離婚時の財産分与、住宅ローンが残っている家はどうなる?
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2021.1.12
離婚をするときは、基本的に夫婦で話し合って財産を分けることになります。その場合、住宅ローンが残っている自宅は、どういった手続きをする必要があるでしょうか。ここでは、預金と異なり複雑で分けにくい不動産についてどんな分け方があるのか解説します。
財産分与とは
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財産分与とは、夫婦がこれまで一緒に暮らしてきたなかで協力して築いた財産を離婚する際に夫婦それぞれに分けることが請求できる制度です。離婚後の生活保障や離婚の原因を作ったことに対する損害賠償の意味で行われる場合もあります。
財産分与の対象になる財産
財産分与の対象には、預金や株式、建物や土地などさまざまなものが含まれます。共有名義でなくどちらか一方の名義になっているものでも夫婦の協力によって形成された資産については財産分与の対象です。ただし「結婚前からそれぞれが所有している財産」「親からの相続や贈与で手に入れた財産」は、財産分与の対象にならないとされています。
家の財産分与を決めるポイント
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土地や建物は、さまざまな財産の中でも特に分けにくいものの一つです。預金のように誰が見てもはっきりとした金額が分かるわけではないため、単純に2つに分割するわけにもいきません。
さらに住宅ローンが残っていた場合、「今後の返済や所有権をどうするのか」という問題も発生します。そこで家を分けるときにポイントとなるのが以下の4つの点です。
- 土地建物の名義人
- 住宅ローンの契約状況
- 住宅ローンの残高
- 土地建物の現在の評価額
土地建物の名義人
「土地や建物がどちらの名義になっているのか」ということです。「どちらか片方の名義なのか」「共有名義なのか」については、最寄りの法務局やWeb上の登記情報提供サービス(どちらも有料)で登記事項証明書(土地や建物の登記簿謄本)を確認すれば確実に分かります。確認するだけであれば登記情報提供サービスで閲覧すると安上がりです。
住宅ローンの契約状況
住宅ローンの契約は、どちらの名義になっているのでしょうか。近年は、夫婦でローンを組む「ペアローン」(どちらも債務者となっている)の利用も増えています。住宅ローンの契約書を見れば状況を確認することは可能です。もし分からない場合は、金融機関へ問い合わせてみましょう。
住宅ローンの残高
住宅ローンの支払いが「どこまで終わっているのか」「いくら返す必要があるのか」についても確認しましょう。金融機関から受け取っている返済予定表などに記載してあります。金融機関で「残高証明書を発行する(有料)」「電話や窓口で聞く」といった方法も可能です。
土地建物の現在の評価額
土地や建物が現時点でどの程度の資産価値になっているのかについても把握しておきましょう。不動産会社に依頼すれば大まかな金額を査定してもらえます。売却して得られる金額が住宅ローン残高よりも高いか低いかで対処が異なってくるでしょう。相場を知るためにも3社程度の不動産会社へ査定してもらうのが賢明です。
住宅ローンが残っている自宅の財産分与
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自宅の財産分与をする方法としては、「まず自宅を売却して残りの住宅ローンをすべて支払い、余ったお金を夫婦で分割する」という方法があります。この方法を選択できる場合は、もっとも分かりやすくすっきりする形かもしれません。しかし先述したようにこの方法を選ぶには「住宅ローン残高<売却予想価格」となることが必要です。ここでは2つのケースで確認していきましょう。
土地建物や住宅ローンが夫名義で夫が住み続ける場合
「住宅ローン残高のほうが多くて売れない」「夫婦どちらか一方が住み続けたい」といった場合は、今後の住宅ローンの支払いと住宅の名義についてどうするかの話し合いが必要です。例えば以下のケースではどのようになるでしょうか。
項目 |
金額 |
売却予想価格(土地建物) |
2,000万円 |
住宅ローン残高(離婚時点) |
2,500万円 |
預金 |
1,000万円 |
2,000万円の価値がある土地建物の住宅ローンが離婚時点で2,500万円残っていると想定してみましょう。それ以外の財産として預金が1,000万円ある場合、夫婦の資産は2,000万円-2,500万円+1,000万円と算出し500万円となりこれを2分の1ずつ分けるとそれぞれに250万円となります。
夫名義でローンを組んでいて離婚後は夫1人で住み続けることにした場合、夫は住宅2,000万円とローン2,500万円と預金250万円、妻に250万円を渡すことで決着をつけることも可能です。
ただしこの方法の場合住宅ローンを返済していく夫の負担が大きくなるため、もっとも適した方法というわけではありません。基本は、お互いが内容を納得できるよう十分に話し合って決めるようにしましょう。
家やローンが夫名義で妻が住み続ける場合
これは妻側に十分な収入があることが前提です。もし家やローンが夫名義で妻が住み続けることになった場合は、夫から妻へ住宅ローンの借り換え(※)を検討してみましょう。
金融機関の審査が通るようであれば住宅ローンの返済名義を妻の名義にすることも可能です。逆に妻が「専業主婦で収入がない」「パート収入のみ」といった場合は金融機関の審査が通らないため借り換えはできません。
借り換えができた場合は、不動産の名義も妻に変更しておくとのちのトラブルを避けることができます。
こちらに記載した内容は、あくまでも一例となります。分け方に明確な正解はありませんので夫婦でしっかりと話し合って最終的に双方が納得できる形に落とし込んでいくことが重要です。
※借り換え(かりかえ):金融機関から受けていた融資を、別の金融機関から新規で融資を受け返済すること。
財産分与でもめてしまったら
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「財産分与をどのような割合で分割するか」は、夫婦の話し合いで決めるのが基本です。話し合ってお互いが納得できる結論が出せれば問題ありません。
しかしなかには折り合いがつかずもめてしまったりそもそも話し合いができる状況になかったりする夫婦もあるのではないでしょうか。「話し合いができない」「結論が出ない」といった場合は、裁判所で「調停」という手続きを取ることができます。
調停とは、夫婦の間に法律の専門家などの第三者が入って双方の意見を聞き結論が出せるようにアドバイスしてくれる制度です。裁判よりも手続きも簡単で手数料も安く(収入印紙1,200円と郵便切手代)、相手と直接会って話さなくても済みます。ちなみに調停をしても決着がつかないときは、審判や裁判といった手続きも可能です。
ただし財産分与は、離婚から2年以内に手続きが必要になるため注意しましょう。財産分与は、離婚前から話し合いを行い離婚と同時に分けることもできます。もちろん離婚後に分けることもできますが2年を超えると裁判所への申し立てができなくなるのです。
離婚の財産分与は情報を集めて話し合いを
離婚して財産分与をすることになったら「対象になる財産がいくらあってどんな状態なのか」を確認していきましょう。住宅ローン残高のある土地建物を分ける場合は「土地建物や住宅ローンの名義」「住宅ローン残高」「不動産の売却想定金額」などさまざま条件で選択できる方法が異なってきます。財産分与は、夫婦の話し合いで結論を出すのが基本です。
しかし夫婦で話し合いがうまくいかない場合は、裁判所や弁護士など専門家を交えて調停などを利用して決めていくこともできます。なかには「相手と顔も合わせたくない」というケースもあるかもしれませんが離婚後の生活のことを考えて自分が主張できる権利は十分に主張し、適正な財産分与を行いましょう。
執筆者:株式会社ZUU
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