人をあらかじめ定めるには、原則として遺言を作成することが必要です。遺言とは別に、被相続人が自身の保険金に関し遺産を渡したい人を受取人として指定すれば遺言を作らずとも希望する人に残したい金額を渡すことができます。まるで生命保険を遺言のように用いた活用方法ですね。

4.早期に支払われるので受取人はすぐ活用できる

支払われた生命保険金は、原則として相続財産ではなく指定された受取人自身の固有財産となるため、遺産分割協議が不要です。受取人が単独で生命保険会社に申請し支払いを早期に受けることができるため、受取人は受け取った保険金をすぐに活用できます。

5.生命保険で代償分割

相続人が複数いるケースで、遺産のうち不動産などを受け取る相続人は、その代償金を他の相続人に支払わなければならない場合があります。
しかしこの場合に生命保険金を他の相続人に支払うことで代償分割を可能とし、結果として遺産分割協議を円滑に進められる効果も考えられます。生命保険は、相続税対策だけでなく相続人間の遺産分割対策にもおおいに役立つ可能性があるのです。

6.納税資金準備に活用できる

当然生命保険金は相続税納税の支払い原資にも使えます。相続財産として納税に充分な預金を取得できなかった相続人は、受け取った生命保険を納税資金として充当することができるのです。

7.相続を放棄しても死亡保険金は受け取れる

受取人が受け取る死亡保険金は、死亡した人の財産ではなく保険金受取人の固有の財産となるため、相続を放棄しても死亡保険金は受け取ることができます。ただしこの死亡保険金は税制上「みなし相続財産」として相続税の課税対象になったり生命保険金の非課税金額の適用を受けられなかったりする点には注意が必要です。

デメリット

生命保険は、保険料を支払うことが前提です。しかし保険料の支払いが約束通りにできない場合、保険が失効してしまうこともありえます。もし相続税対策としてたくさん保険に加入していても保険料を支払えず失効してしまったら本末転倒です。そのためきちんとした計画性が大切となることは言うまでもありません。
計画性という意味では、生命保険は「被保険者」「保険料負担者」「保険金受取人」の3者をどのように設定するかによって課税対象となる税金の種類も異なります。税金の種類によって税率も変わってくるため、それぞれのケースでどんな保険契約をすることが結果として有効な対策になるのか、契約形態についてもしっかりと計画しておきましょう。

こんな人は相続対策に保険を選ぼう

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(画像提供:ohayou/stock.adobe.com)

向いている人

上述してきたように生命保険金は納税資金として活用できます。そのため財産を継承させる相続人が納税に充分な資金を保有していないケースでは、相続税対策として生命保険という選択肢は積極的に考えていったほうがいいでしょう。非課税枠の利用も合わせれば節税の効果も相まり、納税する相続人にとってもメリットとなります。
また遺言などで複数いる相続人のうち、特定の人物に不動産や上場されていない自社株式などを取得させる場合、それらを取得する相続人は他の相続人に遺留分侵害額請求への対応としての代償金を支払うケースもあります。そうしたケースでも相続対策として保険の活用が有効です。

向いていない人

税制改正後も相続財産が基礎控除の範囲内に収まる人の場合、そもそも相続税の納付が発生しません。そのため相続税対策としての保険加入は不要です。また生命保険料を暦年贈与で贈与する方法は、すでに相続時精算課税制度の利用をしていた人の場合、同じ人からの贈与について暦年課税の基礎控除額110万円を控除することはできません。

ケーススタディ

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(画像提供:tamayura39/stock.adobe.com)

以下のケースであてはめてみましょう。

(あくまで架空の事例です)

被相続人:夫(65歳)

相続人:妻(61歳)・長男(38歳)・二男(35歳)

相続財産:預金4,000万円・不動産4,000万円

(解説の便宜上、配偶者控除以外の詳細な税務上の優遇措置・控除などは考えないこととします)

相続人が3人となるため基礎控除額は、3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。相続財産は預金と不動産の合計で8,000万円となるため、8,000万円-(3,000万円+600万円×3)=3,200万円が課税遺産総額となります。各人の相続税対象財産は以下の通りです。
  • 妻(法定相続分2分の1):1,600万円(3,200万円×2分の1)
  • 長男(法定相続分4分の1):800万円(3,200万円×4分の1)
  • 二男(法定相続分4分の1):800万円(3,200万円×4分の1)
配偶者には1億6,000万円、あるいは配偶者の法定相続分相当額まで相続税が課税されないという配偶者控除があるものの長男・二男にはそれぞれ800万円に対して相続税が課されます。しかし相続税対象として現金預金4,000万円のうち、相続人3人それぞれを受取人とする生命保険(1人につき500万円)に加入したらどうなるでしょうか。
相続税対象は8,000万円-500万円×3-(3,000万円+600万円×3)=1,700万円となり相続税対象財産は以下のようになります。
  • 妻(法定相続分2分の1):850万円(1,700万円×2分の1)
  • 長男(法定相続分4分の1):425万円(1,700万円×4分の1)
  • 二男(法定相続分4分の1):425万円(1,700万円×4分の1)
しかも長男・二男はともに被相続人の生命保険金が500万円まで非課税で受け取ることが可能です。そのため相続税対象財産を圧縮できただけでなく、納税資金として非課税で受け取った生命保険金を活用できることにもなります。

手続きの方法

保険契約の加入・変更・保険金請求については、各生命保険会社が自社ホームページなどで案内をしています。それらを都度確認したり付き合いのある代理店や保険パーソンを通じて手続きしたりするのが良いでしょう。

必ず専門家に相談を

生命保険は、相続税対策に大きな効果を発揮し得ます。もっとも上記はあくまで一般的な解説ですので具体的な対策については必ず税理士や保険の専門家へご相談ください。生命保険を活用した対策が皆様の笑顔相続の実現に寄与することを祈念しております。
※本記事は、特定の生命保険商品購入を推奨・勧誘するものではありません。また本投稿の内容はあくまで一般的な知識を解説するものに留まるものであり具体的な対策については必ず税理士など税務の専門家へご相談いただく必要があることをご了承ください。

執筆者:佐々木達憲

弁護士、AFP、相続診断士

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