[ ここから本文です ]

不妊治療の助成制度拡充!2022年から保険適用?

この記事は8分40秒で読めます。
不妊治療の助成制度拡充!2022年から保険適用?
2021.7.2
治療費が高額で、精神的な負担に加えて経済的な負担も大きい不妊治療。最近になって、少子高齢化対策の一環として、不妊治療が見直され始めています。不妊治療の助成制度が拡充されるとともに、2022年からはいよいよ保険適用になるという話も。不妊治療の助成制度や今後の見通しを解説します。

2022年から不妊治療は保険適用に

不妊治療,費用
(画像提供:崇正魚谷/stock.adobe.com)
これまで不妊治療のうち保険が適用されるのは、タイミング法や排卵誘発法などごく一部の治療法に限られていました。一方、生殖補助医療(ART)と呼ばれる体外受精や顕微授精に関しては、治療の有効性・安全性等が確立されていないとの理由から、保険適用が見送られてきました。
しかし、少子化対策の一環として、ようやく不妊治療の保険適用範囲の拡大が検討され始めています。今後、具体的な適用範囲に関しては実態調査を行い、医学的データ等のエビデンスも踏まえて決定される予定です。なお、保険適用の時期については、2022年度が予定されています。

不妊治療の種類や保険適用・保険適用外の範囲をおさらい

不妊治療,費用
(画像提供:andrey_orlov/stock.adobe.com)
現状の不妊症の検査や不妊治療の種類と保険適用の範囲について、簡単におさらいしましょう。2021年現在、保険適用になるのは次のような検査・治療です。

<検査>

診察所見、精子の所見、画像検査や血液検査など(男性不妊、女性不妊、原因不明の不妊)。タイミング法(排卵日を予測して性交することで妊娠の確率を高める手法)もここに含まれます。

<男性不妊の治療>

精管閉塞、先天性の形態異常、逆行性射精、造精機能障害など。主として手術療法や薬物療法が行われます。

<女性不妊の治療>

子宮奇形や感染症による卵管の癒着、子宮内膜症による癒着、ホルモンの異常による排卵障害や無月経など。主として手術療法や薬物療法が行われます。保険適用となる排卵誘発法(内服液や注射などで排卵を起こさせる手法)はここに含まれます。一方、次のような治療は保険適用外とされてきました。

  • 人工授精……精液を注入器で子宮に注入し、妊娠を図る方法。主に男性側の精液の異常、性交障害等の場合に用いられます
  • 体外受精……体外で受精させ、妊娠を図る方法。採卵を行うことから、女性側の身体的負担が重い方法です。人工授精でも妊娠にいたらなかった場合や、女性不妊の場合に用いられます
  • 顕微授精……卵子に注射針等で精子を注入するなど、人工的に受精を行う方法
  • 男性に対する治療……手術用顕微鏡を用いて、精巣内より精子を回収する方法
この他にも、不妊に関しては次のような選択肢があります。
  • 精子提供による人工授精
  • 卵子提供、胚提供
  • 代理懐胎
しかし、これらの選択肢には、倫理的な課題、子どもの出自を知る権利、対価の授受など特有の課題があり、慎重な検討が必要だとされています。

2022年の保険適用までは国による助成制度を活用

不妊治療,費用
(画像提供:thanksforbuying/stock.adobe.com)
不妊治療の保険適用の範囲拡大が予定されているのは2022年4月です。それまでの間、不妊治療にかかる費用の負担を軽減することはできないのでしょうか。実は2020年から不妊治療にかかる費用を支援する「特定治療支援事業」がスタートしています。特定治療支援事業は、2021年に拡充され、より活用しやすくなりました。
特定治療支援事業の対象者や給付額を、変更点も踏まえて解説します。

対象治療法は、体外受精や顕微授精

特定治療支援事業の対象となる治療法は、自費診療での治療費が高額になりがちな体外受精および顕微授精です。体外受精と顕微授精は、タイミング法や排卵誘発法などの一般不妊治療に対して、特定不妊治療と呼ばれています。

対象者は妻の年齢が43歳未満など条件あり

対象者は、特定不妊治療以外の治療法で妊娠の見込みがない、または、きわめて妊娠の見込みが少ないと医師に診断された夫婦です。また、治療期間の初日における妻の年齢が43歳未満であることが条件です。

給付額は1回あたり最大30万円

給付額は1回30万円です。なお、凍結胚移植(採卵をともなわないもの)および採卵したが卵が得られない等のため中止したものについては、1回10万円です。
通算回数は、初めて助成を受けた際の治療期間初日の妻の年齢が40歳未満の時は1子につき通算6回まで助成を受けられます。上記の妻の年齢が40歳以上43歳未満のときは1子につき通算3回まで助成を受けられます。
また、精子を精巣または精巣上体から採取するための手術など、男性不妊治療を行った場合、30万円の助成を受けられます。

変更点と適用される時期

上記の給付額、通算回数は2021年1月1日以降に終了した治療から対象になります。これまで、助成を受けるには夫婦合算の所得が730万円未満という制限がありました。しかし、制度拡充によって所得制限は撤廃されました。
また、これまで給付額は初回のみ30万円、その後は1回15万円でした。制度拡充によって、2回目以降も30万円となり給付額も増加しています。さらに、助成回数は生涯で通算6回までとされていましたが、1子ごとに6回までとなりました。
給付額、回数、所得制限など、すべてにおいて制度が拡充され、活用しやすくなったと言えるでしょう。

自治体の助成制度も活用しよう

不妊治療,費用
(画像提供:takasu/stock.adobe.com)
国が実施する特定治療支援事業の他、各自治体もさまざまな助成制度を設けています。

東京都千代田区

東京都千代田区では、助成対象の治療費から上述の特定治療支援事業(実施主体は東京都)の助成金を差し引いた額の範囲内で助成を受けられます。助成金の限度額は15万円で、特定治療支援事業の助成金の2分の1の額と決められています。
東京都の「特定不妊治療費助成承認決定通知書」を受けた夫婦で、申請時に千代田区に住所を有している場合、助成対象となります。

京都府

京都府では、一般不妊治療(医療保険の適用がある不妊治療・人工授精・不育症治療等)と特定不妊治療(体外受精・顕微授精)でそれぞれ助成制度を実施しています。
一般不妊治療に関しては、次の治療が対象となります。
  • 医療保険が適用される排卵誘発剤の投与等不妊治療
  • 人工授精
  • 医療保険が適用される不育症治療(原因を特定するための検査費用含む)
助成内容は、医療保険の自己負担額の2分の1以内で、上限を超えない部分です。上限は、不妊治療・人工授精で1年度につき10万円、不育症治療で1回の妊娠につき10万円と定められています。
特定不妊治療に関しては、国の事業に加えて、最大10回まで助成を受け取れます。7回目以降は京都府独自の制度なので、法律上の婚姻をしていること、指定医療機関で治療を受けていること、夫婦のどちらかが京都府在住であることなど、京都府独自の要件を満たす必要があります。

広島県

広島県では、新型コロナウイルスの感染防止の観点から特定不妊治療を延期した夫婦に対して、年齢要件を緩和して助成を行う予定です。特例的に、2020年3月31日時点で妻の年齢が42歳の夫婦で、治療期間初日の妻の年齢が44歳未満の場合、助成対象とします。

保険適用になったら治療費はどうなる?

不妊治療,費用
(画像提供:takasu/stock.adobe.com)
2020年に厚生労働省が、日本産科婦人科学会に不妊治療実施機関として登録している医療機関622施設に調査を実施したところ、体外受精等にかかわる価格は次の通りでした。

治療ステージ

新鮮胚移植 中央値37~51万円 最小~最大値16~89万円

凍結胚移植 中央値43~58万円 最小~最大値21~98万円

単純計算で、保険適用になり患者の自己負担が中央値の3割になるとすると、保険適用後の治療費は次の通りです。

新鮮胚移植 11~15万

凍結胚移植 13~17万

※なお、上記はあくまで現状の治療費をもとに推計した金額であり、今後大きく変わる可能性があります。

不妊治療の経済的負担を少しでも軽減するために

経済的な不安から、不妊治療になかなか踏み切れなかったという夫婦も多いでしょう。2022年以降に保険適用の範囲が拡大されれば、不妊治療の経済的な負担が少しでも軽減される可能性があります。保険適用までの間は、拡充された不妊治療の助成制度を活用することも検討してみてはいかがでしょう。

執筆者:水瀬理子

ファイナンシャル・プランナー

※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。

  • 本サイトの記事は情報提供を目的としており、商品申込等の勧誘目的で作成したものではありません。
  • また、一部、当行にて取り扱いのない商品に関する内容を含みますが、商標登録されている用語については、それぞれの企業等の登録商標として帰属します。
  • 記事の情報は当行が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その確実性を保証したものではありません。
  • 記事は外部有識者の方等にも執筆いただいておりますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当行の見解等を示すものではありません。
  • なお、記事の内容は、予告なしに変更することがあります。

あわせて読みたい

人気記事ランキング

株式会社 三菱UFJ銀行
(2022年3月28日現在)