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M&Aによる株式や事業譲渡に関する税金 について解説 大きなお金を手にしたときの有意義な使い道、資産運用の方法は?
M&Aによる株式や事業譲渡に関する税金 について解説 大きなお金を手にしたときの有意義な使い道、資産運用の方法は?

M&Aによる株式や事業譲渡に関する税金について解説 大きなお金を手にしたときの有意義な使い道、資産運用の方法は?

M&Aで株式や事業譲渡をすると大きなお金が手に入りますが、役員報酬など定期的に得ていた収入は減る可能性があります。ライフステージが変わったときには、新たな人生の目標(ゴール)の設定も必要でしょう。
本記事では、M&Aでの株式や事業の譲渡にかかる税金や、M&Aでえた大きなお金の有意義な使い道、資産運用の方法について解説します。
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M&Aで株式譲渡・事業譲渡してかかる税金の種類

M&Aで株式譲渡や事業譲渡したときにかかる税金について解説します。下表の通り、個人と法人で税金区分と税率が異なります。
<個人と法人がM&Aで株式譲渡・事業譲渡をした場合の譲渡益に対する課税の取扱い>
  個人 法人
株式譲渡 所得税15.315%
住民税5%
法人税等 (実効税率 約30~34%)
事業譲渡 個々の資産の譲渡として、 それぞれに対応する課税方法が適用される。 法人税等 (実効税率 約30~34%)
(出典:国税庁「No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」財務省「法人課税に関する基本的な資料」をもとに作成)
オーナー経営者がM&Aで株式譲渡したときは、表左側の株式譲渡(個人)です。譲渡所得の金額に対して税率20.315%が分離課税されます(2024年1月26日現在)。
税率の内訳は、所得税15.315%(含む復興特別税0.315%)と住民税5%です。税額計算のベースになる譲渡所得は、譲渡価格から必要経費を差し引いて計算します。必要経費のなかには、株の取得費以外に委託手数料も含まれます。

個人の株式譲渡でかかる税金は一律20.315%

オーナー経営者の場合、会社設立時から株式を保有していることが多く、かなり低い株価の場合があります。もっとも、M&Aをされるような会社は、業績が堅調で今後の伸びも期待できるため、売却時の株価が高くなる傾向です。
例えば、譲渡価格1億1,000万円、必要経費が1,000万円の場合、譲渡所得は1億円(1億1,000万円-1,000万円)です。納める税金は、譲渡所得の1億円に税率20.315%を掛けた2,031万5,000円になります。

個人の株式譲渡でかかる税金は累進課税ではなく、金額にかかわらず一律で20.315%となります。譲渡所得が3億円の場合は、6,094万5,000円、5億円の場合は1億157万5,000円です。納税資金は、現金で確実に準備しておくことが求められます。

なお、2025年度より、極めて高い水準の所得に対する課税強化が施行されます。これにより一定の高所得者については実質的に20.315%を超える税負担が生じる可能性があります。

ポートフォリオ見直しの重要性

M&Aによる株式譲渡を行うことで多額の現金資産を手にできる可能性があります。しかし会社を売却したことで受け取っていた役員報酬などのフロー収入が減少してしまう可能性もあります。新たな目標として、まずはM&Aでふえた資金(現金)を活用してフロー収入の減少をカバーするような資産運用をめざすのが良いでしょう。
そこで必要になるのがポートフォリオの見直しです。金融資産での資産運用のほか、定期的な家賃収入が見込める不動産投資などで新たなフロー収入を確保するのも一つの方法です。
また、ここ近年の物価高を肌で感じているかたも多いと思いますが、物価高により日々、資産は目減りしていきます。
仮に20年間、毎年2%の物価上昇が続いたとしましょう。タンス預金していた1,000万円は、20年後には約670万円の実質価値にまで目減りする可能性があるのです。こうした資産の目減りを避けるためには、インフレ対策をする必要があります。一般的に、インフレに強いといわれる資産が以下です。
  • 株式
  • 不動産
  • 貴金属
  • 外貨建資産 など
ここでは、株式と不動産がインフレに強い理由について説明しましょう。
株式がインフレに強い理由は、物価が上がると企業の売上も上がる傾向にあり、その結果業績が上がってその企業の株価上昇も期待できるというものです。次に不動産ですが、物価が上がるということは不動産の資産価値も上がるということです。そのため、購入価格よりも高く売ることができればキャピタルゲインが期待できます。
ポートフォリオを見直すタイミングで、上記のインフレに強い資産をポートフォリオに組み込んでおくのも良いでしょう。いずれにしろ大切なのは、資産を減らさないように運用することです。

資産を減らさないための資産運用を

M&Aでえた譲渡益をまもり、ふやす運用方法として配当や値上がりが期待できる資産に投資をする方法も選択肢の一つです。運用先としては、以下のようなさまざまなものがあります。
    • 株式投資
    • 投資信託
    • 個人向け国債
    • J-REIT(不動産投資信託) など
M&Aでえた多額の現金を上記のような方法で一括投資すると、どれくらいの収益が期待できるのでしょうか? 次の章で具体的なシミュレーションを交えて説明します。
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「一括投資」のメリット・デメリットと「複利運用」

M&Aで大きなお金が入ると、気持ちに余裕が生まれてつい目先の消費を優先してしまいがちです。趣味として購入した絵画やワイン、時計などであれば将来的に価値が上がるものもありますが、単純な消費は資産を減らすことにつながります。一方で投資は、将来の目標やイベントを実現するために必要なお金を作るために行うものです。
大きなお金を手にしたときは、それにあわせて将来の目標設定をしておくことで投資することの目的がはっきりし、消費を抑えることができるでしょう。またM&Aで大きなお金が入ってきたときに毎月定期的に積み立てをしながら資産をふやすような運用ではなく、場合によっては一括で大きなお金を投資する方法もあるでしょう。もっとも、リスク面を考えると上述した分散投資はとても重要です。
大きな資金による一括投資のメリットは、無理をして高いリターンをめざさなくても良い点です。投資は「ハイリスク・ハイリターン」といわれるように高いリターンをめざすとそれに比例してリスクも高くなります。
たとえば、3億円の資産を年率3%の単利で運用すると年に900万円のリターンがえられます。もし資産5,000万円で900万円のリターンをえようとすると年率18%での運用が必要になります。大きな資金による一括投資は、元手が大きいためローリスク・ローリターンの運用でも一定のリターンが期待できます。
また複利運用するとより効率的に資産をふやすことが期待できるでしょう。下表は、資産3億円を2%と3%で複利運用したシミュレーションです。
期間 利回り2% 利回り3% 利回り5%
元本300,000,000円
1年後 306,000,000円 309,000,000円 315,000,000円
2年後 312,120,000円 318,270,000円 330,750,000円
3年後 318,362,400円 327,818,100円 347,287,500円
4年後 324,729,648円 337,652,643円 364,651,875円
5年後 331,224,241円 347,782,222円 382,884,469円
6年後 337,848,726円 358,215,689円 402,028,692円
7年後 344,605,700円 368,962,160円 422,130,127円
8年後 351,497,814円 380,031,024円 443,236,633円
9年後 358,527,771円 391,431,955円 465,398,465円
10年後 365,698,326円 403,174,914円 488,668,388円
年利3%で10年複利運用すると、元本より約1億円資産がふえています。
ただし一括投資にもデメリットはあります。一括投資をしたあとに景気悪化などで投資した資産が長期的に下落し、資産が減少するリスクがある点には注意しましょう。そういったリスクを軽減するための投資方法が「分散投資」です。
たとえば、1つの会社の株式に全額投資して、その会社が万が一倒産した場合は投資資金が0円になってしまう可能性があります。複数の会社の株に分けて投資をすることで1つの会社が倒産したり株価が大きく値下がりしたりしたとしても、他の株で損失を抑えることが期待できます。
主な分散投資の方法は、金融庁が掲載している下図の「資産(銘柄)の分散」「地域の分散」「時間(時期)の分散」の3つです。
分散投資の例
分散投資の例
(出典:金融庁「分散投資」より)

1.資産の分散

景気や金利の状況に対してそれぞれに別の動きをする株式や債券、REITなどに投資をすることで全体として資産の変動を抑えながらふやしていくことが期待できる投資方法です。

2.地域の分散

国や地域によって好不況の時期が異なることを利用した方法です。

3.時間(時期)の分散

投資信託や株など値動きを予想できない資産に対して、時期を分けて投資する方法です。これにより平均購入単価を抑えながらの資産の増加が期待できます(ドル・コスト平均法)。

金融資産運用以外の有意義な活用方法

ここまで金融資産運用について解説してきましたが、M&Aによる譲渡益の活用方法として金融資産運用以外ではどのような方法が考えられるのでしょうか。
たとえば、現物資産として不動産に投資するのも1つの方法です。いわゆる「不動産投資」です。不動産投資とは、賃貸物件を購入し、それを第三者の入居者に貸し出して賃料収入をえる、または購入した物件を売却して利益をえるという投資方法です。
入居者がいる間は定期的な収入が期待できるため、株式譲渡によって減ってしまったキャッシュフローを補う収入源になりうるでしょう。一方で、入居者がいないと収入減になったり、物件の維持管理にコストが発生したり、物件が古くなると賃料が低下したりといったリスクがあります。
また、株式や投資信託などでは投資目的での融資は受けられませんが、不動産投資は融資を受けて投資することが可能です。融資を受けることで自己資金以上の物件を購入でき、レバレッジ効果(てこの原理)によって投資効率が高まるのが大きな特徴です。ローンを活用しても、基本的には賃料収入が返済原資となるため、自分の資産から支払う可能性を抑えられる点も不動産投資ならではのメリットといえるでしょう。
そのほかの新たなお金の使い道として、社会貢献なども考えられます。たとえば、スタートアップ企業に出資する「エンジェル投資」といわれる方法があります。創業して間もない段階でも企業理念に共感したり、行っている事業に将来性を感じたりして応援するというのがエンジェル投資の目的です。
欧米では浸透している投資方法で、多くのエンジェル投資家がいます。日本でもスタートアップ企業が次々と誕生していることから、多くのエンジェル投資家が生まれるのではないでしょうか。今までの経営者としての経験・知見を活かして、新しいビジネスやイノベーションを支援することで、日本経済に貢献し、個人の資産形成につなげることもできるでしょう。

まとめ

本記事では、M&A売却時の税金とえたお金の有意義な使い方として資産運用や資産形成について説明しました。M&Aで大きなお金を手にしたとき、ライフステージが変化し新たな目標設定が必要です。またお金の管理や運用の見直しの時期でもあります。
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記事提供:株式会社ZUU
執筆者:恩田雅之(オンダFP事務所代表 CFP®)
  1. 本記事は、2024年2月時点の税制、その他関連法規に基づく内容であり、今後の改正等により相違が生じることがあります。税法や法律に関わる個別、具体的なご対応は必ず税理士・公認会計士・弁護士等の専門家へご相談・ご確認ください。
  2. 本記事は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。商品の購入時にはお客さまご自身でご判断ください。
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(2024年3月19日現在)
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