役員報酬が変更できるタイミングは?手順や注意点とあわせて解説
役員報酬が変更できるタイミング
役員報酬の変更のタイミングは、会社法上の手続きと法人税法上の規定を考慮して決定します。
改定のタイミングによって、必要な手続きと改定手順は異なります。ここでは、原則について見ていきます。
事業年度開始から3カ月以内が原則
役員報酬が変更できるタイミングは、原則、事業年度開始から3カ月以内です。
ただし、事業年度開始1カ月目に変更する場合は、臨時株主総会を開催し、変更決議の議事録を作成する必要があります。なお、会社法上の規定により、通常の株主総会にさかのぼって決議することも可能です。
事業開始3カ月を超えて役員報酬が変更できるケース
臨時改定事由に該当すれば変更が認められる
やむを得ない理由で役員報酬を変更した場合、税務上の経費として認められるケースがあります。例えば緊急事態宣言や、震災など大きな災害が発生した場合などが挙げられるでしょう。
そのほか、役員の退職や職制上の地位の変更なども対象となる場合があります。
例えば、人事異動により役員に昇格した場合の増額や退職による減額などは、臨時改定事由に該当します。また、経営難により倒産を検討しなければならないような場合の減額や報酬支給停止も含まれます。
臨時改定事由で金額を変更する際の注意点
役員報酬変更のための手順
1. 役員報酬の金額を決定する
2. 株主へ株主総会招集通知を行う
役員報酬額が決定すれば、その金額を株主に承認してもらう必要があります。株主総会開催のために、株主へ招集通知を行いましょう。株主総会の招集通知は、総会の2週間前までに実施し、通知書には開催日時、場所、株主総会を行う目的などを記載します。
また、WEBによる権利行使の方法や、総会自体をオンラインで行う場合は、開催方法、参加の有無などの資料を同封します。
なお、同族会社で身内により株主が構成されている場合は、事前に口頭で日程調整などがなされる場合が多く、実際に召集通知を出さない場合もあります。
3. 株主総会を開催し決議を実施する
4. 株主総会議事録の作成
株主総会議事録の作成は、会社法上必ず行わなければなりません。
会社法上は議事録が作成されているかどうかがポイントとなり、法人税法上は決算確定日と株主総会開催日が一致しているかどうかがポイントとなります。
議事録は、10年間会社に保管しなければならず、必要に応じて株主や債権者が閲覧できるようにしなければなりません。
取締役がいる場合は取締役会も開催する
取締役が3名以上いる場合は、取締役会の開催も必要です。株主総会議事録の作成と同様に、取締役会議事録の作成が必要とされています。取締役会では、次の5つの内容を決議します。
- 株主総会の招集
- 取締役の競業取引の承認
- 取締役の利益相反取引の承認
- 計算書類等の承認
- その他、重要な各種契約締結の承認
役員報酬を変更する際の注意点
役員報酬を減額できる期間も事業年度開始から3カ月以内が原則
一般的な役員報酬の支給方法である定期同額給与に該当するためには、事業年度開始から3カ月以内に変更しなければなりません。定期同額給与に該当するかどうかで、法人税法上の取り扱いは異なります。
例えば、3月決算企業で5月末が法人税の申告期限の企業の場合、変更可能時期は4月から6月までです。しかし、5月末の申告期限までに株主総会を開催しなければなりません。変更後の支給開始日は6月でも問題ありませんが、株主総会は5月末までに開催しなければならないため、会社法と法人税法でタイムラグがあります。
株主総会議事録の作成が必須となる
会社法上、株主総会の承認を得て役員報酬を変更するため、証拠書類という観点からも議事録に内容を残すことは必要です。もし、取締役が3名以上いる場合は、株主総会とともに取締役会を開催し取締役会議事録も必要です。株主総会議事録の日付は、法人税申告書の決算確定の日と同じ日にします。
株主総会では、1年間の財務状況や経営状態を利害関係者である株主に説明する必要があり、承認を受けて法人税も申告ができます。この流れからみても法人税法上の決算確定日が、株主総会議事録よりも先になることはありません。
まとめ
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