【老後資金】リタイアしてからいくら必要?不足分を補うためにできることとは?
老後にもらえる年金も当てにならないし、かといって自分でどれだけ老後資金を用意しておけばいいのか見当もつかないと悩んでいる人は多いと思います。支給される年金額では老後の平均的な生活費を賄いきれないという現状に鑑み、その不足分を自助努力で補う必要があります。では一体どのくらいの額をどのように準備していけばいいのでしょうか。
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老後の生活に必要な資金については、自分がどのような老後を送りたいかによって異なります。ここではまず、参考として平均的な生活費を見ていきましょう。
生命保険文化センターが全国の18~69歳の男女、約4,000人の対象に実施した「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、夫婦2人が老後生活を送る上での最低日常生活費として考えられている金額は、20万円から25万円と答えた割合が29.4%ともっとも多く、その平均額は22万1,000円となっています。
そして、総務省の「家計調査報告(家計収支編) 2019年(令和元年)平均結果の概要」にある「高齢夫婦無職世帯の家計収支」の内容を確認すると、夫 65歳以上かつ妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合の平均支出額は23万9,947円となっており、上の調査結果とそこまでの差はないことが分かります。
支出の内訳を見ると、食費が約28%ともっとも高く、交通費および通信費が約12%、次いで教育娯楽費が10%となっており、その他の消費支出の約半分である10%が交際費に充てられていることがわかります。
ただし、これはあくまでも生活に必要な額であり、それに見合う収入がなければなりません。そこで老後の貴重な生活資金源として気になるのが年金でしょう。いったい年金はどの程度の金額がもらえるのでしょうか。
それでは年金の平均受給額について、以下の2つの例で見てみましょう(これは試算の結果であり、実際に受け取れる年金額と異なる場合があります)。
【夫婦共働きだった場合の例】
試算条件
・夫
会社員であった期間:40年
初年度年収:300万円
退職時年収:1,200万円
未納付期間なし
・妻
会社員であった期間:40年
初年度年収:300万円
退職時年収:900万円
未納付期間なし
※ともに2020年1月時点の制度内容で試算
年金手取り額:約350万円/年(月額:約29万3,000円)
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夫の年金
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妻の年金
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老齢基礎年金
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約78万円(約6万5,000円)
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約78万円(約6万5,000円)
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老齢厚生年金
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約163万円(約13万6,000円)
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約132万円(約11万円)
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天引きされる額
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所得税および住民税
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約36万円(約3万円)
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国民健康保険料および介護保険料
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約64万円(約5万3,000円)
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【妻が結婚を機に専業主婦になった場合の例】
試算条件
・夫
会社員であった期間:40年
初年度年収:300万円
退職時年収:1,200万円
未納付期間なし
・妻
大卒で入社、26歳で結婚
会社員であった期間:4年
初年度年収:300万円
退職時年収:400万円
未納付期間なし
※共に2020年1月時点の制度内容で試算
年金手取り額:約248万円/年(月額:約20万7,000円)
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夫の年金
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妻の年金
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老齢基礎年金
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約78万円(約6万5,000円)
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約78万円(約6万5,000円)
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老齢厚生年金
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約163万円(約13万6,000円)
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約3万円(約3,000円)
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天引きされる額
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所得税および住民税
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約22万円(約1万8,000円)
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国民健康保険料および介護保険料
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約52万円(約4万3,000円)
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このように、共働き世帯と結婚して妻が専業主婦になった世帯では、受給できる年金に年間100万円以上の開きがあることが分かります。
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先にも参照した「家計調査報告(家計収支編) 2019年(令和元年)平均結果の概要」によると、夫 65歳以上かつ妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯の場合、手取り収入は20万6,678円、そして支出は23万9,947円で毎月約3万円の赤字となっています。
さらに、これも上で参照した「令和元年度 生活保障に関する調査」の結果では、ゆとりのある老後を送るための上乗せ額については、10万円から15万円と答えた割合が33.9%ともっとも多く、平均額は14万円となっていることにも注目する必要があります。
ゆとりのある生活の使途としては、「旅行やレジャー」が最も多く60%を占めているほか、「趣味や教養」に使いたいと思っている割合も半数を超えています。
結果、夫婦2人でゆとりのある老後を送るためには毎月平均で約36万1,000円(老後の最低日常生活費22万1,000円にゆとりのある生活を送るために必要だと思われる平均額14万円の合計)の収入が必要となり、実際の手取り収入額約20万7,000円との差額は約15万4,000円となります。
もちろん、ゆとりのある老後の楽しみ方はさまざまであり、内容によっては節約することも可能なことから、そのすべてを用意する必要がありませんが、実際の手取り収入が低いことや、自身が介護状態になった際などを考慮し、ある程度の余裕は持たせておく必要はあるでしょう。
現在、公的年金の受け取り開始は原則65歳からとなっていることからも、その後平均寿命まで生きると考えた場合、その間の「実際の収入と自分が送りたい生活の差額」を用意しておく必要があります。
上で試算した2つの例でみると、夫婦共働きだった場合の月の手取り収入月額は約29万2,000円です。平均支出額(23万9,947円)に、ゆとりのための資金として平均額の半分である7万円をプラスした場合30万9,947円となり、毎月約1万8,000円不足することになります。厚生労働省が発表している「令和元年簡易生命表」によると、現在の男性の平均寿命は81.41歳、女性は87.45歳です。その平均である85歳までの資金を確保すると考えたとして、ゆとりのある生活を送るには、年金の受け取り開始の65歳から平均寿命までの20年間で432万円(1万8,000円×20年)の資金がさらに必要ということになります。
また、妻が結婚を機に専業主婦になった場合の年金手取り収入月額はもっと少なく、約20万7,000円となり、平均出額は23万9,947円ですから、約3万3,000円の赤字になります。
ゆとりのある生活資金として7万円上乗せするのであれば、毎月10万3,000円の赤字。85歳までの20年の間に約2,470万円が必要なことがわかります。
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上の例で夫婦共働きだった場合は、老後においては約430万円の不足金額となり、妻が結婚を機に専業主婦になった場合では2,400万円以上の金額が不足することが分かりました。
もちろん、この不足額の計算は平均寿命を基に算出していますので、平均寿命を超えても生きることを考えると必要な資金はさらに増えることになります。
資金を何%で何年運用すれば、差分を埋めることができるか?
では、ここで40代夫婦の共働き世帯で、必要金額が場合1,000万円と、同じ40代夫婦で妻が専業主婦の世帯で必要額が3,000万円の2つの運用ケースを見ていきましょう。
【ケース1】
夫婦共働きで、40歳から年金受け取り開始の65歳までの25年間で1,000万円用意する場合。
毎月一定額を積み立てて運用する場合
毎月の積立額:約2万2,000円 必要利回り:3%
一括の資金を年利3%で25年間運用する場合
必要資金:約477万円
【ケース2】
妻が専業主婦で、40歳から年金受け取り開始の65歳までの25年間で3,000万円用意する場合。
毎月一定額を積み立てて運用する場合
毎月の積立額:約5万1,000円
必要利回り:5%
一括の資金を5%で25年間運用する場合
必要資金:約886万円
参考までに30代から運用を始めた場合における、1,000万円および3,000万円到達までの利回り別の期間を算出してみましょう。
(30歳から毎月3万円を積み立て、それを3%で運用した場合の運用結果)
【ケース1】
21年目(51歳):約1,000万円
34年目(64歳):約2,000万円
(30歳から毎月3万円を積み立て、それを5%で運用した場合の運用結果)
【ケース2】
18年目(48歳):約1,000万円
28年目(58歳):約2,100万円
34年目(64歳):約3,000万円
35年目(65歳):約3,200万円
このように、40歳から運用を開始するとなると、目標額にもよりますが、毎月の積立額や運用利回りが高くなります。一方30歳から運用を開始すると、毎月の積立額や利回りも抑えることができることから、運用については、早くから始めることがポイントであると言えます。
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公的年金だけでは老後の生活資金が不足することや、それにともない早いうちから準備しておくことは大切です。しかし、一番大切なのは準備だけを考えるのではなく、それまでに貯めた資金を運用しながら切り崩すという考え方です。
そのためには、現在国が行っている資産形成の制度を上手に活用することがポイントです。長年貯蓄体質であった日本では、運用に関するアレルギーがあり、なかなか実践に踏み切れないというところがありますが、資産運用推進の一環として、運用益に対する税額の軽減措置などが取られていますので、そのような制度を上手に取り入れていきましょう。
具体的な方法としては、確定拠出年金制度はもちろんのこと、一般NISAもしくはつみたてNISAなども併用して活用することで、効率よく増やしていくことが可能です。また、確定拠出年金制度については利用できる年齢が決まっていますが、NISAの制度には年齢の制限がありません。
つまり、現役世代のうちは確定拠出年金制度を利用して資産を増やし、リタイア後についてはNISAの制度を活用することで、リタイア後の運用益についても非課税で受け取ることが可能です。したがって、NISAの枠をリタイア後まで取っておくという考えも、運用における1つの方法です。
貯めた資金を切り崩すだけでは資金はあっという間に尽きてしまいます。そのためにも、資産形成の考え方や運用方法についてしっかりと理解しておき、老後においてもそれを上手に活用できるように準備していきましょう。
執筆者: 新井智美
トータルマネーコンサルタント CFP®、一級FP技能士(資産運用)、DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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(2022年3月28日現在)