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【特集】財前誠吾のウェルスマネジメント 不動産編 「重荷から道筋へ」
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  1. お問い合わせ・ご相談はスパイラル株式会社が運営するサイトにて受け付けております。
【特集】財前誠吾のウェルスマネジメント 不動産編 「重荷から道筋へ」
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本特集は、お客さまからの資産にまつわる“さまざまな想い”に、「財前誠吾」が徹底的に寄り添い、ゴールへと導くショートストーリーです。ストーリーを通じて、とあるウェルスマネジメントの世界を紐解きます。
  1. ストーリーはフィクションです。登場する人物・会社、エピソードは事実に基づいたものではございません。
不動産オーナーとして多くの不動産を抱える有馬慎一は、地価上昇と相続税の重さに頭を悩ませていた。資産は家族をまもるもののはずが、次世代には重荷になるのではないか――。妻・佳奈は現状維持を望むが、慎一の不安は拭えない。顧問税理士の紹介で出会った財前誠吾は、資産管理会社を新たに設立し、家族を役員に迎える仕組みを提案する。かつて不安の束にすぎなかった書類は、社印の朱とともに未来への入口となる。

重さを抱える資産

春先の午後、有馬慎一の机に茶封筒が届いた。差出人は、財産評価額の試算を依頼していた顧問税理士。
封を切ると、所有するアパートや駐車場の最新評価額が並んでいる。今年の路線価図や固定資産税評価額をもとに試算した数字は去年よりさらに膨らみ、桁の増加がそのまま将来の相続税の重さを物語っていた。窓から差し込む淡い陽光に照らされながら、白い紙に刻まれた黒い数字だけが妙に濃く見えた。
リビングでは妻の佳奈が夕食の下ごしらえをしている。まな板の上で包丁が小気味よく音を立てる。慎一は書類の束を片手に、ソファの背に寄りかかりながら声をかけた。
「なあ、評価額がまた上がったよ・・・。これじゃ相続税も跳ね上がる。三人にどう分ければいいのかまったく見当もつかない」
包丁の音が止まり、佳奈は振り返った。握った手は空中で動きを止め、視線だけが慎一と書類の束を行き来する。
「まだ子どもたちは学生よ。そんな先のこと、今から考えても仕方ないんじゃない?」
「仕方ないで済まないよ。あの子たちが大人になったとき、誰が継ぐかでもめるのは目に見えてる」
長男は大学進学を控え、長女は高校生。末っ子はまだランドセルの小学生だ。塾のプリントがリビングの片隅に積まれ、ソファには娘のジャージが投げ出されている。そんな日常の風景の中で、数字だけが重苦しく、現実感をもって迫ってくる。
慎一は窓の外に視線を移した。庭の桜は花びらを落とし始め、淡い色が風にさらわれていく。だが心に広がるのはその儚さではなく、不意にのしかかる未来の影だった。
その夜も数字の束は机の端に置かれたまま、慎一の視線を引き寄せ続けた。眠ろうとしても、頭の中で桁が並び替わり、不安ばかりが膨らむ。
そして数日後、慎一は顧問税理士の事務所を訪ねた。
「評価額が上がり続ければ、納税資金も桁違いになります。現金を積み立てて備えるのが一般的ですが……」
机越しに返ってきた答えは、丁寧で筋の通ったものだった。
ただ、普段相談している顧問税理士は法人決算や申告には強いが、個人の承継や資産管理の分野は守備範囲外だった。
慎一の家族の事情に即した解を求めていた慎一にとって、それだけでは届かない思いが残った。
帰宅後、食卓についた慎一はふと切り出した。
「今日、税理士に相談してきた。資産評価額が上がりすぎていて、このままだと……」
佳奈は箸を置き、しばらく黙ったまま考え込んだ。やがて、ゆっくりと口を開いた。
「……無理して余計なことに手を出さないで。あなたは不動産でここまでやってきたんだから、それでいいじゃない」
その堅実な言葉は理解できた。だが慎一の胸の奥では、「子どもに重荷をのこすのではないか」という焦燥が日に日に膨らんでいた。

その夜、電話が鳴った。税理士からだった。
「資産管理の専門家をご紹介します。個人の承継を数多く手がけている。有馬さんの状況に合うかもしれません」

耳に届いた名は――財前誠吾。初めて聞く名だったが、慎一は応じることにした。

机の上に広げた書類の山は、胸の奥を静かに沈めていくようだった。
だが、隣に置かれた面会の予定を記した小さなメモが、その静けさにわずかな動きを与えた。慎一は、まだ見えない扉の向こうに、せめて道が続いていることを願った。

扉を開く声

数日後、慎一はメモに記した予定の時刻に合わせて、顧問税理士の事務所を訪れた。顧問税理士には、慎一の了承を得て、基本的な資産概要をまとめた資料を財前に共有している。個別の数値こそ省かれていたが、構成や課題は把握できる内容だった。
有馬慎一と妻の佳奈は、税理士の紹介で財前誠吾と初めて顔を合わせた。
初対面の挨拶を交わすと、財前は柔らかな声で切り出した。
「本日はありがとうございます。まずは数字の話ではなく、有馬さまが将来、資産をどのようにお子さまへのこしたいとお考えか、お聞かせいただければと思います」
慎一は一瞬ためらい、正直に口を開いた。
「……どのように、と言われても……正直に言ってまだ具体的なイメージは見えていません。ただ、子どもたちに重荷をのこすのではないかと。それがずっと引っかかっていて……。不動産は現金のように割れませんし、三人で分けるにしても揉めるのが目に見えているんです」
佳奈も静かに言葉を添えた。
「私は今の安定を崩したくないんです。せっかくここまで積み上げてきたのだから、大きなリスクを取るくらいなら現状維持のほうが安心です」財前は深く頷いた。
「承知しました。つまり“お子さまに重荷をのこさないこと”、そして“ご夫婦の安定を守ること”。これがご家族にとっての大切なゴールということですね」
慎一は無言で頷いた。胸の奥に曖昧に漂っていた想いが、言葉として整理されると、霧の一部が晴れたような感覚があった。
財前は一呼吸おき、指を一本ずつ立てて課題を示していった。
「課題を三つにまとめるとすれば、 
一つ目は、地価上昇による相続税負担の増大。 
二つ目は、不動産が分けにくいという構造的な問題。 
三つ目は、将来の承継にそなえた具体的な道筋がまだ描かれていないこと。
この三点をどう解決していくかが、承継を円滑に進めるための鍵になると考えます」
慎一はその指先を見つめ、思わず唇を噛んだ。
自分の頭の中で繰り返してきた懸念が、財前の指の動きに合わせて明確化されていく。
財前は手元のタブレットをタップして画面を呼び出した。
「資産の全体像を、少し整理してみましょう」
慎一から資産内容をヒアリングしながら数字を打ち込んでいくと、グラフが表示された。
「こちらが現状の資産状況です。不動産が全体のほぼ九割を占めています」
「九割も……ですか」
慎一は眉を寄せ、驚きを抑えるように言葉を漏らした。
財前は、慎一を見つめて一拍おいてからゆっくりと話をつづけた。
「はい。こうして可視化すると、不動産の比重がどれほど大きいかが一目でわかります」
「つまり資産のほとんどが“動かしにくい形”に固まっている、ということです」
「なるほど……」慎一の声が低く漏れる。
「たとえば、不動産の三割ほどを削って、余白をつくる。その余白が“動かせる資金”になります」
財前がさらにタブレットに入力しタップすると、画面が切り替わった。
「まずは、一部の不動産を売却して資金を確保するところまでを想定しています」
慎一はタブレット画面を見つめた。グラフから不動産の割合が減ることで、未来に余白ができたように見えた。
財前は姿勢を正し、言葉を続けた。
「さらに、承継の仕組みとして“資産管理会社”を設ける方法もございます。個人で直接不動産を相続する場合は物件ごとに重たい負担がかかりますが、法人に移すと次世代は“不動産そのもの”ではなく“会社の株式”を承継する形になります。また評価方法によって資産価値が異なる場合があります」
佳奈が慎重に口を開いた。
「……子どもたちはまだ学生です。役員にしても、何ができるのか……」
財前は微笑みを崩さずに答える。
「もちろん、いきなり大きな責任を担っていただく必要はございません。たとえば年に一度でも会議に同席し、議題を聞き、意思決定の場を体験していただく。そうした小さな関わりから始められるのも一案かと存じます」
佳奈はしばらく黙り、やがて小さく頷いた。
「……現状を守りつつ、子どもたちの未来も見据える。そういう形なら、検討してもいいのかもしれません」
さらに財前は穏やかに言葉をつづけた。
「もう一点、有馬さまがお感じになっている“子どもたちに重荷を残したくない”という点ですが、全員を同じ役割にする必要はありません。年齢に応じて“無理のない関わり方”を設定することで、ご家族の負担を減らせます」
慎一と佳奈が、財前に視線を向ける。
「たとえば、ご長男には将来の承継候補として役員を経験していただき、下のお二人は家族会議に参加する形で十分です。責任の重さを均一にせず、それぞれに合った距離で関わってもらうほうが、のちの軋轢を避けることにもつながります」
慎一はその言葉にゆっくり頷いた。
長男に道を示しつつ、下の二人にも居場所を用意できる。その形なら、家族全体の納得感につながるかもしれないと感じ、胸の奥で小さく安堵した。
――重荷ではなく、選びやすい未来を。それぞれの立場に合った関わり方が、その一歩になるのだ。
財前はタブレットを置き、慎一と佳奈に向けて穏やかに言った。
「本日はあくまで一つのご提案です。ただ、承継を“背負わせること”ではなく、“分け合える仕組み”に整えていくという考え方は、多くのご家族にとって有効に働いてきました。有馬さまにとっても参考になれば幸いです」
事務所の窓から差し込む夕陽が、タブレットを淡く照らした。
そこには、不安ではなく、一つの出口のかたちが静かに浮かび上がっていた。

承継の決断

春の昼下がり。法務局で受け取った封筒を、有馬慎一は両手に抱えて帰路についた。
中には、新しく設立した資産管理会社の登記簿謄本が収められている。
これまでも、物件管理を委託するための法人は存在していた。
しかしそれは入居者対応や修繕手配を外注するための器にすぎず、日常の運営には役立っていたものの、承継を見据えた仕組みにはならなかった。
今回立ち上げた新会社はそれとは役割が異なる。不動産そのものを保有し、将来は株式を子どもたちに分けていくことを前提とした「資産の受け皿」だった。
夕食後、家族全員がリビングに集まった。長男は大学から戻ったばかりで疲れた顔をしていたが、父の前に置かれた封筒を見て背筋を伸ばした。長女はスマホを脇に置き、資料に視線を落とす。末っ子は意味もわからず「新しい会社ってかっこいいね」と声を弾ませた。
慎一は封筒から新品の社印を取り出し、設立後初めて作成した議事録に印を押した。小さな音が木のテーブルに響く。
「今後は、この場で“共有”していく。お父さんとお母さんがどう考えているかを伝え、将来は君たちがそこに考えを加えていく番になる」
慎一は資料を軽くポンと叩きながら、少し声の調子を落とした。
「この会社の“株”は、いずれ三人それぞれにふさわしい形で受け取ってもらうつもりだ。重たい物件そのものじゃなくて、将来、選べる形のほうがいいと思っている」
長男は真面目な表情で「責任って言葉が、少し近くなった気がする」と呟いた。
長女は父を見つめ、「お父さん、私も意見を言っていいの?」と問いかけた。慎一は「もちろんだ」と短く答えた。佳奈はそのやりとりを見守りながら、「形にすると違うものね」と静かに言った。
数ヵ月後。家賃収入に加えて、債券などからの利息や分配金が口座に記録されるようになった。会計ソフトには不動産収益と金融収益が並び、佳奈はその画面を眺めながら「これなら、もしもの時も動きやすいわね」と安堵を口にした。
慎一は夜、机の上で社印を布で拭き、ケースに収めた。掌に残る朱の感触が、選択を形にした証のように思えた。
――子どもたちにのこすのは重荷ではなく、選べる道筋だ。
机の端には財前からのメールが開かれたまま残っていた。
「次回は株式の配分方法に加え、役員任期や議決権の扱いについても整理してまいりましょう。少しずつ進めれば十分です」
慎一は画面を閉じ、小さく息を吐いた。まだ決めることは多い。だが、課題が山積みであることよりも、進める順序が見えていることの方が安心をもたらしていた。
視線を封筒に戻す。かつては不安の象徴に思えた書類は、今では未来への入口になっていた。印を押した朱が、確かに家族の時間を照らしていた。
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財前誠吾プロフィール

財前 誠吾(ざいぜん せいご)
長年の海外赴任を経て、現在は国内大手金融機関のウェルスマネジメント部門に所属。
財前の顧客へのアプローチは、まず人生のゴール(想いや願い)を聞くことから始まる。その中において、資産はあくまでもゴールへの到達手段の一つに過ぎない。それよりも資産にまつわる“さまざまな想い”を徹底的に紐解き、より具体的なゴールへの道筋を組み立てていく。財前の元には多岐にわたる相談が日々舞い込む。顧客の真の想いとは何なのか。ゴールへの道筋をどのように描くのか。財前の挑戦は続く。

  • このエピソードに登場する
    ウェルスマネジメント・キーワード

    資産管理会社

    資産管理会社は、不動産や株式などの資産を所有している人が、その資産を所有・管理することを目的として設立する法人のことをいいます。多くの収益不動産を所有する不動産オーナーや自社株式の評価額が高いオーナー経営者、いわゆる富裕層の方が、資産管理会社を設立して活用すれば多くのメリットをえることができます。

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