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大学生はバイトしすぎに注意。学生と親が知るべき社保・税務の控除・特例

大学生はバイトしすぎに注意。学生と親が知るべき社保・税務の控除・特例
2020.11.10
大学生ともなると、アルバイトなども比較的気軽に行えるようになり、交際費や生活費を稼ぐために就労する学生も珍しくありませんが、その一方で収入を得るということは、あわせてさまざまな義務も生じることになります。今回は、学生と学生を扶養する世帯主(親など)が利用することのできる各種特例制度について解説していきます。

学生とその世帯主は、控除などを上手に活用しよう!

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(画像提供:andrey-popov/stock.adobe.com)
大学生が収入を得て生じる代表的なものとしては、所得税や住民税などの税金、健康保険や国民年金の保険料の納付が挙げられます。
これらは、収入の少ない学生のうちは特例が設定されており、学生と学生を扶養する家族が減額・免除などの対象となりますが、一定額以上の収入を得てしまうと、特例が利用できなくなってしまいます。それぞれがどのようなものか、またどれくらいの減額・免除となるか見ていきましょう。
  1. 所得税等の勤労学生控除
  2. 世帯主の所得税・住民税を軽減(特定扶養親族)
  3. 組合健康保険の被保険者親族の扶養
  4. 国民年金の学生納付特例制度

1. 所得税等の勤労学生控除

アルバイトなどによって一定以上の収入を得た場合、所得税や住民税などの税金を支払う必要がありますが、大学生などの「勤労学生」に該当する場合は、「勤労学生控除」という税金を減額する制度を利用することができます。

勤労学生の要件

  • 給与などの勤労(労働)による収入があること
  • 合計所得金額が75万円以下(給与収入のみの場合は130万円以下)で、勤労以外の所得が10万円以下であること
  • 小、中、高校、大学、高等専門、専修学校などの生徒や、職業訓練校で一定の課程を履修していること
※勤労以外の所得とは、株式や債券などの金融商品からの収入や、不動産の賃料収入などの、いわゆる不労所得が該当します。
これらの条件に合致する場合、勤労学生控除27万円の適用を受けることができます。
勤労学生控除を利用することにより、学生本人の税金の負担額がどのように変化するかを試算し、確認してみましょう。

【試算の条件】

<収入>

年間の給与収入:130万円

<控除>

給与所得控除:55万円

基礎控除:48万円(住民税の場合は43万円)

勤労学生控除:27万円(住民税の場合は26万円)

所得税の税額を計算するにはいくつかの段階があります。まず、収入を得た方法や損失・控除の差引タイミングにより、総所得金額・合計所得金額・総所得金額等と計算のベースとなる課税額が変化します。
今回のシミュレーションでは給与収入のみですので、給与収入130万円-給与所得控除55万円=75万円の合計所得金額が税額算出のための課税額となります。

所得税・住民税の税額の算出

<勤労学生控除を適用した場合>

・所得税の税額

合計所得金額75万円-基礎控除48万円-勤労学生控除27万円=課税される所得金額0円

・住民税の税額

合計所得金額75万円-基礎控除43万円-勤労学生控除26万円=課税される所得金額6万円

課税される所得金額6万円×住民税の税率10%+均等割5,000円=住民税の納付額1万1,000円

納付額合計:1万1,000円
勤労学生控除を正しく適用した場合、給与収入130万円までは所得税を課されませんが、住民税は控除額が異なるため、124万円を超えた場合は住民税の負担が発生することとなります。
<勤労学生控除を適用しなかった場合>

・所得税の税額

合計所得金額75万円-基礎控除48万円=課税される所得金額27万円

課税される所得金額27万円×所得税の税率5%=所得税の納付額1万3,500円

・住民税の税額

合計所得金額75万円-基礎控除43万円=課税される所得金額32万円

課税される所得金額32万円×住民税の税率10%+均等割5,000円=住民税の納付額3万7,000円

納付税額合計:5万500円
試算から、勤労学生控除を利用することにより、税金の負担額の差が、約4万円生じていることが分かりました。

税金を申告する際の注意点

日雇いを含む、アルバイトの掛け持ちを行っておらず、給与以外の所得が20万円以下である場合は、勤め先が申告・納税を代行してくれる「年末調整」の制度を利用することができます。
勤労学生控除を受けるには、年末調整の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の勤労学生の欄にチェックを付ける必要があります。
このチェックの有無により、税金の負担額に差が生じてしまう恐れがあるため、適用を受ける場合は忘れずに勤労学生控除の申請を行うようにしましょう。

2. 世帯主の所得税・住民税を軽減(特定扶養親族)

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(画像提供:sewcream/stock.adobe.com)
学生など、収入が少なく単独では生計を維持できない場合は、世帯主が金銭的援助などで扶養を行うこととなりますが、この際に世帯主は、所得税等の負担を軽減する「扶養控除」の制度を利用することができます。
扶養控除の特徴として、扶養親族の年齢によって控除額が変化する点が挙げられます。特に大学生などが対象となる、19歳以上23歳未満の扶養親族は「特定扶養親族」に該当し、最大63万円の所得控除を受けることができます。

扶養親族とするための要件

これには収入の要件があり、扶養親族の合計所得金額48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)でなければなりません。
仮に特定扶養親族の人が、収入の要件に該当せず、特定扶養控除を利用できなくなってしまった場合、世帯主の税負担がどう変化するのかを試算により確認してみます。
【試算の条件】
<収入>世帯主の給与収入:600万円

<控除>

給与所得控除:164万円

社会保険料控除:90万円

基礎控除:48万円(住民税の場合は43万円)

特定扶養親族の扶養控除:63万円(住民税の場合は45万円)

給与収入600万円-給与所得控除164万円=合計所得金額436万円

課税される所得税等の算出

<特定扶養親族がいる場合>

・所得税の税額

合計所得金額436万円-社会保険料控除90万円-基礎控除48万円-特定扶養親族の扶養控除63万円=課税される所得金額235万円

課税される所得金額235万円×所得税の税率10%-控除額9万7,500円=13万7,500円

・住民税の税額

合計所得金額436万円-社会保険料控除90万円-基礎控除43万円-特定扶養親族の扶養控除45万円=課税される所得金額258万円

課税される所得金額258万円×住民税の税率10%+均等割5,000円=住民税の納付額26万3,000円

納付税額合計:40万500円
<特定扶養親族がいない場合>

・所得税の税額

合計所得金額436万円-社会保険料控除90万円-基礎控除48万円=課税される所得金額298万円

課税される所得金額298万円×所得税の税率10%-控除額9万7,500円=20万500円

・住民税の税額

合計所得金額436万円-社会保険料控除90万円-基礎控除43万円=課税される所得金額303万円

課税される所得金額303万円×住民税の税率10%+均等割5,000円=住民税の納付額30万8,000円

納付税額合計:50万8,500円
試算の結果、税負担は10万円超増加していました。
特定扶養親族は控除額が大きいため、税額への影響が大きくなります。特に大学生などは多額の教育費がかかる負担の大きい時期なので、想定外の負担とならないよう注意しましょう。

3. 組合健康保険の被保険者親族の扶養

日本の医療保険は皆保険制度が敷かれており、全ての居住者がなんらかの健康保険に加入することとなっています。
代表的な健康保険として、企業の従業員などが加入する組合健康保険と、自営業者などが加入する国民健康保険があります。
組合健康保険には扶養の制度があり、被保険者の収入が一定額以下の親族は、保険料の負担なしで健康保険を利用できるメリットがあります。

被保険者親族の扶養の要件

所属している健康保険の組合によって異なる場合がありますが、健康保険の主契約者と同居の場合は年収130万円以上、別居の場合は仕送りの額以上の収入を得てしまうと扶養から外れてしまうことが多いようです。
健康保険の扶養から外れてしまった親族は、独自に国民健康保険に加入することになります。
国民健康保険は自治体によって運営されているため、居住地によって保険料が異なりますが、年収130万円で毎月1万円の保険料負担が生じる場合もあります。負担額が大きいため注意が必要です。
このように扶養の制度は、所得税・住民税における扶養と組合健康保険などによる医療保険の扶養と、2つの扶養制度があります。名前は似ていますが仕組みは大きく異なるので、混同しないよう注意しましょう。

4. 国民年金の学生納付特例制度

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(画像提供:ktktmik/stock.adobe.com)
日本の年金制度は階層性が用いられており、国民年金はその1階部分に該当する最も基礎的な年金制度です。国民年金の保険料は、所得に関わらず一定となっており、20歳から60歳までの40年間にわたって保険料を納付することができます
20歳を迎えると学生であっても国民年金に加入し、月額1万6,540円(2020年度)の年金保険料を負担する必要があります。
しかし、本来は収入を得ていない学生が年金保険料を負担することは難しい場合もあるため、学生のうちは、「学生納付特例制度」を利用して年金保険料の納付を免除されることが可能です。
年金制度の代表的な給付である、65歳からの「老齢給付」を受けるには、10年以上国民年金の保険料を納め続け、資格期間を満たす必要があります。
また、納付期間は給付額にも影響を与え、40年間にわたって保険料を納付し続けることで、最大で年間約78万円の給付を受けることができます。
学生納付特例制度を用いることで、年金保険料の免除と給付決定に必要な10年間の資格期間へ算入されるというメリットを受けることができます。
学生納付特例制度は住民登録をしてある自治体の役場や年金事務所のほか、学校内でも申請を行うことができます。利用には所得基準があり、学生本人の年間所得が基本的に118万円(給与収入であれば180万円)を超えてしまうと利用することができません。
もし免除の申請を行わず、年金保険料を未納としてしまうと、資格期間を満たすまでに時間がかかってしまいます。

稼ぎすぎによる負担増に注意

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(画像提供:polkadot/stock.adobe.com)
大学生の期間は、収入を稼ぐ力が以前よりも高まりますが、学生であっても収入が一定額を超えてしまうと納税や医療・年金といった社会保険の負担が段階的に生じていきます。また学生本人だけでなく、世帯主など扶養者にも負担増の影響が及ぶ可能性があります。
一生懸命働いて収入を増やしても、同時に多くの負担が生じてしまい、手元にあまり残らないといった事態を招いてしまわないよう、各種優遇制度の適用状態などを総合的に判断しながら、稼ぐ金額を調整するようにしましょう。

執筆者:株式会社ZUU

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