相続税とは?相続税の計算方法や負担軽減条件をくわしく解説

- 2025年9月24日
相続が発生した場合、相続する財産の状況によって、相続人は相続税を支払う必要があります。
相続税の支払期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内とされていますが、時間がかかる手続きや協議も多く、10ヵ月は決して長い期間ではありません。トラブルが起こることなくスムーズに相続手続きを進めるためには、できるだけ早い段階から財産を把握し、手続きや協議に備えることが肝要です。
ここでは、相続税の概要や生前贈与などの負担を軽減する方法のほか、相続にあたって知っておきたいポイントをご紹介します。
相続税の支払期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内とされていますが、時間がかかる手続きや協議も多く、10ヵ月は決して長い期間ではありません。トラブルが起こることなくスムーズに相続手続きを進めるためには、できるだけ早い段階から財産を把握し、手続きや協議に備えることが肝要です。
ここでは、相続税の概要や生前贈与などの負担を軽減する方法のほか、相続にあたって知っておきたいポイントをご紹介します。
目次
相続・遺言・遺産整理のご相談
相続税は遺産を相続した相続人が納める税金
相続税とは、①被相続人の財産を相続した相続人、および②遺贈(遺言書)により財産を取得した受遺者が納める税金です。まずは、相続税の概要についてご説明しましょう。
相続する額によって税率が変わる
相続税の税率は、相続人が受け取る財産の額や、法定相続人の状況に応じて、10%から55%まで変動します。
相続税を計算するには、まず財産を把握することが必要です。また、自分で相続税を計算することも可能ですが、正確に計算するには、できるだけ税理士などの専門家に依頼したほうが良いでしょう。
なお、生前に相続税額を把握しておく場合は、相続に関わる法律の改正や被相続人の財産の増減があるため、数年ごとに相続税を計算し直してみると良いかもしれません。
相続税を計算するには、まず財産を把握することが必要です。また、自分で相続税を計算することも可能ですが、正確に計算するには、できるだけ税理士などの専門家に依頼したほうが良いでしょう。
なお、生前に相続税額を把握しておく場合は、相続に関わる法律の改正や被相続人の財産の増減があるため、数年ごとに相続税を計算し直してみると良いかもしれません。
特に土地の評価の基準となる路線価は、ここ数年上がり続けている地区もありますので、相続税額に大きな影響を与える場合があります。
相続税の申告・納付期限
相続税の申告・納付期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内と決められています。
10ヵ月と聞くとまだ先と思うかもしれませんが、葬儀と並行して相続準備を進めたり、必要な書類を集めたりと、相続にかかる手続きは思いのほか多く、10ヵ月は決して長い期間とはいえません。遺言書がある場合は、遺産相続をスムーズに進められる可能性も高いですが、遺言書がない場合は、すべての財産を確定させて、どのように分割するかを相続人同士で話し合わなければなりません。
10ヵ月を1日でも過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税がかかる場合があるため、早めに手続きを進めていくと良いでしょう。
10ヵ月と聞くとまだ先と思うかもしれませんが、葬儀と並行して相続準備を進めたり、必要な書類を集めたりと、相続にかかる手続きは思いのほか多く、10ヵ月は決して長い期間とはいえません。遺言書がある場合は、遺産相続をスムーズに進められる可能性も高いですが、遺言書がない場合は、すべての財産を確定させて、どのように分割するかを相続人同士で話し合わなければなりません。
10ヵ月を1日でも過ぎてしまうと、無申告加算税や延滞税がかかる場合があるため、早めに手続きを進めていくと良いでしょう。
相続税がかかる財産
相続税は金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべての財産についてかかるのが原則です。ただし、相続税法上で墓や仏壇仏具などについては例外的に相続税がかかりません。
<相続税がかかる財産の例>
- 土地、建物、株式や公社債などの有価証券、預貯金、現金などのほか、非上場株式など金銭に見積もることができるすべての財産
- 被相続人が亡くなった時点における未収入金(入院給付金や還付税金など)
- 相続人が受け取った生命保険金や退職手当などいわゆる「みなし相続財産」
- 亡くなる前7年以内に「相続等により財産を取得した者」に対する贈与財産(暦年贈与財産)
- 相続時精算課税制度により贈与した財産(暦年贈与財産と異なり、7年以内の贈与に限らず
すべての贈与年が対象)
<相続税がかからない財産の例(非課税財産)>
- 墓地、仏壇、仏具、神棚、神具などの祭祀財産
- 相続人が受け取った生命保険金などで非課税枠内の金額(500万円 × 法定相続人の人数)
- 相続人が受け取った死亡退職金などで非課税枠内の金額(500万円 × 法定相続人の人数)
また、相続財産を申告期限までに国などに寄附した場合は、その財産は非課税になります。たとえば、相続人が相続した現金を使いふるさと納税をすると、その現金は非課税になります。
このように、相続税は基本的に相続発生時に経済的価値があるすべての財産についてかかります。一方で生命保険金や死亡退職金については、一定額まで相続税が非課税となる枠がありますので上手く活用することで相続税の額を軽減させることも可能です。
相続税の計算方法
相続税を計算するには、まず課税対象となる財産をすべて把握し、その金額をもとに相続税額を算出します。
ただし、正しい相続税額を算出するのは難しいため、あくまでも目安として考えておいたほうが良いでしょう。ここでは、課税遺産総額の算出方法から相続税額を求めるまでの手順について紹介します。
なお、正確な相続税額については、税理士などの専門家に依頼することをおススメします。
ただし、正しい相続税額を算出するのは難しいため、あくまでも目安として考えておいたほうが良いでしょう。ここでは、課税遺産総額の算出方法から相続税額を求めるまでの手順について紹介します。
なお、正確な相続税額については、税理士などの専門家に依頼することをおススメします。
課税遺産総額を算出する
まずは、課税対象となる財産の総額を算出します。具体的には、下記の手順で行います。
1.すべての財産を把握する
被相続人が所有していた預貯金・株・不動産などの財産に加え、被相続人が亡くなったことで相続人が受け取ることになる保険金や退職金などの「みなし相続財産」も含めて、すべての財産を把握します。
2.マイナスの財産・非課税財産を差し引く
被相続人の債務や葬儀費用はマイナスの財産として扱います。これらを差し引いて課税対象となる正味の遺産額を算出します。マイナスの財産を差し引く計算を、債務控除といいます。ただし、保証人としての保証債務などの偶発債務(確定していない債務)は債務控除の対象になりません。
3.暦年課税による相続開始前の贈与および相続時精算課税制度による贈与を加える
遺産額に、暦年課税により相続開始前に「相続等により財産を取得した者」に対して行った贈与および相続時精算課税制度により行った贈与を加えて正味の遺産額を計算します。なお、相続開始前の贈与の加算措置については、贈与の時期の違いにより次のようになります。
2023年12月31日までの贈与
暦年課税においては、贈与を受けた財産のうち相続開始前3年以内の贈与は110万円の非課税枠内の金額であったとしても、相続税の課税価格に加えた上で相続税の計算を行います。
相続時精算課税制度においては、贈与を受けたすべての財産について相続財産に加えます。
相続時精算課税制度においては、贈与を受けたすべての財産について相続財産に加えます。
2024年1月1日以後の贈与
暦年課税においては、贈与を受けた財産のうち相続開始前7年以内の贈与は110万円の非課税枠内の金額であったとしても、相続税の課税価格に加えたうえで相続税の計算を行います。ただし、相続の開始前3年以内に取得した財産以外(相続開始前3年超7年以内)の財産については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額を加えます。
なお、2031年以降の相続では、7年以内の贈与財産が加算されます。しかし、2030年以前の相続については、7年以内の贈与財産のうち、2024年1月以降の贈与に限り加算されます。
相続時精算課税制度においては、毎年110万円までの基礎控除が新設され、その基礎控除を超える贈与について、相続税の計算の際に加えます。
なお、2031年以降の相続では、7年以内の贈与財産が加算されます。しかし、2030年以前の相続については、7年以内の贈与財産のうち、2024年1月以降の贈与に限り加算されます。
相続時精算課税制度においては、毎年110万円までの基礎控除が新設され、その基礎控除を超える贈与について、相続税の計算の際に加えます。
相続財産に加える贈与財産については、相続税を計算する時に加えるのを忘れやすいので、贈与した都度記録に留め置くなどの対応が必要でしょう。
税務署に相続時精算課税の贈与税の申告書や暦年課税の贈与税の申告書を提出した場合、相続人は税務署に対し開示請求をして当時の贈与内容(相続税の申告に必要となる年分に限る)を確認することができます。
税務署に相続時精算課税の贈与税の申告書や暦年課税の贈与税の申告書を提出した場合、相続人は税務署に対し開示請求をして当時の贈与内容(相続税の申告に必要となる年分に限る)を確認することができます。
4.基礎控除額を差し引く
相続税には基礎控除額が設定されており、法定相続人の人数に合わせて正味の遺産額から基礎控除額を差し引きます。
基礎控除額は、下記の計算式から求められます。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
<基礎控除額の計算方法>
相続税の基礎控除額は法定相続人の人数によって金額が変わります。たとえば、父親に相続が発生し、法定相続人が母親と子ども2人の場合には、相続税の基礎控除額は4,800万円(3,000万円 + 600万円 × 3人)です。
- 2人以上の養子が法定相続人に含まれる場合、基礎控除の計算上制限があります。他に実子がいる場合、養子は最大1人でカウントされます。実子がいない場合は、養子は最大2人までカウントされます。
5.課税遺産総額を算出する
正味の遺産額から基礎控除額を差し引いて課税遺産総額を求めます。
課税遺産総額 = 正味の遺産額 - 基礎控除額
課税遺産総額がこの基礎控除額以下であれば相続税は発生せず、税務署への相続税申告書の提出も不要です。
課税遺産総額 = 正味の遺産額 - 基礎控除額
課税遺産総額がこの基礎控除額以下であれば相続税は発生せず、税務署への相続税申告書の提出も不要です。
法定相続分で分けた相続税を計算する
課税遺産総額が算出できたら、各法定相続人が法定相続分どおりに相続したと仮定した相続税額を計算します。これを、相続税の総額の計算といいます。
1.各相続人の取得額を算出する
相続にあたって、まず相続人全員が支払う納税額の総額を確定させるため、各法定相続人が法定相続分どおりに相続したと仮定した場合の取得額を算出します。これは、実際の遺産分割の内容次第で税率が変わり、相続税の総額が変動してしまうと不公平になるためです。この計算ルールにより、公平性が保たれます。
たとえば、課税遺産総額2億円で、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、配偶者の法定相続分は、遺産の2分の1を相続するため、1億円となります。子ども2人の法定相続分は、それぞれ遺産の4分の1を相続するため、1人あたり5,000万円となります。
たとえば、課税遺産総額2億円で、法定相続人が配偶者と子ども2人の場合、配偶者の法定相続分は、遺産の2分の1を相続するため、1億円となります。子ども2人の法定相続分は、それぞれ遺産の4分の1を相続するため、1人あたり5,000万円となります。
2.相続税の総額を算出する
相続税の総額を計算するためには、各相続人の取得額に応じた相続税率を掛けて、控除分を差し引きます。これにより、法定相続分に基づく各相続人の相続税額が求められます。すべての相続人の相続税額を足した金額が、相続にあたって支払う相続税の総額です。
下記の図でご説明しましょう。
■課税遺産総額が2億円の場合の相続税計算例
横スクロールして確認
配偶者 | 子ども(20歳) | 子ども(15歳) | |
---|---|---|---|
法定相続分による取得金額 | 1億円 | 5,000万円 | 5,000万円 |
相続税率 | 30% (3,000万円) |
20% (1,000万円) |
20% (1,000万円) |
控除額 | 700万円 (3,000万円 - 700万円) |
200万円 (1,000万円 - 200万円) |
200万円 (1,000万円 - 200万円) |
相続税額 | 2,300万円 + 800万円 + 800万円 = 3,900万円 |
たとえば、配偶者の法定相続分1億円の場合、税率30%をかけて控除額700万円を引くと2,300万円。子ども2人のそれぞれの法定相続分5,000万円の場合、税率20%をかけて控除額200万円を引くと800万円ずつ。これらを合計した3,900万円が相続税の総額になります。
■相続税率と控除額
取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | なし |
1,000万円超3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税は超過累進課税を採用しています。これは、取得金額がふえるにつれて税率が高くなる仕組みです。しかし、取得金額全体に高い税率をかけてしまうと、低い税率で計算されるべき分も高い税率で計算されてしまいます。控除額は、このように高く計算された分を減額するためのものです。
相続人それぞれの相続税額を計算する
相続税の総額を求めたら、遺産分割協議や遺言書などで実際に決められた各人の相続財産割合を掛けて、相続人それぞれの納税額を算出します。下記の図をもとにご説明しましょう。
■相続税額3,900万円を法定相続分のとおりに相続する場合の納税額例
横スクロールして確認
配偶者 | 子ども(20歳) | 子ども(15歳) | |
---|---|---|---|
法定相続分による相続税額 | 1,950万円 | 975万円 | 975万円 |
配偶者の税額軽減 | 取得財産が1億6,000万円以下であれば税金はかかりません | - | - |
未成年者控除 | - | - | (18歳(*) - 年齢) × 10万円 (30万円) |
納税額 | 0円 | 975万円 | 925万円 |
たとえば、相続税総額が3,900万円で配偶者と子ども2人が法定相続分のとおりに相続する場合は、下記のような計算で相続税を求めることができます。
<配偶者の相続税額>
3,900万円 × 50% = 1,950万円
3,900万円 × 50% = 1,950万円
<子ども1人あたりの相続税額>
3,900万円 × 25% = 975万円
3,900万円 × 25% = 975万円
実際の相続税額から控除額を差し引く
相続税には、適用できる控除がいくつかあります。
配偶者には配偶者の税額軽減制度が適用され、取得する相続財産が1億6,000万円以下または法定相続分以下の場合、配偶者への税金はかかりません。
また、相続人が未成年の場合、未成年者控除が適用され、満18歳(*)になるまでの年数1年につき10万円が控除されます。たとえば、15歳で相続した場合には、控除額は30万円となります。
<未成年者控除が適用される子どもの相続税額>
975万円 - (18歳(*) - 15歳) × 10万円 = 945万円
975万円 - (18歳(*) - 15歳) × 10万円 = 945万円
(*)2022年3月31日以前は20歳
相続人が障害者の場合、障害者控除が適用されます。満85歳になるまでの年数1年につき、一般障害者は10万円、特別障害者20万円が控除されます。たとえば、60歳の一般障害者であれば、10万円 × 25年で250万円の障害者控除となります。
その他、生前贈与加算の適用がある場合、納付した贈与税があるときは、その贈与額が控除される贈与税額控除、10年以内に発生した相続税の負担を軽減する相次相続控除、外国の財産を相続した場合に外国で課せられた税額を調整する外国税額控除などもあります。
相続・遺言・遺産整理のご相談
相続税の負担軽減措置
死亡保険金の非課税枠や小規模宅地等の特例といった条件にあてはまる場合には、相続税の負担を軽減させることができます。どのような条件があるのかご紹介しましょう。
死亡保険金の非課税枠
死亡保険金はみなし相続財産として、相続税の課税対象となります。しかし、この死亡保険金の受取人が法定相続人である場合、法定相続人1人につき500万円までの非課税枠があります。
たとえば、配偶者と子ども2人が法定相続人の場合は、500万円 × 3人の計1,500万円までが非課税となります。非課税枠を超えた分は相続財産の課税価格に算入されます。
たとえば、配偶者と子ども2人が法定相続人の場合は、500万円 × 3人の計1,500万円までが非課税となります。非課税枠を超えた分は相続財産の課税価格に算入されます。
また、死亡保険金を受け取る際に配当金などが加算される場合がありますが、その合計額が生命保険金などとして非課税の対象となります。ただし、遅延利息は課税対象外です。
退職手当金の非課税枠
死亡により、勤務していた会社から受け取った退職金や、小規模企業共済からの共済金(死亡により受け取る共済金は退職金とみなされる)は、みなし相続財産として、相続税の課税対象となります。
非課税枠の計算方法は、生命保険金と同じです。ただし、保険金と退職金は別々に非課税枠を計算します。
非課税枠の計算方法は、生命保険金と同じです。ただし、保険金と退職金は別々に非課税枠を計算します。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、被相続人が相続開始まで居住していたり、事業を行ったりしていた土地を相続する際に、一定の条件を満たせば、相続税の課税価格に加算される限度面積内の土地の価額が最大80%軽減される制度です。
生前贈与(贈与税の非課税および相続税の課税対象となるもの)
生前贈与も、相続税の税負担を軽減する方法のひとつです。生前贈与の非課税枠について、いくつかご紹介しましょう。
・暦年贈与の非課税枠(年間110万円の基礎控除)
贈与をする場合には受贈者に贈与税がかかりますが、暦年贈与制度を使えば、贈与税の基礎控除額である年間110万円まで贈与税は課税されません。この基礎控除は受贈者(財産をもらった者)ごとに年間110万円ですので、たとえば、子ども3人に毎年110万円ずつ贈与すると、3人合計で年間330万円分を非課税で贈与することができます。
ただし、相続開始前の一定の贈与については、贈与の時期の違いにより次のとおり相続税の課税価格に加算され、相続税が課税されます。すでに払った贈与税は、相続税の前払いとして相続税額から差し引かれます。
ただし、相続開始前の一定の贈与については、贈与の時期の違いにより次のとおり相続税の課税価格に加算され、相続税が課税されます。すでに払った贈与税は、相続税の前払いとして相続税額から差し引かれます。
<参考1:相続税の課税対象となる暦年贈与財産>
2023年12月31日までの贈与
贈与を受けた財産のうち、相続開始前3年以内に取得した贈与財産は、110万円の非課税枠内の金額であったとしても、相続税の課税価格に加算したうえで相続税の計算を行います。つまり、相続税の計算においては、暦年贈与で使用した基礎控除110万円は考慮されないことになります。
2024年1月1日以後の贈与
贈与を受けた財産のうち、相続開始前7年以内に取得した贈与財産は、110万円の非課税枠内の金額であったとしても、相続税の課税価格に加算したうえで相続税の計算を行います。ただし、相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額を加えます。
<参考2:一部の非課税の特例を受けた贈与財産は相続税の課税価格に加算しない>
おしどり贈与(後述)、住宅取得等資金の贈与、教育資金の贈与、結婚・子育て資金の贈与による非課税の特例を受けた部分の贈与については、相続税の課税価格に加算されません。
・相続時精算課税の贈与の場合の非課税枠(特別控除2,500万円と年間110万円の基礎控除)
相続時精算課税を選択して税務署へ届け出をした場合、その選択以後は特定贈与者(選択をした贈与者・あげた人)1人あたり2,500万円の特別控除枠が設定されます。この特別控除枠は年間ではなく、その後のすべての贈与の累計額に適用されます。この特別控除枠に達するまでの贈与には、贈与税がかかりません。
ただし、この精算課税制度による贈与財産は、相続発生時に相続財産に加算し、相続税の課税対象となります。相続時に精算して相続税を課税するため、相続時精算課税と呼ばれます。
ただし、この精算課税制度による贈与財産は、相続発生時に相続財産に加算し、相続税の課税対象となります。相続時に精算して相続税を課税するため、相続時精算課税と呼ばれます。
上記のほか、2024年1月1日以後に行う相続時精算課税の贈与については、年間110万円の基礎控除が認められます。相続時精算課税の場合の年間110万円の基礎控除の使用額は、暦年贈与と異なり、相続税で加算する際も年間110万円の基礎控除を差し引いたままの金額で相続税の課税価格に加算されます。
- 2023年12月31日までの相続時精算課税の贈与には、年間110万円の基礎控除はありません。
- 相続時精算課税は、原則として60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対する贈与にのみ認められる特例です。特定の贈与者と受贈者のペアごとに選択し、税務署へ届け出ることになります。一度選択したら撤回はできませんので注意してください。
<参考:一部の非課税の特例を受けた相続時精算課税の贈与財産は相続税の課税価格に加算しない>
住宅取得等資金の贈与、教育資金の贈与、結婚・子育て資金の贈与による非課税の特例を受けた部分の贈与については、相続税の課税価格に加算されません。
三菱UFJ銀行では、三菱UFJ信託銀行の代理店として贈与の手続きを代行し、大切なご家族への生前贈与をしっかりとサポートする、暦年贈与信託[おくるしあわせ]を取り扱っています。
・贈与税の配偶者控除(おしどり贈与・夫婦間の贈与)
贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)とは、配偶者に対して居住用の不動産または居住用不動産を取得するための金銭を贈与する場合、暦年贈与の基礎控除である110万円のほかに最高2,000万円まで控除できるという制度です。ただし、婚姻期間が20年経過していることなどが条件です。
・住宅取得等資金の贈与の非課税枠(子や孫への贈与)
住宅取得等資金の贈与の非課税枠とは、父母または祖父母など直系尊属から住居取得などのための資金として18歳以上(2022年3月31日以前は20歳以上)の子どもや孫が贈与を受けた場合、贈与税が最大1,000万円まで非課税になる制度です。非課税枠は、取得する住宅などの条件によって異なります。
なお、住宅取得等資金の贈与の非課税の適用期限は2026年12月31日までとされていますが、税制改正により延長される可能性があります。
なお、住宅取得等資金の贈与の非課税の適用期限は2026年12月31日までとされていますが、税制改正により延長される可能性があります。
・教育資金の贈与の非課税枠(子や孫への贈与)
教育資金の一括贈与の非課税枠とは、子どもや孫に対する贈与が教育資金である場合、1,500万円までが非課税になるという制度です。教育機関への支払いや関連する物品の購入などが対象となります。
なお、教育資金の一括贈与の非課税の適用期限は2026年3月31日までとされていますが、税制改正により延長される可能性があります。
なお、教育資金の一括贈与の非課税の適用期限は2026年3月31日までとされていますが、税制改正により延長される可能性があります。
三菱UFJ銀行では、三菱UFJ信託銀行の代理店として、祖父母さまからお孫さまなどへ教育資金を一括贈与する際に、贈与税が非課税となる教育資金贈与信託[まごよろこぶ]を取り扱っています。
・結婚・子育て資金の一括贈与の非課税枠(子や孫への贈与)
結婚・子育て資金の一括贈与とは、父母・祖父母など直系尊属から18歳以上(2022年3月31日以前は20歳以上)50歳未満の受贈者が、結婚資金や育児に必要な費用を一括で贈与された場合に、1,000万円まで非課税になるという制度です。
なお、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税の適用期限は2027年3月31日までとされていますが、税制改正により延長される可能性があります。
なお、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税の適用期限は2027年3月31日までとされていますが、税制改正により延長される可能性があります。
二次相続を考えた相続を
子どもの目線から相続を考えると、父と母の二度の相続を経験することになります。たとえば、父が先に亡くなった場合の相続を一次相続といい、次に母が亡くなった場合の相続を二次相続といいます。
相続税を考える際には、一次相続と二次相続の際に発生する相続税の合計額を基準に試算を行うことが重要です。ここで大切なのが「配偶者の税額軽減」の特例の考え方です。
相続税の配偶者の税額軽減は、夫婦間での相続については1億6,000万円もしくは法定相続分のいずれか多い方までの遺産の相続については相続税が課税されない特例です。この制度の軽減効果は非常に大きいため、一般的には一次相続時にこの特例を最大限使う方が有利であると考えられがちです。
しかし、父の相続発生時に母が多額の遺産を引き継ぐことで、母が亡くなった際の二次相続時の相続税が多額になることがあります。実際に相続税の実務経験が豊富な税理士が相続税申告書を作成する際には、一次相続・二次相続の相続税額シミュレーションを行い、一次相続・二次相続トータルの税額が抑えられるように相続税額を試算します。
未分割の場合の申告(分割協議が期限までにまとまらない場合の対応)
遺言書もなく、申告期限までに遺産分割協議も成立していない場合は、未分割財産として、法定相続分で取得したものとして計算した相続税の申告書を作成し、相続税を納付します。この場合、小規模宅地の評価減の特例や配偶者の税額軽減の特例などは受けられません。
未分割の申告書には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を合わせて提出し、3年以内に分割が成立した場合には、特例の適用後の税額を計算し、過大となった税額は分割成立後4ヵ月以内に更正の請求を行うことで返還されます。
係争中の場合などにより、3年を経過しても分割が確定しない場合は、3年を経過する日から2ヵ月以内に「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、期限を延長してもらうことができます。
相続対策は三菱UFJ銀行へ
相続にあたって大切なことは、のこされた家族が遺産相続に関わるトラブルで争わないようにすることです。それまでは仲が良かった親族も、いざ相続が発生するとトラブルになることもあります。
そういった状況を回避するためには、遺言書をのこすことが有効な方法のひとつです。遺言書を通じて家族のために相続の「道しるべ」を示し、トラブルが起こらないように相続の準備をしておくことを検討してみてください。
三菱UFJ銀行では、遺言書の作成や生前贈与など、さまざまな相続についてのご相談を承っています。
三菱UFJ信託銀行の信託代理店として、三菱UFJ銀行の各支店にてご相談が可能です。ぜひお気軽に、ご相談ください。
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相続・遺言・遺産整理のご相談
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- 税理士・FP2級
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(2025年9月24日現在)
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