高年齢雇用継続給付とは?廃止はいつから?振込日や計算・申請方法について解説

- 2025年8月20日
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この記事はこんな方におススメ!
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高年齢雇用継続給付について知りたい方
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高年齢雇用継続給付の支給額や申請手続きが知りたい方
定年後も働き続ける方がふえています。そこで知っておきたいのが高年齢雇用継続給付。低下した賃金の一部を補ってくれる給付金です。
今回は、高年齢雇用継続給付についてわかりやすく解説します。
目次
高年齢雇用継続給付とは
高年齢雇用継続給付は、定年後も引き続き同じ会社で再雇用されて働く方や、いったん退職をしてから別の会社に再就職して働く方を対象とした、雇用保険からの給付です。
高年齢雇用継続給付の対象者
年金の支給開始年齢が65歳となったため、60歳の定年から年金の受給開始までは空白の5年間といわれています。そのため、定年後も働き続けることは珍しくありません。
しかし、定年後に再雇用などで働く場合、一般的に賃金は下がります。そこで、その一部を補填することで高齢者の働く意欲を喚起し、65歳まで働き続けることを促すための制度が設けられています。
これが「高年齢雇用継続給付」です。「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」の2種類ありますから、内容をみていきましょう。
高年齢雇用継続基本給付金
「高年齢雇用継続基本給付金」は、60歳以降も働き続ける一定の労働者に支給されます。60歳で定年退職したあと、同じ企業で再雇用制度などを利用し、嘱託などとして継続雇用される労働者が主に該当します。
具体的な支給対象者は下記のとおりです。
- 60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者である
- 60歳以降の賃金が、60歳時点と比べて75%未満に低下している
- 雇用保険からの給付である基本手当を受給していない
- 雇用保険の被保険者であった期間が、通算して5年以上ある
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厚生労働省「高年齢雇用継続給付の内容及び支給申請手続について」
https://jsite.mhlw.go.jp/kanagawa-hellowork/content/contents/001720145.pdf
高年齢再就職給付金
「高年齢再就職給付金」は、会社を退職して雇用保険からの給付である基本手当を受給している方が、60歳以降に再就職した場合に支給される給付金です。
具体的な支給対象者は下記のとおりです。
- 60歳以上65歳未満で再就職した雇用保険の一般被保険者である
- 再就職後の賃金が、基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75%未満である
- 再就職する前に基本手当の支給を受け、その受給期間内に再就職し、かつ支給残日数が100日以上ある
- 直前の離職時において、被保険者であった期間が通算して5年以上ある
- 1年を超えて継続して雇用されると見込まれる、安定した職業に就いている
- その再就職に関して、再就職手当の支給を受けていない
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厚生労働省「第10章 高年齢雇用継続給付について」
https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/002188162.pdf

いつまで受け取れるのか?
高年齢雇用継続給付を受給できる期間をみてみましょう。
高年齢雇用継続基本給付金
高年齢雇用継続基本給付金を受給できるのは、60歳に到達した月から65歳に達する月までです。ただし、受給には各暦月の初日から末日まで雇用保険の被保険者であることが必要です。
高年齢再就職給付金
高年齢再就職給付金の受給期間は、再就職した日の前日における基本手当の支給残日数により異なります。
支給残日数が200日以上の場合 | 再就職日の翌日から2年を経過する日の属する月まで |
---|---|
支給残日数が100日以上200日未満の場合 | 再就職日の翌日から1年 |
支給残日数が100日未満の場合 | 受給不可 |
また、再就職した方が65歳に達した場合は、65歳に達した月までの受給となります。さらに、各暦月の初日から末日まで雇用保険の被保険者であることが必要です。途中で退職すると支給対象とはならないので注意してください。
なお、再就職に関する雇用保険からの給付には「再就職手当」もあります。再就職手当は、基本手当の受給資格がある方が安定した職業に就いた場合に支給されますが、高年齢再就職給付金と再就職手当の両方を受け取ることはできません。どちらか一方を選択することになりますので注意してください。
振込日はいつ?
高年齢雇用継続給付の支給申請をして支給決定された場合、高年齢雇用継続給付支給決定通知書が発行されます。給付金は、支給決定通知書に印字されている支給決定日から1週間程度で振り込まれるので、支給決定通知書を確認してみましょう。
高年齢雇用継続給付の廃止はいつから?
「雇用保険法等の一部を改正する法律(令和2年法律第14号)」の施行により、2025年4月1日から高年齢雇用継続給付の支給率が、最大15%から最大10%に変更されました。
60歳に達した日(60歳の誕生日の前日)が2025年3月31日以前の方の支給率は最大15%、4月1日以降の方は最大10%となっています。
高年齢雇用継続給付については、以前から見直しが検討されてきました。今後、2025年4月からの給付率引下げの施行状況などを見つつ、引き続き段階的な縮小や廃止が検討されています。

高年齢雇用継続給付が縮小される背景
高年齢者の雇用についてはルールがあります。
企業が従業員の定年を定める場合、その年齢は60歳以上としなければなりません。よって、多くの企業が定年を60歳と定めています。
しかし、公的年金の受給開始年齢が65歳に引き上げられたことから、定年が65歳未満の場合、企業には65歳までの雇用を確保する義務が課せられています。
さらに2021年4月からは、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務とされました。
このように、定年後も働きやすい労働環境が整いつつあり、高年齢雇用継続給付による支援の必要性が以前より低くなっています。また、少子高齢化による人手不足が進む中、労働力確保のために、企業は高齢者を活用する方向です。同一労働同一賃金への取組が進むことで、仕事内容が変わらなければ賃金の減少も抑えられるでしょう。
さまざまな面で高齢者の雇用が進むと見込まれていることが、高年齢雇用継続給付が縮小されている背景にあります。
高年齢雇用継続給付はいくらもらえる?

高年齢雇用継続給付は、具体的にいくらもらえるのでしょうか。くわしくみていきましょう。
高年齢雇用継続給付の計算方法
高年齢雇用継続給付は、以下の計算式で求めます。
高年齢雇用継続給付 = 支給対象月に支払われた賃金額 × 支給率
「支給率」は、60歳到達時点の賃金月額と比べ、60歳以降の支給対象月に支払われた賃金がどれくらい下がったか(賃金の低下率)で定められています。
賃金の低下率 = 支給対象月に支払われた賃金額(みなし賃金を含む) / 60歳到達時の賃金月額 × 100
各月に支払われた賃金が低下した理由の中には、被保険者本人や事業主に責任がある場合や、他の社会保険により保障されるのが適切である場合などがあります。その際は、減額された賃金額を加算した賃金で低下率を判断します。これを、「みなし賃金額」といいます。
「60歳到達時の賃金月額」は、原則として、60歳に到達する前6ヵ月間の総支給額(保険料などが控除される前の金額。賞与は除く)を180で除した賃金日額の30日分の額をいいます。
なお、上記により計算した支給額が最低限度額を超えない場合は、高年齢雇用継続給付は支給されません。また、支給対象月に支払われた賃金額と高年齢雇用継続給付の合計額が支給限度額を超えるときは、超えた額を減じて支給されます。この金額は、「毎月勤労統計」の平均定期給与額により毎年8月1日に改定されます。
高年齢雇用継続給付の支給率の早見表
高年齢雇用継続給付は、下記の支給率の早見表を参考に計算することができます(2025年3月31日以前に受給資格を満たした場合には支給率が異なります)。
【早見表】(2025年4月1日以降に受給資格を満たした場合)
賃金の低下率 | 支給率 | 賃金の低下率 | 支給率 |
---|---|---|---|
75.00%以上 | 0.00% | 69.50% | 4.60% |
74.50% | 0.39% | 69.00% | 5.06% |
74.00% | 0.79% | 68.50% | 5.52% |
73.50% | 1.19% | 68.00% | 5.99% |
73.00% | 1.59% | 67.50% | 6.46% |
72.50% | 2.01% | 67.00% | 6.95% |
72.00% | 2.42% | 66.50% | 7.44% |
71.50% | 2.85% | 66.00% | 7.93% |
71.00% | 3.28% | 65.50% | 8.44% |
70.50% | 3.71% | 65.00% | 8.95% |
70.00% | 4.16% | 64.50% | 9.47% |
64.00%以下 | 10.00% |
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厚生労働省「Q&A~高年齢雇用継続給付~」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000158464.html
賃金の低下率が75%以上の場合、高年齢雇用継続給付は受け取れません。給付金の支給率は賃金の低下率に応じて増加し、低下率が64%以下になると支給率は最大の10%となります。
支給金額の例
例として、60歳到達時の賃金月額が30万円である場合の支給額をみてみましょう。
支給対象月に支払われた賃金 | 高年齢雇用継続給付 |
---|---|
26万円 | 0円 |
20万円 | 14,545円 |
18万円 | 18,000円 |
支給対象月に支払われた賃金が26万円の場合、(26万円 ÷ 30万円) × 100 = 87%となり、賃金が75%未満に低下してないので高年齢雇用継続給付は受け取れません。
支給対象月に支払われた賃金が20万円の場合、低下率が66.67%なので高年齢雇用継続給付の対象となります。給付額は一定の計算式により計算され、14,545円です。
支給対象月に支払われた賃金が18万円の場合、低下率が60%なので支給率は最大の10%、支給額は18,000円となります。
高年齢雇用継続給付の申請方法
高年齢雇用継続給付の支給申請は、電子申請または会社を管轄するハローワークへの書類提出で行います。
この申請手続きは、原則として、会社(事業主)を経由して行う必要があります。ただし、被保険者本人が希望する場合は、本人が申請手続きを行うことも可能です。
高年齢雇用継続基本給付金の場合、定年後に再雇用された60歳以降の従業員の賃金が、60歳時点の賃金から初めて75%未満に下がった時、低下した月の初日から4ヵ月以内に、受給資格確認と支給申請を行います。
高年齢再就職給付金の場合、受給資格確認は資格取得届と同時に行い、支給申請方法は高年齢雇用継続基本給付金の場合と同様です。
その後は原則として2ヵ月に一度、指定された支給申請月中に支給手続きを行います。
高年齢雇用継続基本給付金の場合
支給申請と受給資格確認を同時に行うことが多いですが、60歳に到達した時点で再雇用後の賃金が75%未満に低下するかどうかにかかわらず、支給申請前に受給資格の確認と賃金登録のみを行うこともできます。受給資格の確認や賃金月額が把握できるなどのメリットがあるため、ハローワークでは事前の手続きを勧めています。
60歳到達日において被保険者であった場合の、受給資格の確認と支給申請に必要な書類は次のとおりです。
速やかな給付申請に向けて、預金通帳や運転免許証の写しなど、従業員が用意する必要書類は早めに準備しましょう。
【届出書類】
- 雇用保険被保険者六十歳到達時等賃金証明書
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
【添付書類】
- 賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿、雇用契約書など
- 金融機関の口座情報が確認できる書類の写し(預金通帳、キャッシュカードの写し)
- 被保険者の年齢が確認できる書類の写し(運転免許証や住民票の写しなど)
- あらかじめマイナンバーを届け出ている方は、年齢確認書類の写しを省略できます。
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厚生労働省「第10章 高年齢雇用継続給付について」
https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/002188162.pdf
申請後、受給資格がある場合は、高年齢雇用継続給付受給資格確認通知書(確認通知書)が会社(事業主)宛に交付されます。ハローワークから会社に交付された確認通知書は、会社から従業員に渡されます。なくさずに保管しておきましょう。確認通知書に添付されている高年齢雇用継続給付次回支給申請日指定通知書(事業主通知用)には、次回支給申請すべき月が指定されているので確認しましょう。
また、給付金は、支給決定通知書に印字されている支給決定日から1週間程度で本人名義の指定口座に振り込まれます。口座の明細を確認しましょう。
2回目以降の申請に必要な書類は次のとおりです。
【届出書類】
- 高年齢雇用継続給付支給申請書(支給申請書)
【添付書類】
- 賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿など
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厚生労働省「第10章 高年齢雇用継続給付について」
https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/002188162.pdf
高年齢再就職給付金の場合
まず、再就職先の会社を管轄するハローワークで、受給資格の有無を確認する必要があります。
従業員を採用した場合、雇用保険の適用要件を満たしていれば雇用保険被保険者資格取得届を提出します。採用した従業員が雇用保険の基本手当を受給した60歳以上の方であれば、同時に以下の書類を提出します。
【届出書類】
- 高年齢雇用継続給付受給資格確認票・(初回)高年齢雇用継続給付支給申請書
【添付書類】
- 賃金台帳、出勤簿(タイムカード)、労働者名簿、雇用契約書など
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厚生労働省「第10章 高年齢雇用継続給付について」
https://jsite.mhlw.go.jp/saitama-roudoukyoku/content/contents/002188162.pdf
高年齢再就職給付金の受給資格がある場合は、受給資格確認通知書が交付されます。そのあとは、高年齢雇用継続基本給付金と同様の手順で申請を行います。

まとめ
高年齢雇用継続給付には、高年齢雇用継続基本給付金と高年齢再就職給付金の2種類があり、それぞれ支給要件や支給期間などが異なります。60歳以降の再就職に関して、高年齢再就職給付金と再就職手当は両方受け取れないので注意しましょう。
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執筆者:角村 俊一(かくむら しゅんいち)
執筆者保有資格:社会保険労務士、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、2種外務員資格
執筆者保有資格:社会保険労務士、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会認定 CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、2種外務員資格
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