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遺言書とは?作成が必要な状況と理由について
遺言書とは?作成が必要な状況と理由について

遺言書とは? 作成が必要な状況や作成例、作成すべき理由などについて

遺言書は、相続に関する重要な書類です。遺言書がなければ、相続に関するトラブルが起こり、残された大切な家族が揉めてしまうことがあります。そうならないためにも、自分の意思を遺言書という形で残しておいたほうがよいでしょう。
ここでは、遺言書を作成する理由や遺言書を作成しておく必要がある状況について、注意点を含めて解説します。

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被相続人が自分の意思を示す遺言書

遺言書は、被相続人が相続に関する自分の意思を示すための書類です。
まずは、遺言書を作成する理由とその種類についてご紹介しましょう。

遺言書を作成する理由

遺言書があれば、その記載内容が法定相続分よりも優先されますが、遺言書がない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行って分割方法などを決めることになります。遺言書がなければ、被相続人の意思を示すことができません。

しかし、遺言書を作成しておけば、被相続人の意思にもとづいた相続分割ができるようになります。また、相続人以外への遺贈も可能です。
例えば、子どもの配偶者が長年介護をしてくれていても、子どもの配偶者は法定相続人ではなく、相続する権利はありません。法定相続人ではない人に財産を残したい場合にも、遺言書を作成したほうがよいでしょう。
また、相続人の遺留分も考慮する必要があります。配偶者と子ども、孫などの直系卑属、親や祖父母などの直系尊属には、最低限相続できる遺留分が認められているため、特定の相続人に多めに遺産を相続したい場合でも、意思どおりにならないことがあるのです。
遺留分の割合は法定相続人が誰になるかによって異なりますので、遺言書を作成する際には専門家のアドバイスを受けるようにするといいでしょう。

遺言書の種類

一般的な遺言書の種類としては、自筆証書遺言と、公正証書遺言、秘密証書遺言が挙げられます。これらについてくわしくご説明します。

  • 自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、被相続人が手書きで作成した遺言書です。ただし、財産目録については、2019年の民法改正により、パソコンで作成したものでも認められるようになりました。さらに、預金通帳の口座情報がわかる部分のコピーや登記簿謄本のコピーなども、目録として添付することもできます。
自筆証書遺言は、ほかの遺言書作成には必要な証人が不要で、署名・押印は本人のものだけで作成できます。しかし、本人が保管することになるため、家族に自筆証書遺言の存在を知らせていなければ、見つけてもらえない場合や、紛失・改ざんなどのリスクがあります。また、自筆証書遺言としての形式に則っていない場合、無効になるリスクもあることに注意しましょう。

また、2020年7月10日から、自筆証書遺言を法務局で保管する制度が始まりました。この制度を利用すると、遺言書の紛失・改ざんを防ぐことができます。詳しくは記事「遺言書の書き方や必要なケースの解説~付言事項の役割とは」の「自筆証書遺言の保管制度とは」をご確認ください。
  • 公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう公正証書としての遺言書です。公正証書遺言を作成する際には、遺言者が遺言書を書いたことを証明する証人が2人以上必要になります。また、本人と証人、公証人の署名・押印も必要です。
原本は公証役場に保管し、正本は本人が保管します。公正証書遺言を作成する場合には、財産の額に応じて費用がかかります。

公正証書遺言イメージ
  1. 上記公正証書遺言はイメージです。
  • 秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言の内容を誰にも知られないように作成する遺言書です。遺言書を自分で作成し、内容を秘密にすることができますが、公証役場で公証人と証人2人以上に秘密証書遺言だという確認をしてもらわなければなりません。
遺言書には本人が署名・押印し、封筒には本人と証人、公証人の署名・押印が必要です。また、秘密証書遺言を作成する場合は、公証役場の手数料がかかります。

自筆証書遺言と秘密証書遺言の開封には検認が必要

被相続人が遺言書を作成していた場合、被相続人が亡くなっても遺言書を勝手に開封してはいけません。自筆証書遺言と秘密証書遺言がある場合は、家庭裁判所で相続人立ち合いのもと、遺言の内容を明確にして偽造を防止し、相続人に対して遺言の存在・内容を知らせる検認作業が必要です。
遺言書を勝手に開封すると罰金が科せられる可能性があるため、取り扱いには十分注意しましょう。
なお、公正証書遺言は検認が不要です。

検認手続きの流れ

遺言書の検認は、家庭裁判所に申し立てを行います。検認の流れは下記のとおりです。

検認手続きの流れ 1. 家庭裁判所への申し立て 2. 検認日の通知 3. 検認 4. 検認済証明書の申請
1.家庭裁判所への申し立て

検認申立書とともに、遺言者と相続人全員の戸籍謄本を家庭裁判所に提出します。提出する戸籍謄本の種類は、誰が相続人となるかによって異なります。

2.検認日の通知

検認の申し立てに不備がなければ、検認日の通知が家庭裁判所から送付されます。

3.検認

指定された検認日に、家庭裁判所で検認を行います。相続人全員が立ち会う必要はありませんが、申し立てた人は立ち会いが必要です。

4.検認済証明書の申請

検認が終了したら、検認済証明書を申請します。申請が受け付けられると、遺言書に検認済証明書が付けられ、名義変更などの手続きができるようになります。

検認が不要なケース

自筆証書遺言保管制度を利用して法務局で保管していた遺言書については、検認の必要はありません。
自筆証書遺言保管制度については、以下の記事をご確認ください。
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遺言書の作成を検討したいケース

相続についての意思を示しておきたい場合は、遺言書を作成しておくことをおすすめしますが、特に遺言書が必要だと思われるケースをご紹介します。このようなケースにあてはまる場合は、遺言書の作成を検討してみてください。

子どもがおらず配偶者に多く相続させたい場合

子どもがいない夫婦で相続が発生する場合、親が存命であれば親が相続人に、親が故人であれば兄弟姉妹が法定相続人になります。
しかし、何年も会うことなく疎遠になってしまった兄弟姉妹に相続する分を、できるだけ配偶者に相続できるようにしたいと思うこともあるでしょう。配偶者に法定相続分より多く相続したいのであれば、遺言書を作成しておく必要があります。

世話をしてくれた子どもに多く相続させたい場合

子どもが何人かいる場合、その中の1人にだけ多く相続させたいのであれば、遺言書でその意思を示しましょう。
例えば、遠方に住んでいてあまり会うこともない子どもよりも、同居して介護などの世話をしてくれた子どもに多く相続させたいといった場合です。法定相続の場合は、遠方の子どもも同居の子どもも同じ割合での相続になってしまいます。遺産分割協議になれば、相続割合でトラブルになってしまう可能性も高くなります。
その場合には、同居して世話をしてくれた子どもに多く相続させたいという意思を、遺言書に書いて示しておくとよいでしょう。

認知された非嫡出子や元配偶者との間に子どもがいる場合

認知された非嫡出子や元配偶者との間に子どもがいる場合も、すべての子どもが相続人となります。すべての子どもが同じ相続割合となるため、トラブルが起こりやすい状況ともいえるでしょう。
そのため、自分の意思を遺言書に残しておくことが大切です。

親にも財産をのこしたい場合

自分が亡くなったとき、親がまだ健在であるというケースも珍しいことではなくなりつつあります。
子どもがいる場合は、親は法定相続人にならないので、生活費や介護費用に充てるために親に財産をのこしたい場合は、遺言書を作成しておく必要があります。

特定の子どもに事業を継がせる場合

子どもが何人かいる場合に事業用の財産を平等に分けると、子ども同士の意見の対立で事業が停滞する可能性があります。
子どもに事業を継がせる場合は、後継者を一人定めて、事業に関する財産をすべて渡すよう遺言書で示すなども一つの手段です。また、後継者とならなかった子どもが不公平感を持つことでトラブルにならないよう、相応の財産を渡すよう遺言で指定したり、あらかじめ事業承継の意向を話したりするのもよいでしょう。

法定相続人がおらず、財産をお世話になった人にあげたい場合

生涯独身であったなど法定相続人がいない場合は、財産は国に納められることになります。
法定相続人がいない方が、お世話になった人に財産をのこしたい場合は、遺言書でその意思を示しておく必要があります。
遺言書がなくても、被相続人の世話をしていた人が自ら特別縁故者として家庭裁判所に申し出れば、財産を受け取ることができます。ただし、特別縁故者と認められるには要件があり、家庭裁判所に必ず認められるとは限りません。お世話になった人に財産をのこしたい場合は、遺言書を作成することをおすすめします。

財産を特定の団体に寄付したい場合

遺言で指定すれば、財産を特定の団体に寄付することも可能です。財産を社会の役に立てたいという場合は、寄付する団体と財産を遺言書で指定しておきましょう。ただし、その団体で財産を受け入れてもらえるかどうかは確認しておく必要があります。

相続人以外に財産をのこしたい場合

法定相続人以外に財産をのこしたい場合は、遺言書が必要です。
親しい関係の親族であっても、法定相続人でなければ財産を相続することはできません。代表的な例としては、孫(子どもが健在である場合)、子どもの配偶者、いとこは法定相続人になりません。これらの人に財産をのこしたい場合は、財産を遺贈するよう遺言書で指定する必要があります。
このほか、内縁の妻や夫、友人や知人など親族以外の人に財産をのこしたい場合も同様に遺言書で指定する必要があります。

遺言執行者が必要になるケース

遺言執行者とは、遺言の内容にもとづいて相続に関する手続きを進めていく人のことです。
誰を遺言執行者にするかは遺言書で指定することができます。遺言で推定相続人を廃除する場合と子を認知する場合は、遺言執行者を指定する必要があります。
推定相続人の廃除とは、相続人になると推定される人から虐待や侮辱を受けた場合に、その人の相続の権利を失わせることです。子の認知とは、婚姻関係にない人との間に生まれた子どもを自分の子どもと認めることです。
なお、遺言内容に推定相続人の廃除と子の認知がなければ、遺言執行者を指定しなくても問題はありません。
遺言執行者の役割と権限については、以下の記事をご確認ください。

遺言を残すにあたっての注意点

遺言書は、被相続人の意思を示すために大切なものですが、遺言書を残しておけば安心というわけではありません。最後に、遺言書を作成する際に注意しておきたいことを説明します。

意思を家族に伝えておく

法定相続割合のとおりに財産分割しない場合は、その理由を生前に自分から相続人に説明しておいたほうがいいでしょう。
遺留分にも配慮して遺言書を作成しておけば、相続自体はそのとおりにできますが、その内容に不満を持った相続人がいれば、関係性が悪くなってしまうかもしれません。残された大切な家族の関係性が悪くならないようにするためにも、生前から理由を伝えて納得してもらうことが大切です。

不動産が必要かどうかを見直す

不動産を相続した場合、相続税を現金で用意する必要があったり、名義変更をしたり、相続後に固定資産税がかかったりと、手間も費用もかかります。特に、それが相続人にとって不要な不動産であれば、大きな負担となってしまうでしょう。
また、不動産は現金のように分割できないため、相続にあたってトラブルになる可能性もあります。まずは必要な不動産かどうかを検討した上で遺言書を作成することが大切です。

遺言書作成前に不動産の活用を検討する

不動産の必要性を見直す一方で、事業承継という観点では不動産を有効活用することも考えられるでしょう。不動産を購入することで自社株式の評価額が下がり、後継者への自社株式相続の際の納税負担が軽減されることもあります。遺言書を作成する前に、事業の状況を踏まえて不動産の活用を考えてみてはいかがでしょうか。

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