[ ここから本文です ]

社会貢献活動「寄付」の魅力とは 寄付したお金の使い道や寄付金控除について解説
社会貢献活動「寄付」の魅力とは 寄付したお金の使い道や寄付金控除について解説

社会貢献活動「寄付」の魅力とは 寄付したお金の使い道や寄付金控除について解説

社会貢献活動とは、文字どおり「社会に貢献する活動」のことです。企業や個人が社会貢献活動を行うことで、より良い社会の実現につながるとされています。社会貢献活動の具体例には、企業が行うCSR(Corporate Social Responsibility)やSDGs(Sustainable Development Goals)などの近年よく耳にするようなものがあります。また個人のボランティア活動や寄付といった身近なものなどさまざまです。
本コラムでは、個人でも行いやすい身近な「寄付」について解説します。
銀行・信託・証券の専門チームがサポート
  1. お問い合わせ・ご相談はスパイラル株式会社が運営するサイトにて受け付けております。

社会貢献活動の重要性

地球温暖化をはじめとする環境問題や経済格差、教育支援などの社会問題は世界的に深刻化しています。これらを解決し、持続可能な社会を実現するためには、国や地方自治体という大きな範囲に加えて、企業や個人といったレベルでも社会への貢献を考え、活動していくことが重要です。
個人の社会貢献活動には、災害支援やフェアトレードといった手法がありますが、ネット環境の普及による手軽さから、近年寄付市場が拡大傾向にあるといえます。以降では、日本における寄付市場の推移について紹介します。

日本における寄付市場の推移

日本ファンドレイジング協会が発表した「寄付白書2021」によると、ふるさと納税を含む個人寄付金総額が2010~2020年の10年間で倍以上と大きく拡大しています(下表参照)。
<個人寄付総額・寄付者数・寄付者率の推移>
  個人寄付総額 寄付者数 寄付者率
2010年 4,874億円 3,733万人 33.7%
2011年 5,182億円
(別途、震災寄付は5,000億円)
7,026万人 68.6%
2012年 6,931億円 4,759万人 46.7%
2014年 7,409億円 4,410万人 43.6%
2016年 7,756億円
(うち、ふるさと納税が2,844億円)
4,571万人 45.4%
2020年 1兆2,126億円
(うち、ふるさと納税が6,725億円)
4,352万人 44.1%
  1. 20歳以上79歳以下の男女
  2. 2013、2015、2017~2019年は調査なし
    (出典:日本ファンドレイジング協会「寄付白書2021」をもとに作成)
こうした寄付市場の拡大には、主に以下のような4つの要因が考えられます。
  • 2008年のふるさと納税制度開始
  • 2011年の東日本大震災を契機に寄付金額が増加
  • SDGsなど社会貢献活動の認知度向上
  • 寄付方法の多様化による寄付のしやすさ向上

日本の寄付市場の環境変化について

寄付市場の環境変化について、主なものとしては、クレジットカードの利用が拡大したことや、クラウドファンディングが普及したことが挙げられるでしょう。特にクラウドファンディングによる寄付は、「寄付白書2021」によると、2014年の国内クラウドファンディングの新規プロジェクト支援額が221億9,000万円だったのに対し、2018年は2,045億円まで急拡大しています。
さらに、遺贈による寄付金額やESG投資の市場規模についても同様に拡大傾向にあります。相続税の申告時に行われた遺贈などの寄付控除の申し出件数は下表のとおり、増加傾向にあります。
  件数
2009年 435件
2010年 427件
2011年 441件
2012年 376件
2013年 369件
2014年 397件
2015年 607件
2016年 572件
2017年 671件
2018年 691件
2019年 780件
(出典:日本ファンドレイジング協会「寄付白書2021」をもとに作成)
次に、ESG投資の市場規模を見てみましょう。世界のESG投資の総額は、こちらも下表のように2倍以上となっています。
  世界のESG投資の総額
2012年 13兆2,610億(米ドル)
2014年 18兆2,760億(米ドル)
2016年 22兆8,720億(米ドル)
2018年 30兆6,830億(米ドル)
2020年 35兆3,010億(米ドル)
(出典:日本ファンドレイジング協会「寄付白書2021」をもとに作成)
次に、実際に個人で行える寄付先や種類、寄付金の使い道などについて解説します。

個人での寄付先について

個人での寄付先は、主に以下の3つがあります。
寄付先 内容
非営利組織 営利を目的とせず各種社会問題の解決に向けた活動をする組織。具体的な寄付先としてはNPO、NGO、学校法人、財団法人、社団法人など
病院・施設 病院、福祉施設、図書館等の文化施設など
助成団体 研究や団体の活動に対して支援。具体的な寄付先としては地方公共団体、NPOなどを支援するための団体、財団法人など

多様化している寄付の主な種類

寄付の種類については、主に以下のようなものがあります。
<寄付の対象となる資産の種類>
1. 金銭資産の寄付

多くの人がイメージしやすいのが金銭の寄付です。
昔ながらの募金箱や銀行振込といった手段だけでなく、クレジットカードや電子マネーなどでも可能です。また、貯まった各種ポイントの使い道として寄付ができたり、特定商品を購入することで売上の一部が寄付されたりする形も増加傾向です。

2. 不動産などの寄付

土地や建物、金券などの財産を寄付することも可能です。

3. 物品の寄付

食品や衣料品、日用品、医療関連品などの寄付があります。受け入れをしていない団体や、受け入れの要件(賞味期限や未使用品に限るなど)があるため、事前の確認が必要です。

4. 労働力(ボランティア・プロボノ)の寄付

ボランティアも「自身の労働力を提供する」という意味で寄付の一つといえるでしょう。プロボノとは、これまで仕事で培ったスキルや経験を生かす社会貢献活動です。例えばWebサイト制作を仕事としている人がNPO法人のWebサイト作成を行うなど、近年注目が高まっています。

<寄付形式の種類>
1. 募金箱などによる寄付

商業施設やコンビニなどに設置されている募金箱などに金銭の寄付を行うものです。

2. 各種団体への申込等による寄付

各寄付団体のHPや各種クレジットカード・ポイントカードサイトなどから申込を行い、銀行振込、不動産の寄付、物品の寄付、ポイント利用などで寄付を行うものです。

3. ふるさと納税

自身の故郷など、応援したい自治体に寄付できる制度で、その際に付随物として返礼品をもらえるケースが一般的です。

4. 寄付型クラウドファンディング

寄付先の団体などがクラウドファンディングサイトを活用し、社会問題解決のために寄付金を集めるものです。通常のクラウドファンディングであれば、資金提供した支援者へサービスや商品などの還元がありますが、寄付型クラウドファンディングは、サービスなどの還元はありません。

5. 特定寄付信託・生命保険信託による寄付

信託とは、自身の財産を信頼できる人に託し、管理・運用を任せる制度です。寄付先は、信託銀行がリストにした団体から選ぶため、「信託銀行が選定している」という安心感があります。また、きちんと目的に沿った運用や管理をしてもらえる点がメリットです。生命保険信託は、死亡保険金を自身で決めた人に管理・譲渡する信託です。

6. 遺贈・相続財産の寄付

遺言で特定団体へ財産を無償で譲渡することを遺贈と言います。生前の自身の意思に基づき、遺産を寄付することが可能です。遺贈には、以下2つの方法があります。

  • ・包括遺贈:「遺産のすべてを遺贈する」など、遺産の全部または一定の割合を指定して遺贈を行う方法
  • ・特定遺贈:「遺産のうち預金500万円を遺贈する」など、具体的に対象を指定して遺贈を行う方法
また相続した人は、相続税の申告期限までに、相続で受け取った財産を、特定団体(国、地方公共団体、認定NPO法人など)へ寄付することで、その財産を相続税の対象外にできる場合があります。
銀行・信託・証券の専門チームがサポート
  1. お問い合わせ・ご相談はスパイラル株式会社が運営するサイトにて受け付けております。

寄付金はどのように使われるのか

一般的な寄付金の使い道としては、災害支援や環境問題対策、教育支援、地域支援などを目的としたものが多い傾向です。
ここでは、具体的な寄付団体がどのように寄付を活用しているかについて紹介します。
・公益財団法人山田進太郎D&I財団
株式会社メルカリを創業した山田進太郎氏が2021年に設立した法人です。
財団の目的は「D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)を推進することで、ジェンダー・人種・年齢・宗教などに関わらず、誰もが自身の能力を最大限に発揮できる社会の実現へ寄与する」としています。

同財団の活動は「STEM(理系)女子奨学助成金」という理系選択を応援する、返済不要の奨学金として高校生女子への支援を行っているほか、2024年より「Girls Meet STEM」事業を開始し、企業でのオフィスツアーや大学・高専でのキャンパス・研究室ツアーを通じて、STEM領域で活躍するロールモデルとの交流機会を提供しています。
(参照:公益財団法人山田進太郎 D&I 財団ホームページ https://www.shinfdn.org/)

・認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ
全国で広がりを見せる「こども食堂」(子どもが一人でも行ける無料または低額の食堂)を支援する法人です。社会活動家で東京大学特任教授の湯浅誠氏が2018年に設立し、2021年に認定NPO法人を取得しており、以下のような活動を行っています。
むすびえは、各地域のこども食堂ネットワーク(中間支援団体)がより活動しやすくなるための後押しをしています。こども食堂を応援してくれる企業・団体とこども食堂をつなぐほか、こども食堂の意義や実態を伝え、理解を広げるための調査・研究などを行っています。


(引用:認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえホームページより)

なおここで紹介した団体は、あくまでも一例となるため、紹介した団体への寄付を推奨しているわけではありません。寄付するかどうかは、ご自身の判断で行いましょう。

寄付をすることで受けられる控除(寄付金控除)について

寄付は、見返りなく社会貢献として行うものですが、特定団体へ寄付することで、確定申告を行えば「寄付金控除」と呼ばれる税制上の優遇措置を受けることができます。

寄付金控除の仕組み

国や地方公共団体、特定公益増進法人などの特定条件を満たす団体への寄付(特定寄付金)をした場合、確定申告を行うことで所得税については所得控除を受けることができます。なお、一定の要件を満たす認定NPO法人や公益社団法人などに対する寄付金については、この所得控除に代えて、税額控除を選択することも可能です。また、個人住民税においては、一定の団体などに対して行った寄付金について、税額控除を受けることができます。
(参照:国税庁「パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版) 寄附金を支出したとき」)

【所得税について】

寄付金控除は、所得税の場合、所得控除と税額控除という仕組みがあります。簡単に説明すると以下のとおりです。

  • ・所得控除:税率を乗じる前の所得から一定金額を控除する仕組み
  • ・税額控除:所得税額から一定金額を控除する仕組み
 
税額控除の対象となる寄付先の団体は、政治資金団体や政党、学校法人・公益財団法人・公益社団法人、認定NPO法人などに限定されています。また所得控除と税額控除は、納税者がいずれか有利なほうを選択可能です。

・所得税に関する寄付金控除(所得控除)の計算方法

寄付金控除額=(その年に支出した特定寄付金額(※1))-(2,000円)
※1)総所得金額等の40%が上限

・所得税に関する寄付金の税額控除の計算方法

税額控除額(※1)=(その年に支出した寄付金額(※2)-2,000円)×30~40%(※3)
※1)税額控除額には一定の限度額が定められています
※2)総所得金額等の40%が上限
※3)寄付をする対象や条件によって異なる

【住民税について】

寄付金による住民税の控除は、主にふるさと納税、その他地方自治体が条例で指定した寄付金、住所地の都道府県共同募金会や日本赤十字社支部に寄付した場合になります。住民税の控除には、基本分と特例分があり、特例分はふるさと納税のみが適用対象です。

・住民税の基本分に関する計算方法

基本控除額=(寄付金(※1)-2,000円)×10%(※2)
※1)総所得金額等の30%が上限
※2)「都道府県・市区町村が条例で指定する寄附金」の場合は、率が異なる場合あり

・住民税の特例分に関する計算方法

特例控除額(※1)=(寄付金額-2,000円)×(90%-所得税率×1.021)
※1)住民税所得割額の20%が上限

ふるさと納税と他の寄付金の違い

ふるさと納税は、他の寄付金と異なり住民税の特例控除がある点が大きな違いです 。また返礼品がもらえる点も違いといえます。
ふるさと納税と他の寄付金の違い

まとめ

ここまで寄付について解説してきました。寄付金控除については、対象となる寄付なのか確認することも大切です。また年収などで寄付金の上限額も変わってくるため、事前に税理士などの専門家にご相談ください。
記事提供:株式会社ZUU
執筆者:風間啓哉(風間会計事務所代表 公認会計士 / 税理士)
  1. 本記事は、2025年4月時点の税制、その他関連法規に基づく内容であり、今後の改正等により相違が生じることがあります。税法や法律に関わる個別、具体的なご対応は必ず税理士・公認会計士・弁護士等の専門家へご相談・ご確認ください。
  2. 本記事は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。商品の購入時にはお客さまご自身でご判断ください。
  3. 本記事の情報は、当行が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本記事の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答えしかねますので予めご了承ください。また、本記事の記載内容は、予告なしに変更することがあります。
(2025年4月3日現在)
株式会社三菱UFJ銀行

登録金融機関 関東財務局長(登金)第5号

加入協会 日本証券業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会

三菱UFJ信託銀行株式会社

登録金融機関 関東財務局長(登金)第33号

加入協会 日本証券業協会 、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会

宅地建物取引業 届出第6号

三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社

金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第2336号

加入協会 日本証券業協会、一般社団法人 日本投資顧問業協会、一般社団法人 金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会、一般社団法人 日本STO協会