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遺留分とは?割合や遺留分侵害額請求の仕組み、遺言書作成時の注意点を解説

遺留分とは?割合や遺留分侵害額請求の仕組み、遺言書作成時の注意点を解説
  • 2026年4月9日
相続にあたっては、遺言書や遺産分割協議の内容に沿って財産の相続が行われますが、その際には遺留分に注意する必要があります。遺留分とは、民法で定められた、兄弟姉妹以外の法定相続人が最低限相続できる割合のことで、相続での揉め事を軽減するためには、遺留分を考慮した遺言書を作成したほうが良いでしょう。
ここでは、遺留分の割合や遺留分侵害額請求の手順のほか、遺言書作成時の注意点などについて解説します。

目次
相続・遺言・遺産整理のご相談

法定相続人が最低限相続できる割合を定めた遺留分とは

遺留分とは、民法で定められた、兄弟姉妹以外の法定相続人が「最低限相続できる割合」のことです。被相続人による遺贈(遺言書)や生前贈与、死因贈与によって、この遺留分を侵害された場合、相続人は、他の受遺者や受贈者(遺言や贈与で多くの財産を取得した人)に対して、侵害された額に相当する金銭を請求することができます。これを「遺留分侵害額請求」といいます。
遺留分侵害額請求権には、侵害を知った時から1年という短い時効があるため注意しましょう。
遺言書は、原則として被相続人の意思が尊重されますが、遺留分は遺言の内容よりも優先されます。
たとえば、遺言書に「全財産を寄附する」と記載されていた場合でも、遺留分を侵害された権利者(相続人)は、遺留分侵害額請求を行うことができます。
なお、遺留分は、被相続人による遺贈(遺言書)や贈与によって侵害された場合に認められる権利です。相続人全員の合意により成立した遺産分割協議の内容については、遺留分侵害額請求は認められませんので注意してください。
つまり、遺留分に特に注意すべきなのは、遺言書の作成や生前贈与を行う被相続人であるといえます。

遺留分が認められる人と遺留分割合について

遺留分が認められるのは、法定相続人のうち、配偶者と子どもなどの直系卑属、ならびに親や祖父母などの直系尊属です。このため法定相続人であっても、兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
たとえば、相続人となる子どもに対して、財産を相続させない内容が遺言書に記載されていた場合でも、その子どもは遺留分侵害額請求権を行使し、他の相続人や受遺者(遺言などにより多くの財産を取得した人)に対して、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができます。
遺留分の割合は、「総体的遺留分」を、遺留分を有する者の法定相続分に応じて分け合った割合となります。総体的遺留分とは、原則として相続財産全体の1/2をいい、直系尊属のみが法定相続人である場合は1/3とされています。そのため、各相続人の遺留分の割合は、通常「法定相続分の1/2(直系尊属のみの場合は1/3)」となります。なお、法定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合は、兄弟姉妹には遺留分がないため、総体的遺留分の1/2のすべてが配偶者の遺留分となります。
そして、「遺留分の侵害額」として請求できる金額は、本来認められる遺留分の金額から、権利者自身がその相続で取得した財産の額や、特別受益(被相続人からの生前贈与で取得した一定の財産)の額を差し引いた金額となります。
ケース別・遺留分の割合
たとえば、遺留分の算定対象となる相続財産が1億円あり、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、総体的遺留分および各相続人の遺留分は、次のようになります。
  • 総体的遺留分
    1億円 × 1/2 = 5,000万円
  • 各相続人の遺留分:
    配偶者
    5,000万円 × 法定相続分1/2 = 2,500万円(相続財産全体の1/4)
    子ども(1人あたり)
    5,000万円 × 法定相続分1/4 = 1,250万円(相続財産全体の1/8)
  1. ここでは、各相続人に被相続人からの特別受益(生前贈与)がなく、算定された遺留分の全額が、そのまま遺留分侵害額となるものとします。
この場合、遺言書に「全財産を慈善団体に寄附する(遺贈する)」という内容が記載されていたとしても、配偶者および子どもは、それぞれ上記の各人の遺留分侵害相当額を、受遺者である慈善団体に対して請求することができます。

遺留分を請求できる遺留分侵害額請求権

遺留分侵害額請求権とは、遺留分を侵害された場合に、その侵害額に相当する金銭等の支払いを請求することができる権利です。遺留分侵害額請求を行うことで、侵害された遺留分を取り戻すことができます。この制度は、2019年7月に改正された民法が施行されるまでは「遺留分減殺請求権」と呼ばれていました。
遺留分減殺請求権では、不動産などの清算は「現物分割」で行われていましたが、遺留分侵害額請求権では現物分割ではなく、遺留分相当額の現金を請求する点が大きな違いです。
たとえば、相続人である配偶者には何も相続させず、子ども2人にすべての財産を相続させるという内容の遺言書が作成されていた場合でも、配偶者には遺留分侵害額請求権があります。このケースでは、配偶者は、相続財産全体の1/4に相当する金額を遺留分侵害額として請求することができます(法定相続分1/2 × 遺留分1/2)。
配偶者は、子ども2人に対して遺留分侵害額請求を行い、遺留分を取り戻すことが可能です。仮に、子ども2人が相続した財産が不動産のみだった場合でも、遺留分侵害額については配偶者に現金で支払わなければなりません。なお、遺留分侵害額請求を行わない場合には、特段の問題は生じません。
相続人を確定し、相続財産を調査したうえで、遺留分が侵害されていることが判明した場合には、遺留分侵害額請求を行います。
手順としては、まず遺留分を侵害している人(財産を多く取得した人)との話し合いから始めます。まとまらない場合には、家庭裁判所へ調停の申し立てや裁判所での訴訟を提起するという流れになります。
なお、先述のとおり、遺留分侵害額請求権の時効は、侵害の事実を知った時から1年とされているため、早めに対応することが重要です。

1. 遺留分を侵害している人との話し合い

遺留分侵害額請求をするには、まず、遺留分を侵害している人と直接話し合いをします。
話し合いに決まった方法はなく、侵害された遺留分を請求する意思を、何らかの方法で相手方に通知します。ただし、相手方に口頭で通知すると、通知があったかどうかをめぐってあとで争いになる可能性があります。したがって、内容証明郵便で通知することが一般的です。

2. 家庭裁判所での調停

遺留分を侵害している人との話し合いで解決しない場合や、相手方が話し合いに応じない場合は、家庭裁判所に遺留分侵害額の請求調停を申し立てます。なお、被相続人の死亡日が2019年7月1日より前の場合は、遺留分減殺による物件返還請求等の調停を申し立てます。
遺留分侵害額請求ではすぐに訴訟を提起することはできず、先に調停を申し立てることとされています。調停では、第三者である調停委員を交えて話し合いを進めて問題の解決を図ります。
調停の申し立てには、次のものが必要です。
  • 家事調停申立書
  • 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 被相続人の子どもで死亡している人がいる場合、その子どもの出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • 相続人に被相続人の父母が含まれ父母の一方が死亡しているときは、その死亡の記載がある戸籍謄本
  • 遺言書の写しまたは遺言書の検認調書謄本の写し
  • 財産の内容を証明する資料(不動産登記事項証明書、預貯金の残高証明書など)
  • 収入印紙1,200円分
  • 家庭裁判所との連絡用郵便切手
調停で合意ができた場合は、家庭裁判所により調停調書が作成されます。合意した内容を相手方が守らない場合は、調停調書に基づいて強制的な執行にまで発展する場合があります。

3. 訴訟の提起

調停で合意ができなかった場合は、遺留分を侵害している人を相手取って裁判所に訴えを起こします。請求金額が140万円を超える場合は地方裁判所に、140万円以下の場合は簡易裁判所に訴状を提出します。
訴訟の手続きを個人で行うことは難しいため、弁護士に依頼することをおススメします。

遺留分侵害額請求の時効

遺留分侵害額請求には時効があります。遺留分侵害額請求の時効は、遺留分が侵害された事実を知ってから1年以内です。
なお、遺留分が侵害されている事実を知らなかったとしても、相続開始から10年経過すると、遺留分侵害額を請求できなくなります。

遺留分侵害額請求に対する支払期限の猶予

遺留分侵害額請求をされて、その請求を受けた場合や審判などで侵害額の支払いを命じられた場合は、遺留分相当額を現金で支払います。不動産などを相続して手元に十分な現金がない場合は、財産の換金に時間がかかることもあるでしょう。
このような場合は、裁判所に支払期限の許与(猶予)を請求することができます。

遺留分の計算に含める贈与財産

相続財産だけでなく、被相続人が生前に行った一定の贈与財産についても、権利者の遺留分の計算対象に含まれます。
具体的には、次のような贈与が遺留分の計算対象となります。なお、これに該当しない贈与は原則として遺留分の計算上考慮されません。いわゆる「特別受益」とされる生前贈与財産とは、対象範囲が異なります。
  • 相続開始前1年以内に行われた、相続人以外への贈与
  • 相続開始前10年以内に行われた、相続人への贈与(生計の資本としての贈与などに限られる)
  • 遺留分を侵害することを知りながら行われた贈与(期間の制限なく計算に含まれる)
これらの財産に遺留分の割合を乗じて、権利者の遺留分額(請求可能な上限額)を算出し、その金額から、権利者自身が相続によって取得した財産の額や、特別受益の額を差し引いた金額が、「遺留分侵害額」として相手方に請求できる金額となります。
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遺留分を放棄する方法

遺留分は、法定相続人が最低限相続できる割合を定めたものですが、遺留分を放棄することも可能です。相続開始前と後では放棄する方法が異なりますので、それぞれの遺留分放棄の手続きについて紹介しましょう。

相続開始前は家庭裁判所に遺留分放棄の許可を申し立てる

相続開始前に遺留分を放棄する場合、家庭裁判所で遺留分放棄の許可を申し立てる必要があります。
実際に相続開始前に遺留分を放棄する例としては、財産のほとんどが事業に関するもので、後継者となる特定の相続人だけに相続させなければ経営に影響するケースが考えられるでしょう。後継者以外の相続人が遺留分を放棄すれば、確実に後継者に事業を承継できます。
なお、遺留分放棄の許可は、相続される人の住所地を管轄する家庭裁判所に、遺留分権利者本人が申し立てることになります。

相続開始後は請求をしなければ良い

相続開始後は、遺留分を請求できる人が遺留分侵害額請求をしなければ、放棄と同じになります。遺留分侵害額請求をせず、遺留分が侵害された事実を知ってから1年経過すれば、遺留分侵害額請求は時効となります。

遺言書作成時には遺留分を考慮する

遺留分を侵害している遺言書は、それ自体が無効となるわけではありませんが、その内容によって相続人同士で揉め事が発生する可能性も考えられます。遺言書作成時には遺留分について考慮したほうが良いでしょう。
遺言書を作成する際には、遺留分侵害額請求の対象となる贈与にも注意が必要です。下記の条件にあてはまる贈与については、各相続人の遺留分を算定する際の計算対象に含まれます。また、特別受益として生前贈与を受けた財産は、その受贈者の遺留分額から差し引いて遺留分侵害額が計算されます。そのため、高額な生前贈与を受けている相続人については、結果として遺留分侵害が生じない場合もあります。
<遺留分の計算上考慮される贈与財産>
  • 相続開始前1年以内に行われた相続人以外への贈与
  • 相続開始前10年以内に行われた相続人への贈与(生計の資本としての贈与および婚姻もしくは養子縁組のための贈与に限られる)
  • 遺留分を侵害すると知りながら行われた贈与
なお、贈与者と受贈者の双方が遺留分を侵害すると知りながら行われた贈与については、期間の制限はなくすべて遺留分侵害額請求の対象となります。

特定の相続人だけ多額の贈与を受けていると、ほかの相続人が不満に思うこともあるかもしれません。そのような状況を避けるためには、贈与を含め、遺留分を考慮した遺言書の内容にすると良いでしょう。
また、遺言書の付言事項で遺言者の想いを記載しておく方法もあります。贈与を含め、なぜそのような相続割合にしたか理由が記載されていれば、相続開始後の揉め事を防げる場合もあるでしょう。

遺言書作成は三菱UFJ銀行へご相談を

遺言書を作成する際には、できるだけ揉め事を避けられるよう、遺留分を考慮することをおススメします。三菱UFJ銀行では、相続の手続きに有効な公正証書遺言の作成から保管、遺言執行までの手続きをサポートさせていただいております。
また、三菱UFJ信託銀行の信託代理店として遺言信託[遺心伝心]を取り扱っています。三菱UFJ銀行の各支店へお気軽にご相談ください。
  • 井出 進一(いで しんいち)
  • 税理士・FP2級
  • さいとう税理士法人
  1. 記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。
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