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社会貢献活動とは何か? 富裕層が注目する社会貢献活動のための「財団設立」とその魅力
社会貢献活動とは何か? 富裕層が注目する社会貢献活動のための「財団設立」とその魅力

社会貢献活動とは? 活動例や富裕層が注目する「財団設立」の魅力を解説

社会貢献活動とは、その名の通り「社会」のために役立つことを行い、その社会の発展や継続に「貢献」する活動のことを指します。一般論として、富裕層になればなるほど社会貢献活動への興味関心は高まるといわれており、特に、まとまった資金を動かせる資産家の間では、財団設立を通じて、社会に貢献するケースも見受けられます。
本コラムでは、富裕層が社会貢献活動に興味を持つ理由、社会貢献活動の種類、「財団設立」という社会貢献活動のあり方などを紹介します。
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富裕層が社会貢献活動に興味を持つ理由

前述のとおり、「富裕層ほど社会貢献活動への興味関心は高く、自分の資産を次世代へつなぎ、世の中へ還元することに関心を持つ人が多い」といわれています。なぜ富裕層は社会貢献活動に興味を持つことが多いのでしょうか。考えられる3つの理由について解説していきます。

1. 「SDGs(持続可能な開発目標)」の関心の高まり

第一に「SDGs(持続可能な開発目標)」の関心が高まっていることが挙げられます。内閣府が2023年に行った調査「SDGsに関する全国アンケート調査5年度比較」によると、「SDGsを推進している」と回答した自治体の割合は年々増加し、2022年度には57.7%に達しています。
SDGsとは、2030年に向けて持続可能な世界をめざすための国際目標です。貧困や飢餓、教育、気候変動、不平等といった問題を解決するべく、世界中の組織・企業でSDGsの取り組みが進んでおり、富裕層が社会貢献活動に注目するきっかけの1つとなっているものと思われます。

2. 「格差社会の拡大」の危惧

第二に「格差社会の拡大」の危惧という点もあるかもしれません。厚生労働省が2021年に行った「所得再分配調査」によると、所得格差を表す「ジニ係数」は当初所得で0.57と高い数値となっています。これは、所得格差が過去最大であった2014年に次ぐ水準です。
資本主義である以上、一定の格差が生じるのは避けられない場合もありますが、あまりにも拡大することは、社会全体にとって望ましいことでありません。
こうした状況に対し、欧米の富裕層はかねてより多額の寄付などの社会貢献活動を行っており、この習慣が国内の富裕層にも影響を与えているといわれています。

3. 「生きがい」や「社会的つながり」の創出

第三に「生きがい」や「社会的つながり」の創出ニーズが考えられます。世界的に知られている心理学者、マズローの欲求5段階説によると、生理的欲求、安全欲求、社会的欲求が満たされると、承認欲求(他人から認められたい願望)や自己実現欲求(あるべき自分になりたい願望)が強くなるとされています。「生きがい」という点において、社会貢献活動はこの2つの欲求を満たしてくれる活動といえるかもしれません。
また、国立長寿医療研究センターが2017年に実施した調査によると、「社会的つながり」が多いと認知症リスクが46%低下するというデータもあることから、高齢となった富裕層が「社会的つながり」を創出するために社会貢献をするケースも想定されます。

社会貢献活動の3つの種類

社会貢献活動は、主に以下の3つの種類に大別されます。

(1)人的支援

「人的支援」とは、社会貢献活動を行うにあたって必要な人材(マンパワー)を提供する支援です。災害支援活動にたとえると、現場で実際に作業する人の派遣や、作業員のサポートをすることに該当します。

(2)物的支援

「物的支援」とは、社会貢献を行うにあたって必要な機材、設備、技術、サービス、スキルなどを提供する支援です。災害支援活動にたとえると、水や食料の支援物資や、災害現場で稼働する機材、その機材を動かすためのマニュアルなどを提供することを指します。

(3)資金的支援

「資金的支援」とは、社会貢献を行うにあたって必要な資金を提供する支援です。

資金的支援はほとんどの場合、社会貢献団体やNPO法人などに資金を提供することによる支援となるため、間接的な社会貢献活動であるともいえます。災害救助活動でいえば、災害救助基金への寄付などが該当します。

社会貢献活動の例

社会貢献活動の主な種類と具体例を一覧表にまとめてみました。
社会貢献活動の種類 具体例
環境保護活動
  • ビーチクリーン(海岸のゴミを拾う)
  • 森林ボランティア(森林の整備や保全、啓発)
文化保護活動
  • 若手芸術家や若手アーティストへの支援
  • 地域の伝統文化の保護や継承
災害支援活動
  • 被災地での復旧ボランティア
  • 必要物資の送付
児童支援活動
  • 子ども食堂の実施(子どもたちに温かい食事を提供する)
  • フリースクールや児童館での活動(放課後に居場所を作り、遊び相手になる)
教育支援活動
  • 学習支援(子供たちに勉強を教える)
  • 部活動の指導
  • 登下校の安全確保
この他にも、さまざまな社会貢献活動がありますが、ここではその一例をご紹介しました。
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「財団設立」という社会貢献活動のあり方

まとまった資金を動かすことができる富裕層であれば、財団(財団法人)を設立することによって、自分らしい社会貢献活動を行うことも可能です。
自分自身が現場に赴いて人的支援をすれば、自分の想いを直接体現することはできますが、一人で支援できる範囲には限界があります。また、物的支援や資金的支援では、その物資や資金がどのように使われるのか、自分でコントロールすることはできません。そこで財団法人を設立し、支援体制の組織を整えることで、自分らしい社会貢献活動を実現することができます。
実際に、多くの富裕層が財団を設立し、美術館運営や福祉事業、文化活動の推進など、それぞれの想いが込められた社会貢献活動が行われています。このような財団法人は、「一般財団法人」と「公益財団法人」の2つの種類に大別されます。

一般財団法人とは?

一般財団法人とは、2008年12月1日に施行された「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」に基づいて設立された財団法人のことを指します。一般財団法人は、設立の登記によって成立し、具体的には、以下のような手続きを経る必要があります。
一般財団法人の主な設立手続き
  • 定款を作成し、公証人の認証を受ける
  • 設立者が財産(300万円以上)の拠出を行う
  • 定款の定めに従い、設立時評議員や設立時理事、設立時監事などの選任を行う
なお、一般財団法人は「財産」の運用を目的とする法人なので、必ず300万円以上を拠出する必要がありますが、一般社団法人は「人」が集まって活動することを目的とする法人なので資金の拠出は必要ありません。一般社団法人も一般財団法人と同様に、設立の登記によって成立します。
一般財団法人、一般社団法人ともに、事業内容に制限はありません。社会貢献活動といった公益事業はもちろん、町内会や同窓会のように「構成員に共通する利益を図ること」を目的として活動しても問題ありません。

公益財団法人とは?

公益財団法人とは、簡単にいえば「事業の公益性が行政庁から認められた財団法人」です。具体的には、一般社団法人、一般財団法人のうち、民間有識者からなる第三者委員会による公益性の審査(公益目的事業を行うことを主たる目的とすることなど)を経て、行政庁(内閣府または都道府県)から公益認定を受けることで、公益財団法人になることができます。
ただし、申請すればどの一般社団法人、一般財団法人でも公益財団法人になれるわけではありません。公益認定では、公益認定基準18項目に照らし合わせて、その法人が公益財団法人の名にふさわしいのかが審査されます。

財団法人を設立するメリット・デメリット

一般財団法人、公益財団法人の共通のメリット、そして個別のメリットとデメリットを紹介します。
一般財団法人・公益財団法人のメリットとデメリット
  一般財団法人 公益財団法人
共通点
(メリット)
  • 実施したい社会貢献を自分の思うように具現化できる(少なくとも具現化しやすい)
  • 個人活動より信頼性が高く、賛同が集まりやすい
  • 組織化することで、自分が働けなくなったり、亡くなったりした後も活動を継続できる可能性が高まる
  • 法人格を取得することで財産の登記や登録が可能になったり、取引関係に立つ第三者の保護を図ったりすることができる
メリット
  • 公益事業だけではなく、基本的にどのような事業でも行える
  • 公益認定が不要で、設立基準を満たせば設立できる
  • 非営利型の要件を満たせば、収益事業のみに課税される
  • 公益性のある事業により、大きな社会的信頼をえることができる
  • 税務上の優遇措置を受けることができる
デメリット
  • 税務上は普通法人として取り扱われ、全ての所得が課税対象となる(非営利型を除く)
  • 行政庁の指導監督下に置かれる(そのため運営コストも上がる)
  • 事業活動が制約される(原則として公益目的事業しかできない)

富裕層が社会貢献活動を行う意義

豊富な資金力や人脈を持っていることが多い富裕層が積極的に社会貢献活動を行うことで、より良い社会を実現できる可能性が高まります。SDGsの実践、格差の是正など、昨今の世界的な社会問題の解決に向け具体的に行動することで、社会の変革を実感することもできるため、富裕層にとって社会貢献活動を行う意義は大きいといえます。
前述のとおり、社会貢献活動にはさまざまな種類があります。その中でも、富裕層ならではの社会貢献活動の選択肢の1つが「財団設立」です。財団法人を設立することで、自分の想いが込められた社会貢献活動を具現化し、その想いが後世へと永続する「仕組み」を作ることができます。
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記事提供:菅野陽平(ファイナンシャル・プランナー)
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(2024年2月26日現在)
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