会社設立の流れや具体的な手順を解説!登記後に必要になる手続きや注意点は?
会社設立とは、登記申請を行い法人を立ち上げることを指します。
個人事業主の開業とは異なる特徴があるほか、出資者の構成員によって会社の形態も異なります。
本記事では、会社設立の概要をはじめ、具体的な手続きの流れや必要書類、会社設立に際しての注意点について解説します。
会社設立とは登記申請を行い法人を立ち上げること
会社設立とは、会社として登記する申請を行い、法人を立ち上げることを指します。法人登記をした日が、会社の設立日になります。
「設立」と似ている言葉に「創立」や「創業」があります。「創立」は、初めて組織を立ち上げて事業を開始することを指す言葉で、登記申請を前提としていて初めてかどうかを問わない設立とは意味合いが異なります。一般的に、組織を立ち上げ事業を開始した日が「創立日」になります。
また創業とは、事業の開始そのものを指すのが一般的で、組織の立ち上げの意味を含んでいない点で、創立や設立とは異なる言葉になります。
設立する会社の種類ごとの特徴
会社には設立方法や構成員の違いによって、いくつか種類があります。
主な種類と特徴は、下表の通りです。
株式会社 | 株主が出資者となり、経営者によって事業運営をして発生した利益を出資者に配分する形態 |
---|---|
合同会社 |
出資者と経営者が同じで、出資した社員が意思決定権を持つ形態 |
合資会社 | 有限責任社員が資本提供をして、無限責任社員が経営者となる形態 |
合名会社 | 無限責任社員のみで構成される形態 |
出資者が、有限責任社員と無限責任社員のどちらに該当するかによって会社の形態が異なります。有限責任社員は、会社が倒産した際などに発生した会社の債務について、出資額の範囲内で責任を負う必要があります。一方で、無限責任社員は、自分の財産をもって全ての債務について責任を負う必要があります。
株式会社や合同会社の出資者は、全員が有限責任社員に該当し、合資会社の一部社員と合名会社の全員が無限責任社員に該当します。
ただし、銀行から融資を受けて会社を設立する場合、創業者や経営者が連帯保証人になるケースにおいては、それぞれが実質的に無限責任社員に該当することになります。
会社設立と個人事業主の開業の違い
起業をするには、会社設立のほかに個人事業主として開業する方法もあります。
個人事業主として開業する場合、基本的には会社を設立することがなく、税務署に対して開業届と税務申告に関連する必要書類の提出をもって手続きが完了します。そのため、登記の申請も行いません。また、資本金の準備が不要な点についても、会社設立とは異なるポイントです。
はじめは個人事業主として開業し、事業が軌道に乗り規模を拡大したい場合などにあらためて法人化し、会社設立をするケースもあります。
会社を設立するメリット
基本情報の公開に伴う対外的な信用獲得
会社を設立すると、以下のような会社の基本情報が公開されます。
- 会社名
- 代表者名
- 所在地
- 資本金
- 事業内容
- 事業形態 など
会社として基本的な情報を公開することによって、社外に会社の概要が伝わり、取引機会の創出などに繋がりやすくなるメリットがあります。
自社からターゲットに対するアプローチが生まれるだけでなく、社外から自社に対する提案なども生まれるため、事業がより円滑に進められるようになる可能性が広がります。
所得に対して法人税率が適用される
資本金 | 所得金額 | 税率 |
---|---|---|
1億円以下の法人 |
800万円を超えた部分 |
23.2% |
800万円以下 | 15.0% | |
上記以外の普通法人 |
- | 23.2% |
一方で、個人事業主の所得税は算出のされ方が異なります。
課税される事業所得の金額の算出方法は、以下の通りです。
事業所得の金額=総収入金額-必要経費
所得税額=事業所得の金額×税率-控除額
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで |
5% |
0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで |
20% |
427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
決算月を自由に設定できる
1年以内であれば事業年度を自由に決められるため、それに伴って決算月も自由に設定することができる点も、会社設立の大きなメリットです。
現在でも官公庁や大企業の動きにならい、3月を決算月としている企業も多いですが、設立する会社の都合にあわせて自由に設定できます。
一方で個人事業主の場合、事業年度は1月から12月までの1年間に決められています。
事業年度が自由に決められることで、対応しなければならない作業がなにかと多い決算月と事業の繁忙期時期が重なるのを防ぐことができるようになったりします。
会社設立の流れや必要な手続き
会社を設立するまでには、あらかじめ用意しておかなければならないものがあるだけでなく、必要書類の作成・提出をして、手順に従い進めていく必要があります。
ここからは、会社の設立時にフォーカスして、具体的な流れや必要な手続きについて解説します。
会社概要の決定
まず会社を設立するにあたって、会社の基本的な情報について決める必要があります。これらはあらかじめ決めておかなければ、登記申請を円滑に進めることができず、会社設立に時間がかかってしまう可能性があるため注意しましょう。
設立する会社の概要について、あらかじめ決めておく必要のある内容は以下の通りです。
- 社名
- 所在地
- 資本金
- 事業目的
- 事業年度(会計年度)
- 公告の方法
- 役員構成
- 株主構成
- 株式関連の取り決め
それぞれの具体的な内容について、解説します。
社名
登記申請には会社名が必要になるため、事前に決めておく必要があります。
事業内容が想起されるような会社名に決めるのもひとつの方法です。設立してから変更することも可能です。
また、社名が決まったらあわせて社印を作っておくと良いでしょう。
2021年2月からオンライン登記の場合のみ、社印は任意となりましたが、書面で登記をする際には印鑑が必要になります。
所在地
資本金
会社を運営する元手となる資本金も、会社の基本情報として公開される情報のひとつです。
事業を進めていくうえで必要になる資本金ですが、2006年5月の会社法改正以降、資本金1円での会社設立も可能となりました。
事業目的
事業年度(会計年度)
前述の通り、法人は事業年度を自由に設定することができます。
官公庁や大企業にあわせて3月に設定する会社が多い傾向にありますが、事業内容によって繁忙期と決算月が重ならないよう設定しても良いでしょう。
公告の方法
公告とは、株主や取引先をはじめとした利害関係のある関係先へお知らせをするもののことをいいます。決算内容に関する公告や、資本金の減少、合併などが行われる際の決定公告があります。
会社の公告方法は、3種類のうちいずれかの方法で定款に定めることができると会社法939条に定められています。
- 官報に掲載する方法
- 時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙に掲載する方法
- 電子公告
役員構成
株主構成
株式関連の取り決め
定款の作成・認証
会社概要を決定したら、定款の作成と認証が必要になります。
定款とは、会社設立時に発起人全員の同意に基づいて定められた会社の基本的なルールをまとめたものです。
株式会社の場合は作成した定款は公証役場で認証を受ける必要がありますが、合同会社、合資会社、合名会社の場合は、認証を受ける必要はありません。
資本金の払い込み
定款の認証後、会社設立の発起人の口座へ資本金の払い込みを行います。
会社設立をする時点で、誰がいくら払い込みをするのか決まっているため、通帳に払い込んだ人の名前と金額が記載されるように払い込む必要があります。
2006年5月の会社法改正に伴い、資本金は1円でも会社設立が可能ですが、この場合でもきちんと払い込みを行う必要がある点には注意しましょう。
登記申請書類の作成および登記申請
会社の設立登記をするために、登記申請書類の作成と登記申請を行います。
必要な書類は会社の形態によって異なりますが、株式会社の場合は以下の書類が必要になります。
- 定款
- 設立時取締役,設立時監査役選任及び本店所在場所決議書
- 発起人の同意書
- 設立時代表取締役を選定したことを証する書面
- 設立時代表取締役、設立時取締役及び設立時監査役の就任承諾書
- 設立時代表取締役の印鑑証明書
- 取締役、設立時監査役の本人確認証明書
- 払い込みを証する書面
また、必要に応じて以下の書類添付が必要になるケースもあります。
- 委任状
- 設立時取締役及び設立時監査役の調査報告書及びその附属書類
- 資本金の額の計上に関する設立時代表取締役の証明書
- 株主名簿管理人との契約を証する書面
- 検査役の調査報告書及びその附属書類
- 弁護士等の証明書及びその附属書類
- 有価証券の市場価格を証する書面
- 検査役の報告に関する裁判の謄本
必要書類一式を取り揃えて、原則として代表者が法務局で申請します。
登記申請後、不備がなければ一週間程度で会社設立が完了します。
法人登記をした後に必要になる手続き
法人登記が済んだ後に必要となる手続きについて、以下に分けて解説します。
- 税務署で行う法人設立の届け出関連の手続き
- 地方自治体で行う法人住民税・法人事業税関連の手続き
- 年金事務所で行う健康保険や厚生年金保険関連の手続き
法人設立の届け出関連
法人登記後、税務署に対して法人設立の届け出をする必要があります。設立日から2カ月以内に、所轄の税務署に法人設立に関する届け出を行います。
代表者の氏名や会社所在地のほか、事業目的や事業開始年月日などの情報を法人設立届出書に記載し、提出します。法人設立届出書には、「定款、寄附行為、規則または規約等の写し」を添付する必要があります。
法人住民税・法人事業税関連
法人登記後は、法人住民税や法人事業税に関連した手続きも行います。
会社の所在地にある都道府県税事務所と市町村役場に、法人設立届出書の提出が必要になります。設立日からの期限は、提出先の都道府県、市町村区によって異なります。
健康保険や厚生年金保険関連
会社設立後には、健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険などの社会保険関連の手続きも必要になります。会社設立後の社会保険への加入は、法律によって義務付けられています。
原則として、会社設立から5日以内に会社所在地の所轄の年金事務所に届け出る必要があります。
労働保険や雇用保険への加入
従業員を雇用する場合、業務上の傷病に対して保険金を給付する労災保険や失業・休業した場合に保険金を給付する雇用保険への加入義務があります。
雇用保険適用事業所設置届を所轄のハローワークへ提出し、手続きを行います。
会社設立時の注意点
登記申請をはじめ会社設立には費用がかかる
会社の設立時には、事業を行うための資本金以外にも、定款の認証手数料や登記申請、登録免許税などの費用が発生します。具体的な費用は起業する会社の形態によって異なります。
会社設立時の費用が負担となる場合や、スモールスタートで事業を進めたい場合には、個人事業主として開業し、規模が大きくなってきたタイミングで法人化するという方法もおすすめです。
会社設立時に発生する費用については、以下の記事でも解説しています。
法人のお金は個人利用ができない
会社のお金は個人利用することができない点にも注意してください。
会社設立後は、法人口座の開設によって事業用の資産と個人の資産を明確に分けられるようにするのもおすすめです。
まとめ
会社設立は法人登記を伴うため、個人事業主の開業とは異なります。会社を設立することで、事業の推進にもメリットが多いです。設立する際の出資者の構成によって、会社の形態にもいくつか種類があるため、把握しておくと良いでしょう。
また、会社を設立する際にはあらかじめ必要な情報を取りまとめ、手順に沿って正しく手続きを進めることが大切です。法人登記後にも、各所への手続きが必要になるため注意しましょう。
※本内容は制作日時点の情報をもとに作成しております。また、記事の情報は当行が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その確実性を保証したものではございません。
※記事は外部有識者の方等にも執筆いただいておりますが、その内容は執筆者本人の見解等に基づくものであり、当行の見解等を示すものではありません。
※尚、記事の内容は予告なしに変更することがあります。