確定拠出年金の加入中に転職した場合の必要な手続きについて解説!
この記事は8分20秒で読めます。
公開日:2022年6月24日
更新日:2024年1月17日
更新日:2024年1月17日
公的年金制度を補完することを目的に、2001年10月に施行された確定拠出年金。「公的年金だけでは、老後の生活が不安」という理由で加入している人も多いのではないでしょうか。
確定拠出型年金には企業型と個人型(iDeCo)とがありますが、加入中に転職または退職をした場合も積み立てを続けるには、どんな手続きが必要なのでしょうか?また、特に手続きをしないまま放置しておくと、どんなデメリットがあるのでしょうか?
この記事では、企業型と個人型(iDeCo)の確定拠出年金それぞれの概要を改めて確認するとともに、加入中に転職する場合に必要な手続きについてわかりやすく解説します。
確定拠出年金は企業型と個人型(iDeCo)の2種類がある
確定拠出年金は、銀行などの運営管理機関が提示する金融商品を加入者が選択し、毎月の拠出金(積立金)を運用していくことによって、将来受給する年金を準備する仕組みのことです。
従来の公的年金制度との大きな違いは、加入者本人が年金資産を自ら運用し、運用結果は加入者自身の自己責任となること、結果として年金受給額が加入者によって異なることです。確定拠出年金には、大きく分けて企業型と個人型(iDeCo)とがあり、それぞれ次のような特徴があります。
【企業型】
加入できる人 | 労使合意に基づき確定拠出年金制度を実施する企業の従業員 |
---|---|
掛金の支払い | 会社からの拠出に加え、規約に定めれば、個人からの拠出も可能 |
拠出限度額 | 企業年金ありの場合:月額27,500円 企業年金なしの場合:月額55,000円 |
【個人型(iDeCo)】
加入できる人 | 国民年金の被保険者であれば原則加入できます |
---|---|
掛金の支払い | 個人払込または事業主払込(給与天引き) |
拠出限度額 | 後述(職業や勤務先の年金制度によって異なる) |
- 原則として企業年金制度があり、かつ企業型確定拠出年金を導入している企業の場合、掛金を一定以下にする規約変更をしない限り、社員がiDeCoを利用することはできません。
なお、確定拠出年金は企業型・個人型(iDeCo)ともに、原則として60歳までは資金を引き出すことはできません。
何らかの理由で資金が必要になった場合は、中途脱退して「脱退一時金」を受け取ることはできますが、脱退一時金を受け取るためには、一定の要件を満たす必要があり、現役世代で健康な人の場合一時金を受け取れる可能性は極めて低いのが実情です。
確定拠出年金に加入したら、可能な限り中途脱退はせず、無理のない範囲で積み立てを続けるようにしましょう。
企業型確定拠出年金加入中に転職した場合、積み立ては継続できる?
では、企業型の確定拠出年金加入中に転職または退職した場合、積み立ては継続できるのでしょうか?結論から言うと、転職・退職後、ほかの確定拠出年金制度(iDeCoまたは、ほかの企業型確定拠出年金)に年金資産を移換することによって、積み立てを継続することができます。
ここでは、①転職先に企業型確定拠出年金がある場合、②転職先に企業型確定拠出年金がない場合、③自営業者、公務員、専業主婦になる場合の3パターンに分けて、積み立て継続のために必要な手続きについて見ていきましょう。
①転職先に企業型確定拠出年金がある場合
転職先の企業に企業型確定拠出年金制度がある場合は、新たに転職先の制度に加入することになります。転職前の企業で積み立てた年金資産の移換手続きが必要になるので、具体的な手続き方法については転職前に担当部署に確認しておきましょう。
②転職先に企業型確定拠出年金がない場合
転職先の企業に企業型確定拠出年金制度がない場合は、転職前に積み立てていた企業型確定拠出年金をiDeCoに移換して、積み立てを継続することができます。
③自営業者、公務員、主婦になる場合
いずれの場合も②の「転出先に企業型確定拠出年金がない場合」と同じ手続きが必要になります。したがって、②と同じくiDeCoの金融機関を自分で選択し口座を自分で開設し、転職前の企業で積み立てた確定拠出年金を移換して積み立てを続けます。
なお、②と③の場合、新たに加入するiDeCoの運営管理機関(金融機関)については、転職前の企業型確定拠出年金と同じところを選ばねばならないわけではなく、自分の判断で別の金融機関を選んでも問題ありません。
iDeCoの手続きができる金融機関は1人につき1つのみ。途中で変えることもできますが、変更するには手間暇がかかるので、できれば途中で変えずに済むように、主に次の点を十分比較検討し、自分に適した金融機関を慎重に選ぶようにしたいものです。
- 手数料(信託報酬・口座管理手数料)
- サポート体制(電話やオンラインで相談できる窓口の有無など)
- 運用商品の種類の豊富さ
企業型確定拠出年金の場合、信託報酬や口座管理手数料は原則として企業が負担してくれますが、iDeCoでは個人負担になることを注意してください。
iDeCoの掛金上限は転職先によってこう変わる
iDeCoの毎月の掛金は下限が5,000円とされており、上限は加入者の職業や勤務先の年金制度によって異なります。掛金は年に1回見直すことができ、上限の範囲内であれば1,000円単位で増やすことも可能です。
■iDeCo月々の掛金上限
勤務先に企業年金がない会社員 | 23,000円 |
---|---|
企業型確定拠出年金に加入している会社員 | 20,000円 |
DB(*)と企業型確定拠出年金に加入している会社員 | 12,000円 |
DBのみに加入している会社員 | 12,000円 |
公務員 | 12,000円 |
自営業など | 68,000円 |
主婦(夫) | 23,000円 |
- DB=確定給付企業年金
放置しても大丈夫?手続きの期限を過ぎた場合の注意点
ここまで見てきたとおり、企業型確定拠出年金加入中に転職や退職をした場合、転職または退職から6ヵ月以内に一定の手続きをすることによって、ほかの確定拠出年金制度に年金資産を移換し、積み立てを継続することができます。
仮に6ヵ月の期限内に他の確定拠出年金制度に年金資産を移換する手続きをせず、放置してしまった場合、転職前・退職前に運用していた年金資産は現金化されて、国民年金基金に自動的に移換(=自動移換)されてしまい、次のようなデメリットを被ることになります。
自動移換のデメリット
資産運用ができない
自動移換されると、現金化されてしまうため資産運用ができず、資産を増やせません。
手数料がかかる
自動移換の際に手数料が発生するだけでなく、移換後には月々、管理手数料がかかります。
年金の受け取り開始時期が遅くなる恐れがある
自動移換の状態は、確定拠出年金の通算加入者等期間としてカウントされません。仮に通算加入者等期間が10年未満の場合、年金の受け取り開始時期が60歳より遅くなる恐れがあります。
老齢給付金・障害給付金が受け取れない
自動移換された状態では、60歳になっても年金資産の引き出しができません。給付の請求をするためには、iDeCoに加入して口座を開設し、国民年金基金から資産移換の手続きをする必要があります。
せっかく積み立てた年金を無駄にしないためにも、転職前の確定拠出年金の加入資格を喪失後6ヵ月以内に、必ずほかの確定拠出年金への移換の手続きを済ませて積み立てを継続するようにしましょう。
まとめ
確定拠出年金には企業型と個人型(iDeCo)の2種類があります。
企業型の確定拠出年金加入中に転職や退職をする場合は、ほかの確定拠出年金に積み立てた年金資金を移換することができます。6ヵ月以内に移換手続きをしなかった場合、積み立てた年金は自動的に現金化されて国民年金基金に自動移換されてしまい、資産運用ができない、税制優遇が受けられない、年金を受け取れないなどの不都合が複数生じてしまいます。
転職・退職する場合は事前に担当者に必要な手続きについて確認し、6ヵ月以内に確実に他の確定拠出年金への移換手続きを行うようにしてください。
執筆者:相山 華子(あいやま はなこ)
執筆者保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士
※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。
執筆者保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士
※記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。
- 記事の情報は当行が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その確実性を保証したものではありません。
- 記事は外部有識者の方等にも執筆いただいておりますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当行の見解等を示すものではありません。
- また、一部、当行にて取り扱いのない商品に関する内容を含みますが、商標登録されている用語については、それぞれの企業等の登録商標として帰属します。
- なお、記事の内容は、予告なしに変更することがあります。
三菱UFJ銀行でiDeCoを始める方法
あわせて読みたい
ご注意事項
iDeCoをお申し込みいただく前に、下記についてご確認ください。
- 原則、60歳まで引き出し(中途解約)ができません
- 脱退一時金を受け取れるのは一定の要件を満たす方に限られます。
- ご本人の判断で商品を選択し運用する自己責任の年金制度です
- 確定拠出年金制度では、ご加入されるご本人が自らのご判断で、商品を選択し運用を行いますので、運用結果によっては受取額が掛金総額を下回ることがあります。
- 当行から特定の運用商品の推奨はできません。
- 運用商品の主なリスクについて
- 預金は元本確保型の確定利回り商品です。預金は預金保険制度の対象となります。
- 当行のiDeCoで取り扱う保険は元本確保型商品です。ただし、運用商品を変更する目的で積立金を取り崩す場合は、市中金利と残存年数等に応じて解約控除が適用されるため、結果として受取金額が元本を下回る場合があります。
- 投資信託は価格変動商品です。預金ではなく、預金保険制度の対象ではありません。運用実績は市場環境等により変動し、元本保証はありません。また、当行でお取り扱いする投資信託は、投資者保護基金の対象ではありません。
- 預金、保険および投資信託は異なる商品であり、それぞれリスクの種類や大きさは異なります。
- 初回手続き時、運用時、給付時等で、各種手数料がかかります
- iDeCoには、初回手続き手数料・毎月の事務手数料・資産管理手数料・運営管理機関手数料・給付事務手数料等がかかります。
- 手数料は、加入者となられる方は毎月の掛金から、運用指図者となられる方は積立金から控除されます。年金でお受け取りになられる方は給付額から控除されます。
- 60歳になっても受け取れない場合があります
- 50歳以上60歳未満で加入した場合等、60歳時点で通算加入者等期間(*)が10年に満たない場合は、受給可能年齢が引き上げられます。
- 60歳以上で新規加入した場合、加入から5年経過後に受給可能となります。
- 通算加入者等期間は、iDeCoおよび企業型DCにおける加入者・運用指図者の期間の合算となります。
株式会社 三菱UFJ銀行
(2024年1月17日現在)