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「事業承継のプロフェッショナル集団」資本戦略推進室が担う、親族内承継の役割とは?
「事業承継のプロフェッショナル集団」資本戦略推進室が担う、親族内承継の役割とは?
【第1回 親族内承継インタビュー】

「事業承継のプロフェッショナル集団」資本戦略推進室が担う、親族内承継の役割とは?

経営者の悩める事業承継の問題をどう解決していくのか?三菱UFJ銀行では、「親族内承継」と「親族外承継」を一体で推進する「資本戦略推進室」と、親族外承継(M&A)を専門で推進する「M&A戦略室」「財務開発室」という3つの部署によって、資本ビジネスの強固な推進体制を構築しています。
今回は、主に「親族内承継」における資本戦略推進室の体制やサービスの特徴、強みなどに関し、西村雅司 シニアフェロー 部長兼資本戦略推進室長(写真右)と、松本裕治 次長(写真左)に話を聞きました。
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事業承継の実情と、資本戦略推進室が担う役割

―中小企業のオーナー経営者にとって、事業承継の問題は他人事ではないと言われていますが、実際にはどうなのでしょうか?
西村 日本国内に存在する全337万社の99%以上を占める中小企業は日本経済を支える存在ですが、その90%以上は同族企業であると言われています。そして、2025年に年齢が70歳を超える中小企業経営者は245万人に達し、その半分以上を占める127万人が後継者未定であると中小企業庁が発表しています。
日本の全企業の3分の1を超える127万社において後継者が見つからないという状況を放置し続けると、廃業が相次ぎ多数の雇用と多額のGDPが失われかねません。そこで、政府は2027年末までの時限措置として、自社株式の贈与および相続に係る贈与税・相続税の納税を100%猶予する特例を設け、早期の事業承継を後押ししています。日本が直面しているこの社会課題を解決する一助となることこそ、資本戦略推進室が果たすべき社会的使命であると考えています。
ただ、事業承継は非常に切実で重要な問題ではあるものの、多くのお客さまの間では、具体的な承継プランが明確になっていないのも実情です。仮に後継者は決まっていたとしても、どのタイミングでどういった手段を用いて承継させるのが最善なのかで頭を悩ませています。
そこで、資本戦略推進室ではそれぞれのお客さまの事業承継ニーズを整理し、明確にする段階からサポートさせていただいています。お客さまに寄り添いながら真のニーズを把握したうえで、事業承継を成功へと導くためにMUFGの総力を結集して最適なソリューションを提供いたします。
―資本戦略推進室はどのような体制で、事業承継をサポートしているのでしょうか?
松本 資本戦略推進室は、2つのチームによって構成されています。1つは三菱UFJ銀行の各支店を担当するチームで、もう1つは特に専門性が求められる課題を担当するチームです。
前者のチームは東京、名古屋、大阪に拠点を置き、主に支店の担当者との協働を通じ、個々のお客さまの事業承継ニーズに応じて最適なソリューションを提供しています。後者のチームは東京に拠点を置き、専門性が求められる個別の課題に対応しています。資本戦略推進室には総勢90名が在籍しており、その多くが税理士や公認会計士などの資格を取得しています。その専門性を存分に発揮しながら、事業承継に精通したアドバイザーが長期間にわたって専任の担当者として対応する体制を整えていることが特徴の一つです。
西村 資本戦略推進室は、コーポレート情報営業部内の事業承継グループ(当時)を母体に、法人領域のサポート業務を担うコーポレート情報営業部と、個人が保有する資産を包括的に管理するサービスを担うウェルスマネジメントコンサルティング部との共管組織に改組するかたちで、2019年に設立されました。
そのような経緯もあり、私はコーポレート情報営業部とウェルスマネジメントコンサルティング部の両部長を兼務し、双方の領域を推進する責任者として円滑な協働を指揮するとともに、今なお現役のマネージャーとして最前線で活動しています。私自身は2001年から事業承継のサポートに携わっており、当時から現在に至るまで四半世紀にわたるお付き合いを続けているお客さまもいらっしゃいます。

資本戦略推進室が提供するサービスの特徴と特徴的な事例

―具体的には、どういった手法を用いて事業承継を進めていくのでしょうか?
西村 事業承継には「親族内承継」と「親族外承継」という2つの選択肢があります。さらに、「親族外承継」には役職員による承継(MBO・MEBO)と、第三者による承継(M&A)という手段に分かれます。MBO(マネジメント・バイアウト)は役員が会社の株式を取得して承継するという手法、MEBO(マネジメント・エンプロイー・バイアウト)は役員と従業員が株式を買い取って承継するという手法です。
我々資本戦略推進室では、お客さまが経営している会社の「企業価値を向上させること」をゴールに位置づけたうえで、属している業界やその中でのお客さまの立ち位置などを精査し、「親族内承継」と「親族外承継」の両面からニュートラルな視点で検討を進めて、最適解となる方策をご提案しています。
松本 2つの選択肢のうち、一般的に「親族内承継」で用いられる手法としては、生前贈与と譲渡の2つが挙げられます。これらのうち、贈与は比較的早い段階で事業承継の方向性が固まっている場合に利用されるケースが多く、主に「相続時精算課税制度」を活用します。同制度は、2,500万円を上限に贈与税を納めずに贈与を受けられ、贈与者が亡くなった際にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算し、一括して納税するという制度です。
また、「事業承継税制」を適用することも可能で、事業承継のために後継者が取得した自社株式にかかる贈与税の納税が猶予されます。それから一定期間にわたって要件を満たすと、猶予された税額が免除されます。
一方、譲渡による「親族内承継」においては、後継者が個人の立場で株式を買い取る方法のほか、資産管理会社を設立して法人として株式を買い取ることで持株会社制に移行するという方法もあります。資産管理会社は、個人と異なり配当を無税で受け取ることができるため、株式買取資金を効率的に捻出することができます。
ただ、個人と法人のどちらにおいても、譲渡の場合は株式を買い取るために多額の資金調達が必要となってきます。突然の相続発生に備えるためにも、あらかじめ遺言を通じて、自社株式を受け取る後継者を定めておくことが非常に重要です。
―印象に残っている事業承継の成功実例としては、どのようなものが挙げられますか?
西村 特に印象に残っているのは、日本初となるノンスポンサー型のMEBOを支援した事例ですね。お客さまは某大手企業の役員で、経営再建のために子会社へ出向し、その社長を務めていました。社内には実力のある幹部が役員や社長に昇進できる環境が整っておらず、このままでは経営再建や将来の発展は難しいことを危惧していたお客さまは、親会社からの独立を検討していました。
IPO(株式新規公開)やM&Aなど、親会社からの独立ではさまざまな手段が考えられますが、社長の想いを踏まえて私が提案したのは、スポンサー(資金提供者=ファンド)を参加させないMEBOです。社長および社員の方々からの出資と銀行からの借入のみで持株会社を設立し、親会社から全株式を買い取るというスキームでした。出資者を募ったところ、最終的には全社員が参加する結果となり、無事にMEBOを実現できました。
その後、この企業は従業員を大切にする会社として表彰されています。社長の想いに寄り添い、当社にとっての最善策を検討する中で、当時の日本において前例のないタイプのMEBOを実現した本事例は、MUFGがめざす資本ビジネスを体現するものだと考えています。
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事業承継を成功させるポイントと、資本戦略推進室だからできること

―事業承継を成功させるうえで重要なポイントや、資本戦略推進室の強みについて教えてください。
西村 事業承継を成功させるうえで重要なのは、「できる限り早く検討を始めること」です。最近では、まだ50代の会社オーナーさまが事業承継スキームの実行に着手しているケースが珍しくありません。また、当初は「親族内承継」を希望していたものの、属している業界の再編を考慮した結果、M&Aによって同業他社と協業したほうが企業成長につながるとの結論に至るケースも多々あります。そもそも事業承継スキームは、後継者の育成にも相応の時間を要することから、長期的なスパンで進めていくものです。自社株式の承継時期はスキームへの着手から5~10年後となることが多いため、時間に余裕を持って取り組むことが肝要だと言えます。
松本 資本戦略推進室の強みは、「親族内承継」と「親族外承継」のどちらにも対応できることや、高い専門性を発揮できる人材がそろっていることに加えて、アドバイザーとしてお客さまを長期にわたって担当できる人事制度や体制が整備されていることです。
長期で担当することによって、お客さまをより深く理解し、強固な信頼関係を築き上げられます。さらに、大局的な視点からお客さまにとって最善となる取引の提案を行うことも可能となります。短期的にはメリットがあったとしても、長期的にはメリットが乏しいと判断できる取引であれば、やるべきではないとお客さまに進言させていただく場合もあります。
―MUFGグループならではの特徴を教えてください。
松本 お客さまにとって最適な事業承継を実現するためには、ソリューションを提供する機能が求められます。MUFGは国内有数の総合金融機関であり、銀行・信託・証券がそれぞれにおいてトップクラスの実績を有しています。それらグループ各社が持っている機能を有機的に組み合わせることによって、包括的なソリューションを提供しています。
西村 事業承継スキームが完了した後も、ずっとお客さまのそばで伴走していくのが我々のスタイルです。ファイナンス(資金の借入)や相続対策、資産運用など、お客さまの後継者となった方はもちろん、さらにその先で事業を承継する方のニーズに幅広く応えるべく、銀行・信託・証券をはじめとするグループ企業とも密接に連携しています。言わば、我々がハブのような役割を務めており、グループ各社それぞれの強みを生かすことにより、お客さまにとって最善となるサービスを提供いたします。
―最後に、事業承継の問題に頭を悩ませている経営者の方々に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。
松本 事業承継に正解というものは存在しません。私はこれからも企業価値の向上という大きなゴールをともにめざすパートナーとして、一人一人のお客さまに真摯に寄り添い、各々にとって最善となる事業承継の実現に向けて邁進していきたいと思います。
西村 25年前にMUFGに加わって以来、私はこの領域で数多くのお客さまの事業承継・資産承継に携わってきました。お客さまに満足していただき、リピーターとして長いお付き合いに発展したり、友人・知人の紹介につながったりすることを通じて、私自身もこの仕事に対して非常に大きなやりがいを感じてきました。
MUFGのアドバイザーの在籍年数が相対的に長い理由の一つには、このような想いを抱いているのが私だけにとどまらないことがあるでしょう。事業承継について、まだ具体的なイメージはないというお客さまこそ、この機会にぜひ三菱UFJ銀行の資本戦略推進室まで気軽にお声がけをいただければと思います。
  • 西村 雅司
    西村 雅司
    株式会社三菱UFJ銀行
    シニアフェロー
    コーポレート情報営業部 部長
    兼 資本戦略推進室長
    兼 ウェルスマネジメントコンサルティング部 部長
    兼 資本戦略推進室長
    税理士、米国税理士。2001年2月に当時の東京三菱銀行へ中途で入行以降、一貫して資本ビジネス業務に従事し、これまで延べ7,000社のオーナー企業へ事業承継を提案。団塊の世代が順次65歳を迎える「2012年問題」が勃発した際、社会課題として事業承継が注目され、同年1月発売のニュース週刊誌「AERA」(2012年1月2・9日合併増大号)では、錦織圭氏やダルビッシュ有氏などとともに、「日本を立て直す100人」の一人に銀行員・税理士として初めて選出された。
  • 松本 裕治
    松本 裕治
    株式会社三菱UFJ銀行
    コーポレート情報営業部 資本戦略推進室 次長
    兼 ウェルスマネジメントコンサルティング部 資本戦略推進室 次長
    2007年に公認会計士試験に合格後、大手監査法人に入社し、会計監査、米国IPO業務を担当。米国へ留学した後、大手監査法人に再度勤務したものの、顧客との距離が近い仕事に就きたいとの思いから、事業会社(eコマース企業)に転職。その後、自身が培ってきた会計やタックス、ファイナンスなどの知見を集大成的に発揮したいと考え、2020年に当行入行、2025年から現職に。
  1. 記事内容・所属はインタビュー時(2025年9月時点)のものです。
  2. 本ページの内容は、MUFGウェルスマネジメントで提供するサービス概要の紹介を目的としたものであり、各商品・サービスの勧誘および提案を目的としたものではありません。
(2025年11月28日現在)
株式会社三菱UFJ銀行

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