【犯罪対策のプロが監修】口座売買は犯罪!手口や対処法を徹底解説

- 2025年9月25日
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この記事はこんな方におススメ!
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口座売買のリスクについて知りたい方
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金融犯罪に巻き込まれた際の対処法を知りたい方
銀行の口座を売買する行為は犯罪であり、刑事罰を受ける可能性があるだけではなく、社会的信用を失うなど重大な影響を及ぼします。
この記事では、口座売買がどのように行われているか、巻き込まれた場合のリスク、対処法についてなどくわしく解説します。
目次
口座売買とは?口座を作れなくなるって本当?
犯罪者は自分の身元を隠しながら、詐欺やマネー・ローンダリング(マネロン)などの違法行為で利用するために、他人名義の銀行口座をさまざまな手口で集めています。どのような形であっても、銀行口座の買取やレンタルには絶対に応じてはいけません。
最初に、口座売買とはどのような行為であり、どのような影響を及ぼすのかを解説します。
最初に、口座売買とはどのような行為であり、どのような影響を及ぼすのかを解説します。
口座売買とは
通常、「口座売買」と聞くと、自分名義や他人名義の通帳・キャッシュカードを第三者に譲り渡す行為をイメージします。
しかし、通帳やキャッシュカードの現物を渡すだけでなく、口座番号やインターネットバンキングのログインID・パスワードといった口座情報を教える行為も、「口座売買」に含まれます。
これらの行為は、有償・無償を問わず犯罪であり、刑事罰を受ける可能性があります。
「知らなかった」では済まされないため、絶対に行ってはいけません。
「知らなかった」では済まされないため、絶対に行ってはいけません。

売買された口座はどうなる?
売買された口座は犯罪グループの手に渡り、あらゆる違法行為の道具として悪用されます。犯罪者が他人名義の口座を使用する理由は、自分の身元がばれないように隠すためです。以下は、売買された口座が悪用される犯罪の例です。
- 振り込め詐欺(「オレオレ詐欺」、「架空料金請求詐欺」、「融資保証金詐欺」、「還付金詐欺」)
- SNS型投資詐欺などの、振り込め詐欺類似の特殊詐欺
- 犯罪収益等の資金洗浄(マネー・ローンダリング)
- 海外オンラインカジノの資金収納代行
振り込め詐欺では、被害金の振込先として使用されます。高齢者を狙った「オレオレ詐欺」や「還付金詐欺」の被害金は、売買された口座に振り込まれ、すぐに他の口座に送金・引き出されて犯罪グループの資金源となります。
また、近年問題となっている海外オンラインカジノでは、日本国内での決済が可能であるかのように見せかけるため、売買された口座が資金収納代行用として悪用されています。オンラインカジノは海外で合法的に運営されていても、日本国内からアクセスして賭博を行うことは犯罪であり、口座の提供は犯罪を助けることになってしまいます。
口座売買をすると銀行口座を作れなくなる
口座売買をすると、売る側も買う側も、保有する銀行口座が凍結され、新規の口座開設も極めて困難になります。
凍結とは、預金の引き出しや振り込みなど、すべての取引が停止される状態です。口座凍結によって、給与の受け取りや公共料金の支払い、クレジットカードの利用など、日常生活に必要な金融取引が一切できなくなります。
凍結とは、預金の引き出しや振り込みなど、すべての取引が停止される状態です。口座凍結によって、給与の受け取りや公共料金の支払い、クレジットカードの利用など、日常生活に必要な金融取引が一切できなくなります。
さらに、警察庁が金融機関に提供する「凍結口座名義人リスト」に掲載されると、ほかの金融機関でも口座開設を拒否される可能性が高くなります。金融機関の口座を持てなければ、日常生活が困難になるだけでなく、信用を失い、就労にも支障をきたす可能性があります。
もちろん口座売買は犯罪行為であり、犯罪グループの一味として逮捕される恐れもあります。このように人生に重大な悪影響を及ぼすため、口座売買には絶対に関与してはいけません。

売買することだけが犯罪ではない
口座売買は、売る側だけでなく買う側も同様に犯罪行為となります。また、一時的であっても第三者に口座を貸す行為も犯罪であり、処罰の対象になります。
それ以外にも、通帳やキャッシュカードだけでなく、インターネットバンキングのログインID・パスワードなどの情報を譲り渡す、または譲り受ける行為も同様に犯罪です。犯罪者の「情報を聞くだけだから教えてくれないか」「使っていない口座なら貸してくれないか」という誘いに、軽々しく応じてはいけません。
さらに、最初から他人に譲り渡す目的での口座開設や、他人名義や架空名義での口座開設は、譲り渡す前に発覚した場合でも重大な犯罪行為になります。
自分では盗むつもりがなくても、頼まれて他人名義の口座から現金を引き出すことも犯罪に該当します。
「名義を貸しただけ」「お金をもらっていない」「友人に頼まれただけ」といった言い訳は、一切通用しません。
具体的な罰則の内容については、後述の「口座売買によって問われる罪の例」でくわしく解説します。

口座売買の具体的な手口

知らずに口座売買の犯罪に加担しないためには、犯罪者がどのような手口で巻き込もうとするかを知っておく必要があります。口座売買のよくある手口を見ていきましょう。
SNS上で勧誘してくるケース
SNS上では「#口座買取」「#お金配り」「#副業」などのハッシュタグを使った投稿で、口座売買に誘導する手口が横行しています。
犯罪グループの主なターゲットは、お金に困っている人や、安易にお金を稼ぎたいと考えている人です。「使っていない口座を高く買う」といった甘い言葉で誘い、連絡を取り合ったあとに「通帳とキャッシュカードを指定の住所に送ってほしい」などと指示されるのがよくあるケースです。
インターネット、ダイレクトメールで勧誘してくるケース
SNS以外にも、インターネット上のサイトやダイレクトメールを通じて口座売買に誘導する手口があります。「おこづかい稼ぎをしませんか」などと犯罪行為であることを隠して巧みに近づき、口座売買を持ちかけます。
犯罪に巻き込まれないよう十分に警戒し、少しでも怪しい話には絶対に応じないようにしましょう。
意図せず個人情報が流出してしまうケース
本人が気付かないうちに個人情報が盗み取られ、勝手に口座を開設されてしまうケースもあります。
たとえば、アルバイト募集を装って、応募者に身分証明書のコピーを提出・提示をさせる手口があります。対面でなくても、ビデオ通話やSNSで送った画像を悪用され、個人情報を盗み取られてしまうこともあります。盗まれた情報をもとに身分証明書を偽造され、本人の知らない間に金融機関で口座を開設されてしまうケースもあります。
さらに、提出した個人情報をもとに「住所や家族の情報はすべて把握している」などと脅迫され、口座の開設を強要される悪質なケースもあります。
犯罪者は、「口座売買」といった言葉を避け、「ホワイト案件」などと偽ったり、サークルや友人、先輩・後輩といった断りにくい人間関係を利用して依頼してきたりすることが多いため、細心の注意が必要です。
ヤミ金の借金の担保として口座の受け渡しを要求してくるケース
ヤミ金融業者(ヤミ金)からお金を借りてしまい、返済に困った際に、代わりに口座の受け渡しを要求されるケースも多く発生しています。ヤミ金は、返済が滞った借り手に対し、「複数の銀行口座を売れば借金は完済とみなす」などと持ちかけます。支払い困難に陥った借り手が、わらにもすがる思いで安易に口座を渡してしまうのです。
しかし、実際には借金の解決にはならず、口座は犯罪組織に悪用され、さらなるトラブルに巻き込まれることになります。ヤミ金に関わること自体が危険であり、もし関わってしまった場合は、決して口座を渡さないようにしましょう。
外国人の方による口座譲渡のケース
在留外国人の方による口座譲渡も問題になっています。特に、帰国を間近に控えた外国人の方が、口座を譲渡するケースが発生しています。
日本の法律では、外国人の方であっても口座譲渡は犯罪収益移転防止法違反に該当し、処罰の対象となります。本人は犯罪行為の認識がなくても、国外退去処分や将来の入国禁止につながるおそれがあります。
もし周囲に帰国が決まった外国人の方がいる場合、必要に応じて日本国内の口座解約予定の確認をお願いします。特に、外国人の方を受け入れている企業や団体は、不要になる口座の解約確認の徹底や手続のサポートをお願いします。

口座売買によって問われる罪の例
口座売買は、重い罰則が科される恐れのある犯罪行為です。ここでは、具体的にどのような罪に問われる可能性があるのかを解説します。
犯罪収益移転防止法違反
口座売買においてまず問われる可能性が高いのが、犯罪収益移転防止法違反です。「犯罪による収益の移転防止に関する法律」が正式名称で、主にマネー・ローンダリングや振り込め詐欺などの犯罪を防止するための法律です。
具体的には、自分名義や他人名義の通帳、キャッシュカード、インターネットバンキングのログインID・パスワードなどを第三者に譲り渡す行為や、反対に譲り受ける行為がこの法律に抵触します。違反した場合、1年以下の拘禁刑もしくは100万円以下の罰金、またはその両方が科せられる可能性があります。
詐欺罪(刑法)
口座売買は、詐欺罪に該当するケースもあります。詐欺罪とは、人を欺いて財物を交付させる犯罪です。「他人に譲り渡す目的での口座開設」や「他人や架空の名義での口座開設」は詐欺行為にあたります。
詐欺罪が成立した場合、罰金刑はなく、10年以下の拘禁刑が科せられます。犯罪収益移転防止法違反よりも重い刑罰が適用される可能性があるため、その重大性を認識することが重要です。
窃盗罪(刑法)
口座売買に関連して、窃盗罪に問われるケースも考えられます。窃盗罪とは、他人の財物を不法に取得する犯罪です。
口座売買で入手した他人名義の口座やキャッシュカードを使用してATMから現金を引き出す行為などが該当します。窃盗罪で有罪になると、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科せられます。
不正アクセス禁止法違反
口座売買は不正アクセス禁止法違反にも該当する場合があることを知っておきましょう。不正アクセス禁止法とは、コンピューターへの不正侵入を防ぎ、情報セキュリティを保護するための法律です。
正当な理由なくインターネットバンキングのログインID・パスワードなどの口座情報を第三者に教えたり、譲渡・販売したりする行為は、相手が実際に不正アクセスをしたか否かに関わらず「不正アクセス行為を助長する行為の禁止」に違反します。
処罰の内容は、相手方の目的に対する認識によって異なります。相手に不正アクセスをする目的があることを知っていた場合は、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科せられます。知らなかった場合でも、30万円以下の罰金が科せられます。
訴訟のリスク
口座売買は刑事責任だけでなく、民事訴訟(被害者が加害者に対して損害賠償を請求する法的手続き)のリスクもともなう深刻な問題に発展することがあります。
たとえ、「ただ口座を譲っただけ」という認識であっても、その口座が詐欺に使用されれば、被害者から損害賠償を求められる可能性があります。裁判で、「詐欺に直接関わっていなかった」と主張しても、詐欺行為をほう助したとして賠償責任を負うケースもあります。
さらに、勤務先に口座売買の事実が知られた場合、企業の職務規定等違反として懲戒解雇の処分を受けるリスクもあります。特に社会的信頼が重視される職場では、一度の過ちが将来に大きな悪影響を及ぼすことを頭に入れておきましょう。
口座売買をしてしまった際の対処と防止策
万が一、口座売買に関与してしまった場合、または関与してしまったかもしれないと感じた場合、迅速な対応が被害の拡大を防ぐとともに、自身の処罰を軽減するためにも重要です。ここでは、具体的な対処法と、今後このような事態に巻き込まれないための防止策を解説します。
金融機関に口座停止を依頼する
もし通帳・キャッシュカードや口座情報を譲り渡してしまった場合は、できるだけ早く取引のある金融機関に連絡し、口座の停止を依頼しましょう。犯罪者とのやり取りは複雑で、個人での解決は困難を極めます。口座が利用できなくなれば、犯罪組織に悪用されることを回避でき、結果としてご自身が処罰される可能性も低くなります。
通帳やキャッシュカードを物理的に譲り渡した場合だけでなく、インターネットバンキングのログインID・パスワードなどの口座情報を伝えてしまった可能性がある場合も、迷わず金融機関に連絡し、口座を使えなくしましょう。
警察や専門機関に相談する
意図せず個人情報が犯罪者へ流出してしまい、犯罪(口座の不正な開設申込や売買も含みます)に巻き込まれそうになった場合や、闇バイトやヤミ金などとの関与が発生してしまった場合は、一刻も早く警察へ相談しましょう。
また、銀行口座の不正利用か疑わしい話をもちかけられて判断に迷う場合は、取引銀行のほか、全国銀行協会相談室、銀行とりひき相談所などに相談することもできます。
また、銀行口座の不正利用か疑わしい話をもちかけられて判断に迷う場合は、取引銀行のほか、全国銀行協会相談室、銀行とりひき相談所などに相談することもできます。
あやしいと感じたら…
疑わしい取引を持ちかけられた場合は、すぐに「全国銀行協会相談室」や「銀行とりひき相談所」に相談することが重要です。早期の相談が犯罪を未然に防ぐことにつながります。
疑わしい取引を持ちかけられた場合は、すぐに「全国銀行協会相談室」や「銀行とりひき相談所」に相談することが重要です。早期の相談が犯罪を未然に防ぐことにつながります。
被害に遭ってしまったら…
被害に遭ってしまった場合は、ただちに警察や取引銀行へ連絡してください。取引銀行の連絡先一覧は各銀行のウェブサイトで確認できます。
被害に遭ってしまった場合は、ただちに警察や取引銀行へ連絡してください。取引銀行の連絡先一覧は各銀行のウェブサイトで確認できます。
巻き込まれないための防止策
口座売買の犯罪に巻き込まれないためには、日頃からの意識と行動が大切です。
まず、「カンタンにお金が手に入る」といった甘い誘い文句には、必ず裏があると考え、怪しい取引には絶対に応じないようにしましょう。
次に、使わない口座の速やかな解約をおススメします。不要な口座を放置しておくと、異常な取引に気付くのが遅れる危険性があります。
また、預金通帳やキャッシュカードの紛失を放置しないことも重要です。万が一紛失した場合は、すぐに金融機関に連絡し、利用停止の手続きをしましょう。
これらの対策の徹底により、口座が犯罪に利用されるリスクを大幅に減らせます。
まとめ
預金口座の売買は、有償・無償に関わらず、売る側と買う側の双方が罪に問われる重大な犯罪行為です。一度でも口座売買に関与すると、将来にわたり銀行口座を作れなくなり、社会生活に大きな支障をきたし、就職など将来の選択肢も失われる可能性が高まります。
「カンタンにお金が手に入る」といった甘い誘いには飛び付かず、不審な勧誘を受けた場合は、すぐに警察や銀行などの専門機関に相談しましょう。口座売買に関する正しい知識は、ご自身の安全だけでなく、社会の健全な秩序をまもるためにも重要なのです。
執筆者:松田 聡子(まつだ さとこ)
執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、DCアドバイザー、二種外務員資格
執筆者保有資格:日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、DCアドバイザー、二種外務員資格
監修者:櫻澤 健一(さくらざわ けんいち)
元 警察庁警備局長、現(一財)日本サイバー犯罪対策センター業務執行理事、静岡大学情報学部客員教授
元 警察庁警備局長、現(一財)日本サイバー犯罪対策センター業務執行理事、静岡大学情報学部客員教授
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