

アートと歴史が織りなす世界 浮世絵でめぐる江戸時代
大胆な構図でさまざまな場所から眺める霊峰・富士を描いた葛飾北斎の「冨嶽三十六景」や、江戸時代の庶民の様子がうかがえる歌川広重の「名所江戸百景」など、日本を代表する美術品の一つである「浮世絵」。美術品であると同時に、当時の江戸の暮らしや流行が垣間見える歴史的資料価値の高いものになっています。東洋古美術の専門美術商・浦上蒼穹堂の浦上満氏に、浮世絵の基礎知識から、当時のライフスタイル、保存・継承の重要性、現代社会に与える影響までを多角的にお伺いし、アートと江戸の歴史が交差する世界の奥深さに迫ります。
目次
- 世界から注目される浮世絵
- 浮世絵の基礎知識
- 浮世絵から見る江戸時代
- 浮世絵の鑑賞方法、楽しみ方
世界から注目される浮世絵
西洋の画家たちに多大な影響を与えた浮世絵
―浮世絵の世界的な評価について教えてください。
浮世絵は、19世紀後半にフランスをはじめ欧米で巻き起こったジャポニスムに象徴されるように、芸術的な観点では日本国内よりも先に世界で注目されていました。江戸時代の国内では価格が比較的安く、庶民も入手できる身近なものでした。
幕末、明治時代初期に諸外国から訪れた人々にとって日本文化は目新しく、その中でも浮世絵は日本独自に発展した美術品として映りました。線の表現、構図、江戸時代の文化がわかる題材など、そのどれもが彼らを魅了したのです。
旧帝国ホテルの設計者であるフランク・ロイド・ライトも浮世絵のコレクターで、多くの浮世絵を自国に持ち帰り富裕層に紹介していました。ゴッホも、画商であった弟テオの協力のもと、パリでかなりの数の浮世絵を集めていました。のちの西洋絵画にも影響を与えた浮世絵は、個人のコレクションだけではなく大英博物館をはじめとした各国の美術館や博物館でも数多く収蔵されており、欧米を中心に浮世絵への関心は連綿と続いています。
なぜ、今あらためて浮世絵が注目されているのか
―今、あらためて浮世絵が注目されている背景について教えてください。
2020年に改訂された日本のパスポートには、葛飾北斎の「冨嶽三十六景」が基本デザインとして採用されました。
2023年、クリスティーズ・ニューヨークのオークションにて「冨嶽三十六景」のうちの一つ「神奈川沖浪裏」(通称:大波)が3億6,000万円(当時の換算)で落札され、浮世絵に対する世界の評価が日本国内でもあらためて認識されました。また、2024年に発行された新1,000円札にも北斎の「大波」がデザインされています。現在、国際的にも最も人気が高い日本の美術品は、浮世絵といっても過言ではないでしょう。

(葛飾北斎『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』山口県立萩美術館 浦上記念館 所蔵)
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(2025年10月10日現在)
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