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土地の収益性を高めるために~相続対策の必要性
土地の収益性を高めるために~相続対策の必要性

土地の収益性を高めるために~相続対策の必要性

相続は多くの方にとって重要な問題ですが、特に土地を多く保有する方にとってはその対策が一層大切になります。土地の評価額が高くなることで相続税の負担が増し、家族間の意見の相違も発生しやすくなります。本記事では、土地を多く保有する場合の相続対策の必要性や検討すべき事項を説明します。

土地についての相続対策が必要な理由

相続実績の実情

2023年の相続税申告の実績によると、相続財産のなかで土地が占める割合は、全体の3分の1程度となっています。
【2023年相続税の申告実績概要】
土地32% 家屋5% 有価証券17% 現預金35% その他11%
「2024年12月国税庁報道資料」から旭化成ホームズ株式会社にて改変
しかし、不動産賃貸業や農業など土地を資本とした事業の方は、相続財産の半分以上が土地であることも珍しくなく、この問題で頭を悩ませる人は少なくありません。特に「分割」「換金性」は、専門家がしばしば相談を受ける事項です。
  • 分割
土地を分割することは理論上可能ですが、実際には、土地には都市計画上様々な制約が課せられているので、機械的に分割をしてしまうと資産価値を損ねてしまうケースがあります。
  • 換金性

人気の立地でも敷地境界が明確でない場合は隣地等との境界の確定作業なども必要です。また、景気動向や立地に難があれば、そもそも購入希望者を探すまでに相当な時間がかかる可能性もあります。

これらの理由から、資産の中で不動産が占める割合が高い場合には、あらかじめ相続対策の検討が必要となってきます。

土地相続対策で検討すべき事項

3つの対策

さて、基礎控除額「5,000万円+(1,000万円×法定相続人数)」から「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」への引き下げを始めとする2015年の相続税制の改正により相続税の負担増が注目されましたが、加えて近年は資産価格の上昇により、資産家にとって相続税の負担は深刻な問題となっています。

国税庁の公表資料から、相続税の課税価格は直近10年で2倍弱に、また相続税の納税額も2倍強に上昇していることが確認できます。

【相続税申告者の課税価格と相続税の推移】
課税価格 11.5兆円 21.6兆円 相続税額 1.4兆円 3.0兆円
「相続税の申告事績の概要(国税庁公表)」の各年資料より旭化成ホームズ株式会社にて改変

こうしたなかで、①相続税対策のほか、②相続税の納税方法についての検討(納税対策)があらためて注目されており、相続人が複数いるケースでは③遺産分割の検討(遺産分割対策)も必要となります。

なお、相続税の申告は相続発生から原則、10ヵ月以内に行うことが必要であり、不動産にかかる遺産分割登記の申請は、遺産分割が成立した日から3年以内に行うことが義務付けられています。

①相続税対策
  • 実勢価格と相続税評価額との差に注目
  • 集合住宅の建築 等
②納税対策
  • 納税資金確保
  • 土地売却における工夫
③遺産分割対策
  • 土地分割における制約
  • 開発等の許認可
相続対策については、上記のような点に留意すべきですが、検討を進めるうえで重要なのは活用による収益性と経営の安定性の確認の2点です。相続対策上一定の効果があったとしても、長期的な収益性に問題のある計画は本末転倒であると思われるためです。次に、安定収益を上げるための土地活用手法について説明します。

安定した収益を上げるための土地活用手法について

土地活用の選択肢

安定した収益を確保できる活用手法を考えるに際して、まずは土地活用の選択肢について理解する必要があります。現実の土地活用手法には様々な選択肢がありますが、これを大きくまとめると下表のように分類できます。 ここでは賃貸住宅経営(建物の賃貸)・定期借地活用(土地の賃貸)・等価交換マンション(土地の売却)について説明します。
大分類 小分類 具体的な手法
建物の賃貸 居住目的 賃貸住宅経営
非居住目的 貸事務所、貸店舗、貸金庫、貸工場等
土地の賃貸 借地借家法適用 普通借地権、定期借地権
借地借家法非適用 青空駐車場、資材置き場、貸農地等
土地の売却 単純売却
買換え 事業用買換え、居住用買換え、等価交換事業等

賃貸住宅経営

近年では人口減少が進む中で空き家の数もふえています。そんな中で、継続して収益性を確保できる賃貸住宅とはどのようなものでしょうか。多くのユーザーが「ここに住みたい」と思う賃貸住宅が考えられます。また、空き家が多いということは、借りる側の物件選択についての自由度が高い状況であると考えることができます。世の中には、「その土地において有効面積を最大限にすること」を前提に企画された賃貸住宅が多く供給されていますが、借り手にフォーカスした賃貸住宅は多くありません。

その意味では、特に都市部では、規格プランではなく、その土地の形状や近隣の建物状況等も鑑みた個別計画を考える必要があると思います。

加えて、間取りも「家具レイアウト」なども視野に入れたものを検討されることが大切です。

そのほか、特に大都市部では「ペットと一緒に住むことができる賃貸住宅」、あるいは「居住者間のコミュニケーション作りに配慮した賃貸住宅」等のテーマ性を持った企画は一定のニーズがあると考えられ、「防犯性」の高さを売りにできるケースであれば、単身者や子育て世代のニーズに応えることができると思われます。

定期借地活用

定期借地権は、建物所有目的で土地を貸すものの、期間満了で契約が終了することを法律上で明確にした借地権です。ケースによっては基盤整備が必要な可能性もありますが、土地所有者は、土地を貸すだけの事業であるため、大規模な開発をする場合を除くと、建物の賃貸をする時よりも投下資金は少なくて済み、建物管理の手間もかかりません。もっとも、地代収入は安定していますが、建物の賃貸の賃料収入と比較すると収益性は低くなる傾向がある点には注意が必要です。

等価交換マンション

都市部で容積率を活かすことができる場所では、等価交換マンション事業が土地活用を考える際の有力な選択肢となります。等価交換マンション事業とは、土地所有者は土地を出資するとともに、マンションデベロッパーが建築資金を出資することでマンションを建築したうえで、出資割合に応じて完成したマンションをそれぞれが取得する事業です。

土地所有者の立場から見ると、土地の権利の一部を売却して建物を取得できる手法と考えてよいでしょう。マンション価格が高い場所であれば検討可能な選択肢となります。

土地相続を考えるときは、税金面以外に、建築の視点や不動産実務の視点、また資金調達等、様々な点からの検討が必要となります。そのため、こうした問題を総合的にプロデュースできる専門家や企業に早い時点で相談をしたうえで、対策の検討をされることをおススメします。

執筆:旭化成ホームズ株式会社(三菱UFJウェルスアドバイザーズ株式会社 アライアンス先)

監修:三菱UFJウェルスアドバイザーズ株式会社

  1. 本記事は、2025年6月時点の税制、その他関連法規に基づく内容であり、今後の改正等により相違が生じることがあります。税法や法律に関わる個別、具体的なご対応は必ず税理士・公認会計士・弁護士等の専門家へご相談・ご確認ください。
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(2025年6月30日現在)
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宅地建物取引業 届出第6号

三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社

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