“介護×テクノロジーで人材不足を解消”
ITを駆使して介護現場と有資格人材を効率的にマッチング
三菱UFJ銀行が主催するビジネスサポート・プログラム「第10回Rise Up Festa」の「既存産業のDX、プラットフォームの創出」分野において最優秀企業に選ばれたのは、カイテク株式会社です。介護・看護の有資格者のワークシェアリングサービス「カイテク」を通じて介護業界の課題解決を目指す、代表取締役社長・武藤高史さんにお話を伺いました。
私たちが提供している介護ワーキングシェアサービス「カイテク」は、介護・医療関係の事業所と有資格人材のマッチングサービスです。ワーカー側から見れば手の空いた時間(=埋没労働時間)に面接なしで自分のスキルを使って仕事ができ、事業所側にとっては急な人手不足の際にも即戦力人材を確保できるメリットがあります。
現在の登録事業所数は約3,000、ワーカー数は10万人ほどの規模で拡大中となっており、東京都や官公庁からも多数の評価をいただいています。
介護・医療業界は国内では他に類のない急成長産業です。2021年度には約11兆円だった市場規模が、今後2040年度までに27兆円規模に拡大するという試算もあり、参入する介護事業所や介護人材も増加傾向です。
一方で、必要な介護職員数と実際に現場で働いている人数のギャップは埋まらなくなってきており、2023年度には約22万人、2040年度には約69万人が不足すると見込まれています。外国人人材の採用や介護ロボットの導入検討も進んでいますが、即効性がある取り組みとして有資格者の「埋没労働時間」を掘り出すことが、こうした社会課題の軽減・解消に繋がると私たちは考えています。
元々は私が学生時代の時、認知症のある祖父の介護のために、とある介護施設のお世話になったのが始まりでした。介護職員の方々のスキルの高さを実感するとともに、人材不足によって疲弊している現場を目の当たりにし、「このまま放置していては介護業界の持続可能性は低い」と危機感を覚えました。
その後IT業界を経て2018年2月にカイテクを起業、コロナ禍初期の2020年1月に「カイテク」をリリースしました。当初は感染対策で事業所への訪問が難しくなる困難もありましたが、一方で介護職員の方が休んだシフトの穴を埋めるというニーズもあり、現在は順調にサービスが介護現場に浸透してきています。
リリース後、プロダクトマーケットフィット※の段階を迎えたのがちょうど昨年でした。これから拡販していくぞというタイミングで、Rise Up Festaの存在を知りました。国内外に巨大なネットワークを持つMUFGに、法人さまへのマーケティング面でお力添えをいただければと思い応募に至りました。
明確なメリットを2点感じました。
1点目は、メンターの方に私たちと同じ熱量、同じ目線で一緒に事業について考えていただけた点です。具体的には、三菱UFJ銀行、三菱UFJキャピタルのメンター担当者の方に社内外の繋がりをたどって積極的に紹介先を探していただき、法人とのビジネスマッチングが捗りました。
2点目は、Rise Up Festa発表に際して、会社の成長を見越した中長期の目線でプレゼンテーションのフィードバックをいただけたことです。従来の伝え方では、社外から見てカイテクが提供する価値が分かりにくいというご指摘がありました。その後プレゼンの仕方や説明資料などを見直し、投資家に納得してもらえるエクイティストーリーの伝え方を整理することができました。
2次審査後のブラッシュアップ期間のことなのですが、お客さま先にメンターの方が同行してくださってとても心強かったです。最終審査のプレゼン前に、メンターの方から企業紹介をしてもらうのですが「介護事業者の方の反応を見て、『カイテク』こそ社会課題に必要なサービスだと感じました」と金融のプロとしての立場からお墨付きをいただけて、自信に繋がりました。現在でも「Rise Up Family」としてご相談に乗っていただいています。
MUFGの巨大な社内外ネットワークは、スタートアップにとって非常に心強い存在です。特に私たちの場合はちょうどサービスがGo-to-Market※の段階だったので、課題となっていた法人営業のスピード感を、Rise Up Festaを通したビジネスマッチングで飛躍的に向上させることができました。
また、Rise Up Festaを通して、三菱UFJキャピタルや三菱UFJ信託銀行との繋がりを深めることができたのも大きなメリットでした。今後IPOを検討するスタートアップにとっては、金融市場に対する距離感を縮めることができるという意味で、とても有意義だと思います。
介護・医療業界で人材不足のない世界を目指すという点は、変わらず大きなミッションです。その中で提供するサービスのユーザー数や、提供する付加価値を広げていきたいと思っています。具体的にいえば、「カイテク」のサービスを全国エリアに拡大させていきます。またそれとは別に新しいプロダクトの検討を進めておりますので、今後もMUFGと連携して取り組んでいければと思います。