経済指標とは? 投資判断におけるポイントと主要な経済指標を解説
経済指標は、景気の現状や将来の見通しを客観的に判断するための手がかりとなる、有益な情報源です。主要な経済指標を定期的にチェックすることで、投資判断に必要な情報を効率的に収集することができます。
この記事では、主要な経済指標やその見方、分析のポイントなどを解説します。
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経済指標とは? 投資判断の手がかり
経済指標は投資判断における情報源であり、景気の現状や将来の見通しを客観的に判断する手がかりになります。まずは、経済指標の概要や、なぜ投資判断において必要なのかを解説します。
経済指標の概要
経済指標とは景気や物価、雇用といった、国や地域の経済活動を数値で示したものです。政府や中央銀行、民間調査機関などが定期的に発表します。たとえば、米国の雇用統計やGDP(国内総生産)などが代表的な経済指標です。
投資家にとって経済指標は、株式市場や債券市場の将来的な動きを予測するための判断材料となります。特に米国の経済指標は世界経済への影響力が大きいため、グローバルな投資戦略を立てるうえでも押さえておくとよいでしょう。
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経済指標を理解する必要性
経済指標の理解は、以下のような観点から必要であると考えられます。
- 市場の変動要因の把握
- 投資戦略の策定
- リスク管理
- 長期的な視点での資産形成
経済指標を理解すると、市場がなぜ変動しているのか、その背景にある要因の解明につながります。経済指標から得られる情報によって、自身の投資戦略をより具体的に策定したり、潜在的なリスクを予測して適切な管理を行ったりすることが可能となります。また、長期的な視点での資産形成を考えるうえでも、経済全体の動向を把握する指標を押さえておくとよいでしょう。
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主要な経済指標とその見方
世界ではさまざまな経済指標が定期的に公表されています。ここでは、主要な経済指標の一覧とその内容を紹介します。
主要な経済指標
以下は、世界の主要な経済指標を一覧にまとめたものです。
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| 指標名 | 内容 | 公表時期 |
|---|---|---|
| 国内総生産(GDP) | 国・地域の一定期間の総生産額。経済規模を示す指標 | 四半期ごと(米・欧・日など) |
| 失業率 | 労働人口に占める失業者の割合。雇用市場の状況を示す指標 | 毎月(米・日) |
| 消費者物価指数(CPI) | 消費者が購入するモノ・サービスの価格変動。インフレ動向の指標 | 毎月(米:15日前後・日:20日前後など) |
| 生産者物価指数(PPI) | 生産者段階での価格変動。インフレ動向の先行指標 | 毎月(米・欧・日など) |
| 小売売上高 | 小売業の売上高。個人消費の動向・市場活性度を示す指標 | 毎月(米・日など) |
| 鉱工業生産指数 | 鉱業・製造業などの産業生産水準・推移 | 毎月下旬(日本)、毎月中旬(米国) |
| ISM製造業景況指数 | 米国製造業の景気感・景況判断をまとめた指標 | 毎月1営業日(米国) |
| 非農業部門雇用者数(NFP) | 米国雇用市場の非農業部門産業における雇用者数の変動 | 毎月第1金曜日(米国) |
| 貿易収支/経常収支 | 輸出入や海外投資など対外取引の損益 | 毎月もしくは四半期(米・日・欧ほか) |
国内総生産(GDP)
国内総生産(GDP)は、ある一定期間内に国内で生み出された、モノやサービスの付加価値の合計額です。その国の経済規模や成長性を測る指標の一つとされています。GDP成長率は前期や前年と比較して経済がどれだけ成長したかを示し、景気の良し悪しの判断に活用されています。物価変動を考慮しない名目GDPに対し、物価変動の影響を除いて算出する実質GDPは、より正確な経済活動の動向を把握できる指標です。
消費者物価指数(CPI)
消費者物価指数(CPI)は消費者が購入するモノやサービスの価格変動を測定する指標で、インフレの動向を示します。食品やエネルギーを含む全体の物価動向を示す総合指数に対し、変動の大きいこれらを除いたものをコアCPIと呼びます。コアCPIは、より本質的な物価のトレンドを把握する際に重視されます。CPIの数値が市場予想を上回ると、インフレ懸念から金利上昇の観測が高まり、株式市場や為替市場に影響を与えます。特に米国のCPIは、FRB(連邦準備制度理事会)の金融政策に直結するため、世界中の投資家から注目されます。
失業率
失業率は、労働力人口に占める失業者の割合を示す指標です。失業率の変動は景気動向を表しており、一般的に景気がよくなると低下し、悪化すると上昇する傾向があります。米国では雇用統計の一部として毎月発表され、なかでも非農業部門雇用者数(NFP)は特に注目されています。他国でも同様の指標が発表されますが、公表の頻度や統計の取り方が異なる場合があるため注意が必要です。
政策金利
政策金利は、中央銀行が金融市場調節のために設定する金利です。投資家にとっては株式市場、債券市場、為替市場といったほとんどの市場に影響を与える核心的な経済データといえます。
米国では連邦準備制度理事会(FRB)がFF金利(*)を設定し、年8回のFOMC(連邦公開市場委員会)で決定されます。日本では日本銀行が政策金利を決定し、金融政策決定会合で年8回検討される仕組みです。欧州では欧州中央銀行(ECB)が主要政策金利を管理し、6週ごとの理事会で方針を決定します。
政策金利が引き上げられると市中の金利も上昇しやすくなり、企業の設備投資や個人の住宅ローンなどが抑制され、景気を落ち着かせる方向に働きます。逆に引き下げられると、金利が下がり、経済活動の活発化を促します。
- フェデラル・ファンド金利(Federal Funds Rate)の略称で、米国の銀行間で無担保の短期資金を貸し借りする際に適用される金利
購買担当者景気指数(PMI)
購買担当者景気指数(PMI)は、企業の購買担当者へのアンケートをもとに算出される景況感を示す指標です。製造業や非製造業の企業活動の先行指標として、景気の転換点を予測するうえで注目されます。景気動向を敏感に反映することから、投資家は今後の経済活動の動向を探るために注目します。PMIは、景気の拡大・縮小の分かれ目となる「50」を基準とし、50を上回ると景気拡大、下回ると景気縮小と判断されます。米国のほか、ユーロ圏や日本、中国といった主要国でも毎月公表されており、グローバルな景気動向を把握するのに役立ちます。
経済指標の分析のポイント
経済指標の数値が持つ意味を理解するには、いくつかのポイントがあります。ここでは、経済指標をより的確に分析し、投資判断に活かすための具体的な見方を解説します。
4つの基本数値を理解する
経済指標を分析する際は発表された結果だけでなく、予想値・前回値・改定値を含めた4つの基本数値に注目しましょう。特にGDPのような指標の場合、米国や日本では速報値発表後に改定値が公表されるため、初回発表だけでなく継続的な注視が必要です。
市場予想との乖離に注目する
経済指標の発表では、実際の数値が事前の市場予想とどの程度乖離しているかが、市場の動向に大きな影響を与えます。たとえ数値自体がよかったとしても、市場予想を下回ればネガティブな材料と受け止められる可能性があります。逆に、数値が多少悪くても、予想よりも良い結果であればポジティブに評価されるでしょう。こうした反応は、すでに市場の価格に織り込まれている予想値との比較が注目されるためです。
そのため、投資家は発表される数値だけでなく、市場の事前予想を把握しておく必要があります。この乖離の分析によって、市場の反応の背景にある投資家の心理を読み解けるようになるでしょう。
時系列での変化の把握
経済指標を分析する際は、単発の数値だけでなく、時系列での変化の把握を心がけましょう。一時的な変動ではなく、数ヵ月から数年にわたる推移を観察しなければ経済の真の方向性はわからないためです。たとえば、失業率が改善したとしても、それが数ヵ月続くのか、あるいは一時的な要因によるものなのかは時系列を追わなければ判断できません。過去のデータを比較し、景気の波や変動パターンを理解すると、将来の予測精度を高めることにつながります。
季節調整値と実質値の活用
経済指標の分析には、季節調整の影響を理解しておく必要があります。月ごとや四半期ごとに発表される経済指標は、気候や年末年始・大型連休などの休日、ボーナス支給といった季節的な要因によって変動するためです。
季節調整値は、過去の季節パターンを統計的に除去した指標です。たとえば、小売売上高は12月に大幅増加し1月に減少する傾向がありますが、季節調整により基調的な消費動向を読み取れます。
季節調整値は、過去の季節パターンを統計的に除去した指標です。たとえば、小売売上高は12月に大幅増加し1月に減少する傾向がありますが、季節調整により基調的な消費動向を読み取れます。
また、名目値と実質値の違いも大切で、実質値はインフレの影響を除いた真の経済成長を示す数値です。
季節調整値や実質値を用いると、名目的な変動ではなく、実際の生産活動や購買力の変化に対する正確な評価が可能となります。
投資に取り入れたい経済指標カレンダー
経済指標を投資判断に活かすには、定期的に発表されるスケジュールを把握し、タイムリーに情報を入手することが大切です。経済指標カレンダーを活用すれば、発表日を事前に確認でき、市場の動きに備えられます。ここでは、経済指標カレンダーの活用方法や、情報の取り入れ方について解説します。
信頼できる情報源の確保
経済指標の投資活用では、速報性と信頼性を兼ね備えた情報源の確保がポイントとなります。市場は発表と同時に反応するため、正確な情報をいち早く入手できる体制を整える必要があります。
政府統計機関は最も信頼性の高い一次情報源です。米国では労働省労働統計局(BLS)や商務省経済分析局(BEA)、日本では総務省統計局や内閣府などが公式データを発表します。中央銀行のWebサイトも政策金利や金融政策に関する情報を提供します。
大手金融情報ベンダーでは、リアルタイムでの情報配信と詳細な分析が提供されます。証券会社の経済指標カレンダーも投資家向けに最適化された情報が提供されているため、効率的な情報収集が可能です。複数の情報源を組み合わせることで、情報の正確性が確保され、適切な投資判断を下せるでしょう。
カレンダーの活用
経済指標を投資に取り入れるには、指標が発表される都度、確認するのが望ましいといえます。発表される日時を忘れないようにするには、証券会社等が提供している経済指標カレンダーやトピックスカレンダーなどを定期的にチェックするのがおススメです。経済指標カレンダーには、前回値や予想値が掲載されているのが一般的です。
このようなサービスを活用すれば、忙しい方でもリアルタイムで指標を確認できます。経済指標を定期的に確認する習慣が身につくと、経済のトレンドを的確に把握できるようになるでしょう。
まとめ
経済指標の分析ができると、市場の動きを先読みした投資判断につながります。ただし、単発の指標ではなく、継続的な観測が必要なため、リアルタイムで主要な経済指標をチェックする習慣を付けたいところです。
経済指標は、日々の短期的な取引だけでなく、中長期的な投資戦略を立てるうえでも大きな役割を果たします。主要な指標を定期的にチェックし、経済の拡大・縮小サイクルを把握することで、ポートフォリオ配分や資産クラスの見直しの際の判断がしやすくなります。また、指標の変化が持続的なものか見極めることで、的確な投資判断ができるようになるでしょう。
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記事提供:株式会社LITTLE DISCOVERY
執筆者:松田 聡子
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(2025年11月14日現在)
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