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事業承継のマッチング支援とは? M&Aで確実に事業を譲渡するために
事業承継のマッチング支援とは? M&Aで確実に事業を譲渡するために

事業承継のマッチング支援とは? M&Aで確実に事業を譲渡するために

中小企業の後継者問題が深刻化する中、事業承継の選択肢としてM&Aの注目度が高まっています。親族や社内ではなく、外部から後継者を見つけるM&Aについて、そのM&Aを加速させるマッチング支援の仕組みとともに解説します。

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日本の中小企業の現状

独立行政法人中小企業基盤整備機構の公表データによると、日本の企業のうち、99.7%は中小企業といわれています。中小企業は日本の産業を支える、なくてはならない存在です。しかし、そんな中小企業の多くが、事業承継問題に直面しています。

経営者の高齢化と後継者不在問題

東京商工リサーチの「全国社長の年齢調査(2022年)」によると、社長の平均年齢は年々上昇し、2022年には63.02歳となりました。年齢分布では、70代以上の構成比が33.3%と2019年から4年連続で最多を記録しています。
また、社長の高齢化と業績悪化の関連も見過ごせません。減収企業の社長の年齢を見ると、60代が43.40%、70代以上が44.77%でした。また、赤字企業は70代以上が25.83%と最多でした。事業承継の遅れが、業績にも悪影響を及ぼすリスクが統計データから見て取れます。
帝国データバンクの「全国企業後継者不在率動向調査(2022年)」によると、全国・全業種の社長年代別の後継者不在率は次のとおりでした。
年代別推移
  • 帝国データバンクの「全国企業後継者不在率動向調査(2022年)」
60代で42.6%、70代で33.1%、80代以上でも26.7%の社長が後継者不在という状況に陥っていることがわかります。

事業承継の3つの形

かつては子息・息女をはじめ、親族内で後継者を探すことが一般的でした。しかし最近では、従業員や役員、他社の経営者など、親族外の人物を後継者として事業を引き継ぐケースも増えてきています。
事業承継は、引き継ぐ相手によって3つの種類に分けられます。
  1. 親族内事業承継
  2. 社内事業承継
  3. M&Aによる事業承継(第三者承継)

増加傾向にあるM&A

3種類の事業承継の中でM&Aの注目度が高まりつつあります。

高い技術力や専門性、顧客に愛される商品・サービスを持つ中小企業が、後継者不在によって廃業を余儀なくされることは、日本全体にとっての損失です。M&Aが事業承継の選択肢の一つとして認識され、増えていくことで、価値ある商品・サービスが後世に引き継がれることになるはずです。

M&Aのメリット・デメリット

M&Aにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。売り手・買い手双方の視点から、M&Aのメリット・デメリットをまとめました。

M&Aのメリットとデメリット

売り手側

メリット
  • 自社の商品・サービスを後世に残せる
  • 広範囲から後継者を探せる
  • 売却により現金が得られる
  • 会社が存続し、従業員の雇用を守れる
デメリット
  • 買い手が見つからない可能性がある
  • 会社への影響力が減少する可能性がある
  • 取引先、関係者との関係性が変わる可能性がある

買い手側

メリット
  • 起業する時間や労力を軽減できる
  • 事業を拡大できる
  • 税金を抑えられる
  • 許認可を承継し、スムーズに事業運営ができる
  1. 許認可の種類によっては承継できない可能性がある
デメリット
  • 期待どおりの成果を得られない可能性がある
  • 従業員との信頼関係が得られない可能性がある
  • 粉飾が発覚するリスクがある
  • 過去の法務・税務トラブルにより被害を被るリスクがある

売り手から見たメリット・デメリット

売り手のメリットは、思い入れのある商品・サービスを後世に残せる可能性が高いことです。M&Aによって後継者が見つかり、会社が存続できれば、従業員の雇用も守れます。

また、M&Aでは承継する株式の対価として金銭を受け取れます。売却益によって勇退後の生活にゆとりが生まれることもメリットといえるでしょう。M&Aで事業承継できれば、廃業に関わる手間や費用もかかりません。

一方、どの事業承継の方法を取ってもいえることですが、買い手(後継者)が見つからない可能性がある、というデメリットもあります。また、事業承継を完了した先代経営者の会社への影響力は減少する可能性があり、立場が変わることで取引先や関係者との関係性が変化する可能性があります。

買い手から見たメリット・デメリット

起業や新規事業立ちあげにかかる時間的・金銭的コストを大幅に削減できることは、買い手にとっての大きなメリットといえるでしょう。M&Aで既存の会社を買収する場合、基本的には顧客が付いているため、最初から一定の売上が見込めます。

また、優良な顧客リストを持つ赤字企業を買収し、税金を抑えるメリットを享受しながらシナジー効果を狙う戦略もあります。最初は赤字でも、売り手が持つ顧客リストに買い手の商品・サービスを販売することで、事業を立て直せるケースがあります。

もっとも、売り手をよく精査せずに、希望どおりのシナジー効果が得られなかったり、事業計画どおりに売上や利益をあげられなかったりするリスクがあります。また、過去の法務・税務トラブルによって、買い手が被害をこうむるリスクがあることもデメリットです。こうしたリスクを排除するため、M&Aでは専門家の支援を活用することを検討しましょう。
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経営者がM&Aを躊躇する3つの理由

M&Aが事業承継の選択肢として注目されていることを知っていても、なかなか一歩を踏み出せない経営者もたくさんいます。経営者がM&Aを躊躇するのは、次のような理由からです。

1.買い手が見つかるか不安

M&Aのデメリットとして挙げた「買い手が見つからない可能性がある」ことに不安を感じる経営者は多いでしょう。実際、M&Aを検討しながら、大切な事業を託せる相手が見つからず、社長のイスに座り続けている経営者もいます。
しかし、年齢が上がると健康上のリスクも上昇します。病気や事故など予期せぬ事態に陥り、廃業せざるを得なくなるケースもあります。
信頼できる相手が見つかるかどうかは、探してみなければわかりません。探してみてどうしても良い買い手が見つからなければ、悔いを残すことなく自分の代で廃業することができるのではないでしょうか。

2.自社の価値がわからない

「本当に自分の会社が売れるのだろうか?」。こうした疑問を抱いている経営者も多いでしょう。「赤字だから売れない」、「建物や設備が古いから売れない」と決めてかかっている経営者もいます。
しかし、自分では価値が低いと感じていることも、買い手から見ると魅力的に映ることがあります。たとえ減収傾向にあったとしても、赤字だとしても、製造技術や顧客リスト、地域での認知度の高さなどが、買い手の事業とマッチすれば、納得のいく価格でM&Aが実現する可能性は十分にあります。

3.情報収集が難しい

M&Aには専門知識が必要です。しかし検討にあたって、税務や法務など何から調べればいいかわからず、立ち止まってしまう方も少なくありません。忙しい毎日の中では、後継者不在の問題はつい先送りにされがちです。

しかし、M&Aの税務や法務は複雑で、実務でしかわからないことも多く、自身で完璧に知識を身につけるのは難しいでしょう。大半の人にとっては「専門知識を身につける」こと以上に「信頼できる専門家を見つける」ことの方が大切といえそうです。

M&Aのトラブル事例

経営者はM&Aを検討する時、良い面だけでなく、リスクも知りたいと考えるでしょう。ここからはM&Aのトラブル事例を二つ紹介します。

勇退後に裁判で争うことになったA氏の事例

60代後半のA氏は、知り合いの年下の経営者に会社を引き継ぐことを決めました。もともと顔見知りだったこともあり、専門家の手を借りずにM&Aを進め、その経営者や、実際にM&Aを実行した経営者などの友人、知人に聞いてまわり、またインターネットや書籍で情報収集しながら、何とか譲渡契約の締結まで終えることができました。

しかし、譲渡契約を締結する前にデューデリジェンス(買収監査)を行わなかったことから、M&A後に税務上の重大な問題が発覚。家族と悠々自適の勇退生活を送るはずが、A氏は現経営者と裁判で争うことになってしまいました。

安く買いたたかれて後悔したB氏の事例

後継者のいないB氏は70代半ばに差しかかり、廃業するしかないとあきらめていました。しかし、友人からB氏の会社を買いたいという人物を紹介されます。会ってみると20代の感じの良い社長で、「M&Aの経験が豊富なので、すべて任せてくれたら問題なく進められる」という話でした。

売買代金はB氏も納得できる金額だったことから、言われるがままに必要書類等を集め、譲渡契約を締結してM&Aが完了しました。

勇退後にB氏は、たまたま同時期にM&Aで勇退した友人の経営者と話す機会があり、売買代金の違いを知って驚きました。同程度の規模の会社でありながら、売買代金には大きな開きがあったのです。

友人は専門家の助けを得ながらM&Aを進めたと言い、安く買いたたかれた可能性に気づいたB氏ですが、手立てを講じることもできず、泣き寝入りする羽目になりました。

M&Aのマッチング支援とは?

M&Aでは、売り手と買い手の利害が対立します。そのため、自分たちだけでM&Aを進めようとすると、さまざまなトラブルが生じます。失敗を避けるためにも、利害を調整してくれる専門家を上手に活用しましょう。

M&Aにあたっては、売り手と買い手をつなぐマッチング支援というサービスがあります。

マッチング支援の概要

M&Aマッチング支援とは、買い手の候補探しから最終譲渡契約の締結に至るまで、M&Aをトータルでサポートしてくれる支援サービスのことです。

公的な機関が実施している支援サービスとしては、独立行政法人中小企業基盤整備機構の「事業承継・引継ぎ支援センター」や日本政策金融公庫の「事業承継マッチング支援」があります。その他にも、民間企業が提供する支援サービスがあります。

M&Aをトータルでサポートする支援サービス以外に、インターネット上で買い手探しができるマッチングサイトも存在します。サポートの範囲はサイトによって異なるため、利用を検討している方は事前に確認しましょう。

マッチング支援を活用したM&Aの流れ

マッチング支援を活用した場合の一般的なM&Aの流れは次のとおりです。

  1. マッチング支援サービスを提供する事業者と契約を結ぶ
  2. 社名を明かさずにノンネームシートで買い手候補を探す
  3. 条件に合う買い手候補が見つかったら、ネームクリアでお互いの社名を明かす
  4. 経営者同士でトップ面談を実施する
  5. 双方問題なければ、基本合意を締結する(基本合意後は、候補先探索をお互いに打ち切ることが一般的)
  6. 譲渡対価を含め、お互いの条件面をすり合わせる
  7. 弁護士や税理士などの専門家によるデューデリジェンス(買収監査)を実施する
  8. 最終譲渡契約を締結し、M&Aが完了する
  9. 譲渡対価の支払い、役員の選任などのクロージング手続きをする

次にマッチング支援を活用した成功事例を紹介します。

マッチング支援を活用したC氏の事例

C氏は、M&Aについて相談できる専門家を探し、信頼できる担当者と出会いました。担当者の紹介を受け、M&A支援サービスを提供する会社と契約し、買い手候補を探し始めます。まもなく買い手候補とつながり、経営者とトップ面談を実施したところ、経営理念に相通ずるものがあり、基本合意に至りました。

C氏は自社が減収・減益傾向にあったことから、評価額はそこまで高くならないと踏んでいました。しかし、M&Aの経験豊富な専門家が、シナジー効果が生まれる可能性を指摘してくれたことで、自社の魅力を買い手に適切にアピールすることに成功しました。

C氏が想定していたよりはるかに高い金額で売却が決まり、弁護士・税理士によるデューデリジェンス等の手続きを経て、無事にM&Aが完了しました。

M&Aと併せて遺言書作成などの相続対策も行い、C氏は不安を残すことなく勇退生活を満喫しています。

マッチング支援を活用するメリット

知り合いの紹介等を除き、自分で買い手を探すのは至難の業です。また、買い手を探しているという情報がもれると、従業員や顧客に不安が広がりかねません。そんな中で、社名を伏せて広く買い手候補を探すことができるのはマッチング支援の大きなメリットといえるでしょう。

また、事業者にもよりますが、買い手にアピールできる自社の強みを一緒に分析してくれたり、価格交渉をサポートしてくれたりするケースもあります。このようなマッチング支援を受けることで、納得のいくM&Aを叶えやすくなるでしょう。

マッチング支援を活用するデメリット

マッチング支援を提供する事業者はさまざまで、実績の少ない事業者や、部分的なサポートしかしてくれない事業者も存在します。サービス利用を考えている方はどこの事業者のサービスを利用するか注意しましょう。
事業承継という重要なステージを任せるにふさわしい事業者をしっかり見極めなければなりません。

事業承継の選択肢としてM&Aを検討中のオーナー経営者は、豊富な事業承継支援実績を持つMUFGウェルスマネジメントにぜひご相談ください。グループの総合力で適切なソリューションをご提案します。

記事提供:株式会社ZUU
執筆者:木崎 涼(ファイナンシャルプランナー / M&Aシニアエキスパート)
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(2023年10月1日現在)
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