もし夫が亡くなったら住宅ローンはどうなる?団信の保障を詳解
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- 2021年2月18日
団体信用生命保険(団信)とは、住宅ローンの契約者にローン返済中に万が一のことがあった場合、保険金により残りのローンを返済する制度のことです。団信には契約者の死亡・高度障害のほか、がんや心臓病などの一定の疾病にかかった場合などにも保険金が支払われる場合があり、制度の複雑さが増しているため、仕組みとカバー領域を整理しておきましょう。
団体信用生命保険(団信)とは
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家は人生においてもっとも大きな買い物と言えます。一括で支払うといったケースはほとんどなく、ローンを組んで返済していくのが一般的です。金額が大きいだけに、30年、35年と長期にわたり返済していくことになります。
長期的な返済期間を無事に過ごすことができればいいのですが、中には一家の大黒柱が病気になる、もしくは亡くなることで世帯の収入が大きく減少し、住宅ローン返済に苦労してしまうことも十分にありえます。
そこで、契約者が死亡するなどした場合に備え、遺族に住宅ローンの返済負担が及ばぬよう団体信用生命保険(団信)を利用し、住宅ローンの残債がなくなるようにしておくことが重要です。
団信の仕組み
団信は、原則として住宅ローン契約者が死亡した場合に、住宅ローンの残債に相当する金額が保険金として住宅ローンを利用している金融機関に支払われ、住宅ローンが完済される仕組みとなりますが、保障内容を拡大することで、がんや脳血管疾病などほかの疾病にも対応させることができます。
団信の契約には引受条件が設定されており、基本的に契約者の年齢や健康状態によっては団信の契約が行えなかったり、利用できる団信に制限が加わったりする場合があります。
一般の生命保険との違い
団信の保険形態は一般的な生命保険とは異なります。保険金の受取人は住宅ローンを利用している金融機関となり、保険料は契約者が直接負担するのではなく住宅ローン金利に上乗せされ、それによって生命保険料控除や保険金の納税などに違いが生じます。
団信の種類と保障内容
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団信は契約者が「一定の状態」となった場合に保険金が支払われる仕組みですが、一定の状態にはさまざまなパターンがあります。利用できる団信は契約する金融機関によって変わってきますので、ニーズに沿った団信が契約できる金融機関を選ぶことも大切です。
一般団信
もっともシンプルな団信で、住宅ローンの契約者が死亡・高度障害の状態となった場合のみ保険金が支払われます。
ワイド団信
一般団信と同様の保険内容ですが、引受条件が緩和されており、傷病歴のある人でも利用することができます。
がん保障
死亡・高度障害に加え、一定のがんに罹患した場合に住宅ローンの残債が完済または軽減されます。がん治療は長期におよぶ場合もあり、以前よりも収入が減少してしまう恐れがあります。金利の上乗せ幅も小さいため、がんに対してとくに備えたい場合にぴったりだと言えるでしょう。
3大疾病保障
死亡・高度障害に加え、がん・急性心筋梗塞・脳卒中などの脳血管疾患に罹患し、入院や就業不能などの一定の状態に陥った場合に住宅ローンの免除を受けることができます。
8大疾病保障
死亡・高度障害および、がん・急性心筋梗塞・脳血管疾患に加え、高血圧性疾患・慢性腎不全・慢性膵炎・糖尿病・肝硬変に罹患し、入院や就業不能などの一定の状態に陥った場合に住宅ローンの免除を受けることができます。
11大疾病保障
8大疾病保障に上皮内がん・皮膚がん・大動脈瘤および乖離も対象となり、これらの疾病に罹患し、一定の状態に陥った場合に住宅ローンの免除を受けることができます。
全疾病保障
全ての疾病・ケガで就業不能となった場合に、住宅ローンの返済が保険料によって肩代わりされ、就業不能期間が一定期間を超えた場合は住宅ローンの免除を受けることができます。
夫婦連生団信
通常の団信では、マイホームを夫婦で購入し連帯債務や共有持分の状態となっている場合は、契約者の一方が死亡するなどしても住宅ローンが完済となるのは死亡した契約者が負っていた返済負担の部分に限られます。
夫婦連生団信では、ペアローンを契約している夫婦どちらか一方が死亡・高度障害となった場合、住宅ローンの全額が免除されることになります。
支払い条件比較表
死亡・高度障害 |
がん |
3大疾病 |
ケガによる要介護 |
上乗せ金利 |
|
一般団信 |
○ |
× |
× |
× |
なし |
ワイド団信 |
○ |
× |
× |
× |
0.2% |
がん保障 |
○ |
○ |
がんのみ保障 |
× |
0.1% |
3大疾病保障 |
○ |
○ |
○ |
× |
0.3% |
8大疾病保障 |
○ |
○ |
○ |
× |
0.3% |
11大疾病保障 |
○ |
○ |
○ |
× |
0.3% |
全疾病保障 |
○ |
○ |
○ |
○ |
~0.6% |
夫婦連生団信 |
○ |
× |
× |
× |
~0.2% |
加入前に知っておくべきこと
(画像提供:beeboys/stock.adobe.com)
団信は契約形態などが一般の生命保険と異なるため、税金や契約の変更・更新などに一定の制限が生じるなどの自由度が劣る部分もあるため、加入前に相違点や保障内容を把握しておきましょう。
所得税の納税義務がない
一般の生命保険の保険金は、契約の形態により所得税・相続税・贈与税の課税対象となりますが、団信では保険金の受取人が金融機関のため、契約者はこれらの納税義務から免れることができます。
生命保険料控除の対象外
団信は契約者が保険料を直接負担していないため、団信の保険料は生命保険料控除などの対象とはなりませんが、住宅ローンの残債の一部として、「住宅ローン減税制度」の適用を受けることができます。
一般の生命保険と比べて保障が薄い
団信の保険金は住宅ローンの残債とリンクしているため、返済が進むにしたがい保険金の額も減少していくため、保険としての効果が弱まっていくほか、対象となる疾病に罹患しただけでは保険金が支払われない点に注意が必要です。
健康状態の告知(借換時に新たに加入)
団信の利用に際し、契約者の健康状態を保険会社に告知する必要があります。告知する内容については保険会社の指定する告知書に沿って回答を行うことになりますが、この際故意や重要な過失によって事実と異なる告知を行った場合、保険会社による契約の解除などにより保険金が支払われず住宅ローンの残債が完済されない恐れがあります。
また、借り換え時でも団信の加入は再審査が行われるため、借り換え時の健康状態によっては同様の団信を利用することができない恐れもあります。
加入後の契約内容変更は不可
団信は加入後の契約変更を行うことはできず、どうしても契約内容を変更したい場合は住宅ローンの借り換えにより再度審査を受ける必要があります。事務手数料なども新たに必要となってしまうため団信の契約は一般の生命保険契約よりも注意して進めるようにしましょう。
保険金が支払われないケース
告知事項に故意や重過失によって事実と異なる記載をした場合、2年以内であれば保険会社は契約を解除することができます。しかし、告知内容の誤りや致死率が高い疾患や治療困難なものを隠していた場合は詐欺として扱われ、保険会社は2年経過後でも契約を取り消すことができます。
たしかに既往歴は団信を契約する上でマイナス要素となりますが、一律に契約を拒むものではありません。誤った告知で契約を行い、万が一の場合に保険金が支払われないといった事態とならぬよう、告知事項は正確に行いましょう。
一般の生命保険との内容の見直し
生命保険の保険金は遺族の生活を保障する大切な資金ですが、過剰に契約してしまうと保険料負担も大きくなってしまいます。マイホームを購入し、団信に加入することにより遺族の以後の住居費を大きく削減することができます。
一般の生命保険を併用している場合は保険金の額が過剰となってしまう可能性がありますので、団信の契約にともない一般の生命保険の保険料を見直すとよいでしょう。
生命保険との違いを把握しておく
住宅ローンの利用にともなって契約することができる団信は、契約者の健康に合わせてさまざまな疾病を対象範囲として加えることができます。
しかし一般の生命保険と異なり、対象となる疾病に罹患しただけでは保険金が支払われず、就業不能などの一定の状態となることを要件としており、保険金の受取人や保険料負担の仕組み、契約変更の制約など異なる点も多くあるため、加入する前に相違点を把握しておくことが重要です。
執筆者:菊原浩司
2級FP技能士、一種証券外務員資格保有。
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