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口座名義人の死亡後に必要な銀行の相続手続きとは?必要書類や払戻し制度を解説

口座名義人が死亡した際の銀行口座の手続きについて
  • 2025年12月4日
口座名義人が亡くなったら、銀行をはじめとする金融機関にその旨を連絡する必要があります。銀行に連絡すると口座名義人の銀行口座からは、原則として預金の払い戻しなどができなくなります。
ここでは、口座名義人が亡くなった際の銀行への連絡や、銀行口座から預金の払い戻しなどができるようにするための手続き、遺産分割前の相続預金の払戻し制度についてご紹介します。

目次
相続・遺言・遺産整理のご相談

相続が発生したら銀行に連絡を

口座名義人が亡くなったら、銀行への連絡が必要です。
役所への死亡届とは関係なく、銀行への死亡届などにより銀行が口座名義人の死亡を知った時点で一旦、相続財産の保全として口座が凍結されることとなります。
銀行に連絡せず勝手に預金を引き出してしまうと、遺産分割協議で揉める原因となったり、相続を単純承認したとみなされることもあります。
単純承認とは、プラスの財産もマイナスの財産も引き継ぐことです。たとえば相続放棄をしたいにもかかわらず、正当な手続きをしないまま銀行口座から勝手に預金を引き出してしまうと、単純承認とみなされて相続放棄ができないという状況にもなりかねません。
もし、葬儀費用の支払などで早期に被相続人の預金が必要となった場合などは、民法で認められた遺産分割前の相続預金の払戻し制度(銀行ごとに最大150万円)を利用するのが良いでしょう。

銀行口座の凍結解除に必要な書類とは?

被相続人(亡くなった方)の銀行口座は、相続手続きが終わるまで凍結されます。相続人間で遺産の分割方法が決まり、銀行口座の凍結解除の手続きを行うまでは、原則として預金を引き出すことはできません(ただし、遺産分割前の相続預金の払戻制度を利用する場合を除く)。
口座の凍結解除のためには、各金融機関が用意している払戻請求書(金融機関ごとに名称は異なる)に加え、戸籍謄本や印鑑証明書など相続財産の権利者本人であることを証明する書類が必要となります。
銀行での相続手続きは、相続する方法(遺言書や遺産分割協議書の有無)によって異なります。また、銀行によっても必要な書類は異なりますが、一般的な金融機関での手続きと必要書類についてご紹介しましょう。

遺言書・遺産分割協議書がない共同相続の場合(法定相続人全員で払戻請求) 

遺言書も遺産分割協議書もなく、複数人で相続する共同相続の場合は、下記の書類が必要になります。
■遺言書・遺産分割協議書がない共同相続の場合に必要な書類
必要書類 入手先 詳細
戸籍謄本 市区町村役場
  • 口座名義人(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 法定相続人を確認できるすべての戸籍謄本
  1. 戸籍謄本は、法定相続人を確認するために必要となります。
  2. 法務局が発行する「法定相続情報一覧図の写し」がある場合、戸籍謄本の提出は不要です。
印鑑証明書 市区町村役場
  • 「法定相続人全員」の印鑑証明書
  1. 法定相続人全員による本人確認書類と払戻請求書の提出により、遺産分割協議書などがなくても払戻可能な場合があります(金融機関により対応が異なります)。
  2. 発行日より6ヵ月以内のものが必要です(場合により、3ヵ月以内)。
通帳 被相続人
  • 証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む

遺言書がなく遺産分割協議書がある相続の場合(協議書に基づく払戻請求)

遺言書はないものの、遺産分割協議を行って遺産分割協議書を作成した場合には、下記の書類が必要になります。
■遺言書がなく遺産分割協議書がある相続の場合に必要な書類
必要書類 入手先 詳細
遺産分割協議書 相続人作成
  • 銀行に預けている資産を誰が受け取るか明確に記載された書類の原本
  1. 法定相続人全員の印鑑証明書の添付により、その協議内容が担保されます。
戸籍謄本 市区町村役場
  • 口座名義人(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本
  • 法定相続人を確認できるすべての戸籍謄本
  1. 法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがある場合、戸籍謄本は不要です。
印鑑証明書 市区町村役場
  • 「法定相続人全員」の印鑑証明書
  1. 発行日より6ヵ月以内のものが必要です(場合により、3ヵ月以内)。
通帳 被相続人
  • 証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む

遺言書があるが遺言執行者がいない場合(遺言書に基づく払戻請求)

遺言書があるものの、遺言執行者がいない場合には、下記の書類が必要になります。
■遺言書があるが遺言執行者がいない場合に必要な書類
必要書類 入手先 詳細
遺言書 被相続人作成
  • 銀行に預けている資産の分割割合や承継人が明確に記載された遺言書(原本)
  1. 自筆証書遺言書保管制度を利用されている場合は、遺言書情報証明書を提出ください。
家庭裁判所の
検認済証明書
家庭裁判所
  • 遺言書の存在と内容を家庭裁判所が確認したことを証明する書類
  1. 公正証書遺言または自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は不要です。
戸籍謄本 市区町村役場
  • 口座名義人(被相続人)の戸籍謄本
  • 法定相続人を確認できるすべての戸籍謄本
  1. 法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがある場合、戸籍謄本は不要です。
  2. 省略できる場合があります。
印鑑証明書 市区町村役場
  • 銀行に預けている資産を「受け取る人(受遺者)」の印鑑証明書
通帳 被相続人
  • 証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む

遺言書があり遺言執行者がいる場合(遺言執行者による払戻し手続き)

遺言書があり、遺言執行者がいる場合は、下記の書類が必要になります。
■遺言書があり遺言執行者がいる場合に必要な書類
必要書類 入手先 詳細
遺言書 被相続人作成
  • 銀行に預けている資産の分割割合や承継人が明確に記載された遺言書(原本)
  1. 自筆証書遺言書保管制度を利用されている場合は、遺言書情報証明書を提出ください。
家庭裁判所の
検認済証明書
家庭裁判所
  • 遺言書の存在と内容を家庭裁判所が確認したことを証明する書類
  1. 公正証書遺言または自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は不要です。
家庭裁判所の
遺言執行者選任審判所謄本
家庭裁判所
  • 家庭裁判所で選任された遺言執行者の場合は、その選任されたことを証明する書類
  1. 遺言書で指定された遺言執行者の場合は不要です。
戸籍謄本 市区町村役場
  • 口座名義人(被相続人)の戸籍謄本
  • 法定相続人を確認できるすべての戸籍謄本
  1. 法務局発行の法定相続情報一覧図の写しがある場合、戸籍謄本は不要です。
  2. 省略できる場合があります。
印鑑証明書 市区町村役場
  • 「遺言執行者」の印鑑証明書
  • 銀行に預けている資産を「受け取る人(受遺者)」の印鑑証明書
  1. 遺言執行者の本人確認も必要となります。
通帳 被相続人
  • 証書、キャッシュカード、貸金庫の鍵なども含む
  1. 上記の必要書類は一例であり、金融機関ごとに異なりますのでご注意ください。
三菱UFJ銀行の相続手続きで必要な書類については以下をご確認ください。

遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは?

遺産分割前の相続預金の払戻し制度とは、遺産分割前であっても被相続人の銀行口座から、一定額まで引き出すことができる民法で定められた制度です。
被相続人が亡くなった後は葬儀などの費用が必要になりますが、銀行口座が凍結されたままでは、相続人がそれらの費用を負担しなければなりません。しかし、遺産分割前の相続預金の払戻し制度を利用すれば、被相続人の銀行口座から一旦預金を引き出し、葬儀などの費用にあてることができるのです。
遺産分割前の相続預金の払戻し制度は、民法に定められた金額以下(最大でも150万円)であれば相続人単独で払戻しを受けることができますが、それを超える金額が必要な場合は、家庭裁判所の仮処分が必要となります。それぞれの場合についてご説明しましょう。

家庭裁判所の仮処分が不要な場合(民法上の払戻上限額以下の場合)

引き出そうとする金額が一定額以下の場合、家庭裁判所の仮処分が不要で、相続人単独で銀行による手続きのみで引き出すことができます(*)。手続きに必要な書類はおおむね下記のとおりです。

<法定相続人であることの証明書類> 

  • 被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本、戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡までの連続したもの)
  • 相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書

<本人確認書類> 

  • 預金の払い戻しを希望される方の印鑑証明書
  1. お取引金融機関により、必要となる書類が異なる場合がありますので、くわしくは、お取引金融機関にお問い合わせください。

また、相続人が単独で払い戻しができる額(民法上の上限額)は、下記の計算式で求められます。

相続人が単独で払い戻しができる額 = 相続開始時の預金額 × 1/3 × 払い戻しを行う相続人の法定相続分

ただし、この場合に引き出すことができる金額の上限は、150万円です。

  • 遺言相続のため制度を利用できない場合などもありますので、お取引金融機関にお問い合わせください。

家庭裁判所の仮処分が必要な場合(民法上の払戻上限額を超える場合)

家庭裁判所の仮処分が不要な場合に引き出せる金額以上にお金がいる場合は、家庭裁判所の仮処分が必要になります。この場合、ほかの相続人の利益を侵害せず、家庭裁判所が認めた金額まで引き出すことが可能です。

ただし、家庭裁判所の仮処分を受けるには、遺産分割の審判または調停の申立てを行い、その金額が必要な理由を認めてもらう必要があります。
家庭裁判所の仮処分が出たら、下記の書類とともに銀行で手続きをすることになります。

  • 家庭裁判所の審判書謄本(審判書上確定表示がない場合は、さらに審判確定証明書も必要)
  • 預金の払い戻しを希望される方の印鑑証明書
  1. お取引金融機関により、必要となる書類が異なる場合がありますので、くわしくは、お取引金融機関にお問い合わせください。

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三菱UFJ銀行では、遺産整理のご相談を承っております。
不動産、預貯金、株式などの名義変更や換金処分(売却・解約・外貨両替等による現金化)についても、三菱UFJ信託銀行の信託代理店として、三菱UFJ銀行の各支店にてご相談が可能です。

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  • 井出 進一(いで しんいち)
  • 税理士・FP2級
  • さいとう税理士法人
  1. 記事内の情報は更新時点のものです。最新情報は別途ホームページ等でご確認ください。
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