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資産承継で信託を活用、安全に無理なく資産を引き継ぐために
資産承継で信託を活用、安全に無理なく資産を引き継ぐために

資産承継で信託を活用 安全に無理なく資産を引き継ぐために

相続を考える際に一番気になるのは、どのように資産を引き継げば良いか、相続税の支払いはどうすれば良いか、でしょう。その対応例の一つに信託を活用する方法があります。

資産承継とは

資産承継において「信託」を利用することとは、どのようなことなのでしょうか。まずは、「資産承継」や「信託」について説明します。

資産承継とは資産を次世代に引き継ぐこと

資産承継とは親や祖父母の世代が持つ資産を子どもや孫などに移転することを指します。

移転方法は贈与か相続のいずれか、あるいは両方を組み合わせる形があります。

資産承継の3つの対策

資産承継を進めるにあたっては、「どう分割するか」、「納税資金をどう確保するか」、「どの資産を相続するのか、贈与するのか、売却するのか」の3つの対策を行う必要があります。

1.どう分割するか

まずは資産を持っている者自身が、どの資産を誰に移すかを考えることが必要になります。
子どもや孫にとって、資産をどれだけ受け取ることができるかは大きな関心事です。できれば多く受け取りたい、少なくとも他の人と遜色なく受け取りたい、というのは大半の人が思うことでしょう。
しかし、受け渡す側にも誰にどう資産を渡すかといった考えがあるもの。それを実行に移す上で、確かな方法は遺言状を残して自らの意思を伝えることです。
遺言状に残しておくことによって、法定相続人はもちろんのこと、そうではない知人などお世話になった方に資産の一部を渡したい場合、あるいは相続財産から寄付を行いたい場合も、その意思を記載しておくことができます。

2.納税資金をどう確保するか

資産承継において課題となるのは納税資金の確保です。相続であっても贈与であっても、資産の移転には税金が課せられます。

相続の場合は将来発生しうる相続に備えて相続税の算定を行い、贈与の場合は贈与の実行のために必要な税金を前もって計算しておく必要があります。その上で、税金の支払い資金を作らなければなりません。

相続では納税資金が前もっていくらになるかを見積もり、資金確保に向けて動く必要があります。相続税は相続発生から10カ月以内に申告・納付を済ませなければならず、原則として現金での一括納入となります。例えば相続したものが不動産である場合、相続から10カ月以内にその不動産を現金化できるとは限りません。納税資金を確保できず、相続人が自らの資産を切り崩さなければならないケースも出てきます。そうした事態を避けるためにも、事前に納税資金を確保する必要があります。

また、現預金などが相続できなかったり、上場株式など換金性の高い資産がありながら追加の税金を支払うための現預金を確保ができなかったりする場合には、被相続人が生命保険に入っておき、相続人を受取人に指名することで納税する手段もあります。

一方、贈与の場合は、あらかじめ税金の計算をすることによって納税額を見積もり、納税資金を確保できるようであれば、大きな負担を感じることなく贈与を行うことが可能となります。

3.どの資産を相続するのか、贈与するのか、売却するのか

今手元にある資産をどうするか決めていくことも資産承継の重要な対策の一つです。

相続税は累進課税によって税額が決まるため、相続財産が増えれば増えるほど税額は大きくなります。資産を上手に受け渡したり、管理したりせず、そのまま置いておくと、相続時に多額の相続税を支払わなければならなくなる可能性があります。

そうならないように、手持ちの資産を、手元に残して相続に回すもの、贈与するもの、売却して資金化し、贈与税や相続税の納税資金にするものと3つに分類しておくことが大切です。

資産承継のための信託

分割や見直しの方法としての信託

資産承継のために利用できるものの一つに信託があります。

「信託」とは自分自身の資産を信頼できる人に委託し、自分が決めたとおりに管理・運用してもらうことをいいます。信託は以下の3者からなります。
委託者:資産を預ける人
受託者:資産を預かり、管理・運用する人
受益者:運用の結果得られた利益を得る人

贈与や相続も信託の仕組みを利用することができます。以下、さまざまな信託の仕組みを説明します。

教育資金贈与信託

通常、贈与する場合は年間110万円までしか無税になりません。しかし、教育資金に限っては一括で贈与した場合、一定の要件を満たせば1,500万円まで贈与税が非課税となる「教育資金の一括贈与に係る非課税制度」を活用した信託があります。

これは令和5年(2023年)3月31日までに信託契約を結んでおき、信託を通じて子どもや孫(受益者)に教育目的で使われる資金を贈与した場合、贈与税が非課税となるというものです。

なお、教育資金の支払いは信託財産から引き出すことによって行われます。手続きは、ほとんどの場合、受益者(未成年の場合は親権者)が立て替えた後に領収書などを受託者に提出することによって完結します。

結婚・子育て支援信託

上記のほかに贈与目的の信託でよく知られるものとして、一定の要件を満たせば、1,000万円を限度に贈与税が非課税となる「結婚・子育て資金の一括贈与に係る非課税制度」を活用した信託があります。

これは子どもや孫が結婚や出産・育児を行うための費用において、1,000万円を限度(結婚に際して支出する費用については300万円を限度)に信託を通じて贈与すれば贈与税が非課税となるというものです。

こちらも引き出しに際して、受託者が結婚や出産・育児目的の費用であることを確認して出金が行われます。

遺言代用信託

亡くなった後に財産を意図した人物に移転する方法として遺言があります。しかし、遺言状の内容どおりに財産が移転するかといえば、そうはならないこともあります。

そこで、遺言代用信託を利用する方法があります。これは信託を設定する時に当初、受益者を本人とし、本人の相続が発生した後は受益者を相続させたい相手にすることによって、遺言状などがなくても相続を行うことが可能となります。

後継ぎ遺贈型の受益者連続信託

資産を渡す側は、相続させた資産を、その次に誰に相続させるか指定することができません。例えば、本人が持っている土地について本人の相続時は配偶者に指定し、配偶者の相続時は子に相続させることを、本人の遺言状ではできないのです。

しかし、後継ぎ遺贈型の受益者連続信託は、次の次に資産を相続する人を実質的に決めることができる信託です。

具体的には、信託の設定の際に、まず、本人が受益者となり、本人が亡くなった後に次の受益者となる人と、その人が亡くなった時に3番目の受益者となる人を設定しておきます。こうした段取りによって、誰に資産を移すのかをあらかじめ決めることができるようになります。

事業承継信託

会社経営者にとって最大の関心事は、いかに自社株式をスムーズに移すことができるかでしょう。それを実現する方法として、事業承継信託があります。
信託の内容はさまざまで、会社経営者がどのように事業承継したいかによって信託契約の内容を変えられます。その方法の一つに、前述した遺言代用信託の仕組みを利用して、意中の人物に相続時に株式を渡す方法があります。

なお、信託の内容の設定は、信託銀行などと相談することで、株式の移動や税金の支払いなどについてスムーズに行うことができるようになります。

また、この信託の最大のメリットは、経営者自身が認知症などによって判断能力が低下した場合であっても信託銀行などに管理を委ねるなどの対応ができ、不測の事態に備えられることです。

生命保険信託

亡くなった時に支払われる生命保険について、通常は全額を一括で受け取るところ、信託を利用して分割して受け取るなどの財産管理を行うこともできます。

利用方法として、例えば資産管理能力のない子どもを保険金の受取人にした際に、一括で受け取る形ではなく、毎月いくらまで支払うといった具合に分割することができます。

また、受取人が亡くなるなど一定の条件を満たした場合などは別の人が受け取れるようにしたり、慈善団体に寄付するなど先を見据えた設定をしたりすることも可能です。

遺言信託

信託できるものは資産や財産の類だけではありません。亡くなった方が残した財産をどうするかについて指示する遺言状も信託の対象になります。

相続人同士の争いを起こりにくくする方法として、遺言状の活用が挙げられます。しかし、その遺言状については作成から保管、内容の実行に至るまで手順が煩雑で、専門的な知識が必要になることもあります。

そこで、信託銀行などでは、信託を通じてそれらの一連の手続きを行うなど、さまざまなサポートをしています。
信託を利用する際は、弁護士、司法書士などの専門家に相談しながら、それぞれの特徴を把握して比較、検討を重ね、自分に合ったものを慎重に選ぶようにしましょう。
自身の資産を次の世代に移すための資産承継には、さまざまな問題が内包されています。しかし、信託を使うことによって解決につながるケースも多々あります。一つの選択肢として、各金融機関などに相談しながら、信託を利用した資産承継を検討してみてはいかがでしょうか。
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記事提供:株式会社ZUU
執筆者:中川 崇(公認会計士・税理士)
  1. 本記事は、2022年5月時点の税制、その他関連法規に基づく内容であり、今後の改正等により相違が生じることがあります。本記事は情報提供を目的としており、投資等の勧誘目的で作成したものではありません。商品の購入時にはお客さまご自身でご判断ください。本記事は、当行が信頼できると判断した外部執筆者に執筆を依頼したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本記事の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答えしかねますので予めご了承ください。また、本記事の記載内容は、予告なしに変更することがあります。銀行からの融資には所定の審査があります。審査の結果、ご希望に沿いかねる場合があります。遺言信託や遺産整理業務等の相続関連業務については、当行は三菱UFJ信託銀行の信託代理店としてお取り扱いいたします。当行は信託代理店として媒介をいたしますが、当行には、契約締結に関する権限はなく、ご契約に際しては、お客さまと三菱UFJ信託銀行が契約当事者となります。本記事でご紹介した信託商品は、三菱UFJ信託銀行でお取り扱いしていない商品も含まれます。希望する信託商品の有無については各金融機関にお問い合わせください。
(2022年5月31日現在)

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