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第10回「Rise Up Festa」受賞者インタビュー

サステナブルな環境の実現

“次世代エネルギーを担うレーザー核融合の研究開発”
安全性とエネルギー効率で、各産業に貢献
2023年11月28日
株式会社EX-Fusion代表取締役社長・松尾一輝さん
三菱UFJ銀行が主催するビジネスサポート・プラグラム「第10回Rise Up Festa」の「サステナブルな環境の実現」分野において、最優秀企業に選ばれたのは、株式会社EX-Fusionです。同社の保有するレーザー核融合技術について、株式会社EX-Fusion代表取締役社長・松尾一輝さんにお話を伺いました。

サステナブルな新技術「レーザー核融合」の将来性

― 御社の事業概要について教えてください。

EX-Fusionはレーザー核融合技術の研究開発・ソリューション提供を行なっている、国内唯一のスタートアップです。核融合スタートアップは当社の他にもいくつかありますが、「レーザー核融合」は当社が唯一です。当社は「レーザー核融合によるエネルギー革命と産業の創出」を使命として掲げており、レーザー核融合そのものの研究に加え、その過程で得られる技術を活かして様々な産業分野の技術開発に貢献したいと考えています。

― レーザー核融合技術の将来性について教えてください。

レーザー核融合発電とは、プラズマに高出力レーザーを照射して加熱することで瞬間的な核融合反応を起こす発電する技術のことで、外部からの圧を加えないと反応が起きないため、核分裂反応を利用する原子力発電とは原理的に異なります。事故などで装置が1つでも停止すると核融合反応は自然と止まるため、暴発のリスクがないのが特長の一つです。また、燃料となる重水素は海水中に豊富に存在しエネルギー源は無尽蔵である、温室効果ガスを排出しないクリーンなエネルギーであるといった点から、安全かつ安定的な次世代のエネルギー技術として注目を集めています。

カーボンニュートラルの実現に対する市場の関心は、2018年前後から年々高まっています。一方で新興国の経済成長に伴って世界全体のエネルギー消費量は増加していますから、今後は世界の電気エネルギー市場の大半がターゲット市場になり得ると考えています。
EX-Fusionが開発している技術実証実験用のレーザー核融合炉
EX-Fusionが開発している技術実証実験用のレーザー核融合炉

― 民間企業がレーザー核融合技術を研究開発することの意義を教えてください。

レーザー核融合は産業への応用範囲が広い技術です。ビジネスのトレンドをつかみ、スピード感をもって面白みのある事業に展開していくという点でいえば、スタートアップの長所が活かせる分野だと思います。例えば、近年宇宙ゴミは人工衛星などへの衝突の危険があり、多くの国で課題と認識されています。そこで当社は先日オーストラリアの企業と微細な宇宙ゴミを捕捉する実証実験を行うことを決めました。例えば現在、高出力レーザーの技術を応用して人工的な流れ星を作るというエンターテイメント要素のあるプロジェクトを進めていますが、こういった発想やスピード感はスタートアップならではと言えるのではないでしょうか。

― 株式会社EX-Fusionの設立について

私は学生時代からレーザー核融合の研究をしていました。アメリカの大学に研究員として就職した際にも、レーザー核融合やその応用の研究を中心にプロジェクトを担当していました。当時、その流れで核融合関係のスタートアップの方々とも交流があり、ある会社が民間から巨額の資金調達を達成しているところを目の当たりにしました。「これからの時代は民間が独自で核融合研究をするようになる」と直感し、2年ほど前に日本に帰国してEX-Fusionを設立するに至りました。

スムーズな海外展開で感じた実利面のメリット

― Rise Up Festaへの応募動機・経緯を教えてください。

三菱UFJ銀行とお付き合いがあり、担当者の方からご紹介いただきました。私たちは大阪に根付いたスタートアップなのですが、Rise Up Festaの場をお借りして全国的に私たちの事業を広く知っていただけるではと思い、参加を決意しました。

また、最新技術であるレーザー核融合の事業化の可能性について、客観的な意見をいただけることも期待していました。

― 参加後の感想を聞かせてください。

事業の具体化を進める中で、開発の計画性の精度が向上しました。最初に制御装置、次にレーザー技術、その次に核融合炉の開発……といったように事業計画に優先順位をつけることで今取り組むべきことについての意識づけが明確になり、結果的に今期の売上目標値を達成することにも繋がったと感じています。

― MUFGからのサポートで他に印象に残っているものはありますか?

2023年10月にオーストラリア支社を設立したのですが、現地の口座開設をする際にMUFGとの繋がりが非常に役立ち、口座開設をスピーディに行うことができました。オーストラリアでは現在、国を挙げて新たなエネルギー技術の確立や宇宙開発に取り組んでいます。当社にとってオーストラリア支社開設の意義は大きく、スムーズに現地展開できた実務的なメリットは今後に活きてくると感じます。
オーストラリア調印式

商用レーザー核融合炉の実現や、宇宙産業への応用を目指して

― 今後Rise Up Festaへの参加を検討するスタートアップに向けて、コメントをお願いします。

親身になってアドバイスしていただけたのはもちろん、MUFGが母体になっているという点で、現在の事業における実利が大きいのがRise Up Festa参画のメリットだと思います。私たちの場合はオーストラリアに口座開設した際のご対応が非常にありがたく、今後も伴走いただければとても心強いなと思います。

― 最後に、今後の展望について教えてください。

現在私たちは、世界初となる商用レーザー核融合炉を実現すべく、大阪大学や東京工業大学との共同研究を進めています。また、その過程で得られた光技術の産業への応用もビジネスとして発展させていきます。

その中で1つの具体的な目標は、2029年の技術実証の成功です。レーザー核融合商用炉を目指すためにも、それぞれの要素技術の実証を行うことを想定しており、ここを乗り越えれば、2035年の技術実証実験炉への弾みになると考えています。また当社が作り出す無尽蔵のエネルギーのある世界や応用技術による産業創出について、多くの国の方々へ知っていただくためにも大阪万博への出展も目標としています。

ビジネス上の目標としては、「サステナブル」を掲げるスタートアップとして、EX-Fusion自体も持続可能になるような体制づくりを確立したいと考えています。

健康社会・グローバルヘルスへの貢献

“DXによる快適な不妊治療体験の提供”
「不妊医療×デジタル」で、少子化問題に取り組みつつ個々の人生の選択肢も豊かに
2023年11月28日
株式会社ARCH代表取締役CEO・中井友紀子さん
三菱UFJ銀行が主催するビジネスサポート・プラグラム「第10回Rise Up Festa」の「健康社会・グローバルヘルスへの貢献」分野において、最優秀企業に選ばれたのは、株式会社ARCHです。不妊治療専門クリニック 「torch clinic」のプロデュースをはじめとした取り組みについて、株式会社ARCHの代表取締役CEO・中井友紀子さんにお話を伺いました。

「不妊治療大国」の先行きを明るく照らす「torch clinic」

― 御社の事業概要について教えてください。

当社は「医療×デジタル」という観点から、婦人科/生殖医療領域の革新を目指しているスタートアップです。ユーザーが自分の体についてリテラシーを深め、仕事を続けながら無理なく不妊治療に取り組める受診体験の提供を目的としています。また、若い世代に妊孕性について啓発することで、人口減という日本の社会問題にも貢献したいと考えています。
  1. 妊娠するための能力のこと。一定年齢から顕著に低下するとされる。
具体的な取り組みとして、当社プロデュースのもとで開院した不妊治療専門クリニック「torch clinic」(東京都渋谷区)があります。「torch clinic」では専用アプリによる事前予約、事前問診・事後決済、院内の電子カルテとの連携に対応しており、それによって診察日の待ち時間を削減したり、医療情報の管理をしやすくすることによって、患者さまの負担軽減に貢献しています。
アプリ画面
また、クリニックの外観やアプリのUIがジェンダーレスなので、男性の患者さまにとっても来院ハードルが低いのも特徴です。一般的な不妊治療の現場には珍しく、男性側が積極的にパートナーを連れて受診に至るケースも多くあります。
クリニック待合室
クリニック待合室

― 不妊治療の現状について教えてください。

日本は不妊治療大国と言われ、2021年度に行われた体外受精の件数はアメリカの2倍近い約50万件です。また昨今の晩婚化によって、40代を中心とした不妊患者は増加傾向にあります。ある統計では夫婦の4.4組に1組が不妊治療を受けていると試算されており、国内に治療を必要とする患者さんは相当数いると見込まれます。

― 株式会社ARCHの設立について

私自身が30歳を過ぎて不妊治療を始め、服薬や通院の辛さで苦しんだのが原体験です。当時私はインターネットメディアを運営していたのですが、発信側である自分自身が情報の非対称性に埋もれて、人生の選択肢が狭めてしまったことを後悔しました。若い世代が人生をしっかりプランニングし、豊かな未来を実現するための「架け橋」になりたいと考え、ARCHを設立しました。

多業種でワンチームを形成でき、些細なことも相談できる関係性に

― Rise Up Festaへの応募動機・経緯を教えてください。

出資いただいているベンチャーキャピタルからご紹介いただきました。将来的な資金調達に向け信用力アップに繋がるかもしれないと思い、応募に至りました。

― 参加後のサポート体制はいかがですか。

MUFGグループ各社と新たな繋がりを得た中で、ご担当者の皆さんがグループとして当社を支えたいと思ってくださっていることをしっかりと感じました。また、メンターの方には事務手続き一つとってもとても丁寧に伴走していただきましたし、今でも不安な点があればご相談する関係性です。今後も金融、医療、スタートアップで分け隔てなく、ワンチームとして強固な繋がりを作っていければと考えています。

自社の真価を問い直し、さらなる事業拡大へ

― 今後Rise Up Festaへの参加を検討するスタートアップに向けて、コメントをお願いします。

今回、このような大舞台に向けてプレゼンテーションの準備を進める中で、自社が世の中に届ける本質的な価値は何かを突き詰めて考えることができました。社外の方に自らの構想をお伝えすることもでき、今後の事業拡大に向けて貴重な経験になったと思います。

― 最後に、今後の展望について教えてください。

私たちの目標の一つに、国の課題でもある出生率の向上に貢献することがあります。しかし現状の取り組みは、まだまだその通過点に過ぎません。私たちが事業拡大することが日本の出生率向上に資すると確信していますので、今後も事業展開のスピード感を上げていき、他の業界の皆さんを巻き込みながら、課題解決に向けて取り組んでいきます。

既存産業のDX、プラットフォームの創出

“介護×テクノロジーで人材不足を解消”
ITを駆使して介護現場と有資格人材を効率的にマッチング
2023年11月28日
カイテク株式会社代表取締役社長・武藤高史さん
三菱UFJ銀行が主催するビジネスサポート・プログラム「第10回Rise Up Festa」の「既存産業のDX、プラットフォームの創出」分野において最優秀企業に選ばれたのは、カイテク株式会社です。介護・看護の有資格者のワークシェアリングサービス「カイテク」を通じて介護業界の課題解決を目指す、代表取締役社長・武藤高史さんにお話を伺いました。

有資格人材の「埋没労働時間」に着目した「カイテク」

― 御社の事業概要について教えてください。

私たちが提供している介護ワーキングシェアサービス「カイテク」は、介護・医療関係の事業所と有資格人材のマッチングサービスです。ワーカー側から見れば手の空いた時間(=埋没労働時間)に面接なしで自分のスキルを使って仕事ができ、事業所側にとっては急な人手不足の際にも即戦力人材を確保できるメリットがあります。

現在の登録事業所数は約3,000、ワーカー数は10万人ほどの規模で拡大中となっており、東京都や官公庁からも多数の評価をいただいています。
サービス紹介
カイテク画面

― 介護業界の現状と市場性について教えてください。

介護・医療業界は国内では他に類のない急成長産業です。2021年度には約11兆円だった市場規模が、今後2040年度までに27兆円規模に拡大するという試算もあり、参入する介護事業所や介護人材も増加傾向です。

一方で、必要な介護職員数と実際に現場で働いている人数のギャップは埋まらなくなってきており、2023年度には約22万人、2040年度には約69万人が不足すると見込まれています。外国人人材の採用や介護ロボットの導入検討も進んでいますが、即効性がある取り組みとして有資格者の「埋没労働時間」を掘り出すことが、こうした社会課題の軽減・解消に繋がると私たちは考えています。
介護人材不足解決

― カイテク株式会社の設立について

元々は私が学生時代の時、認知症のある祖父の介護のために、とある介護施設のお世話になったのが始まりでした。介護職員の方々のスキルの高さを実感するとともに、人材不足によって疲弊している現場を目の当たりにし、「このまま放置していては介護業界の持続可能性は低い」と危機感を覚えました。

その後IT業界を経て2018年2月にカイテクを起業、コロナ禍初期の2020年1月に「カイテク」をリリースしました。当初は感染対策で事業所への訪問が難しくなる困難もありましたが、一方で介護職員の方が休んだシフトの穴を埋めるというニーズもあり、現在は順調にサービスが介護現場に浸透してきています。

― Rise Up Festaへの応募動機・経緯を教えてください。

リリース後、プロダクトマーケットフィットの段階を迎えたのがちょうど昨年でした。これから拡販していくぞというタイミングで、Rise Up Festaの存在を知りました。国内外に巨大なネットワークを持つMUFGに、法人さまへのマーケティング面でお力添えをいただければと思い応募に至りました。
  1. 商品・サービスがマーケットに受容され、顧客が満足している状態のこと

熱量あるメンターのもと、法人開拓が進展

― 参加後の感想を聞かせてください。

明確なメリットを2点感じました。

1点目は、メンターの方に私たちと同じ熱量、同じ目線で一緒に事業について考えていただけた点です。具体的には、三菱UFJ銀行、三菱UFJキャピタルのメンター担当者の方に社内外の繋がりをたどって積極的に紹介先を探していただき、法人とのビジネスマッチングが捗りました。

2点目は、Rise Up Festa発表に際して、会社の成長を見越した中長期の目線でプレゼンテーションのフィードバックをいただけたことです。従来の伝え方では、社外から見てカイテクが提供する価値が分かりにくいというご指摘がありました。その後プレゼンの仕方や説明資料などを見直し、投資家に納得してもらえるエクイティストーリーの伝え方を整理することができました。

― MUFGからのサポートで他に印象に残っているものはありますか?

2次審査後のブラッシュアップ期間のことなのですが、お客さま先にメンターの方が同行してくださってとても心強かったです。最終審査のプレゼン前に、メンターの方から企業紹介をしてもらうのですが「介護事業者の方の反応を見て、『カイテク』こそ社会課題に必要なサービスだと感じました」と金融のプロとしての立場からお墨付きをいただけて、自信に繋がりました。現在でも「Rise Up Family」としてご相談に乗っていただいています。
カイテク株式会社全体写真

IPOも視野に、介護・医療業界の人材不足解消を目指す

― 今後Rise Up Festaへの参加を検討するスタートアップに向けて、メッセージをお願いします。

MUFGの巨大な社内外ネットワークは、スタートアップにとって非常に心強い存在です。特に私たちの場合はちょうどサービスがGo-to-Marketの段階だったので、課題となっていた法人営業のスピード感を、Rise Up Festaを通したビジネスマッチングで飛躍的に向上させることができました。

また、Rise Up Festaを通して、三菱UFJキャピタルや三菱UFJ信託銀行との繋がりを深めることができたのも大きなメリットでした。今後IPOを検討するスタートアップにとっては、金融市場に対する距離感を縮めることができるという意味で、とても有意義だと思います。
  1. 新製品・サービスが市場に進出するための戦略を策定すること

― 最後に、今後の展望について教えてください。

介護・医療業界で人材不足のない世界を目指すという点は、変わらず大きなミッションです。その中で提供するサービスのユーザー数や、提供する付加価値を広げていきたいと思っています。具体的にいえば、「カイテク」のサービスを全国エリアに拡大させていきます。またそれとは別に新しいプロダクトの検討を進めておりますので、今後もMUFGと連携して取り組んでいければと思います。

都市・暮らしのアップデート

“インクルーシブデザインによる分断のない共創社会の実現”
障害当事者との対話を経て、すべての人々が使いやすいプロダクトを開発
2023年11月28日
株式会社Halu( ハル) 代表取締役・松本友理さん

三菱UFJ銀行が主催するビジネスサポート・プラグラム「第10Rise Up Festa」の「都市・暮らしのアップデート」分野において最優秀企業に選ばれたのは、株式会社Haluです。障害の有無で使い手を選ばない商品ブランド「IKOU(イコウ)」について、株式会社Halu( ハル) 代表取締役・松本友理さんにお話を伺いました。

自社ブランド「IKOU」の製品で社会の分断を埋める

― 御社の設立背景と、事業概要について教えてください。

脳性まひを持つ息子の子育てをする中で、障害者と健常者の間の分断を強く意識したのが設立の背景です。例えばキッズチェアを一つ探すにも、体幹の弱い息子が使いやすいものは市販されていませんし、福祉用の椅子は機能面で優れていても、デザイン性や携帯性において自身のニーズにフィットするものがありませんでした。学校や就労の場ばかりでなく、使っているプロダクトから分断されていては、障害者と健常者の違いは日常から際立ってしまうと感じていました。

障害の有無に関係なく使えるプロダクトを生み出すことこそ、障害児の母である私の使命なのではないか。元々トヨタ自動車でものづくりに携わっていた私は、次第にそう思うようになり、元の職を辞して2020年にHaluを設立しました。

現在は、インクルーシブデザインを軸とした自社ブランド「IKOU」を展開し、機能性に加え、デザインや「使いたくなる気持ち」にこだわったポータブルチェアやキッズウェアの開発・販売を行なっています。

― インクルーシブデザインについて教えてください。

「インクルーシブデザイン」とは、高齢者や障害者など、従来のデザインプロセスでは見逃されがちだった多様な人々のニーズに着目し、困りごとを持つ当事者を巻き込んで共に創るデザインアプローチのことです。「ユニバーサルデザイン」ではデザイナー主導のもとで普遍的に使いやすいプロダクトを目指すのに対し、「インクルーシブデザイン」は個々のユーザーの課題を起点に、当事者と共に解決を目指すというアプローチの違いがあります。IKOUのものづくりでは、身体的な障害を抱える子どもたちとその家族の体験に学び、あらゆる子どもと家族にとって価値のあるプロダクトを生み出すことを目標としています。Haluのメンバーには障害児を含め育児経験を持つメンバーが複数いるため、「インクルーシブデザイン」を通して、実体験を直にプロダクトに反映できる点も強みの一つです。
IKOUポータブルチェア

― 福祉分野におけるビジネスの現状を教えてください。

現在、世界の障害当事者は18.5億人、その家族や友人を合わせた購買力は13兆ドルとも試算されています。一方、国内で障害児向けのプロダクトやサービスを展開している企業は限られます。当社は自社のコアコンピタンスや協業他社とのネットワークを起点に、これから市場を開拓していきたいと考えています。

MUFGのサポートが、製品の導入実績に直結

― Rise Up Festaへの応募動機・経緯を教えてください。

資金調達のために三菱UFJキャピタルとご相談していた中で、Rise Up Festaを紹介していただきました。大きな応募動機としては、他社との協業を進展させることと、「IKOU」で開発したポータブルチェアの設置数を増やすことの2点がありました。

― 参加後の感想を聞かせてください。

当社は社会性の高い事業に取り組んでいるものの、収益性等ビジネスの観点で評価いただけるか参加前は不安でした。過去の受賞企業もテクノロジーに強みを持っていることが多い中、今回当社が受賞できたのは、MUFG全体が真剣にD&Iに取り組もうとされているからだと思います。また、社会的意義の高さだけでなくビジネスとしてのポテンシャルを評価して頂けたのが大きな自信になりました。

― MUFGからのサポートで他に印象に残っているものはありますか?

この7月にMUFGと株式会社ファイターズ スポーツ&エンターテイメントのパートナーシップの枠組みで、「ES CON FIELD HOKKAIDO」にポータブルチェアを20台導入していただきました。パートナーシップを通じて社会課題の解決を目指す「共同創造空間」という理念に合致していると評価いただき、乳幼児が観戦する際の無料レンタル用としてすでに250名以上の方にご利用いただいております。
IKOUポータブルチェア
加えてMUFGのメンターからは、自治体向けにアプローチしてはどうかというアドバイスもいただき、実際に自治体向けピッチイベントに参加するなど、具体的な営業活動に結びついています。現在も関西のスタートアップ関係のイベントをご案内いただくなど、Rise Up Festaの後も良い関係を築けていると思います。

協業を進展させ、インクルーシブ社会の旗振り役に

― 今後Rise Up Festaへの参加を検討するスタートアップに向けて、コメントをお願いします。

メンタリング期間中に実績づくりまでフォローしてもらえるプログラムというのは、他に中々ありません。MUFGは社内外に幅広いネットワークを持っており、メンターの方のフォローも手厚いです。自社の現在の課題を認識し、事業を広げていきたいスタートアップには価値のあるプログラムだと思います。

― 最後に、今後の展望について教えてください。

子どものうちから障害者と健常者が身の回りのものや体験を共有し、個々の違いを自然と受け入れ、互いを認め支え合う「インクルーシブな社会」を実現するという当社のビジョンは変わりません。そのために将来的には事業を海外展開し、より多くの人たちにプロダクトを届けていきたいです。さらにはその過程で得た知見を活かし、障害を持った大人・高齢者などマーケットを広げていくことも視野に、今後も協業を進めてインクルーシブな社会の旗振り役となっていきたいと思います。